仮面ライダー 鎧武&オーズfeat.ライダーズ ~暁の鎧~ 作:裕ーKI
時間は少しだけ遡る。
映司たちがネオ・オーバーロードとグリードを退き、古代遺跡で救助チームの到着を待っていたころ、東南アジア・マレーシア半島の先端に位置する都市国家シンガポールで、1人の男が殺された。
白いマーライオンが大勢の注目を集める観光地――マリーナベイエリアのとある高級ホテル、その中の1階にあるバーのカウンター席に、1組のカップルが肩を並べて座っていた。
情熱的な真っ赤なキャバドレスに身を包んだ女性とスーツ姿の男性が、カクテルの入ったグラスを傾けながら互いの瞳に酔い痴れている。
夜の妖しい雰囲気に導かれるように、やがて2人はバーを後にし、巨大なベッドが待つホテルの客室へと入っていった。
男は自らのジャケットを脱ぎ捨てると、女のドレスを肌蹴させた。
2人は互いに強く抱きしめ合いながら、ベッドの海へと共にダイブした。
男の身体は欲望のままに揺れる。
女の身体も快楽のままに揺れる。
2人の本能にベッドが音を立てて揺れる。
数時間の愛の末、果てた男女の間に沈黙が流れる。
折り重なりながら心地よい充実感に浸る男と女。そして――。
暫くすると、徐に女の方がムクッと上半身を起こし、ベッドから立ち上がった。
彼女の美しい裸体に見惚れながら、男がどうしたのかと尋ねると、女は床に落ちていた自分のショルダーバッグを拾い上げた。
彼女はバッグを開けながら男に告げた。
「ねえ、あなたにとっての愛の終着点って何かしら?」
唐突な質問の意味がわからず、首を傾げる男。
すると女はバッグから取り出した機械仕掛けの装置を腰に当て身につけた。
彼女の裸体に装着された見たこともないシロモノに、男が驚きの表情を浮かべる中、女は続けてあるモノを取り出した。
それはイチゴの果実が描かれた錠前の形をしていた。
女はそれを解錠させると、一言そっと呟いた。
「変身……」
女は姿を変え、男の前には赤い忍のような鎧の戦士が現れた。
女の忍――つまりはくノ一だ。
慄く男に、くノ一はさらに言葉を投げ掛ける。
「いつまでも初恋のような気持ちで一緒にいること? 子を作り、幸せな家庭を築くこと? それとも……。男も色々いるし、理想も色々あるけど、あなたは恋をして何がしたいのかしら?」
くノ一の仮面の奥からは、女の声が変わらずに聞こえてくる。
そしてその手には、イチゴを模したクナイ型の武器が1本握り締められていた。
くノ一はクナイを胸の前に構えると、
「最後に教えてあげる。私にとっての愛の終着点、それは……死」
刹那、クナイは宙を舞い、男の裸の胸板に食い込んだ。
皮膚を貫き、心臓を破り、背中を貫通して男の背後の壁に突き刺さった。
悲鳴を上げる間もなく、男は息絶えベッドの上に倒れた。
ベッドのシーツもクナイが刺さった壁も、男の血でベットリと赤く染まっていた。
勿論、くノ一の鎧も返り血を浴びて真っ赤に汚れてしまったが、元々赤い鎧に目立った変化は起きなかった。
仮面を滴る血を気にするでもなく、くノ一は1人になった部屋で呟き続けた。
「人は、死に到達することで他者の心に強く刻まれる。この世からいなくなることで、その愛は永遠になる……。あなたのこと、決して忘れはしない……。大好きだったわよ……」
くノ一は死体となった男に告白すると、まさに忍のように一瞬にして姿を消した。
部屋には壁に刺さったクナイが証のように残されていた。彼女がいたという確かな証のように。
次の日の朝、ホテルの前に3人の傭兵たちが現れた。
彼らは眼前の建物を見上げると、ゆっくりと足を運び、ホテルの中に入っていった。
フロントに話を通した後、3人の傭兵たちが訪れたのは、赤い血に染まった客室――殺人現場と化した一室だった。
部屋のベッドの上には、全裸の男の死体が変わらずに横たわり、壁にはイチゴのクナイが刺さったままになっている。
傭兵たちは辺りを見渡しながら部屋の状況を確認する。
「ヘイ! そっちはどうだ?」
床に散らばった女物のドレスや下着を拾い上げながら、傭兵の1人、アイザックが声を掛けた。
すると壁に刺さったクナイを眺めながら、もう1人の男、レイモンドが口を開いた。
「どうって……間違いないよね。“あの女”だよ、ここでブラッドパーティーを開いたのは……。そうだろ?」
「ああ。男の心臓が体内で消し飛んでる……。壁に残ってる
冷静な表情と慣れた手つきで、男の死体の胸に開いた風穴を覗き込んでいたサイスが、感心するように呟いた。
「なんだ? ブルってんのか、サイス! こんなもん俺たちにとっちゃ日常茶飯事じゃねえか!」
「別に怖気づいちゃいないよ、アイザック。ただ、やはりと言うべきか、結局“あの人”の手を煩わせることになるなと思ってね!」
