仮面ライダー 鎧武&オーズfeat.ライダーズ ~暁の鎧~   作:裕ーKI

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第十話 番外編:もう1人の武神!20--

 過去から現代、そして未来。時間を繋ぐタイムトンネル。

 時の流れを司る、真っ直ぐと伸びる光の道の中を、2機の巨大なエアバイクが猛スピードで駆け抜けていく。

 それは未来の技術で開発された、時間跳躍を可能にさせるスーパーマシン――タイムマジーン。

 1機は黒を基調に、もう1機は赤を基調にしたボディカラーをしている。

 2機のタイムマジーンは、何かから逃走するように速度を上げ続けている。

 しかし、追跡してくる“ソレ”は、2機のタイムマジーンを上回るスピードで距離を縮めつつあった。

 それぞれのタイムマジーンの中には、1人ずつ搭乗者がいる。

 黒のタイムマジーンを操縦しているのは、将来、オーマジオウと呼ばれる魔王になることを約束されている時の王者――仮面ライダージオウ。

 赤のタイムマジーンを操縦しているのは、オーマジオウを倒し、未来に平和をもたらす救世主となる可能性を秘めた戦士――仮面ライダーゲイツ。

 2人は敵同士でありながらも、今では時空を超えた友情で結ばれた戦友同士として、同じ時を過ごしている。

 

「まずいな……。このままでは追いつかれるぞ!」

 

 タイムマジーンと同様に赤い姿をしているゲイツは、時々背後を確認しながら、操縦桿を握る手に力を籠める。

 

「どうすんの、ゲイツ! 適当な時間に降りて迎え撃った方が良くない?」

 

 黒のタイムマジーンを操りながら、若々しい声でジオウが叫ぶ。

 

「無理だ! こんな状況じゃあ、安全に時空転移などできない!」

 

 モニター越しに慌しい2人。

 そこへ背後から飛んで来た数発の火炎弾が、2機のタイムマジーンを激しく揺らした。

 

「くっ……! 奴め、撃ってきたか……」

「ちょっ!? ヤバイって!」

 

 たじろぐゲイツとジオウ。

 すると、

 

「どうした? 反撃してこないところを見ると、戦う意思は無いということか?」

 

 背後から追跡してくる巨体から、男の声が聞こえてきた。

 2人にとって聞き覚えのあるその声に、ジオウとゲイツは戦慄する。

 

「スウォルツ……!」

 

 ジオウとゲイツのタイムマジーンを追跡するもの。それもまた同じくタイムマジーンだったが、声の主――タイムジャッカーのスウォルツが搭乗しているそれは、鏡の世界に存在する赤き龍――ドラグレッダーを模した戦闘特化型の機体だった。

 

「だが、意見は求めん! ウールやオーラに代わって、この俺が直々に息の根を止めてやろう!」

 

 龍の口から次々と吐き出される火炎弾の嵐に、2機のタイムマジーンは逃げ惑うばかりだ。

 

「仕方ない! 逃げに徹するのは性に合わん! 反撃するぞ!」

「オッケェー! 行くよ、ゲイツ!」

 

 反撃を決意したジオウとゲイツは、タイムマジーンの向きを急反転させ、スウォルツの龍型のタイムマジーンと対面すると同時にレーザー砲を発射した。

 眩く光る数発の光線が直撃し、スウォルツのドラグレッダー型のタイムマジーンが爆炎に包まれていく。

 相手に隙を与えぬよう、2機のタイムマジーンは途切れることなくレーザー砲を連射し、敵の動きを封じようと試みる。

 しかし、ジオウとゲイツの思惑とは裏腹に、立ち籠める黒煙の中から赤き機械龍が顔を出した。

 レーザーの雨をものともせずに、うねるような動きで迫ってきたドラグレッダー型のタイムマジーンは、その巨体でジオウのタイムマジーンを突き飛ばすと、今度はゲイツのタイムマジーンの機体にぐるりと巻きついた。

 ギリギリと締め付けられる赤い機体のあちこちからは軋む音が聞こえ、コクピットでは危険知らせる警告音がうるさく鳴り響いていた。

 

「くそっ……。マシンごと俺を絞め殺すつもりか……」

 

 仮面の下で冷や汗を流しながらも、なんとかこの危機から抜け出そうと抵抗を見せるゲイツだったが、左右の操縦桿は重く、赤のタイムマジーンは完全に身動きが取れない状況となっていた。

 

「どうする? 常磐ソウゴ! このまま友を見殺しにするのか?」

 

 ドラグレッダー型のタイムマジーンの中で、スウォルツは笑いながら言い放つ。

 

「そんな訳ないだろ! ……ゲイツ、すぐに助けるから!」

 

 ジオウはそう叫ぶと、自らのタイムマジーンを変形させながら、歴代の平成ライダーの歴史が込められた時計型のアイテム――ライドウォッチをその手に握り締めた。

 

『クウガ!』

 

 ジオウが起動させたのは、2000年に活躍した最初の平成ライダー――仮面ライダークウガのライドウォッチだ。

 人型に変形後、頭部ユニットがクウガのものへと換装し、黒のタイムマジーンはクウガモードにチェンジした。

 

『フィニッシュターイム! クウガ! マイティタイムブレーク!』

 

 ジオウが操るタイムマジーン・クウガモードは、青く輝くタイムトンネルの壁を蹴り込み、勢いをつけると、その巨体で宙返りを決め、そのまま右足を突き出してマイティキックを思わせる飛び蹴りを叩き込んだ。

