「景色が良いのは認めるけど、何故俺まで連れてく?」
「それは・・・なんとなくかな?」
バニングス家のリムジンでは無く月村家の使う車に乗り戒翔はそう呟くと苦笑気味にすずかがそう言う。
「あの馬鹿は誘わなかったのはなんとなくわかるが・・・」
「・・・やっぱり迷惑だった?」
「いや・・・そう言う訳じゃ」
戒翔はすずかがしょんぼりした表情で聞けば慌てた様子で諌める。
「ふふ、仲が良いわね?」
そんな様子をルームミラーで見ていたすずかの姉である忍はファリンと共に微笑んでいた。
「お、お姉ちゃん!」
慌てた様子のすずかに不思議そうに眺めていた戒翔だが、興味を無くしたのか窓の外に目を向ける。
「退屈ですか?」
「・・・ノエルさん。」
「すずかお嬢様が貴方をお誘いになりたいと仰った時には嬉しかったのです。すずかお嬢様にはなのはお嬢様にアリサお嬢様という数少ない御友人の中で男の子であなただけがすずかお嬢様を色眼鏡で見ないで接してくれるのが嬉しかったのでしょうね・・・。」
「月村さんがそんな事を・・・。」
「お嬢様の事、これからも宜しくお願い致します。」
ノエルはそう言い、戒翔に向けて微笑むのであった。
「やってきました海鳴温泉!」
「戒翔・・・、あんたキャラがオカシクなってない?」
「いや、なんか言わないといけない気がしたんだ・・・。」
車から降りた月村、バニングス組は高町組と合流したのだが、戒翔の発言にアリサが呆れていた。
「さ、宿に入ったら荷物を置いて少しの間自由行動にしましょう。時間も時間だから夕食までに戻るように。」
忍となのはの母 高町桃子はそう言って忍はなのはの兄の恭也、桃子は夫の士郎を伴ってフロントの受付に向かいファリンとノエルはなのは、アリサ、すずか、戒翔の四人を連れて部屋へと向かう。終始彼女達のガールズトークを後ろからついて行く戒翔には聞こえてはいなかったが、戒翔は別の問題に内心呆れていた・・・。
「(なんで温泉宿で2個ものジュエルシードの反応があるんだろうな?原作知識は
「この敷地内だけにしてくださいね?」
「分かってますよ。」
少しの会話だけをして戒翔は宿の敷地内にある森林区に向かって歩いて行く。
「確かこのあたりに微かな反応が・・・」
戒翔はそう呟きながらガサガサと音を立てながら藪の中に入っていく。
「あった・・・。回収完了っと。やることなくなったから当初の予定通りに散策でもしますか。」
「森林浴ってのも乙な物だよなバハムート?」
『その発言は今の年齢から考えてお爺さんクサいよ?』
『私もそれには同意します。』
1人でブラブラしているのも寂しいものだが自身の持つ指輪型とネックレス型のデバイスを相手に会話をしていた。指輪型はアルカイン、ネックレス型はバハムートとなっている。
「お前らなぁ・・・。そう言えばこの身体、俺が転生と言うか憑依に近い形で存在しているが大丈夫なのか?」
『スキャンを掛けてみます・・・・・・マスター、この肉体はプロジェクトFの計画によって作成された肉体の様です。体内にある因子は聖竜王・・・古代ベルカ時代の語られていない王の様です。自身の記憶にあると思いますが・・・。誰が何の目的で記録から抹消された王のデータでクローンを作ったのは分かりませんがマスターが無事に海鳴で暮らせている所を鑑みて研究者たちからは失敗と見てこの管理外世界に捨てたのでは・・・?』
アルの見解を聞き戒翔はある疑問を抱く
「だが、失敗ならば処分するのが一番の筈・・・。態々この世界に落としたのか・・・」
『それは良心的な物を持った方たちがマスターをこの地に転送したのでは?』
『非人道的な事をして良心を持つってあるのかな・・・?』
「お前ら、そこまでだ。で、アル副次効果的なものはあるのか?」
