天才の影に   作:山匠

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遅くなりまして申しわけありません 


運命~紗夜~

一週間後、私たちはあるライブハウスにいた。

今日はRoseliaのライブがある。

集中しなければならなかった。

でも今週の私は自分から見ても集中出来ているとは言い難い。

この一週間、インターネットやアメフト雑誌などで金剛雲水について調べた。

でも、分かった事はほとんどない。

あの日調べ、分かっていたことばかりだった。

 

「紗夜、今日のライブ大丈夫なの?ここしばらく集中出来てないみたいだけど…」

 

湊さんに心配されてしまう。

 

「いえ、大丈夫です。すいません、心配かけて。」

「なら、いいのだけど…。でも珍しいわね。紗夜が集中出来てないなんて。」

 

確かにここしばらくの私はおかしかっただろう。

自分でも驚くくらい私らしくない。

 

「アメフト見に行ってからだよね~。紗夜の様子がおかしいのって!」

「!?」

 

今井さんにはバレていたらしい。

思わず反応してしまった。

その反応を見た今井さんはニヤニヤとして質問してくる。

 

「なに~?あの時一目惚れでもしちゃった?」

「ち、違います!そんなんじゃないですから!」

 

こういう会話には慣れておらずしどろもどろになる。

ますます笑顔が深まる今井さんだがそこでちょうど係員の人が私たちを呼びに来た。

 

「Roseliaの皆さん準備お願いします!」

「「「「「分かりました!!」」」」」

 

声を合わせ全員で応えた後、湊さんは私に向かって言いステージに向かう。

 

「恋愛は好きにしたらいいけれど、ちゃんと集中してちょうだい。出来なければ抜けてもらうわ。」

 

そんな湊さんの様子にため息をつきながら今井さんは私にウインクして言ってから湊さんを追いかける。

 

「後で聞かせてもらうからね!」

 

違うんです。という私のつぶやきはもう聞いていなかった。

宇田川さんはキラキラした目でこちらを見ていたがすぐに湊さん達を追いかけた。

 

「大変ですね…」

 

苦笑して私に言ってからステージに向かう白金さんだけがまともに聞いてくれそうだ。

ため息をつき、私もステージに向かう。

切り替えなければ。

ライブで失敗するわけにはいかない。

 

 

 

 

ライブが終わり、私達は夜道をあるいていた。

もちろんライブは大成功だった。

1週間集中出来ていなかったのは確かであるが、それで調子を崩すようなことはない。

そんな自信がつくほどの練習はしている。

問題はライブではなく、今現在であった。

 

「紗夜~、そろそろ言っちゃいなよ~?」

 

今井さんが私に詰め寄る。

何度否定してもこの繰り返しである。

 

「だから、何度も言っているでしょう!そんな色恋じゃありません!」

「またまた~。じゃあなんでいつもと違うかったの?」

「そ、それは…」

 

湊さんは我関せずだし、宇田川さんは興味あります!と顔に書いているようだ。

白金さんは苦笑しながらこちらを見ているが止める気はない様子。

つまり私は孤立無援なのである。

 

「今日は逃がさないからね、紗夜!明日休みだしこれから私の家に行くよ!あこ!凛子!逃がしちゃダメだからね!私は友希那とお菓子とか買ってくるから!」

「ちょっと、リサ!そんな勝手に…!」

「まあまあ、今日くらいはいいでしょ。ライブも成功したんだし打ち上げみたいな感じでお泊まり会しよ!さあさあ行くよ!」

 

文句を言いながらも今井さんに引きずられて行く湊さん。

私が口を挟む間もなかった。

 

「へへっ!頼まれちゃったね~、りんりん!」

「そうだね、あこちゃん…。」

 

そう言いながら私の両隣を陣取る二人。

私に逃げ場はないようである。

 

「…はぁ。」

 

私はため息をついて今井さん達を待つことにする。

言い訳を考えながら。

 

 

 

「こんな時間に女の子達だけだと危ないじゃーん!俺たちと一緒に遊ぼうぜ?」

 

しばらく宇田川さん達と待っているとそんなふうに話しかけられた。

ニヤニヤとしながら近づいてくる男達。

チャラチャラしている大学生という言葉がそのまま当てはまるようである。

返事を聞く前に固まっている白金さんに手を伸ばそうとする。

 

「キャー!」

 

悲鳴を上げた白金さんとまだ固まっている宇田川さんを背中にかばい、男達を精一杯睨む。

 

「悲鳴上げることないじゃん。今から俺たちと遊ぼうってだけだぜ?」

 

ニヤニヤをさらに深くしながらさらに手を伸ばす男。

 

「止めなさい!」

 

そう言いながら男の手を払いのける。

自分でも分かっていた。

精一杯の強がりだった。

 

「このっ!!」

 

手を振り上げる男を見ながら歯を食いしばる。

目をそらすことだけはしないと相手をにらみつけた。

 

その時、突然すごいスピードで二つの缶が飛んで来て男に当たり動きが止まる。

まだ二つとも中身が入っていたようでかなり痛そうである。

 

「スマートだぜ!!」

 

一人がそう叫びながら私達をかばうように立つ二人の男性。

それだけで相手が怯むのがわかった。

割って入った二人はかなり体格が良かったのだ。

 

「これ以上遊んでほしいなら俺らが相手してやるよ。なあ?」

「ああ。」

 

叫んだ方の人が隣に立つ腕を組んで睨んで睨んでいる人に問いかけ、それに短く応えている。

短いやり取りなのに威圧感がすごい。

男たちはしばらくこちらを睨みつけていたが、舌打ちをしながら去って行った。

 

「大丈夫だったか?」

 

そう言いながらこちらを振り向く人を見て驚き呆然としてしまう。

この一週間、穴が空くほど見た写真のその人だったのだ。

その人の名前が口からこぼれた。

 

「金剛雲水?」

 

その人、金剛雲水さんも驚いているようであった。

 

「君は…」

 

「紗夜!皆!大丈夫!?」

 

私に話しかけようとした金剛雲水さんをさえぎって叫びながら近づく今井さん。

その後ろからは湊さんも走って来ている。

 

「遠くで絡まれてるのが見えて慌てて走って来たの!!大丈夫!?何もされてない!?」

「ちょ、ちょっと落ち着いて今井さん。私達は大丈夫ですから。この人達が助けてくれたんです。」

 

矢継ぎ早に問いかける今井さんを落ち着かせるように説明する。

見えていたのなら助けてくれたのも分かるはずだが、かなりパニック状態のようだ。

仲間思いの彼女らしい。

それが嬉しい。

 

「あぁ!!そうだよね!!あの、ありがとうございました!」

 

パニック状態のまま二人にお礼を言う今井さん。

 

「いいって、いいって。まず落ち着きなよ。友達が心配だったのはわかるけど。」

 

髪をくしで整えながら言う男性。

口元には苦笑が見える。

 

「いい友達を持ったな。」

 

私に向かって言う笑顔の金剛雲水さん。

私はそれにうなずく。

私にも笑顔が浮かんでいただろう。

 

 

 

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