筆頭のカリピスト ~変革の物語~   作:三方真白

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第2話 それはとっても憂いなしって

 深い水の底から引きずり上げられるような目覚めだった。

 頭が重い、意識がハッキリしない。思考が纏まらない。

 まだ眠りについていたい。だが─

 

 ウホッ

 

 思わず口をついて出てしまった。

 

「む? コンガか?」

 

 あまりにいい男が目の前にいたからだ。

 ここまで整った顔だとさすがに同性でも見惚れてしまう。

 しかし、どうやら私の発した一言のせいでその表情は硬かった。

 

 しばらく周囲を警戒してから何も無い事を確認し、ようやく落ち着いた様子を見せた彼らの表情はどことなく重い様子だった。

 歴戦の勇士というか、修羅場をくぐった数が違うというか、そういう類のものだ。

 それもそのはず、彼ら4人はハンターだった。そしてどこかで見た事のある様な、と付け加えておいても良い。

 

 それも気のせいなのだろうが。

 

 彼らの様子を見る限り私はどうやら気を失っていたらしい。どれだけの時間が過ぎたか知らないが日は既に暮れており、篝火が焚かれていた。

 

「こんばんは。目が覚めた?」

 

 頭の上の方からそう声をかけてきたのは褐色の女性だった。

 首だけをどうにか動かして確認したが、色黒の肌が火の照り返しで妙に艶めかしく、ボウガンをメンテナンスする手付きまでそれっぽく見えてしまう。

 

「無事で何よりだ」

 

 目覚め一番に私の視界にいた男。

 鮮やかな群青の鎧がこのメンバーの中で一際映える姿だ。恐らくリーダー各だろう。

 さわやかとは程遠く、生真面目の一言が何よりも似合いそうな堅い表情。それが彼の持ち味だと思う。

 

「やあ、思ったよりも元気そうだな。ハハハ」

 

 落ち着いた声をかけてきたのは黄金色の鎧に身を包んだ最年長らしき男だった。彼がリーダーか?とも考えたが落ち着き方が少し違う。群青の彼がいるからこれで良いといった感じだ。

 ちなみに、手入れの途中だろうかすごく大きなランスが横に寝かせてある。

 

「うい~ス。秘薬のおかげで問題なさそうスね」

 

 一番若い彼は、どうも言葉が軽い。秘薬と言うからには凄い物なのだろうがまるでそれを感じさせないのは彼のセンスなのだろうか? 

 

 そして気付いた事がもう一つ。

 私は、誰、でしょうか…?

 

「何?」「まぁ…」「なんと?」「へ?」

 

 思わず口をついていたらしい。

 4人の視線が私に集まる。 

 

…。

……。

………。

 

「…。以上だが、他に何か」

 

 なるほど。

 どうやら黒い怪物に襲われた私は、大剣を抱えたまま気を失って倒れていたと言う事らしい。

 

 そこを彼ら『筆頭ハンター』に助けられて今に至る、と言う事だ。

 極めてシンプルな内容だったが群青色の『リーダー』は、懇切丁寧に、どう話したものかと探り探り思案しながら言葉を選びつつ教えてくれた。あまり喋るのが得意ではないのかもしれない。

 記憶を失った私についてだが、大剣を抱いていた事もあってハンターではないか?と話も挙がったが、握って見てもしっくりくるわけではない。

 ひとしきりあーでもないこーでもないと話し合った処で、いつの間にか現れた純白のアイルーが語りかけてきた。

 

「記憶が無いのは不便ニャ。だったらいっその事ニャァ達と行動を共にしないかニャ?」

 

 不思議なアイルーだった。

 一声あげるだけで、4人が聞き入る姿勢に移るのが良く分かる。リーダーよりも立場が上であるかのようだった。

 

「ニャァべえ、それってまさか…」

 

 褐色の女『ガンナー』が声を上げた。

 

「反対はしないニャ? 古龍撃退の時に、あともう一人の力があればもっと楽に撃退できたニャ?

 おニャァたちは、過去の迷信を信じすぎるニャ。それを打ち破る前例を作らないからいつまでも不幸な出来事に縛られるニャ。

 正直、5人に留めずもっと増やせば良いのニャ。四人一チームでもいいから複数のチームで討伐に当たらせるとかニャ」

 

 彼らにはそういう決まりごとがあるらしい。  

 

 『ニャァべえ』と呼ばれたアイルーは四人を見渡し、最後に私を、記憶の底を探るかのような真っ赤な瞳で見るとこう告げた──。

 

 

「ニャァと契約して、筆頭ハンターに、なってニャ♪」

 

 

 これが私とニャァべえの出会いだった……。

 

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