アイザックの言葉に、サイスはやれやれと肩を落とした。
「構わないんじゃないか、本人も好きでやっているんだ。戦闘もケーキ作りも同じことなのさ、凰蓮隊長にとっては」
2人の会話を聴いていたレイモンドが、そう言いながら振り向いた。
「確かにね。それにアーマードライダーに対抗できるのはアーマードライダーだけ。我々だけでは手に負えないのも事実だ。悔しいけど……」
「だったらどうすんだ? このまま尻尾を巻いて退散すんのか?」
「いや、ターゲットの追跡はこのまま継続する。我々にできることは最後まで成し遂げよう。それがミスター凰蓮から学んだ志だろ!」
「そうかよ! 俺様はテメエらみたいなお利口さんじゃねえからな、んなモンとっくに覚えちゃいねえよ! ……しかしどうする? 追っかけるケツは1つじゃねえだろ?」
「アイザックの言うとおりだ。そもそも最初に追っていたのは“あの女”ではなく、“例の少年”だったはずだ」
そう言ってレイモンドが服の胸ポケットから取り出したのは1枚の写真だった。
その写真には、13歳ぐらいの黒髪の少年が写っていた。
☆
タイ・バンコクの街中にある今は使われていない廃屋と化した雑居ビル。その中に1人のネオ・オーバーロードと1人の人間の姿があった。
ネオ・オーバーロードの方は、鳥の特徴を持った赤い怪人――少し前に噴水がある公園でオーズと一戦交えたばかりのジャベリャだ。
対する人間の方は、詰襟の白いスーツに身を包んだ男――財団Xの使者、名をクライという。
クライは顔に掛けた眼鏡を指先でクイッと上げると、不機嫌そうに佇むジャベリャに向かって呆れながら口を開いた。
「――それにしても情けないですね。貴方とあろう者が未だに成果を出せないとは。それでもネオ・オーバーロードですか?」
「……何が言いてぇんだ? てめえ……」
その態度に苛立ちを感じたジャベリャは、まるで無機物のように立っているクライの顔をキッと睨みつけた。
「貴方が口ばかりの役立たずだと言っているんですよ。貴方がやるべきこと、任務の概要はその頭でしっかりと理解できていますか? 遺跡に封印されていた漆黒のメダルの回収、そして、オーズが所持する全コアメダルの強奪。その2つが、貴方に与えられた必要最低限の使命のはず。ところがどうでしょう、漆黒のメダルもオーズのコアメダル全種も、どちらも今ここには無い。何1つ達成できていないじゃないですか」
淡々と喋るクライに対し、ジャベリャの怒りのボルテージが着々と高まっていく。
「それだけではありませんよ。貴方に貸し与えた我々の試作体、それすらも貴方はまともに有効活用できていない。おかげでろくに実戦データを得ることもできず、それどころか破損させてメンテナンスに出してばかり……。これではいつまで経っても正式投入させることができない」
「試作体……、あのグリードどものことか……。奴らの今の飼い主はこの俺だ! 奴らをどうしてしまおうと俺の自由だろうが!」
「勘違いされては困りますよ。メズールとガメル、あの2体のレプリカは新たなアプローチから造り上げたニュータイプ。その動作テストを行なうための環境として、貴方が選ばれたに過ぎない。そしてアレらをぞんざいに扱うことは、それはつまり、我が上司の崇高なる目的の妨害を意味します」
「崇高な目的? てめえのバックにいるお偉いさんが一体何を考えてるって?」
「それは貴方には関係ないこと。ただこれだけは忘れないでください。貴方たちネオ・オーバーロードも、我々組織にとっては数ある出資対象のうちの1つだ。付き合い方を誤れば、援助を断ち切られかねませんよ? 当然それは、そちらの上司にとっても望むことではないでしょうし、貴方も上からの信用を失いたくないでしょう」
「ふんっ! どうかな。あいにく俺は、シェグロンが指揮するこの計画とやらに大して興味はねえ。仲間を増やすとかネオ・オーバーロードの社会を造るとか……くだらねえ! そもそもネオ・オーバーロードって名前すら俺は気にいらねえんだよ! んな名前じゃねえ! 俺たちは――」
「言わなくて結構! それは今の会話に必要のないこと!」
ジャベリャが思わず叫ぼうとした瞬間、遮るようにクライは言葉を被せた。
「話を元に戻しましょう。とにかく、グリードに関しては成果の出るように扱ってください。互いのビジネスのためにも。あと3時間もすれば、ガメルの修復も完了します。それまでは、別行動しているメズールが上手く動いてくれていることでしょう。貴方は彼女に合流した後、その後に好きに暴れ回れば良い。ただし、ノルマはきっちりと、お願いしますよ」
「偉そうに言うんじゃねえ! オーズも鳥野郎も、あのムカつくツラした女の魔法使いも、俺が必ずぶっ潰す! その後で、てめえも消し炭にしてやるから待ってな!」
