今回の話はようやく精霊の目について言及されます。
戦闘シーンは少し少ないですけど楽しんでください。
感想、評価、お気に入りお願いします。
精霊使い
この世界の力には大きく分けて二種類、魔力と霊力とがある。
魔力は魔女達が有するまがまがしい力であるのに対し、霊力は精霊達が有し清く清浄で美しいものとされている。
その二つの大きな違いはまず見た目の色彩である。
細かい違いはあれど魔力は紫系統の色彩を放つのに対して、霊力は青系統の色彩を放つ。
この色彩の違い故にまがまがしいだの美しいだのと甲乙をつけただけで力の源としてのランクはどちらも相違ない。
強いて言うならば力の発現する形態に差がある。
魔力は敵を屈服させるため、勝利を手にするための形態たとえば剣、たとえば鎧のように発現するが、霊力は違う。
霊力は悟り、語り、伝える力である。
具体的には、敵や周りの状況の感知や意思伝達が主な発現形態である。
なので晋介の左眼に発現した青い炎はまさに精霊の力、霊力が発現したものである。
この眼のおかげで敵の動きや周りの状況が鮮明に分かり、これまでの戦いを有利に進めることができたし、またその左眼は特定の相手に意思を伝達することもできる。
だからこそ晋介の思いがエマに伝わり、エマの思いが晋介に伝わったことがあるのだ。
この左眼を使いこなせると、おわかりの通り、非常に戦闘を有利に運べるのだが、むろん、残念なことに晋介はその左眼を未だ使いこなす領域にない。
しかし、神聖剣帝を倒すにはこの左眼および霊力を使いこなすことは必須条件だ。
そこで、晋介は左眼を使いこなすための修行を始めたのだがこれが全くといって良いほど上達しない。
師匠は魔力を扱うことにおいてはピカイチだが、こと霊力となると完全に門外漢らしく指導もいまいち効果を上げてくれない。
仕方なしに、一週間ほど独学で取り組んだもののめぼしい成果は得られなかった・・・。
そんなある日、師匠が俺に向かって「私の旧知に霊力を扱うことに長けたものがいる。その者のところに一月ほど行って修行してきなさい。話は私がすでにつけてあるから。」と言ってきたのだった。
もちろん俺は二つ返事に「行きます!」と言い、明日には向かうことができるよう支度を調える。
この常夏の島に移住してきたのも実はその人のところにいずれはやっかいになることを考えての事だったそうだ。
なんか、そこまで考えてたのが意外で、それと同時に師匠がさらに頼もしく感じられた。
そして旅の支度も調い、準備万端の俺は今日の晩ご飯は何だろうな、と思いながら食事へと向かった。
食卓にはいつも以上に豪華な食事が並んでいる。
「うわ、なんだこれ。すげーな。めちゃくちゃうまそうだ。」
そう言いながら俺は席に着く。
エマちゃんは得意げに慎ましやかな胸を張り
「でしょ?これぜーんぶ私が作ったのよ。すごいでしょ?」
「ああ、すげーよ。この量を一人とかまじで尊敬するわ。」
でしょ?とうれしそうに喜ぶエマちゃん。
うん、彼女の無邪気なかわいさは今日も健在だ。
「それじゃあ、いただきます。」
「どうぞ、召し上がれー。」
師匠やペナ、ギルもみんないただきまーす、といって料理を口に運ぶ。
俺はまずローストビーフから口にした。
口に入れ、肉をかみしめるとじゅわっとうまみがあふれ出す。
柔らかすぎず堅すぎず、牛本来のうまみを味わっている感じだ。
「うまいな、これ。」
「ホント!晋介、おいしい?」
「ああ、めちゃくちゃうまいぞ。これ。」
「よかったー。おいしいって言って貰えて・・・。」
手を胸に当て、ふー、と安堵した様子のエマちゃん。
口元には微かに笑みが浮かんでいるところを見ると、うれしくてしょうがないけど、どうにか胸の高鳴りを押さえつけているようにも感じられる。
これからもちゃんと料理はおいしいと伝えよう・・・。
そう決意してムシャムシャモリモリとおいしいエマちゃんの料理を平らげていく。
ペナなんか骨付き肉を原始人にでもなったように両手でわしづかみにして「おいしー!」と叫んでいる。
やっぱりあほの子・・・ま、かわいいからオールオッケー!