 炎を纏った鋼の右足が、ゲイツのタイムマジーンを巻き込んでドラグレッダー型のタイムマジーンに直撃。

 赤き機械龍は、古代文字の紋章が浮かび上がる必殺キックとタイムトンネルの壁面に挟まれた。

 機体全体から激しく火花を散らしつつも、しかしそれでも、機械龍はゲイツのタイムマジーンから離れようとはしない。

 やがて、スウォルツとゲイツの2機のタイムマジーンがめり込む青い壁に亀裂が走った。

 キックの力に押される2機の機体に圧迫され、ガラスが割れるように、タイムトンネルの壁に穴が開いたのだ。

 次の瞬間、スウォルツ、ゲイツ、そしてジオウの3機のタイムマジーンは穴の中に吸い込まれ、タイムトンネルから姿を消した。

 

 

 時空転移システムの誤作動により辿り着いたのは、とある時代、とある時間、とある場所の海上の空だった。

 太陽の光が照り付ける、雲1つない快晴の青空に穴が開き、そこから3機のマシンが吹き飛ぶように飛び出してきた。

 赤き機械龍は水面に叩きつけられ、海中へと沈んでいった。

 解放されたゲイツとジオウのタイムマジーンは、海に突っ込む直前に空中で急ブレーキをかけて難を逃れた。

 

「バカ! ジオウ! 俺ごと蹴ってどうする! もう少しで奴と一緒に海に沈むとこだったぞ!」

「ごめん! でも助かったんだから良いでしょ!」

「良くない! 貴様、やっぱり前に俺が命を狙ったことを根に持ってるんだろ!」

「持ってないって! あんまり被害妄想なんてするもんじゃないよ、ゲイツ!」

「被害妄想だと!?」

「まあまあ! それより、ここってどこなの? 何処の時代?」

「……さあな。無理やり時空を超えたせいか、システムが正常に機能していない。一度着陸して、再起動させた方が良いか……」

 

 ゲイツがモニターを開き、システムを一通りチェックしてみるが、表示されたステータスの所々がノイズで乱れ、どうやらフリーズしているようだった。

 辿り着いた場所と時間が何処だか確認できず、困惑するジオウ。

 すると突然、波に揺れる海面が不自然に盛り上がり、そこから機械龍が再び顔を出した。

 

「うわっ!? また出た!」

 

 噛みつかれそうになり、慌てて機体を急上昇させて回避するジオウとゲイツ。

 そうしている間に、ドラグレッダー型のタイムマジーンは海から脱出し、その姿を現した。

 

「なにを勝った気でいる! 本番はこれからだぞ!」

 

 コクピット内のスウォルツが、左右の操縦桿を押し込み、自らのタイムマジーンを変形させた。

 赤き機械龍――ドラグレッダー型のタイムマジーンは、そのフォルムを一回り大きく変え、烈火龍ドラグランザーを思わせる姿となった。

 

「マシンが変身した!?」

「チッ……厄介だな! ……おい、ジオウ! 場所を変えるぞ!」

「えっ!? 場所!?」

「海の上では思うように動けん! 少し離れた所に埠頭が見えた! あそこまで飛ぶぞ!」

「わ、わかったぁ!」

 

 ジオウとゲイツの2機のタイムマジーンは、エアバイク型のビークルモードで加速すると、モニター越しに小さく見える陸地に向かって飛行を開始した。

 

「なんだ、また逃げるのか? しかしそうはいかん!」

 

 スウォルツが操るドラグランザー型のタイムマジーンも、そうはいくかと2機のタイムマジーンの後を追いかける。

 

 

 ☆

 

 

 沢芽市内全域を監視するマスターインテリジェントシステムに3つの巨影が映りこんだ。

 研究所に受信された映像を確認した桐河羽月は、すぐさまシグレとランマルに連絡を取り、2人を現場に急行させた。

 

 

 シグレとランマルは、相乗りしたバイク型ロックビークル――バトルパンジーを走らせ、目的地を目指した。

 巨影を捕捉するマスターインテリジェントシステムからの情報によれば、ターゲットは既に沢芽市内の埠頭に上陸しているようだ。

 バイクのハンドルを握るシグレは、羽月の通信機越しのナビゲートに従い、最短距離を駆ける。

 路上に並ぶ車の列の間を縫うようにすり抜け、目的地である埠頭が目前に迫ると、視界に飛び込んできたのは3つの巨影の正体だった。

 そのうちの1つである龍型の赤い機械龍――ドラグランザー型のタイムマジーンは、地に足を付け、上空を飛び回る2機のエアバイク型のタイムマジーン目掛けて無数の火炎弾を撃ちまくっていた。

 空を旋回しながら、火炎弾の回避に集中する残り2つの巨影――黒と赤の2機のタイムマジーン。

 そんな光景を、走行中のバイクの上から目の当たりにしたシグレとランマルは、フルフェイスのヘルメットの下で困惑の表情を浮かべる。

 

「なんだこいつら……」

「羽月さんが言ってたのって、これだよね……。でもこの状況、どうすればいいの……?」

 

 2人が判断に困っていると、近づいてくるバイクを不審に思ったのか、上空を向いていた機械龍の視線が下へと向けられた。そして大きく開いた口から数発の火炎弾が放たれた。

 