「構いませんよ、やってみてください。できるものなら……。ただし、私は燃えづらいので悪しからず」
「は? なに言ってんだか……。とにかく、俺が全部終わらせるまで待ってろ! てめえはその後だ!」
そう叫んでクライに背を向けると、ジャベリャは背中に炎の両翼を出現させ、コンクリートの壁を突き破って外へ飛び出していった。
「やれやれ……。やはり非人間とのビジネスは効率が悪い……」
廃屋の中に1人残ったクライは、やれやれと溜息をつきながら、白いスーツのポケットから携帯電話を取り出してそれを耳に当てた。
「……――私です。“例のドライバー”の開発状況はどうなってます? もしかしたら完成を急いだ方がいいかもしれませんよ。彼らネオ・オーバーロードは、我々の手には余る存在のようだ……」
☆
美女と少女は初めて対面した。
スラッと細長い白い手と、紅葉のように小さい日に焼けた手が優しく触れ合い、そして重なり合った。
「はじめまして、私は稲森真由。あなたの名前を聞かせてくれる?」
少し怯えた表情でオドオドしているクァンの手を、その手でそっと包みながら、真由は微笑んだ。
クァンは時々傍にいる映司や坂島の表情を窺いながらも、勇気を振り絞って自己紹介をした。
「えっと……あの……、クァン。あたし……クァン」
「そう。クァンと言うのね。これからは私もあなたのこと守るから。ここにいるお兄さん達と一緒に」
「いっしょ? おねえちゃんも、いっしょにいてくれるの?」
「うん、傍にいるよ。クァンが良いって言ってくれるなら」
「いい! いいよ! いっしょにいてっ!」
真由の優しい笑顔に警戒が解けたのか、クァンは子供らしく無邪気に真由に飛びついた。
「よろしくね、クァン」
真由は少女の小さな身体を受け止めると、まるで母親のようにギュッと抱きしめた。
その様子を、映司と坂島は微笑ましく見守っていた。
宿泊しているホテルの屋上で、アンクは1人空を眺めていた。
何度も目にしている見慣れた青い空。
しかしアンクにとって、今目の前に広がるこの空は自分の知っている空とは違うものだった。
見た目は全くと言って良いほど一緒なのに。
客室で映司たちが用事を済ませている間、アンクはただひたすら、とにかく空だけを見続ける。
時間を忘れて、何かに思いを馳せるように、流れる雲をゆっくりと目で追いかける。
ところがそこに、突然邪魔者が現れた。
見つめる雲を遮るように、大きな丸いシルエットが視界に覆い被さってきたのだ。
「なっ!? こいつは……」
アンクは思わず眼を見開いた。
そこにいたのは半透明の体に無数の触手を垂れ下げたクラゲ型の怪物――クラゲヤミーだった。
プカプカと宙に浮いている不気味なそれを認識した瞬間、アンクは反射的に異形の右腕から火球を発射した。
攻撃が直撃すると、全身に燃え広がった炎に包まれ、クラゲヤミーは蒸発するように消滅した。
黒煙の中から銀色のセルメダルが数枚、音を立てて足元に落ちた。
アンクはそれを拾おうとしたが、不意に感じた殺気にその手を止める。
再び頭上を見上げると、いつの間にか数え切れないほどのクラゲヤミーの大群に、青空は埋め尽くされていた。
「このジメジメした気配……、こいつらの出所はあの女グリードか……」
アンクは大至急映司に連絡を取るべく、坂島から通信用にと事前に受け取っていたバッタカンドロイドを起動させた。
「映司! すぐに屋上に来い! ヤミーだ!」
バッタカンドロイドからの知らせを受けて、映司は急いでホテルの屋上へと駆けつけた。
その後ろから、少し遅れて真由とクァン、そして坂島も姿を見せる。
映司たちが到着するまでの間に、アンクは既に数体ものクラゲヤミーを撃ち落していた。しかし、
「気をつけろ、映司! こいつら、倒しても倒してもキリがない! しかも生半可な攻撃じゃ逆に数が増えるぞ!」
「ああ、知ってる! このヤミーとは前に戦ったことがあるから!」
映司は得意げにオーズドライバーを腰に装着すると、3枚の赤いコアメダルを装填した。
「前は結構苦戦したけど、今度はコンボで一気に片付ける! ……変身!」
『タカ! クジャク! コンドル! タァージャードルゥー!』
真っ赤な炎のオーラに包まれて、映司はオーズ・タジャドルコンボへと姿を変えた。
タジャドルコンボは鳥系のメダルを揃えることで発現する空中戦に特化したコンボ。アンクの存在を形作るためにも必要な3種類の赤いコアメダルを使用していることもあり、映司にとっても特別な姿である。
オーズは背中に展開させた翼を大きく広げると、クジャクの羽根を模した無数の光弾を出現させ、一斉にそれを発射した。