『無数の龍の因子と王の因子が上手く噛み合っているからか分かりませんが龍化する事が可能な事と魔力や身体能力などが飛躍的に向上しています。』
「そうか・・・。なら当分の間は魔法行使しなくとも素手でも行けるという事だな・・・。」
『僕らのマスターはまた無茶をするみたいだね・・・』
戒翔の言葉にデバイスでありながらため息を吐くような発言をするバハムート。
「一度戻ろう。これからの事もあるが先ずはこの事件を解決させることを優先する。」
『『了解。』』
―――――――――――――――――――――――
「はぁ~、気持ちが良い。風呂は心の洗濯とはよく言ったものだよ。」
夕食が過ぎ、温泉に浸かる戒翔はそう呟くと水面に映る自身の顔を見た後に夜空を見上げる。
「君は見た目以上に体が引き締まっているんだね。細く見える体に無駄な筋肉は無くしなやかでありながら強靭な筋肉をその小さな体に宿している・・・。なのはと同年の子とは到底おもえないかな?」
「貴方はたしか高町さんの・・・」
「士郎で良いよ。君からは歴戦の猛者の気配がしたからつい警戒して観察までしてしまったんだ。」
見上げた所に声を掛けて来たのは腰にタオルを巻いた高町なのはの父、高町士郎そのひとである。その士郎が戒翔の肉体ひいては全体的に観察するようなしぐさを見せながら話し掛けてきた。
「気配に敏感なのもいいけど俺みたいな存在は希有なものだから早々会えるとは思えないけどね。」
「はは、胆に銘じておくよ。」
「そうしてくれ。・・・・・・彼女の闇はそう言った家族にも関係しているのだろうが。」
「ん?最後に何か言ったかな?」
「・・・空耳じゃない?俺は先に上がる。」
「僕は温泉に浸かってから上がるよ。」
「それじゃお先に・・・。」
そう言って戒翔は士郎よりも早く出る。
「(彼女の闇・・・、それはなのはの事なのか?君はいったい何者なんだ?)今は家族を含めてなのはの友人たちもいるのだから・・・。」
戒翔が出て行った先をしばし見つめていた士郎だが一度頭からその考えを振るほどきその顔は家族を思う温かき父の表情をしていた・・・。
――――――――――――――――――――
そして、温泉から上がった戒翔に対して行われた温泉卓球だが、意外や意外おっとりしたすずかがアリサとなのはに勝ち戒翔と強烈なラリーを繰り広げた結果、わずかなミスをした戒翔の敗北で終わった。
「月村さんっておっとりとした感じなのに結構出来るんだね。」
「そ、そんな事無いよー!」
「そうね、すずかの容姿で騙されて倒れた男子の数なんて結構いるかも・・・」
「アリサちゃんまでー!」
「あはは、ゴメンゴメン♪」
「そして順位最下位はやっぱり高町さんだったね。」
「う~!私ってなんで運動音痴なんだろ・・・」
「ちゃんと体を動かさないからだよ。」
「でも・・・」
尚も渋るなのはを見て戒翔は少し間を開けて口を開く。
「・・・・・・いつも早朝の4時からジョギングをしている。」
「戒翔くん?」
「気が向くか、運動音痴を治す気があるならばいつでも声を掛けてくれていいよ?」
「戒翔くん・・・うん!おねがいするの!」
「返事が早いけど、まぁいいか。」
「なのは(ちゃん)、ちょっと話をしない(しませんか)?」
「にゃ!!?アリサちゃん!?それにすずかちゃんもどうしたの!?」
戒翔の言葉に満面の笑顔で即答気味の言葉を告げるなのはに苦笑していた戒翔。そしてその会話を聞いていたアリサとすずかがそんな事を聞いて面白く思わないのは年齢は若いが少なからず戒翔に好意を寄せているからだと推測する。
「・・・話をするのなら先ずは部屋に戻る事が先決じゃないのかな?」
「そ、そうだね!はやくもどろイタッ!」