「うわっ! 撃ってきた!?」

 

 シグレは慌ててバトルパンジーを蛇行させて火炎弾を雨を避けていく。

 

「標的は決まったな! 我々に牙を向けたあの龍が敵だ!」

 

 バイクの運転に集中するシグレの背後で、打ち倒すべき相手を見定めたランマルがプラムエナジーロックシードを構えた。

 

『プラムエナジー!』

「変身!」

『ソーダァ! プラムエナジーアームズ! パーフェクトパワー! パーフェクトパワー! パーフェクパーフェクパーフェクトパワー!』

 

 走るバイクの動きに合わせるように降ってきたスモモを模した鋼の果実を身に纏い、ランマルはアーマードライダーマリカver.2へと姿を変えた。

 変身して早々、マリカver.2はバイクの後部シートを足場にして大きく跳躍すると、空中でプラムエナジーロックシードを弓型の武器――ソニックアローに装填し、トリガーを力強く引き絞った。

 ソニックアローから伸びるレーザーポインターで、照準を機械龍の顔面に合わせた瞬間、マリカver.2はトリガーを離し、ソニックアローから強力な一撃を解き放った。

 

『プラムエナジー!』

 

 エネルギーが圧縮された1本の光の矢が、赤い機械龍の顔面に直撃し、その巨体がグラリと斜めに傾いた。

 

「変身!」

『ハッ! ブラッドオレンジアームズ! 茨道・オンステージ!』

 

 風を切るバトルパンジーの上で、シグレもアーマードライダー鎧武・華に姿を変えた。

 鎧武・華はバイクのコントロールパネルを操作し、追尾機能が搭載された2発のミサイルを発射させた。

 ミサイルは体勢を立て直そうとする機械龍のボディに命中して爆発し、その爆風で機械龍を完全に転倒させた。

 ズシンと大きな音を立てながら横たわるドラグランザー型のタイムマジーン。

 

 

「何が起きたの!?」

「何でも良い! 奴が倒れたんだ! いくぞ!」

 

 上空を旋回しながら様子を見ていた赤いタイムマジーンが地上へと降下していく。

 黒のタイムマジーンもその後を追いかける。

 埠頭に着陸した2機のタイムマジーンから降り立つジオウとゲイツ。

 その眼前に、機械龍を仕留めたマリカver.2と鎧武・華が歩み寄ってきた。

 

「仮面ライダー? え、ていうか……鎧武!?」

 

 現れた鎧武・華の姿を見た途端、ジオウは思わず声を上げた。

 

「いや、俺たちが知っている鎧武とは色が違う。そもそも、お前が鎧武ライドウォッチを入手したことで、鎧武の歴史は既に失われているはずだ」

「じゃあ、ここは鎧武がいた時間じゃないってこと?」

「わからん。無茶な時空転移を行なったことで、おかしな時間に迷い込んだのかもしれん」

 

 ジオウとゲイツが立ち尽くしたまま考え込んでいると、警戒した様子でマリカver.2が2人に声を掛けた。

 

「おいっ! お前たち、一体何者だ!」

 

 いつでも攻撃態勢を取れるように、ソニックアローを握る右手に自然と力が込められる。

 

「ああ待って! 俺たち、敵じゃないから!」

 

 誤解しないようにと、慌てて叫ぶジオウ。

 

「敵じゃないなら、君たちは誰? 見たところ、君たちも武神……あ、いや、アーマードライダーみたいだけど……」

「アーマードライダー? ……俺たちは仮面ライダーだよ。俺がジオウで、こっちがゲイツ」

 

 鎧武・華の質問に、ジオウは愛想良く答える。

 

「ジオウにゲイツ……。仮面ライダー……。僕たちは――」

 

 と、鎧武・華が自分たちの自己紹介をしようとしたその時、横たわるドラグランザー型のタイムマジーンの中から現れた1人の男の存在感が、その言葉を遮った。

 

「予想外の事態で偶然辿り着いた時間だが、どうやら面白いことになりそうだな!」

 

 現れたのは紫色のコートのような服に身を包んだ長身の男。

 その姿を目の当たりにした瞬間、ジオウとゲイツは身構えながら同時に男の名を口にした。

 

「「スウォルツ!」」

 

 警戒するジオウとゲイツの様子から、紫の服の男が迎え撃つべき敵だと直感で判断した鎧武・華とマリカver.2も、2人に合わせるように武器を構えた。

 戦闘態勢を取る4人のライダーたちを前に、しかしスウォルツは余裕を崩さずに笑みを浮かべる。

 

「フッ。お前たち4人全員で、この俺に挑むつもりか? やめておけ。この時間を舞台に戦う相手は、残念ながら俺ではない!」

「何を言っている! どういうことだ!」

 

 スウォルツの意味深な発言に対し、ゲイツは叫ぶように問いかける。

 

「ここは外部からのイレギュラーが原因で生まれた仮面ライダー鎧武の世界のようだ。……しかし、お前――」

 

 そう言いながら、スウォルツは人差し指で鎧武・華を指し示した。

 

「――そう、お前だ。貴様は鎧武でありながら鎧武ではないな?」

「え、なに!? どういう意味だ!?」

 

 今度は鎧武・華が戸惑いながらも問いかけた。

 