放たれたクジャクの羽根は次々と周辺のクラゲヤミーを撃破していく。
「アンクと真由ちゃんはクァンと坂島さんのことをお願い! 俺は他のヤミーを!」
両翼を広げ、飛び立とうとするオーズ。
そこへアンクが咄嗟に声を掛けて引き止める。
「待て映司! こいつも持っていけ!」
そう言ってアンクがオーズに投げ渡したのは3枚のコアメダル。
セイウチの姿が描かれた灰色のメダル、シロクマの姿が描かれた白いメダル、ペンギンの姿が描かれた青のメダルだった。
「アンク、これ……」
「もしもの時はそいつを使え!」
「……わかった。ありがとう!」
受け取った3枚の未知のコアメダルに一瞬と惑いつつも、感謝の言葉を述べたオーズは、気を取り直して手摺を飛び越え、空へ舞い上がっていった。
離れていくオーズの背中を見送ったアンクは、改めて鋭い視線を周囲に向けた。
「気をつけてください! また来ますよ!」
クァンと坂島を背後に隠し、再び集まりつつある無数のクラゲヤミーに警戒しながら真由が言う。
「ふん! 頼むから邪魔だけはするなよ!」
異形の右腕に炎を集中させながら、アンクはほくそ笑むように言葉を返した。
☆
上空を華麗に舞いながら、オーズ・タジャドルコンボは無数のクラゲヤミーを連続で倒していく。
左腕に装着された手甲型の武器――タジャスピナーから火炎弾を連射させながら、ビルの谷間をすり抜け、降下して道路に並ぶ車の頭上を飛翔し、標識の下を潜り抜ける。
左右から同時に襲い掛かる半透明の触手を炎で焼き尽くし、コンドルレッグの爪脚で触手の本体を切り裂いた。
しかし、倒しても倒しても敵の数はなかなか減らない。
オーズはオーズドライバーから抜き取った3枚の赤いコアメダルと、事前にアンクから返してもらっていた黄色いライオンのコアメダルをタジャスピナーに装填した。
右腰からオースキャナーを引き抜き、タジャスピナーの中のメダルを連続でスキャンしていく。
『タカ! クジャク! コンドル! ライオン! ギン! ギン! ギガスキャン!』
全身に真っ赤な炎を纏ったオーズは再び大空に急上昇し、バンコクの街を照らす灼熱の太陽光を吸収。炎の勢いが増したオーズは巨大な火の鳥となり突撃し、無数のクラゲヤミーたちを次々と飲み込んでいった。
高温の熱に包まれたクラゲヤミーたちは、その炎の中で蒸発し消滅していく。
☆
空中を舞い踊るように滑空しながら、大量発生した人面クラゲを消滅させていく巨大な火の鳥。
そんな中、その様子を路上の片隅で、まるで見物人のように眺める1人の大男の姿があった。
人面クラゲ――クラゲヤミーの出現に逃げ惑う人々に紛れながらも、筋骨隆々のその男は、顔色一つ変えずに、上空の火の鳥の動きをただひたすら静かに目で追いかけていた。
時々その巨漢の図体に逃走する人たちが思わずぶつかることがあっても、大男は特に気にすることなく、夢中になって上空を見上げ続けた。
そのうち、大男が所持するスマートフォンがブルブルと振動を立て始めた。
大男は視線を上空に向けたまま、スマートフォンを耳の傍へと持っていった。
スピーカーから聴こえてきたのは1人の女性の声だった。
すると、
「……――お前か。何の用だ? こっちは今お楽しみ中なんだがな……」
電話の向こうにいるであろう女に水を差されたことが気に入らなかったのか、大男は不機嫌そうな声で呟いた。
『あら、奇遇じゃない。私もよ」
それに対し、女の声は少し高めのテンションをしている。
「お前の言う楽しみはいつもの“アレ”だろ?」
大男はやれやれと呆れたように尋ねた。
『フフッ…ハズレ。それはもう終わってるわ。今は別のことで楽しんでるの』
「どうでもいいさ。お前はお前で好きなことをすれば良い。俺も俺で、自由にやらせてもらう」
『相変わらず冷たい言い方するのね。別に良いけど……。それより訊きたいんだけど、私の坊や、そっちに行ってたりする?」
「……いや。あのガキなら一足先に日本へ向かったはずだが? あいつは俺やお前のお遊びに付き合うつもりなどないのだろう。可愛げのないガキだ……」
『あら、そんなことないわよ。それにあの子のおかげで得をしているのも確かでしょ? 私も、あなたも……』
「……ああ、まあな」
『きっと今度も、素敵な品を見つけ出してくれるはずよ。それがあの子の才能だもの』
「だと良いがな……」
『それで? 坊やが向かった場所、日本の……なんて言ったかしら?』
女がそう尋ねると、大男は一瞬考えてから口を開いて答えた。
「ああ、街の名前は……沢芽市だ」
☆
タジャドルコンボの炎に焼き尽くされ、オーズの眼に映っていた周囲のクラゲヤミーたちは全滅した。
全身に纏っていた鳥型の炎が消え、姿を露にしたオーズは一息つこうと適当なビルの屋上に着地した。
