安定してあちこちのハンターに呼ばれるようになり、分かった事がある。
それはこの狩猟生活も悪くない、という事だ。
全てがモンスターを狩猟するわけではなく、時には卵の運搬や採取、または護衛等を任せられるくらいにはなった。
以前の私が何をしていたか知らないが、性に合っているのは間違いない。
この世界は広い。未だ見た事も無いモンスターが沢山いる。人間の生涯をかけても出会う事が叶わないモンスターもいるのだと言う事を知った。
その中で黒い竜と出会った事は宝くじに当たるよりも極めて異例の事態なのだと。
黒い竜とは古来より災厄の証であり、それと出会っても尚生き残った私は英雄か、はたまた災厄の申し子か…。
掘り下げていくとそんなレベルの話になりそうだったので、意図していなかったとは言え、自分の身の上を話さないようにしておいて良かったと思う。
まぁこの格好じゃ本当の自分語りなんて迂闊にできたもんじゃないが。
ちなみに私に対する噂最新版だが、
『見られたい金持ちが露出プレイ中』というのが統計上の大半であるという事を知った。そうか、最初はハンターとすら思われていなかったのか。 そりゃあ変なうわさがあれこれ飛び交うわけだと。
装備も統一性が無さ過ぎて、どこぞの職人を真似たハリボテと言われていたらしい。私以外にこんな格好の人物がいるのかと、その噂をしていた人に伺いたい。
実は一応、スキルも発動しているんだが……無理も無いか。
『誘い受け待機中』とか言うのもあった。
あまり話せたものではないが、筋肉ガチムチハンターのお兄さんと一緒に狩猟に出た先で………情事に及ぶという…。
おかげで私の漢心がピンチだった事も一度や二度ではない。
しかしながら基本良心的な多数派ガチムチアニキ達のおかげで、不幸の回数は更なる噂の拡散と共に減った。
彼らは勘違いさえされなければ、一般ハンター達よりもよっぽど私に対する態度が柔らかい。
その先輩たちに教えてもらった事だが、その手の人が集まる掲示板には私と思われる書き込みもあったとか…。もちろん否定しておいた。
ちなみにその時に教わった哲学もタメになるものだったと添えておく。
アニキ達には本当にお世話になった。とても気に入られ何度となく猟団『森の妖精』に勧誘されたか分からない。
筆頭ハンターの一員で無ければ入団していたかもしれない。それでも懇意にしてくれ、団員でない私も一緒に狩りに連れて行ってくれる程の関係を築けるまでに至った。
彼らは、普通と呼ばれる人達から逸れた位置にいるからこそ、倫理や信念がしっかりしてよっぽど信用に足る人間性を持っていた。
独自の哲学を持ち、それに準じて誇りを持って生きている。
その中でも特に印象深い一言を挙げておこう。
「オマエは自分が思っている以上に人から見られている。そして気に病むほど見られてもいない」
これは衝撃的だった。
こんな装備だからかもしれないが、余計にハッと気付かされた。
あ、そうか! この格好でも良いんだ!! と思えた。
どこかひっかっかっていた頭の霞が晴れ、何かが吹っ切れた。
自分すら失い、着の身一つで新たな生を受けた名前のない私。
ひょんな事から筆頭ハンターと名乗る彼らに出会い、その5人目としてこの世界で生きる事になった。
世界は、ある程度の力が無いと生きていけない。
私はたまたまある程度の力を与えられたのだ。何も無かったからこそのズルくらい許してもらえるだろう?
ましてやそれを周囲の知らない人達に還元するための仕事も得ている。謝礼も十分だ。
私は生きていける。
私、『筆頭リコーダー』はこれで良いのだ。 この変な装備で生きて良いのだ。
名と共に力が姿が与えられたのだから、これで良いのだ。
リーダー
ガンナー
ランサー
ルーキー
他の4人とは違う、生い立ち不明、見た目も異質な狩猟笛使い。
これも最近知ったのだが、狩猟笛を使うハンターの事をカリピストと呼ぶらしい。
ピアニスト、ギタリスト、カリピスト…。誰が言い出したか知らないが、上手い事を言ったものだ。
そう、私は筆頭ハンターの5人目。
生身を晒し、人目に晒し、自身を晒す、狩猟笛使い。
これが今を生きる本当の私だ。
──私が、筆頭リコーダーだ!