「別世界からやって来た異なる世界の鎧武。鎧武の姿をしながらも、その肉体に宿る力の根幹は闇の中。世界を救った鎧武を善とするならば、赤き鎧の貴様の本質は悪。善と悪。光と闇。まさに貴様はもう1人の鎧武――真の“アナザー鎧武”ではないか!」

 

 まるでこの時間、この世界、そして鎧武・華――シグレについても既に見知っているかのような口ぶりで語るスウォルツ。

 全てを見透かしているかのような態度で笑う眼前の男の姿に、そして、シグレを侮辱するかのような言葉に、マリカver.2は苛立ちを感じ、思わず声を荒げた。

 

「貴様! これ以上戯言を並べるなら、強引にでもその口を塞いでやるぞ!」

「ほう、威勢が良いな! だが無理だ! お前たちでは、俺に触れることすらできん!」

「甘く見るなよ!」

 

 叫んだ瞬間、マリカver.2は地面を蹴ってスウォルツに飛び掛った。

 後に続くように、鎧武・華、ジオウ、ゲイツも同時に攻撃を仕掛ける。

 しかし、スウォルツが手をかざした次の瞬間、

 

「!?」

 

 周囲の時の流れがピタリと停止した。

 マリカver.2のソニックアローも、鎧武・華の大橙丸も、ジオウのジカンギレードも、ゲイツのジカンザックスも、全ての刃がスウォルツに届くことはなかった。

 

(そんな……! 体が……動かない……!)

(チッ……スウォルツの力か……)

 

 4人のライダーたちの体は完全に時間に固定されてしまい、身動き一つ取ることができない状態となっていた。

 ただ1人、時間を止めた張本人であるスウォルツだけは、停止した時間の中を自由に歩き出す。

 大橙丸を振りかざした姿勢のまま、動けないでいる鎧武・華の傍まで歩み寄ったスウォルツは、懐からブランク状態の黒い時計型のアイテムを取り出した。

 それを鎧武・華の胸に押し当てると、時計型のアイテムは鎧武・華の肉体から粒子状の光を吸い取ってしまった。

 鎧武・華から何かを吸収した黒い時計型のアイテムは、スウォルツの手の中で形を変えた。

 目的を済ませたスウォルツが指をパチンと鳴らし、止まっていた時間を再び動かした瞬間、唐突に鎧武・華の変身は解除された。

 鎧を纏っていたはずのシグレは、同時に襲ってきた脱力感からか、その場でペタンと膝から崩れ落ちてしまった。

 

「変身が……解けた!? 身体に力が入らない……」

 

 突然その身に起きた異変に、訳がわからず戸惑うシグレ。

 自分の肉体から何かが消えた。そんな不思議な感覚を確かに感じながら、身体中に視線を走らせる。

 

「シグレ! ……貴様! シグレに一体何をしたぁ!」

 

 シグレの危機に真っ先に反応したマリカver.2が、時間停止を経て空振った刃を素早く立て直し、スウォルツ目掛けて走り出す。

 しかし、スウォルツは常人ではありえないほどの高度まで大きく跳躍し、ライダーたちから距離を離すと、まるで意思を持っているかのように自動操縦で動き出したドラグランザー型のタイムマジーンの機体の上に軽々と飛び乗った。

 

「これから楽しい余興を見せてやる! ジオウ、ゲイツ、お前たちをこの時間から簡単には出さん! せいぜい楽しむが良い!」

 

 上空からライダーたちを見下ろしながら高々と言い放つスウォルツを乗せたまま、ドラグランザー型のタイムマジーンは空中に開いたタイムトンネルの中へと消えていった。

 

 

 ☆

 

 

 唐突にスウォルツが去った後、4人のライダーたちは素顔で対面を果たした。

 変身を解除するジオウとゲイツを見ながら、マリカver.2はゲネシスドライバーにセットされたエナジーロックシードを閉じた。

 鎧から解放されたランマルが、険しい表情で2人の少年の元に歩み寄る。

 

「説明しろ、お前たち! 奴は何処へ消えた! シグレの身に何が起きたんだ!」

「え!? ちょっと待って! 急に説明しろって言われても……」

「落ち着け! 名も名乗らずに、気の荒い女だな! お前らこそなんだ?」

 

 感情的になっているのか、乱暴な物言いで問いかけてくるランマルに対し、ジオウだった少年はオロオロと戸惑いを見せるが、もう1人の少年――赤いライダーだった少年は冷静な表情で2人の間に割って入った。

 ランマルは少年に言われて仕方なく足を止めた。

 

「……私はランマル。こっちはシグレだ。私たちは、この街でアーマードライダーをやらせてもらっている」

「アーマードライダー……。確か鎧武が存在していた時間では、仮面ライダーのことをそう呼ぶんだったな。……まあ、それは良いとして。俺は明光院ゲイツ。そしてこっちは……魔王だ!」

 

 そう言って、ゲイツはジオウだった少年を適当に指差した。

 

「いや、魔王じゃなくて王様だし! じゃなくて、ちゃんと名前で紹介してよ! ……俺は常磐ソウゴ。俺もゲイツも、君たちと同じライダーだよ!」

「同じライダー……。え、でも……魔王? 王様って?」

 

 ゲイツとソウゴの言葉に疑問を感じたシグレが首を傾げる。

 

「俺さ、昔から王様になるのが夢なんだ」

「真面目に聴く必要はない。長い話になる……」

「あ! ゲイツひどい!」

 

 嬉しそうに語ろうとするソウゴを余所に、ゲイツは半ば強制的に話題を終わらせた。

 