「ふぅ……。さすがにちょっと多かったな……。でもあれだけのヤミー、一体何処から……?」
若干草臥れたように僅かに息を切らしながら、オーズは改めて周囲を見回した。
見る限り、クラゲヤミーの生き残りの姿は見当たらないが。全て倒した、と、思っても良いのだろうか。
判断に迷うオーズだったが、するとそこへ、
「残念! 安心するのはまだ早いわよ! オーズの坊や!」
突然何処からか飛んで来た、全身を液状に変えたグリードのメズールが、オーズの身体に突進を仕掛けてきた。
不意を衝かれたオーズはバランスを崩し、陽の光に照らされた屋上のコンクリートの上をゴロゴロと転がった。
「メズール!?」
顔を上げた途端、その眼に飛び込んできた女怪人の姿に、オーズは驚きの声を上げた。
メズールは液状化を解除し、実体化すると妖艶な視線でオーズを見下ろす。
「私の可愛いヤミーたちを随分と減らしてくれたじゃない! でもこれで終わりじゃないわよ! マスターのためにも、あなたをここで始末する!」
マスター? ネオ・オーバーロードのジャベリャのことか。
メズールの相変わらずの忠誠的な言葉に、やはり拭えぬ違和感を感じてしまうオーズ。
しかしそうしている間に、メズールは前方に突き出した掌から凄まじい勢いの水流を放出させた。
「ヤバイ!」
間一髪、オーズは横転してそれを回避する。
狙いを外した水流は、代わりに直前までオーズが寝転んでいたコンクリートを大きく抉り飛ばした。
「逃がさないわよ!」
休む間もなく、メズールの手から2発目が放たれる。
オーズはすかさず左腕のタジャスピナーから火炎を発射させた。
オーズとメズールの間で炎と水が激しくぶつかり合う。
相殺した瞬間、爆発したような勢いで噴出した水蒸気に、オーズは視界を遮られ、一瞬メズールの姿を見失ってしまう。
オーズが再びメズールの姿を捕捉しようとするも、それよりも先に動き出したメズールがオーズに迫る。
全身を再度液状化させたメズールはオーズの身体に絡みつき拘束し、自由を奪ったまま、オーズ諸共屋上から空中に身を投げ出した。
このままでは落下して地上に激突してしまう。
オーズが背中の翼を展開して激突を回避しようとするも、液状化したメズールに封じられてそれも叶わない。
結局、成す術無くオーズは地上のアスファルトの上に叩きつけられてしまった。
凄まじい衝撃。そして吹き上がる砂埃。ひび割れた地面の上で、オーズはゆっくりと起き上がる。
「いったぁ……。変身してなかったら絶対死んでたよな、これ……」
全身に広がる痛みと息苦しさを痛感しながら、さっきまで立っていたビルの屋上を見上げるオーズ。
もし生身の姿で落ちていたら今頃……。メダルの力で強化された肉体であること、“オーズ”でいられることに改めてありがたみを感じる映司だった。
「なかなかしぶといじゃない? オーズの坊や!」
背後から艶のある声が聞こえてきた。
いつの間にかメズールはオーズの身体を離れ、液状化も解いていた。
佇むメズールに、オーズは視線を向ける。
「メズール……」
「でも次はどうかしら? 私のヤミーの本当の力、思い知らせてあげるわ!」
そう言って、メズールは指をパチンと鳴らした。
すると、今までどうやって潜んでいたのか、周囲のビルの陰や車の中、マンホールの下から、新たなクラゲヤミーが次々と溢れ出てきたのだ。
「まだこんなにヤミーが……」
あっという間に視界を埋め尽くした夥しい数のクラゲヤミーの大群に、オーズは思わず戦慄した。
しかし、出現したクラゲヤミーたちはオーズに襲い掛かることもなく、ユラユラと浮遊しながら一箇所に集まっていく。
オーズが息を呑みながら見守る中、上空に集結した大量のクラゲヤミーたちは、その肉体を一旦無数のセルメダルに変換し、一塊になってから再び実体化を始めた。
幾つものセルメダルの塊は一つにまとまり、1匹の巨大なクラゲヤミーへと姿を変えたのだ。
その様子に、オーズは思わずかつて戦ったピラニアヤミーのことを思い出す。
ピラニアヤミーもまた、メズールが生み出した水棲系のヤミーの一種であり、今回のクラゲヤミーと同じように群れで行動するタイプだった。
オーズ・ガタキリバコンボとの戦いの中で、追い詰められたピラニアヤミーの大群は、最後の手段として合体を果たし、巨大ピラニアヤミーへと変化した。
結局、巨大ピラニアヤミーは50人に分身したオーズの集団戦術に敗れ去ったが、今回のケースは、あの時のことを嫌でも連想させるものだった。
「またか……」
上空に浮かぶ巨大クラゲヤミーを見上げながら、オーズはうんざりしたように呟いた。
「さあ! オーズの坊やを潰して奪うのよ! 黒いメダルと、彼の持つ大量のコアメダルを!」
