天才の影に   作:山匠

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きっかけ~紗夜~

「アメフトの練習試合ですか?」

「ええ。ハーフタイムにギターを弾く選手がいるそうなの。その技術がとんでもないらしいわ。聴いてみる価値はあるから行って見なと言われたの。」

 

ある日の練習の後、私は湊さんにアメフトの練習試合に誘われた。

音楽と関係ない話しを湊さんがするのは変だと思ったらそういうことか。

 

「突然何を言うのかと思いました。しかし、アメフト選手がギターですか…。疑うわけではありませんが練習時間を削ってまで聴く必要があるのでしょうか?」

「私もそう言ったのだけれど、店長が聴いた方がいいと言うの。」

 

スタジオの店長と話し込んでいたのはそのことか。

 

「店長がそこまでそう言うのなら聴く価値があるのでしょうね。それで何時なんですか?」

「今週末よ。せっかくだからRoselia全員に声をかけてみましょうか?」

 

そうして声をかけた結果、人混みの苦手な白金さんは渋っていたものの結局全員で行くことになった。

 

 

 

「友希那~、紗夜~、こっちこっち!!」

 

練習試合当日、今井さんが待ち合わせ場所に向かっていた私と湊さんに大きく手を振っていた。私たちが最後だったようで、他の皆さんは揃っている。

 

「おはようございます。皆さん早いですね。」

「まぁ、ね。今日はちょっと早起きしたのよね~。」

 

今井さんがニヤニヤしながら後ろで隠していたバスケットを突き出した。

 

「じゃーん!!!客席で食べていいみたいだからお弁当作って来たの!あこや燐子も手伝ってくれたのよ!!」

 

その言葉に私と湊さんは驚き、顔を見合わせてから言った。

 

「本当に?ありがとう。」

「ありがとうございます。でも言ってくれれば、私たちも手伝いましたのに。」

「いいのいいの!サンドイッチだからそんなに難しくないしね。」

「私たちも具材を挟んだくらいなんです。ね、あこちゃん?」

「そうそう。友希那さんたちに驚いてもらいたかったの!」

 

私たちの言葉に今井さんだけでなく白金さんと宇田川さんも続けた。

 

「ま、そういうわけだから楽しみにしててね!」

「ええ。ありがとう。」

 

今井さんの言葉に湊さんが応え、私も頷いた。

 

 

 

今日の練習試合は炎馬大学と最京大とのものらしい。

私たちが見たかったのは最京大の選手が弾くハーフタイムのギターだった。

しかし、ハーフタイムだけ見に行くのは選手に申し訳ないという今井さんの意見があり、試合開始前から競技場に来ていた。

試合開始は13時であり、ちょうど昼時だった。

 

「はい、これ。あ、にんじん入ってないから安心してね?」

「あ、ありがとう。」

 

皆さんにサンドイッチを配っていた今井さんが私にも渡してくれる。

こうやってお弁当を作って来たり、さらっと皆に配ったり出来る今井さんは本当に女子力が高いと思う。

 

「所で皆、アメフトのルールって知ってる?」

 

今井さんの質問に白金さんが応える。

 

「昨日、調べたんですけど、野球みたいに攻守交代しながらボールを運んでいくみたいです。10ヤード進めたら連続攻撃出来て、進めなかったら交代です。」

「へ~。点数はあれでしょ?トライ!みたいなので入るんだよね?」

 

白金さんに宇田川さんが訪ねている。

 

「そ、それはラグビーだよ、あこちゃん。アメフトはタッチダウンっていうんだよ。一度に6点入るんだって。タッチダウンしたらボーナス攻撃がゴールの近くから出来てもう一回タッチダウン出来たら2点、キックなら1点入るの。基本は入りやすいキックを狙うみたい。後、タッチダウンじゃなくて直接キックでゴールに入れたら3点だって。」

「そう。1点ずつじゃないのね。」

 

白金さんの説明に湊さんが感心している。

 

そんな話をしていると開始時間が来たようで、アナウンスが始まった。

 

『これから最京大:最京大WIZARDSVS炎馬大学:炎馬FIERSの練習試合を始めたいと思います。それでは、選手の入場です。』

 

それぞれの選手が交互に入場し、紹介アナウンスされる。

 

「練習試合でアナウンスまであるなんて凄いわね…。」

「そうですね…。」

 

湊さんの感想に同意している時、次の選手の紹介で息が止まった。

 

『さぁ、次に登場しますは敵味方に別れた宿命の双子、金剛雲水、金剛阿含だ~!凡才の兄は天才の弟に勝つことは出来るのか!?』

 

双子、凡才、天才。どこかで聞いた事がある話だった。

まるで自分の事をアナウンスされたかの様だった。

凍りついた私に気づかず、皆始まった試合に目を奪われている。

私は金剛雲水から目を離すことが出来なかった。

 

 

 

 

帰って来た自分の部屋でため息をつく。

結局、金剛雲水のいた、炎馬大学は負けてしまった。

目的だったギターも聴けたが、正直上の空だったためほとんど覚えていない。

もっとも、湊さん含めメンバー全員がそんな感じであったが。

それほど迫力があり、引き込まれるものがあった。

皆は最京大の選手のトリックプレーに目を奪われた様であった。確かに予想も出来ない作戦は見応えがあったのだろう。

しかし、私は金剛雲水から目を離せなかった。

これまでアメフトというものを見たことがない私でも分かる安定した動き。

どれだけの努力をしたのだろうか。

しかし、それでも弟である金剛阿含の荒々しい暴力的なプレーに圧されていた。

どうしてもその姿が私と日菜に重なってしょうがなかった。

着替えもせず、ベッドに横になりスマホで金剛雲水と検索する。

出てくる情報はほとんどが金剛阿含に関する事であり、分かったことは高校時代は同じチームだった事くらいである。

ため息をつき検索画面を消し目を閉じる。

 

金剛雲水はどう思い、どう感じているのだろうか…。

自分の事、弟の事、アメフトの事を。

私が自分や、日菜、ギターに関して感じていることと同じなのだろうか?

聞いてみたい。

叶わない事であると分かっていながらそんな事を思った。

 

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