「つまらん話はいい! それよりさっきの質問に答えろ!」

 

 ランマルもまた、ソウゴの王様の話には一切興味がないようだ。

 

「つまらんって……そっちもひどい!」

 

 ゲイツとランマルのドライな反応に、ソウゴのメンタルはブレークされた。

 

 

 ランマルの疑問に、明光院ゲイツは語る。

 

「さっきお前たちも交戦した相手、奴の名はスウォルツ。時間を自由に行き来して歴史を改変させるタイムジャッカーと呼ばれる連中の1人で、簡単に言えば俺たちの敵だ。俺とジオウも時間を越えることができるんだが、たまたまある時間へ向かっていた最中に奴の襲撃を受けてな。追跡を振り切ろうとしているうちに、この時間に迷い込んでしまったらしい」

「タイムジャッカー……、そんな奴らがいるのか……。その……スウォルツという男は、シグレに何をして、何処へ消えたんだ?」

 

 ゲイツの話に真剣に耳を傾けるランマルが質問を投げかけた。

 

「タイムジャッカーには、アナザーライダーと言う怪人を生み出す力がある。アナザーウォッチを使って、そいつ(シグレ)の力を奪ったとしたら――」

 

 と、ゲイツがそこまで言いかけた、その時だった。

 

「キェエエエエエエエエエエ!!」

 

 突如、上空から聴こえてきた甲高い奇声と共に、1体の招かれざる客が飛来した。

 それはこの沢芽市では何度も目撃されたことのある怪生物の一種――コウモリインベスだった。

 コウモリインベスは地上の獲物を見極めているのか、空中を何度か旋回してから急降下を始めた。

 猛スピードで滑空し、本能のままに飛び回り、話し合いの場を掻き乱していく。

 

「インベス! でもあれは……! ラン姉!」

「ああ! アイツからは人の理性は感じられない! 恐らくクラックを通ってやって来た野生のインベスだろう!」

 

 既に沢芽市での戦いに慣れつつあるシグレとランマルは、咄嗟に相手の様子を見て察知した。

 眼前のコウモリインベスは、ヘルジュースを摂取して理性や知性を維持したまま人間が変貌したタイプではない。何らかの形でこの街に迷い込んだ、獣のように本能のみに従って動くタイプのインベスだと。

 予測しづらい乱雑な動きで翻弄してくるコウモリインベスの突進を、シグレやランマル、ソウゴやゲイツは姿勢を低くしながら何とか回避する。

 

「うっとおしい奴だ! これでは話が進まん!」

 

 目障りなコウモリインベスをさっさと始末しようと、ランマルはプラムエナジーロックシードを構える。

 しかし、変身しようとする彼女を、シグレは叫んで静止させる。

 

「待って、ラン姉! 間も空けずに連続で変身したら、身体の負担が……!」

「しかし……やるしかないだろ!」

「僕がやる! 僕がアイツを止める!」

 

 そう言ったシグレは、自分がランマルに代わって戦おうと、ブラッドオレンジロックシードを構えた。

 側面の解錠スイッチに指を掛け、ロックシードを起動させようとした。が、しかし、

 

「えっ!? なんで……!?」

 

 予想外のことが起きた。

 どういう訳か、ブラッドオレンジロックシードが解錠されないのだ。

 上部のハンガーはせり上がらず、起動音声も聴こえてこない。当然、頭上にクラックが開くこともなく、鎧となる鋼の果実も現われはしなかった。

 どうして? ついさっきは変身できたのに。

 なにが何だかわからず、困惑するシグレ。

 そうしている間にも、コウモリインベスは滑空し、暴れまわっている。

 突進が直撃して誰かが負傷するのも時間の問題だった。

 すると見兼ねたソウゴとゲイツが立ち上がり、声を上げた。

 

「ここは俺たちに任せて!」

『ジオウ!』

「お前たちは黙って見ていろ!」

『ゲイツ!』

 

 2人は自らのライドウォッチを起動させ、腰に装着されたベルト――ジクウドライバーの右側のスロットにセットした。

 

「「変身!」」

 

 ソウゴとゲイツは叫びながら、同時にドライバーのバックルを力強く一回転させる。

 すると、

 

『ライダータイム! カメーンライダァージオウ!』

『ライダータイム! カメンライダァーゲイツ!』

 

 2人はスウォルツとの戦いの時と同じ姿、仮面ライダーとなった。

 ソウゴは顔を覆ったマスクに“ライダー”の文字が刻まれた黒い姿、仮面ライダージオウに。

 ゲイツは全身を赤く染めた姿、仮面ライダーゲイツ。マスクには“らいだー”と刻まれている。

 2人の仮面ライダーは、飛び回るコウモリインベスを撃ち落すべく、それぞれ遠距離武器を召喚した。

 

『ジカンギレード! ジュウ!』

『ジカンザックス! You! Me!』

 

 ジオウは銃型のジカンギレード・ジュウモードを、ゲイツは弓型のジカンザックス・ゆみモードを空に向かって構えた。

 2人は標的に狙いを定め、阿吽の呼吸でトリガーを引く。

 数発の銃弾と光の矢が、コウモリインベス目掛けて撃ち上がっていく。しかし、コウモリインベスは素早い動作で弾と矢を次々と回避する。

 お返しと言わんばかりに、今度はコウモリインベスが口から超音波を発生させた。

 