呆れながらも戒翔はなのはに助け船を出し、それに乗っかる形でその場から離れようと脱兎の如く動いたなのはだが、正面から誰かとぶつかって尻餅を突いていた。
「なのは、大丈夫?」
「いやぁ・・・ただ挨拶をしておこうと思ってね♪ーーーーーーーーーこの間はフェイトがお世話になったね」
ぶつかった浴衣を着た女性は3人に・・・いや、なのはに近付き何事か最後に呟くがなのはは意味が分からないという表情をする。むろん、読唇術を使ってその会話は戒翔には容易に読み取れた。が、その女性の意図が良く分からないでいた。
《・・・・・・まぁ、前置きは良いとして》
今度こそなのはとその肩にいつの間にか乗っていたユーノは驚愕する。無論戒翔にはその声は聞こえていたがそのすぐ後ろにいるアリサ、すずかの2人には全くと言って聞こえていないのである。
《—―――――――――――あんた・・・あの黒騎士とか言う奴とは知り合いかい?》
《く、黒騎士?》
《答えな!》
「・・・・・・・・・・お前ら、何をずっと見つめ合ってんだ?」
後ろの2人がそろそろ訝しみ始めたのを見て頃合いかと思い戒翔がそう告げると女性はなのはから標的を戒翔へと移す。
「・・・・・・ふ~ん」
《あんたが黒騎士かい?》
女性のしてきた念話は戒翔個人に対しての物。どんな人物でも突然、妙な事が起これば何かしらの行動を起こすものである。それ女性の核心を確かめる物でるのならなおさら
「・・・・・・・・・何時までジロジロ見ているのですか?」
「(・・・・白か)」
何も反応を示さなかった戒翔に対して時勢は一言すまなかったねと言ってその場を離れる。
「・・・・・・・・・な、何よアイツ!!酔っぱらってんじゃないの!!!!」
「お、落ち着いてアリサちゃん!?」
女性が去って暫くそこに立ち往生していた4人の中でただ一人アリサが怒り狂いそうな所をすずかが何とかなだめ、なんとか落ち着くことが出来たがそれでも納得がいかない様子のアリサを見かねて戒翔が動きを見せる。
「まぁ、そう怒るな。こういった施設には様々な人間がいる。千差万別様々な者がいるのが世の中だ。あぁいった輩もの中に入るさ。そう思えば不思議じゃないさ」
アリサの頭にポンッと乗せられた手が優しくアリサの頭を撫でた。
「・・・・・・え?」
「だけど、すぐにそれを爆発させなかったのは偉かった。だからそのまま頭の中から消してしまえばいい。なのはは分からないが俺は別段、気にしていないからな・・・。」
・・・・・・・・確かに気にしていない・・・いや眼中になかったのだがそれを知る事が叶わない彼女にはどうする事も出来ない。が、基本的に無愛想と無関心な戒翔がその真紅の瞳には僅かながらに優しさが垣間見えた。
「・・・・・・・わ、分かったわ。」
戒翔のあまりの代わり様にトマトの様に赤くするアリサ。
「じゃ、俺は先に部屋に戻るから。」
そう言って戒翔は乗せていた手を離す。その際にアリサが寂しげな表情をしていたことに気付く事は無かった。
「「・・・・・アリサちゃん?」」
息が合った二人同時の声に瞬時に肩を跳ね上がらせたアリサは油の切れた機械の様な動きですぐ後ろにいる2人を見ればイイ笑顔をした2人がいた。しかし笑顔なのだがその瞳が笑っていないのである。
「アリサちゃん良かったね、頭撫でて貰って?」
「あ・・・」
すずかの言葉を聞いたアリサはヤバいと心中で思う。そして一時しのぎではあるがこの場からの逃走を図ろうと反転して走ろうとしたがすぐさま肩を固定される。
「ちょ、なのは!あんたそんなに俊敏じゃ無かったでしょ!?てか握力が凄い事になってるわよ!?」
「アリサちゃん、ちょっとO☆HA☆NA☆SI☆しようか?」
その直後、館内にとある少女の悲鳴が響き渡るのであった。