メズールの指示に従うように、不気味な巨大クラゲヤミーは電気を纏った自らの長い触手をオーズ目掛けて振り下ろした。
オーズは背中の両翼を展開すると、素早く地面を蹴って宙を舞い、触手の一撃を回避した。しかし、
「逃がさないわよ!」
直後にメズールが片腕を掲げると、掌から勢い良く伸び出した植物の蔦がオーズの足に絡みついた。
蔦に引っ張られ、空中で急激に失速するオーズ。
次の瞬間、頭上から振り下ろされた2本目の触手が、オーズをあっさりと地面に叩き落した。
それはまるでハエ叩きに落とされる1頭のハエのような有様だった。
再びアスファルトの上に叩きつけられたオーズは、またもや全身を襲う痛みと息苦しさに耐えながら、なんとか立ち上がる。が……。
ヨロヨロとよろめく隙だらけのオーズ目掛けて、メズールは強力な一撃を放った。
大砲のような勢いで発射された水流がオーズに直撃し、同時にオーズドライバーにセットされていた3枚の赤いコアメダルを弾き飛ばした。
強制的に変身を解除された映司が地面に倒れこむ一方で、バラバラに宙を舞う3枚のコアメダルのうちの1枚がメズールの手にキャッチされた。
メズールが握り締めたのはコンドルのコアメダル。
残ったタカとクジャクのコアメダルは、幸いにも映司の前で音を立てて転がり落ちた。
映司はこれ以上奪われまいと、慌ててその腕を伸ばして2枚のメダルを確保した。
「抵抗しても無駄よ! 残りも全部寄越しなさい!」
メズールはまるで拳銃を突きつけて脅迫するかのように片腕を掲げ、ジリジリと映司に歩み寄る。
映司はゆっくりと後退りしながら、何とか間合いを保とうとするが、上空には巨大クラゲヤミーもいる。
凄まじい威圧感に襲われ、堪らず映司の頬に冷や汗が伝うが、そんな状況でも、映司は冷静さを失っているわけではなかった。
戦う力はまだ手元にある。
コンドルメダルを奪われ、タジャドルコンボにはなれなくなった。
チーターメダルと3枚の青いメダルも依然敵の手中にあり、ラトラーターコンボとシャウタコンボにも変身は不可能のまま。しかしそれでも、まだなれるコンボは残っているし、アンクが託してくれた未知のコアメダルもある。勝負に敗北したつもりなど、全く無い。
「まだまだ余裕……。諦めるには早すぎるでしょ!」
映司は自分に言い聞かせるように叫ぶと、新たに3枚のコアメダルを指に挟んだ。
それは戦いの直前にアンクから預かった3色のコアメダル。
灰色のセイウチメダル、白のシロクマメダル、そして青のペンギンメダルだった。
映司はそれら3枚のコアメダルを同時にオーズドライバーに装填し、右腰のオースキャナーを引き抜いた。
そして叫んだ、再びあの言葉を。
「変身!」
次の瞬間、映司はメダル型のオーラに包まれて新たなコンボ形態に姿を変えた。
『セイウチ! シロクマ! ペンギン! セイ・シロギンー! セイ・シロギンー!』
初耳のコンボソングをバックに、その場に現れたのはオーズの新形態――オーズ・セイシロギンコンボ。
セイウチの頭部にシロクマの両腕、ペンギンの脚を具えた氷属性のコンボだ。
初めての姿に新鮮さを感じながら、オーズはその第一印象を口にした。
「あ! 暑くない……。寧ろ涼しい……」
それが最初の感想だった。
全身に冷気を纏っている今のオーズにとって、タイの暑さなど最早取るに足りないもの。
それよりも今は、眼前の脅威を何とかすることが先決だ。
オーズは地上に立つメズールと上空に浮かぶ巨大クラゲヤミーに警戒しながら、両腕のシロクマアームを構えた。
「なによそれ。知らされている情報には無い姿だけど……。まあいいわ、全部まとめて奪ってあげる! やりなさい!」
メズールが指示を出すと、巨大クラゲヤミーは1本の触手をオーズに向かって振り下ろした。
さっきと同じようにオーズを叩き潰すつもりのようだ。
しかしオーズが、そうはいくかと片腕のシロクマアームを一振りすると、その爪に引っ掻かれた触手は刹那に凍りついてしまった。
先端から付け根まで氷に包まれた1本の触手は、次の瞬間、重さに耐え切れず音を立てながらバラバラ砕け落ちていった。
触手を1本失った巨大クラゲヤミーは、まるで憤怒したように別の触手を次々に振り下ろしていく。
対するオーズは、負けじと触手の動きに合わせて両腕を振るい、相手の攻撃を連打で弾いていく。
シロクマアームの爪に触れたものはどんなものでも氷結させることができる。
氷づけになった触手が次から次へと砕け落ち、巨大クラゲヤミーの手数は文字通り減る一方だった。
その様を見ていられないと思ったメズールは、助太刀しようとオーズに横槍を仕掛けた。
全身を液状に変えて、オーズ目掛けて突っ込んでいく。
しかし、メズールがオーズに辿り着くよりも先に、オーズは両掌から竜巻状の吹雪を放った。