「耳が……! 頭痛い……!」

 

 たまらず銃撃の手を止めたジオウとゲイツは、頭を押さえながらもがき苦しむ。

 

「面倒なマネを……! だったらコイツで……!」

 

 不利な状況を打開すべく、ゲイツは苦しみに耐えながらライドウォッチを1つ取り出し起動させた。

 

『ゴースト!』

『アーマータイム! カイガン! ゴーストォ!』

 

 ライドウォッチをジクウドライバーの左側のスロットに装填し、バックルを回転させる。

 幽霊の力を持った仮面ライダー――ゴースト オレ魂の姿を模したライダーアーマーが召喚され、ゲイツはそれを身に纏うことで、仮面ライダーゲイツ ゴーストアーマーに姿を変えた。

 

「くらえ!」

 

 仮面ライダーゴーストの力を身につけたゲイツは、両手で印を結び、複数のパーカーゴーストを呼び出した。

 英雄の魂を宿したおばけのような存在――パーカーゴーストは空へと舞い上がり、コウモリインベスに次々と突撃を仕掛け、超音波の発生を阻止する。

 

「超音波が止んだ! 今度は俺の番! コウモリにはコウモリで勝負だ!」

 

 次に動いたのはジオウだった。

 ジオウも平成ライダーの歴史が込められたライドウォッチを起動させ、ジクウドライバーに装填した。

 

『キバ!』

『アーマータイム! ガブッ! キバァー!』

 

 召喚されたアーマーを身に纏い、ジオウは仮面ライダージオウ キバアーマーに変化した。

 キバアーマーはヴァンパイアをモチーフにした仮面ライダーキバの力を宿した姿だ。

 

「ゲイツ! ちょっと手伝って!」

 

 ジオウはそう言うと、地面を蹴って大きく跳躍した。そして空を舞うパーカーゴーストのうちの1体の腕に両手で掴まり、空中ブランコにぶら下がるような姿勢でコウモリインベスの眼前に接近した。

 

「ちょっ!? ……おい! なんのつもりだ、ジオウ!」

 

 突拍子も無いジオウの行動に、ゲイツは戸惑うように叫ぶ。

 

「なにって、コウモリやヴァンパイアは宙吊りになるもんでしょ!」

「バカ! それを言うなら逆さ吊りだ! それじゃあ逆だ!」

「えっ……。あ、そっか……。まあいいや! これでも戦えるし!」

 

 仮面の下でケロッと開き直ったジオウは、器用に腰を捻りながら左右の足を交互に振り回し、コウモリインベスに連続キックを与えていく。

 

 

 ☆

 

 

 埠頭の隅に並べられた幾つもの巨大なコンテナの物陰に身を潜めながら、1人の男が戦いの様子を窺っていた。

 男の手にはランクAのロックシードが1つ握られており、男はそれを掌で転がしながら不気味な笑みを浮かべている。

 さらに男の背後には別の男が立っていた。

 それは紫の服を着た長身の男――ついさっきジオウたちの前から姿を消したはずのスウォルツだった。

 

「どうした? 強大な力を手に入れたというのに、何もしないのか?」

 

 スウォルツはロックシードを持った男に問いかける。

 

 

 

 ジオウやゲイツ、そしてシグレたちの眼前で行方を晦ました後、スウォルツがタイムトンネルを辿って向かったのは、数日前の過去の時間だった。

 その時間の中では、スパリゾート内の露天風呂で、マリカver2とプロトマリカの一撃を食らったカメレオンインベス・レゾンが派手に吹き飛んでいた。

 上空で爆発し、黒煙の中から落ちてきた1人の男が、真下のプールの水面に音を立てて突っ込んだ。

 プールサイドで数体のインベスを撃破したばかりのシグレが、落下してきた男の存在に気を取られた次の瞬間、時の流れがピタリと止まった。

 シグレの身体の動きは固定され、プールから弾け飛んだ水飛沫も空中で停止したまま。本来の歴史では、上階から飛び降りてくるはずのマリカver.2とプロトマリカも、その姿を現す気配は無かった。

 完全に沈黙した時間の中、そんな中でただ1人、プールの水面に落ちた男だけは、時間停止の影響を受けずに動くことができていた。

 濁った水から顔を出し、何が何だかわからずに辺りをキョロキョロと見回していると、男の視界に飛び込んできたのは、時間を停止させた張本人だった。

 

「お前をコケにした奴らに、復讐をしたくはないか?」

 

 そう言いながら、現れたスウォルツはプールに浸かったままでいる男に手を差し伸べた。

 その掌の中には、黒い時計型のアイテムが握られていた。

 

「な、なんすか、これは……?」

 

 カメレオンインベス・レゾンだった男――濡流屋はビクつきながら尋ねた。

 濡流屋の問いに、スウォルツはいやらしく笑みを浮かべながら答える。

 

「コイツは未来から持ってきた異世界の力だ。コレがあれば、全世界をお前の天下にすることも夢ではない」

「全世界? それを受け取れば、ロックシードやインベスよりも凄い力が手に入るってこと……ですか?」

「ああ、そうだ。良かったな。これでお前は無敵だ」

 

 スウォルツは濡流屋の返答を待たずに黒い時計型のアイテムを起動させると、濡流屋の額にそれを圧しつけた。

 次の瞬間、濡流屋の全身は黒い茨に覆われ、真っ赤な鎧武者のような異形の姿へと変貌を遂げた。

 