右を見ると、師匠とギルが二人でワインを飲み比べている。
意外なことにギルはお酒好きで酔いに強い。
もしかすると師匠と対等かそれ以上にお酒に強かったのだ。
なので最近は師匠と一夜飲み明かしたりなんかも平気でしている。
今も楽しそうにこのワインがどうの・・・、あのワインはこうだ、としきりに論を交わしている。
まあ、師匠に俺以外の飲み仲間ができたことはとってもうれしいことなのだが、それにしてもあのおしとやかなギルがあそこまでお酒に強いって言うのは意外すぎた。
いまももう軽く十本は開けているので、今後、ギルがどう酒豪として成長していくのかが正直怖いぜ・・・。
そんな恐れを抱きながら俺はまた、目の前の料理に箸をつけていた。
そんな楽しい食事も終わる頃になって、師匠が皆に向かって口を開いた。
「晋介は明日から修行のためこの城を一月ほど離れる。護衛としてエマを一緒に向かわせるからそのつもりでいといてくれ。」
それを聞いたペナが、え!と露骨に驚きを表し、
「本当なのか、それ?」
と俺に確かめるような調子で聞いてくるペナ。
どことなくもの悲しげだ。
うーん、このままおいていったらさすがにかわいそうだよな・・・。
「ああ、本当だ。明日から行くことになった。もしかしてペナ一緒に行きたいのか?」
そう聞くと一転、彼女は大きな紫紺の目を輝かせてずいっとこちらに乗りだしてくる。
「行きたい!絶対行きたい!」
「そうか、なら一緒に来い。」
「うん!やったー、楽しみで眠れそうにないよ。あ、今から早く支度しないと!」
そう言ってすくっと立ち上がり自分の部屋へとダッシュで戻って行ってしまった。
「すごい勢いだったな・・・」
「じー」
うん?なにやら隣からすごい冷たい目線を感じるんですけど・・・。
視線を感じる方へ顔を向けるとそこにはほっぺをぷくっと膨らませてむくれるエマちゃんの姿がある。
なにこれ、めっちゃかわいいんですけど・・・。
思わず膨らんだほっぺを人差し指でぷにぷに触る。
めっちゃやわらかーい。
この感触が気に入ってしまって依然ぷにぷにしていると、
「ぷにぷにすんなー!」
そう言って急に立ち上がり憤慨するエマちゃん。
「あ、ごめん。嫌だった?」
「いや、嫌じゃないしむしろもっとしてほしかったんだけど・・・。そうじゃなくって!私が聞きたいのは何でペナも連れて行くのよー!せっかく二人で旅できると思ったのに・・・。」
最初と最後が少し聞き取りずらかったが俺は難聴系主人公ではないので大体聞き取れてしまう。
少し恥ずかしいがうれしくもあるので俺の顔が今にやけていないか大いに不安である。
「晋介君、顔きもいよ・・・。」
エマちゃんが少し引き気味にそう訴えてくる。
ヤベ、やっぱにやけてたか・・・つーか、人の顔をきもいとか、結構傷つくぞ・・・。
んん!と咳払いを一つし、気を持ち直す。
「まあ、そう怒らないで。三人で楽しく行こうよ、ね?」
「むー。私は二人で行きたい・・・。」
エマちゃんは少ししょげた様子で両手の人差し指を互いに合わせている。
さすがに今回はなかなか折れてくれない。
これはあれしかないな・・・。
「な?お願いだよ、エマ。」
そう言いながら頭を優しく撫でてあげる。
「あう・・・。ずるい・・・。」
そうつぶやきながら顔を赤らめるエマちゃん。
これはあと一押しだ!
そう思い
「ダメ?」
と聞く。
するとうーと少しうなってから
「しょうが無いから、許してあげる。」
と答えるエマちゃん。
俺はとりあえず少し胸をなで下ろし、感謝の意を彼女に伝える。
「ありがとね、エマちゃん。」
「いいわよ・・・。でも浮気はダメだからね!絶対!」
「う・・・するわけ無いし・・・。」
「なんでそこで目をそらすし!あ、こら!まてー!」
エマちゃんのジト目から逃げるようにして自室へと走る俺なのであった・・・。
そして次の日の早朝。
俺たち三人は中庭に集合している。
「さあ、出発だけれど準備は万全か?」
「ええ、大丈夫よ。」
「うん!大丈夫!」
エマとペナがそう答える。
俺は一つうなずいて二階を見た。
そこにはパジャマ姿のギルと師匠の姿がある。
どうやら昨夜も二人でしっぽり楽しんだみたいだ。
「では、師匠、ギル。行ってきます!」
そう伝えると二人は手を振りながら
「「きをつけてー」」
と眠そうに返してくる。
なんだか締まりが悪いがここからは気を引き締めて行かないと、何が起こるか分からないからな。
そう自分を鼓舞して二人の方へと向き直る。
「よし、出発だ!二人とも!」
「「おう!」」
こうして精霊使いのところへと俺たちは出発したのだった。
精霊使いは精霊の霊力を用いるため精霊のいる場所、すなわち森の奥深くにすんでいるらしい。
なので、今回の旅路は一日がかりの大移動である。
俺はエマちゃんの転移で行けば良いじゃないかと言ったのだが、精霊のすむ森には転移できないように精霊術が張り巡らされているらしい。
そういうわけで、精霊に会いたいならば自分の脚で歩いて森の奥地に到達するしかないのだ。
早朝に城を出た俺たちであったが、すでに太陽は中空に存在している。
見上げると生い茂る木々の葉と葉の間から日光が燦と差し込んでくる。
眩むような暑さの中、歩き続けることはかなりしんどい。
森の中なので直射日光がない分まだましなのだが、先ほどから湿気と暑さでどうにかなりそうだ。
他の二人を見ても同様に大粒の汗を浮かべて、苦しそうな表情である。
「大丈夫か?二人とも。」
「ええ、まだなんとかね。」
「私もまだ大丈夫だよ!」
と答える二人。
確かにまだ大丈夫みたいだが直に限界が来る・・・。
どうしたものか・・・。
あまりの暑さに頭を悩ませていると、微かに水の流れる音が耳に入ってきた。
どっちだ・・・?