視界を遮る真っ白い吹雪に飲み込まれたメズールは、悲鳴を上げる間もなく全身が凍りついてしまった。
時間が止まったかのようにその場で動かなくなったメズールを尻目に、オーズは改めて巨大クラゲヤミーの方に姿勢を向ける。
右腰からオースキャナーを抜き取り、ドライバーの中の3枚のコアメダルを連続でスキャンする。
『スキャニングチャージ!』
メダルの力を最大限に解放したオーズは、巨大クラゲヤミーにとどめを刺すべく走り出す。
周囲の冷気が集まって固まり、巨大クラゲヤミーを囲い込むように螺旋状の氷の道が生成されていく。
オーズは両足のペンギンレッグの力で螺旋状の氷道を滑るように駆け上がっていく。
その際、同時にシロクマアームの爪を巨大クラゲヤミーの肉体に突き刺し、その身を引っ搔いていく。
シロクマアームの爪に触れたものは、どんなものでも氷結される。その言葉通り、爪痕からは強力な冷気が噴出し、巨大クラゲヤミーの全身は見る見る氷に覆われていく。
螺旋状の氷道を全て上りきり、オーズが巨大クラゲヤミーの天辺に辿り着いた頃には、既に巨大クラゲヤミーはただ大きいだけの氷像に成り果てていた。
最後の一撃と言わんばかりにオーズは右手に拳を作ると、足場となっている巨大クラゲヤミーの頭部に、渾身の力を込めた一発のパンチを叩き込んだ。
「はぁあああー……せいやぁあああああ!」
それはまるで瓦割りのような様であったが、拳を打ち込まれ、亀裂の入った巨大クラゲヤミーの身体はまさにその瓦の如くバラバラに崩壊した。
天井から落下したシャンデリアのように、ガラス音に似た騒音が周りに響き渡る中、オーズは軽やかに地上に着地した。
巨大クラゲヤミーは撃破した。しかし、安堵する間もなく、オーズの赤い複眼には次の標的の姿がしっかりと映りこんでいた。
氷づけになり、身動きが取れない状態でその場に放置されているのはグリードのメズール。
抵抗してこない相手に、一方的に手を出すのは何だか気が引ける感じもするが、このままにしておく訳にもいかない。
オーズはグッと気持ちを割り切りると、もう一度拳を振り上げた。
この一撃を打てば、氷の中のメズールは木っ端微塵に砕け散るだろう。
メズールがいなくなれば、きっとガメルが怒るかもしれない。手がつけられないほどに暴れだすかもしれない。そんな想像を脳裏に過らせながらも、オーズは拳を前に打ち出した。
しかし、拳が標的を叩き割るよりも先に、予想外の異変が起こった。
突然、メズールの氷像にビキビキと幾つもの亀裂が走り出し、そこから真っ赤な炎が噴出してきたのだ。
オーズは慌てて拳を止め、警戒するように背後に後退した。
「なんだ!?」
驚くオーズを余所に、氷像は内側から爆発するように崩壊した。中から現れた炎は人型のシルエットに変化すると、やがて見覚えのある姿に実体化した。
それは紛れもない、メズールだった。
肉体を液状化させるのが固有能力だったはずのメズールが、今度は全身を炎に変えて復活を遂げたのだ。
「水を使うメズールが炎を……? なにがどうなって……」
戸惑うオーズだったが、そういえばと、あることを思い出した。
コンドルメダル。
そう、ついさっき、タジャドルコンボの姿でメズールの強力な一撃を受けてしまった時に、オーズドライバーから弾け飛んだコンドルのコアメダルが、メズールに奪われてしまっていた。恐らく、そのコンドルメダルを体内に……。
「取り込んだのか!? コンドルのメダルを……」
かつての戦いでも、グリードの一人であるカザリが、複数のコアメダルを取り込んでパワーアップしたことがある。
本来は風の属性を持っていたカザリが、ガメルやメズールのコアメダルを取り込んで、重力や水流を操る能力を体得していた。
その時と同じように、今度はメズールがコンドルメダルを取り込んで、炎の属性を手に入れていたとしたら……。
「偶然だったけど、思わぬ収穫だわ。まさかメダルを体内に入れることで、こんなにも力が満ち溢れるなんてね。これならあなたの氷にも負けはしないわ!」
メズールは新たに得た力を実感するように、掌に赤い火球を作り出すと、それをオーズ目掛けて投げ飛ばした。
オーズは咄嗟に両手の爪を地面に突き刺し、眼前に大きな氷の壁を生成した。
放たれた火球は氷の壁に激突し、刹那に発生した水蒸気が辺りに立ち籠め、視界を遮った。
真っ白になった視界の中で、オーズはすかさずセイウチヘッドの能力を発動させた。
セイシロギンコンボの頭部――セイウチヘッドの複眼には、視界不良の環境でも通常時と同様の視覚情報を読み取る能力がある。これは本来、寒冷地の吹雪の中でも正常に活動するためのものだが、こういう状況で敵を捕捉する際にも役に立つはず、だったのだが……。
