あれから数時間月面の土を掘り、石を切り取り出来るだけ資源を回収してから地球に戻った。
車が入るような大型コンテナ三個分だが、一人の研究者が使う量としては十分だろう。
まぁ、バカみてーにガンガン使っても一ヶ月は持つんじゃねえかな。
「ただいま地球、おかえり私!」
「十数時間程度しか離れていなかったのに、地面に足がついた瞬間に安堵感が生まれた……やはり人間は地球から離れられないんだな……」
「したり顔で何言ってんだけどオメェ。にしてもなんか疲れたな」
どうにも身体が重い。
宇宙空間にいたことで身体的のみならず、精神的な疲れも溜まったのだろうか。
「それじゃあ、私は早速研究に取り掛かるよ!」
「ン、あぁ」
手をわきわきと動かしながら、実に嬉しそうにニヤついて束が言った。
数日後。
束はしばらく研究室にこもりっきりだったが、風呂やら何やらで出てきては俺に抱きついてきて、ぐりぐりと頭を擦りつけてきた。
……ここ最近でブラコンが加速してる気がするが何なんだコレ。束の性格もだいぶ丸いし……今回のヒロインは束なのか?
……お、俺には真耶たんがいるし……そういや今の真耶たんってまだ女子高生か中学生ぐらいなんだよな……会いたい……どこにいるんだろ。
「ん〜リューくん成分補給〜」
「あんまりくっつくなよ……」
「よいではないかー、ぐへへ」
俺としては家族として過ごした時間より、知り合いの姉として認識してた時間の方が長い。
だから、どうしても異性として意識してしまうのだ。
無駄にデカい、真耶たんクラスのその乳を揉みしだいてやろーかと思ってしまうのだ。
……ち、違うからね真耶たん!浮気じゃないからね!!
「ね、ね、ね、ね、姉さん達!!そんな事やってる場合じゃありませんよ!!」
珍しくドタドタと慌てながら箒と千冬と一夏が走ってきた。
「んー、どうしたんだい。箒ちゃんにちーちゃんにいっくん」
「何を言っている、ニュースを見てないのか!?」
「私があんな知能指数が低くなりそうなもの見るわけないじゃん」
正直同感である、近頃のニュースは偏向報道やら何やらで頭が痛くなりそうだ。
ニュース自体がダメというわけではなく、偏向報道がダメなのだ。
「日本に二千発ぐらいの核ミサイルが飛んできているんだ!!早く逃げないと!!」
「……はぁっ!?な、なんだよそれ!?」
一夏の声に目を見開いたのは俺だけじゃない……白騎士事変か!?
だが、今回束は何もしていない……つまり誰か別人が……!?
……くそッ、悩んでる場合じゃない!!
「束、ヴァイサーガは?」
「えっ……せ、整備は完璧だけど。ついでにパワーアップもしてるよ」
「行くのか、流」
察した千冬が真剣な顔をして問いかけて来る。
「やるしかねーだろ。数発ならともかく、あの数は自衛隊だけじゃ対処しきれねえ!!」
もちろん、日本にも迎撃ミサイルは配備されている。だが、それは多くても数十発程度しか想定されていない。あんな、二千数百発のミサイルは対処しきれないに決まっている!
「一人より二人だ、私も行こう。束、白騎士を出してくれ」
「……わかった、まぁ核ミサイルでも1発なら命中しても平気だし思いっきりドーンとやるといいよ!」
「助かる!」
「千冬姉!?」
実の姉が武力介入する事に驚いたのか、一夏が声を上げた。
「あのミサイルをどうにかできる力があるなら、使わざるを得ないだろう、それに流一人では不安だしな」
フッ、と千冬は笑みを浮かべた。
「……わかったよ、止めても聞かないだろうし……」
「リューくん、無事に帰ってきたらたくさん抱きしめてあげるからね」
「リュー兄、千冬姉を頼みます!」
「ご武運を」
「そういうのは不吉だからヤメルンダッ!……行くぞ!!」
ヴァイサーガと白騎士が空を舞う。
さらに強化されたヴァイサーガと白騎士は、30秒と経たずに核ミサイルの大群の前に到着した。
「俺はトップスピードで先行!手当たり次第に斬りまくる!千冬はデッカい一撃で纏めて頼む!」
「わかった!」
(さて、あの数なら誘爆を狙ったほうがいいか……!?)
