私は夢を見ていた。
どこに立っているのか…立っているという表現さえ正しいのか分からない。
空から見下ろしているような…。
それでいて地面を這っているような…。
忙しく視点が動いている。
私が世界そのものとして見ているような…。
そしてあれは何だ?
遠いどこかを目指している黒いナニカ。
夜色の霧を噴き出し空を染めるナニカ。
近付くもの全てを蝕もうとするナニカ。
あれは……、竜か?
彼方を目指すのか?
何を染めるのか?
誰を蝕むのか?
命を、獲物を、世界を。
それを追いかける矮小な存在。
何て小さな、何て強い輝きだろうか。
責任感の強そうな群青鎧の双剣使い、すごく…イケメンだ…。
褐色肌に黒髪ポニーテールの女性、色っぽい。
巨大な槍を携えた最年長らしき男、すごく…大きいです…。
そして駆け出しと思われる若者の4人組。
必死に何かを叫んでいるようだが、私には聞こえない。
でも彼らの想いは伝わる。
みんなの笑顔をまもりたい─
─と。
その為に、普通の人間では生物として到底かなわない相手に立ち向かい狩猟を行うのがハンターという職業だ。
この世界において最も過酷で、最も夢のある職業と言っても過言ではない。
ある時は熱帯の砂漠。
ある時は大海の孤島。
ある時は毒潜む沼地。
ある時は極寒の雪山。
世界のありとあらゆる場所に住まう生命を目にし、命のやりとりを行う。
その任務が過酷であればある程、背負うものが大きく危険が伴う。
──しかし、生還の暁には『英雄の証』を手にする。
だが、そんなのは一握りだ。
彼ら4人がどんな凄腕でも、この巨大な生命を相手にするには分が悪すぎる。
未来は見えている。
現に今だって私の目の前で…。
それでも彼らは突き動かされるように歩を進めていた。
それでも辿り着く頃には何も残らない。
それでも彼らは歩き続ける。
それでも…私は…。
そして。
彼らを見守るかのような位置に一匹の白いアイルーがいた。
彼らよりも小さい存在の小動物なのに、私の小指の先程度の大きさにしか見えないのに、その存在は誰よりも何よりもハッキリと私の目に映った。
──そして目が合った。
!? 夢の中のソイツと目が合うなんて思ってもいなかった。
夢だと思っていたから。
夢の中での私はどこにもいないと思っていたから。
その中でソイツは私の存在を捉えたのだ。
私はどこにいるのだろう?
私は今、何なのだろう?
私はどうするのだろう?
まん丸に見開かれた紅玉の瞳を持つアイルーは、感情の覗けない声で確かにこう言った。
「おニャァは、とても稀有な才能を持っているようだニャ…。どうニャ?
ニャァと契約して筆頭ハンターになってニャ♪」
それがどのような意味を持つ言葉なのかまるでわからない。
そして、ここに存在など無い、聞こえるはずのない言葉は、私の頭に響いて霞んで行った。
だけど。
所詮は夢なので、目が覚めたらきっと、
覚えていないのだ…………。