周囲を覆う真っ白い水蒸気の中で、キョロキョロと辺りを見回すオーズ。しかし、いくら捜してもメズールの姿は既にそこにはいなかった。
ただ声だけが、メズールの艶のある声だけが辺りに響き、オーズの耳に届いていた。
「メダルの力が体に馴染むまで、少しの間見逃してあげる! でも次に会った時は、あなたの持っているメダル全てをもらうから! その時まで元気でね、オーズの坊や!」
どれだけ視界を確保することができても、相手の動きについていけなければ意味が無い。
メズールは最初から逃亡する算段で火球を放ったのだろう。
その突発的な行動に後れを取ってしまったことは、オーズにとって致命的なミスだった。
「しまった……。逃げられた……」
オーズは敗北感に駆られながら変身を解除した。
クラゲヤミーの対処には成功したが、貴重なコアメダル――しかもアンクのコンドルメダルを奪われた上に、それを使って敵に強化され逃げられてしまった。
こんな結果を報告すれば、きっとアンクは激怒して怒鳴り散らすだろう。
「はぁ~……。帰るの憂鬱だなぁ~……」
映司は重い足取りで、仲間の待つホテルへ一旦戻ることにした。
☆
『ああ、街の名前は……沢芽市だ』
「沢芽市?」
耳に当てるスマートフォンから聴こえてくる男の声に、女はなるほどと頷いた。
『事が済んでから、俺も足を運ぼうと思っている。お前はどうする?』
男の質問に、女は「そうねえ……」と少し考えると、ニヤッと笑みを浮かべてから返答を口にした。
「良いわ、私も付いて行く。坊やの顔も早く見たいしね」
『そうか。ならタイに来てくれ。バンコクで時間を潰して待ってる』
「了解。お楽しみに一区切りつけたら、すぐに合流するわ。……それじゃあね」
そう言って、女は通話を切った。
「さて、と……」
さっきから複数の気配を背中で感じていた女は、スマートフォンをポケットに仕舞いながら、ゆっくりと背後を振り返った。
ほぼ同時に、気配をチラつかせていた者たちが足早に駆け寄ってきた。
それらは3人の傭兵の男たちで、全員ハンドガンやライフルを構え、警戒しながらもジリジリと押し迫る勢いで近づいてきていた。
「ヘイッ! 女! そこを動くな!」
「ようやく追いついた! もう逃がしはしないよ!」
傭兵の男たち――アイザックとレイモンドが、女に銃口を向けながら叫んだ。
その隣で、仲間のサイスが通信機を使ってどこかに報告をしている。
「……目標の女を見つけました。場所は――」
何故か路地裏のとあるゴミ置き場の前に立っていた女は、武装した男たちに囲まれ、銃を向けられながらも、余裕の表情を崩さなかった。
「フフッ……。私を愛するために、わざわざ追ってきたのかしら?」
「あぁん!? 急に何言ってんだ!? 俺たちの行動が求愛行為にでも見えんのか!」
女の思わぬ発言に、アイザックは首を傾げながらも、ライフルを構える腕にさらに力を籠める。
「求められるのも嫌いじゃないわ。でも、その愛を受け入れる価値があるかどうかは私が判断する。あなたたちに、その覚悟はあるかしら?」
「……彼女の言っていること、理解できるか?」
「いや、さっぱりだ。というか、状況的にかみ合ってないだろ、これ……」
レイモンドとサイスも、女の言葉に困惑の表情を浮かべる。すると、
「私にとっては愛こそ全て。そしてその愛は死して完成する。あなたたちが殺すに値するかどうか、見極めてあげる!」
女はそう言うと、懐から機械仕掛けのベルトを取り出した。
「おいっ、あれは!」
「戦極ドライバー……」
「やはり……」
アイザックたち3人が驚く中、女は戦極ドライバーを腰に装着し、1つのロックシードを見せ付けた。
それには赤いイチゴが描かれており、女はそのロックシードを解錠した。
『イチゴ!』
異世界に繋がる小型の穴が頭上で口を開き、そこからイチゴの形をした鋼の果実が舞い降りてきた。
女はイチゴロックシードを戦極ドライバーに装填し、カッティングブレードに手を掛ける。そして――。
「変身!」
『ソイヤ! イチゴアームズ! シュシュッとスパァーク!』
女の身体が真っ黒いライドウェアに包まれると、変形したイチゴの鎧が装着される。
その姿は忍を模したアーマードライダー。
両手に出現したアームズウェポン――イチゴクナイを構えながら、女は名乗る。
「私の名前は、セルディア・フィギエ。でも今は、アーマードライダー……くノ一!」
―Count the medals―
仮面ライダーオーズ
コンドルのコアメダルを喪失。
タジャドルコンボ変身不能。
新たにセイウチ、シロクマ、ペンギンのコアメダルを獲得。
セイシロギンコンボに変身可能。
メズール
コンドルのコアメダルを獲得。
炎の力を得る。