 

 

 そして現在。

 数日の時間を改変し、スウォルツは再び戻ってきていた。

 新たな力を得たこの時間の濡流屋――スウォルツが歴史を捻じ曲げたことにより、ランマルの制裁(ビンタ)を受けることなく、逆襲の道へと乗り出した男を引き連れて。

 

「まずはお手並み拝見さ。見慣れない連中もいるしねぇ。勝利の秘訣は、徹底的なリサーチだよねぇ!」

 

 背後に佇むスウォルツに向かって、濡流屋はヒヒヒと気色悪く笑いながら肩越しに答えた。

 それを見たスウォルツは、呆れるように鼻で笑う。既に1度敗北している奴が何を偉そうに、と。

 

「心配しなくても、間もなく出撃するさぁ! 君から貰ったこの力、早く試したいしね!」

 

 濡流屋は手にしていたロックシードを用済みと言わんばかりに投げ捨てると、代わりに黒い時計型のアイテム――アナザーウォッチを取り出し、起動させた。

 

『ブジンガイム!』

 

 不気味な音声が鳴り響き、黒い茨に覆われた濡流屋は新たなアナザーライダーに姿を変えた。

 それはジオウやゲイツが戦ったことのあるアナザー鎧武に似てはいるが、さらに禍々しく、歪なフォルムをした真っ赤な血の色に染まった鎧の怪人だった。

 

 

 ☆

 

 

 パーカーゴーストにぶら下がりながら打ち込んだジオウ キバアーマーの渾身のキックが、コウモリインベスをアスファルトの上に叩きつけた。

 ジオウはパーカーゴーストから両手を離し、後を追うに自らも地面に飛び降りた。

 

「決めるか?」

「待って! 俺がやる!」

 

 肩を並べるゲイツにそう申し出たジオウは、ジクウドライバーに装填されたライドウォッチのスイッチを強く押し込み、バックルを一回転させた。

 

『フィニッシュターイム! キバ! ウェイクアップタイムブレーク!』

 

 ジクウドライバーから電子音声が鳴り響くと、次の瞬間、突然青空が黒く染まり、周囲が闇に包まれた。

 真昼間の時間帯だというのに夜が訪れたのだ。

 

「これは……」

 

 シグレとランマルがその変化に驚くように辺りを見回す。

 そんな中、立ち上がったコウモリインベスが必死の抵抗を見せる。ナイフ状の腕の翼にエネルギーを集中させ、切断性のある斬撃を発射した。

 ジオウ目掛けて真っ直ぐ飛ぶ光の刃。

 しかし、それが命中するよりも先に、突如ジオウの眼前に出現した丸い壁が、光の刃の到達を遮った。

 まるで盾のようにジオウの身を守ったそれは、黄色く輝く満月のようだった。――ただし、形は球状ではなく、マンホールの蓋のような円板状をしていた。

 ジオウが右脚を前に踏み出し構えると、機械的に再現された右脚のヘルズゲートがバッと開いた。

 

「キバって……いける気がする!」

 

 そう叫んだジオウは、浮かせた右脚を渾身の力を込めて前に突き出した。

 それはつまり、眼前の円板状の満月を、勢い良く蹴り飛ばしたのだ。

 

 “仮面ライダーキバ”の歴史の中に存在するキバの必殺技――ダークネスムーンブレイクが、「夜の月を背に放つキック」だとするならば、ジオウ キバアーマーのそれは、さしずめ「夜の月を蹴り飛ばすキック」と言ったところか。

 

 蹴り込まれた瞬間にキバの紋章が刻まれた円板状の満月は、猛スピードで真っ直ぐと飛んでいく。

 迫り来る輝く飛来物に戸惑い、回避行動に遅れたコウモリインベスは、次の瞬間、その円板を全身で受け止めた。

 

「キギャァアアアア……!」

 

 刹那に響き渡ったのは、直撃した円板状の満月諸共に爆発し、消滅していくコウモリインベスの断末魔だけだった。

 爆炎と黒煙が立ち上る中、幻のような夜が明け、昼間の青空が帰ってきた。

 本家とは似ても似つかない必殺技の出来に、本人は満足だったのか、ジオウは得意げに立っていた。

 

「今のはだいぶ違うだろう……」

 

 妙ちくりんなジオウの技を見守っていたゲイツは、呆れるように呟いた。

 

 

 

 コウモリインベスを撃破し、ようやく一段落着いたかのように思えた。

 戦闘を終えたジオウとゲイツが変身を解除しようと、ジクウドライバーにセットされたライドウォッチに手を伸ばしかける。

 しかし、ウォッチを引き抜くよりも先に、突然感じ取った新たな気配が、その場にいる者全員の動きを凍りつかせた。

 最初に気配の正体に気づいたのは、この場にいる面子の中で最も優れた五感を持っているランマルだった。

 ランマルは右手に握り締めたプラムエナジーロックシードを解錠しながら、気配の発信源がいる方向に反射的に身体の向きを変えた。

 振り向いた途端に視界に飛び込んできたのは、振り下ろされる寸前の巨大な刃だった。

 

『ソーダァ! プラムエナジーアームズ!』

 

 咄嗟にマリカver.2に変身を遂げたランマルは、向かってくる大剣をソニックアローの刀身でなんとか受け止めた。

 鍔迫り合いをしながら、自分に敵意を向ける存在の姿を目の当たりにしたマリカver.2は、張り詰めた声で叫んだ。

 