日本を狙う核ミサイルは、一国を堕とすにしてはあまりにも数が多い。だが、そのせいでミサイル同士が密集してしまっている。
つまり、一つを爆破させれば誘爆し纏めて堕とす事が出来るかもしれないのだ。
「そこおっ!」
ハイパーセンサーにより天体望遠鏡並みになった視力を頼りに、加速の勢いのまま苦無型爆弾「烈火刃」を投擲。
放たれた烈火刃は核ミサイルへと命中、爆音と閃光と共に消え去った。
「まだまだぁ!」
ヴァイサーガをさらに加速、「烈火刃」を投げ、実体剣「五大剣」を振るい、目についたミサイルをとにかく片っ端から落とすが……次々と送り込まれるミサイルは数を減らす様子が見えない。
「数が多すぎる! 千冬、自衛隊にでも応援頼めるか!?」
「自衛隊のみならず在日米軍も既にスクランブルで出動している!私たちの後方で迎撃しているようだ!!
それと私の方は超広範囲の斬撃の為にエネルギーをチャージする……巻き込まれるなよ!」
「はん、誰に向かって!」
千冬の警告を余裕の笑みで笑うも、実はこれ強がりである。内心、いっぱいいっぱいなのだ。
確かに、視界右上部に見える熱源レーダーには、白騎士とミサイルの他にも多数反応が確認される。
恐らくこの熱源が自衛隊と在日米軍の戦闘機なのだろう。
「そうかよ!なら、少しでも兄ちゃんたちの負担を減らすか……飛飯綱ならぬ、地斬疾空刀!乱れ撃ち!!」
ヴァイサーガから放たれる一閃は、遠距離でも十二分に命中する射撃武器となる。
生身ですらカマイタチ現象を引き起こし、木を切り倒す事が出来る上、1秒に10回程は放てる。
ヴァイサーガを身に纏った状態で放てば、1秒に100回近く、鉄鋼の高層ビルすら斬り倒す文字通り「地を斬り裂き空を疾る」必殺兵器となりえる。
「束ぇ!あと何本!?」
『リューくんの今の攻撃で500本近くは撃墜!残り1158本、あと半分ぐらいかな!』
あと半分か……先が見えたな!
「よし、エネルギーが溜まった!流、一時後退!」
「おう!」
千冬からの通信を聞き、俺は一度白騎士の後方へと移動。もちろん、ただ待つようなことはしない。五大剣を腰だめに構え、「光速の一撃」が放てるようにスラスターのエネルギーをチャージする。
「トォォォォリャァッ!!」
振るわれたプラズマブレードから広がる眩い光は、一瞬ではあるが辺り一面を真っ白に染める。光がおさまったあとは、ほぼ大半のミサイルは跡形もなく消え去っていた。
『束、残りは!?』
『108本!』
『くっ、まだ残ってるのか……!』
「千冬ぅ!今度はお前が下がれ!俺の全力全開、ぶちかますぞ!!」
『! わかった、頼むぞ!!』
目を閉じ、極限まで神経を尖らせる。
……ヴァイサーガよ、まだ会って1日とたっていないが無理をさせるぜ!
「今こそ……風を、光を超えろ!!」
言ってしまえば、ただの居合一閃。
だが、その一閃はヴァイサーガ最強の一撃、刹那の瞬きの間に、全てのミサイルをすれ違い様に両断した。
「これぞ、奥義・光刃閃……」
俺が五大剣を鞘に収めると同時にミサイルは爆発四散、これで日本の脅威は去った。