「地球は青かった」
みなさん、おはこんばんちは。高校生一年生になったナガレです。
現在、私と束と千冬の3名は夏休みを利用して、束お手製のニンジン型スーパーロケットで宇宙まで来とります。
何でも、ISのデモンストレーションとして月に存在する資源を回収するんだとか。
学会でISを発表したはいいけど、一蹴されてしまったから「だったら証明すればいいんだろ!?」と実力行使に出たらしい。
……国際法とかその辺諸々大丈夫なんかね?
ちなみに親父殿とお袋様と箒と一夏はお留守番です、ロケットの速度に耐えられないから。
……改めて気づいたが、音速を超えるロケットでも平然としてる俺たち人間じゃねぇ!
「いやー、しかし危なかったねえ」
束がうっかりステルス機能を起動し忘れたせいで、航空自衛隊の戦闘機に撃墜されそうになったのだ。
まぁ、このニンジンは大気圏突破用に作られているし、従来のロケットの何倍も早いので、緊急加速して無事に逃げられたのだが。
「ホントだよまったく。撃墜されて死ぬとかシャレになんねえぞ」
「うー、ごめん。その代わりってわけじゃないけど、ISのチェックは念入りに行うからさ!」
「頼むぞ。シールドバリアが発動しなかったせいで、宇宙で溺死するなど笑い話にもならん」
「それじゃ、あとはゆっくり行こーか。飛ばせば二時間ぐらいで着くけど、せっかくの宇宙だしね」
「そんじゃ寝る、着いたら起こして」
「ロマンがないなぁ、リューくんは……今更だしいいけどさ」
このニンジンの室内は重力制御されており、地上と同じ感覚で過ごせる……が、風呂がない。水はあるが、全部飲食用のものだ。トイレはある事にはあるし、ひり出したもんが、宇宙に放り出されるらしいけど……デブリとかになんないのか?
まぁいいや、寝よ寝よ。
あの後結局何か起きるでもなく、六時間後ぐらいに月の、何だ……衛星軌道上?
……よくわかんねえや、とにかくそれぐらいの距離にたどり着いた。
今、俺と千冬は束の作ったISを身に纏いカタパルトハッチが開くのを待っている。
「こっちのモニターじゃ異常は見当たらないけど、何か違和感は感じる?」
「私の方は問題ない」
「同じく」
「それじゃあ、もっかい性能について軽〜くおさらいしとくからね!」
あ、これ長くなるパターンだわ。
「ちーちゃんの『白騎士』はプラズマブレードしかないけど、リューくんの『ヴァイサーガ』よりも単純出力が1.5倍ぐらいあるし、シールドバリアもすんごい硬い!上手くやれば10mぐらいの大型隕石でも真っ二つに出来るよ!ただ、エネルギーをかなり消費するから気をつけてね!ついでに、拡張領域がすんごい広いから、資源を山ほど集められる!砂にヘリウム3とかの希少な資源が混ざってるから、砂を拾って来てね!!別に砂に限らなくてもいいけどね!
対してリューくんのヴァイサーガは白騎士に比べたら、少し脆いし拡張領域も狭いけど、機動性と運動性がすんごい高くて背中のマントが物理シールドとして使えるんだ!一メートルに届かないぐらいの隕石ならヒラリって出来るから、実際のところは白騎士と同じぐらい耐久性があるよ!他にも実体剣と鉤爪と苦無型の小型爆弾も搭載されてるから、オールマイティに活動できるよ!邪魔なものがあったら苦無爆弾で爆発させればオッケー!しかも脳波コントロール……じゃなくて、分身もできる!」
めっちゃ早口で、性能を熱く語る束。
語ってくれるのはいいがうるさい、口からつば飛んでるんじゃないだろーか。音声だけだから実際どうかはわかんないけどさ。
それにしても、俺のヴァイサーガって戦闘向きすぎない?
分身なんてなんに使うのよ?
いや、「どうせならヴァイサーガにしてくれ、カッコいいから」って言ったのは俺だけども。
あと、脳波コントロールって単語気に入ってんの?
「それじゃ、ハッチ開くよー!」
束の声が響くと共に、月が眼下に見える。
……息苦しさは感じない、試しに深呼吸をしてみるが肺の中に酸素が送り込まれるのを感じた。
どういう原理なのかは分からないが、ちゃんと呼吸出来るようだ。
『大丈夫? ちゃんと呼吸できてる?』
「もんだいなし」
「起動テストの時も思ったが、凄いものだな」
「それじゃ、先に月面に降りてて!私もすぐに向かうから!」
俺と千冬は互いに顔を見合わせてから、月面に向かう事にした。
「そんじゃ、先に行ってるぜィ」
真紅のマントを靡かせ月の大地へと疾る。
……そういや、真空の宇宙空間で靡くマントって何なんだろう。
『ロマンを再現するのは大変なんだよ!でも、リューくんが喜ぶと思ったから頑張ったよ!』
こいつ、脳内に直接……むっ!レーダーに反応!
30センチぐらいの小型隕石、速度はそんなにないな……だったら!
「伸びろ、爪!水流双牙ァ!!」
赤い鉤爪を伸ばしながら隕石に突進、すれ違い様になで斬り、薙ぎ払い、斬り上げの三連撃を見舞う。
鉤爪は三本、それで三連撃を見舞ったから……64分割か?
『あ、リューくん。せっかくだからその隕石も確保しといてよ』
……人使いの荒い姉だこと。
俺は飛び散った隕石を追い、縦横無尽に飛び回った。
ちと苦労したが、すぐに連絡がきたため無事に全て回収出来た。
ちなみに隕石は16分割だった、水流双牙の勢いが強すぎて三撃目が当たらなかったのだ。
残念。
「どうした、流。先に行くぞ?」
「あいや待たれぃ!今行くっ!」
回収している間に、千冬が駆る白騎士が俺を追い越す。
追いていかれてなるものか、とヴァイサーガの速度を上げた。
「あと少しだな」
「おお」
視界一杯に広がっていく白い大地。
同じタイミングでヴァイサーガと白騎士は月面に降り立った。
程なくして、束のニンジンもスラスターを逆噴射しながら着陸した。
「到ちゃーく! いやぁ、人類が降り立つのは何十年かなぁ……JAXAとNASAのバーカ!お前らがちんたらしてる間に、私達はこうやって降りてやったぞ!ザマぁみろ!!」
うちの束はJAXAとNASAが大嫌いだ。
と言うのも、去年辺りにJAXAとNASAを受験、筆記は当然の如く満点だったのだが、面接で落とされたらしい……エキセントリックだからねェ、束は。
家族とか、俺みたいにずっと一緒にいるヤツは特に問題ないけどね。
現状、宇宙開発は複数のチームが協力して行う、大人数の仕事だもんなー。
一人で何でもこなせる束にゃ耐えられんわな。
「さーて、じゃんじゃん集めようか!」
ニンジンのタラップから、一見宇宙服もなにもつけてない束が降りてきた。
普通なら命に関わるが、束の事だからなんかしてるんだろう。
「そんな格好で大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない!この服はね、二人のISみたいにシールドバリアが張れるんだよっ!
とは言っても、有害な宇宙線の反射や気圧と温度調節、人工呼吸機能程度しかないんだけどね」
「なるほど、流石だな」
「略してさすたばだな」
束が来てる服は、見た目は……なんてーの?エプロンドレス?
とにかく、見た目はそんな感じの服装だが中身はハイテクな宇宙服のようだ。凝ってますなあ。
「後でコンテナを下ろしておくから、回収した資源はその中にいれてね」
「わかった」
「さて、それじゃあ土さらいでも始めますかねえ」