「次から次へと……。貴様、一体何者だ!」

 

 眼前に現れたのは、全身に枯れ木の枝を生やした真っ赤な鎧武者のような怪人。

 そいつは大剣を握る両手に力を加えながら、不気味な笑い声と共に言葉を返した。

 

「んふふぅ~! ニューパワーを得た新たなぼくぅ~、ここに参上ぉ~! この最強の力でぇ、今度こそ君に勝って見せるよぉ~!」

 

 気味の悪い喋り方でそう言いながら、鎧武者の怪人は自らの顔面をマリカver.2の仮面にいやらしく近づけていく。

 その腹の立つ態度や喋り方、そして全身から漂ってくる嗅ぎ覚えのある体臭に、マリカver.2は数日前の出来事――スパリゾートでの忌々しい記憶を思い出した。

 

「まさか……、またお前かぁ!」

 

 目の前の怪人の正体が、あのカメレオンインベス・レゾンだった男――濡流屋であることに気づいた瞬間、ランマルは強烈な悪寒を感じ、仮面の下で青ざめた。

 

「気をつけろ! そいつはアナザーライダーだ!」

「なんか感じが違うけど、多分アナザー鎧武だ!」

 

 ゲイツとジオウが叫びながら、助太刀しようと走り出す。

 駆け寄ってくる2人の姿を視界に捉えた鎧武者の怪人は、自らマリカver.2から距離を取ると、手にしている大剣を2度ほど振るい、虚空を切り裂いた。

 

「残念! 君たちの相手はこいつらだよ! 出ておいで! 僕の精鋭たちぃ!」

 

 次の瞬間、鎧武者の怪人が刃を走らせた空間に、別世界に通じるジッパーのような裂け目が2つ生まれ、そこから2体の怪人が飛び出してきた。

 それらはこの世界には存在しないはずの悪しき者たち。異世界から呼び出された、邪悪な武神のしもべたち。

 同時に出現した2体の怪人は、駆け寄るジオウとゲイツの動きを妨げるように襲い掛かる。

 小型の鎌でジオウに斬りかかるのは、カラフルな道化師のような姿をした童話の怪人――クラウンイマジン。

 巨大な刀を振り上げ、ゲイツ目掛けて重い一撃を叩き込もうとしているのは、炎を模した鎧で身を包んだ等身大魔化魍――火焔大将。

 2体の怪人の斬撃を、ジオウとゲイツは咄嗟に構えたジカンギレードとジカンザックスで受け止めた。

 

「こいつら……まさか……」

 

 ジオウとゲイツを相手に戦うクラウンイマジンと火焔大将の姿に、シグレは既視感を感じた。

 何故ならその光景は、自分たちがこの世界(沢芽市)に来る前に散々身を持って体験してきた状況に似ているからだ。

 赤い鎧武者のために、仮面の戦士と戦う異なる種族の怪人たち。まさにそれは、武神の世界で自分たちが相手をしていた武神鎧武軍の残党兵と同じだった。

 眼前の鎧武者の怪人が開いた空間の裂け目の向こう側が、もし武神の世界に繋がっていたとするならば、そこからやって来たこの2体の怪人たちの正体は……。

 

「ラン姉! もしかしてこいつら、僕たちの世界の……!」

「我々の世界にいた、武神鎧武の下僕どもだとでも言うのか……!?」

 

 再び斬りかかってきた鎧武者の怪人の攻撃を捌きながら、マリカver.2は叫んだ。

 すると、大剣を振り回しながら詰め寄る鎧武者の怪人が、この状況を愉しんでいるかのようなテンションで言い放った。

 

「ぼくにこの力をくれた紫の男が言ってたよぉ~! この力は君の仲間――そこにいる小僧から奪い取った力だってねぇ~!」

「なんだと!? シグレから!?」

「だからその力を受け継いだこのぼくがぁ、そいつの代わりに君の傍にいてあげる! そしてたっぷりと愛でてあげるよぉ~!」

「お断りだっ!」

 

 堪らず怒鳴ったマリカver.2は、次の瞬間、力任せにゲネシスドライバーのレバーを押し込んだ。

 

『プラムエナジー・スカァーッシュ!』

 

 ソニックアローの一振りから放たれた一閃が、鎧武者の怪人を吹き飛ばした。

 勢いのままに、鎧武者の怪人はアスファルトの上を転がる。

 

「あ痛ててぇ~……! やっぱ強いなぁ~、君ぃ~! でも今度はぼくも負けないよぉ~! 今の戦いはウォーミングアップ、前哨戦だから! せっかく凄い力を手に入れたんだからぁ、こんな所でそう簡単には終わらせない!」

 

 笑みを含めてそう言いながら、鎧武者の怪人は立ち上がると、片手を振り上げてクラウンイマジンと火焔大将に合図を送った。

 合図の意味を理解した2体の怪人は、ジオウとゲイツとの戦いを中断すると、地面を蹴って跳躍し、何処かへ飛び去ってしまった。

 

「これから四六時中、君を付け狙ってあ~んなことやこ~んなことをしてあげるから、楽しみにしててよねぇ~!」

 

 鎧武者の怪人は、大剣の刃先でマリカver.2を指しながら宣言すると、自らも跳躍し、その場を後にした。

 残されたのは、その場に立ち尽くす3人のライダーと、シグレだけだった。

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