主人公の名前は崩蝋苦・描禄(ホウロウク・エガロク)って読みます。
「やぁやぁ!こんにちはぁ!死柄木・弔殿」
「はぁ?」
「おやおや?我輩の事を知らない?」
オレンジ色のライトが店内の品格を高くするバーの店内。一つのよく通る声の後に不機嫌そうな声が続く。
カウンターに気だるそうに腰掛ける病的に痩せた体にそれに拍車をかける血色の悪い白い肌をした死柄木・弔と呼ばれた男は眉をしかめる。「何だコイツは」といった顔だ。
「……黒霧」
「昨日説明したと思いますが……」
「はぁ?…………あぁ、ハッキングが得意なヤツだったかぁ?」
「そうです」
黒霧と呼ばれた死柄木よりも頭一つ分ほど背の高く黒い靄で構成されたような男は丁寧な言葉遣いで目の前の男を紹介しようとする。だが「いや、我輩と自身でする」と男が口を挟む。
「我輩は崩蝋苦・描禄!ホウちゃんやエガちゃんでも構わないぞ!出来れば下で気軽に読んでくれ!死柄木殿!」
「……煩い。耳に響く、もっと静かに喋れ」
「おぉ!耳に響くとな!我輩そんなに声が良い方ではないのだが?耳に響くなら魂にも響くてっか?まったく、褒めても何も出ないぜ?ほら、クッキーやるよ!」
「……黒霧コイツ……」
「言いたいことは分かりますが、殺しては駄目ですよ。作戦に影響しますので」
男とたった今言葉を交わしただけだと言うのに死柄木の中で男崩蝋苦・描禄の印象は決まった。簡単に言うと「うぜぇ」である。高級な包装しに包まれたクッキーの箱を無理矢理押しつけてくるハイテンションな描禄に死柄木苛立ちを覚える。
「おやおやぁ~?どうした目付きが悪いなぁ?そんなに睨まれたら我輩照れちゃうよ!」
「……」
「しかし、死柄木殿メチャクチャ細っ!大丈夫?細枝のようにポッキリ折れちゃわない?ちゃんと食事取ってるの?」
「…………」
「あっ、我輩なにか作ろうか?料理はこれでも得意でね!味は保証するよ!何が好き?我輩、我輩はね、チーズケーキとプリンが好きなんだよ!ってそれデザートやないかい!ハッハハハハ!」
「黒霧ィ……!」
「分かります、分かりますが堪えてください」
もはや煽っているのではないかと思われる口調で無視されどもひたすら話す描禄。弾丸のように次々飛び出る発言に死柄木だけでなく冷静な黒霧でさえ僅かにイラッつく。
「描禄、話は一旦そこまでにして」
「おっと、もう我輩の自己紹介は終わり?味気ないね!まだまだ喋り足りないけれども、まぁいいや!どうぞ、続けておくれ!黒霧殿よ!」
「…………。貴方はハッキングが得意だそうですが、それは本当ですか?」
「ハッキング?あぁ、たまに頼まれるから趣味でやってるね!たいていの所なら可能さ!」
「……趣味……ですか……。そのわりには貴方結構有名ですよ」
「そうかい、そうかい!無名よりは有名がいいよね!イエー、テンション上がるぅー!」
「……そうですね……」
この男はいちいちオバーリアクションをしないと話せないのかと思う二人。大声で煩いのにそこに舞台役者のように手振りまで加えてくる。正直ちょと誘う相手間違えたかと、不覚にも思ってしまった黒霧。
会話が面倒なのが分かった死柄木は、早々に我関せずの姿勢でクッキーと書かれた包装紙をベリベリと剥がしている。
「今回は雄英高校からカリキュラムを手に入れて欲しいのですが」
「カリキュラムー?カリキュラムー?イエイ!カリキュラム!」
「…………」
「カリと奪ってキュラと逃走!えっ、ムが無いってぇ?へっ!男なら細かいことは気にするなよベイベェー!ヘィ!」
「……可能ですか……?」
「可能かって?不可能なことなんって無いぜ!だが100%なんって事がないのが人生!甘辛っいぜ!」
「……真面目に答えろ!ぶっ殺すぞ!!」
「おい、落ち着けよ」
今度は死柄木が黒霧を止めると彼らの関係ではとてつもなくレアな場面でそこにはあった。
この口調こそがコイツの個性なのではと思えるほど狙って地雷を踏むような発言を繰り返す描禄に、死柄木よりも先に黒霧がキレた。
寧ろ真面目なヤツほど描禄との相性が悪く、投げやりなヤツな方がいいと思える。
「はぁ、失礼……。しかし、貴方普通に喋れないですか?」
「普通?我輩は常に普通だぞ?」
「……もういいです。後日追って知らせますので、今日はお帰りください」
「なにやら顔色が……って真っ黒で全然分かんないや!じゃあ、体に気よつけろよ!アデュー!」
黒霧のワープで場所を去るまで喋り続けた描禄がいなくなったバーはいつも以上の静寂が占めていた。
「……死柄木・弔……」
「……俺は知らねぇ……」
不定期更新です。