目を閉じ耳を澄ませる。
どうやら左のようだ。
音のする方へと近づいていくとそこには小川が流れている。
二人も小川が流れていることに気づき顔をほころばせる。
「すこし、ここで涼もうか?」
「うん、そうだね。冷たくて気持ちよさそうだし。」
「うん!脚浸けたい!」
三人して小川のほとりに腰掛け脚を浸ける。
瞬間、ひんやりとした心地よさに脚が包まれ、その冷感が全身へと染み渡ってくるようだ。
「はー・・・。キモチイイ・・・。」
「冷たくて気持ちいい・・・。」
「つめたーい!きもちいい!」
三人が三人とも川の水の冷たさを味わい、ほてった体を冷ます。
しばらく体を冷やしていると、エマちゃんがなにやらリュックから取り出した。
「じゃーん!お弁当でーす。はい晋介君。ペナちゃん。」
そう言って包みに入ったお弁当を手渡してくるエマちゃん。
マジでできた子だ。
感謝しかない。
ペナも俺同様感動しているようだ。
「エマちゃん、ありがとう。」
「エマ、ありがとう!」
二人してエマにお礼を言うと彼女は少し照れたように手で顔を押さえ、いいから食べてみて。と催促してくる。
促されるままに俺とペナは弁当を開く。
「「おー!すっごい豪華!」」
弁当が弁当とは思えないぐらいに豪華で、二人とも驚きを隠せていない。
ステーキや煮付け、春巻きに麻婆豆腐といろいろな料理が詰め込まれている。
一口食べてみると、やはりめちゃくちゃうまい。
うますぎて二人とも夢中になって弁当を食べていると
「二人ともおいしそうに食べてくれてるけどどう?」
「「めっちゃうまい!」」
二人ともご飯を口周りに一杯付けながら答えると
エマはそれを見てプッと吹き出し
「おいしく食べてくれるのはうれしいけど、二人とももっとゆっくり食べたら?誰も取らないわよ。」
さもおかしげに言ってくるエマちゃんだが、そうはいってもこの弁当がおいしすぎて箸が止められない。
ガツガツ食べていたらあっという間に完食してしまった。
あー、うまかった。
「ごちそうさま」
そう言ってようやく箸を置く俺。
ペナも同様に完食して名残惜しげに弁当についた米粒をこそぎ落として食べている。
それを見ていたペナちゃんはフフッと笑い
「ペナちゃんおいしかった?」
と聞く。
すると、ペナは手元から視線をエマちゃんに向けて笑顔になる。
「おいしかった!また作ってくれる?」
「うん、また今度作ってあげるよ。次は一緒に作ろっか?」
「うん!作ってみたい!」
などとほほえましい会話をして俺たちは楽しい昼食の時間を過ごしたのだった。
腹ごしらえもし体も涼み、リフレッシュされたところで俺たちは再度目的地に向かって歩き出した。
森の奥地へと進んできたせいか、先ほどよりもうっすらと気温が下がってきているような気がする。
周りの景色も、緑が濃くなってきたとでも言うのか、静かで薄暗い印象に変わってきている。
少しずつ精霊のすみかへと近づいているのだ、という実感を伴いながらずんずんと突き進んでいると何かが前方から迫ってきている。
感じたことのないオーラに自然緊張が走る。
他二人もどうやら気がついて警戒心を強めている。
俺はおそらく数秒後に姿を現すであろう存在に対していつでも対応できるよう腰を落とし魔装を装備する。
ガサッという音とともに前方の茂みから出てきたのは見るからに五歳ぐらいの幼女だった。
「え・・・この子は?」
「お兄さんたちだあれ?」
潤んだ瞳でこちらを見つめてくる彼女。
銀色の長い髪。
大きな青色の目。
ぷっくりとしたほっぺたが可愛らしい。
服装は白色のワンピースだがサイズが少し大きいのかダボっとしている。
頭には大きな麦わら帽子をかぶっていていかにも純真無垢な幼女といった感を受ける。
しかし、なんだこの幼女らしからぬプレッシャーは。
全身が粟立つ感覚・・・。
何を俺はこんな幼女に恐れている?
いや、見た目に惑わされてはいけないのかもしれない。
相手はおそらく俺の知らない霊力を用いる。
何が起きても不思議じゃないと思っておかないといけない、そう自らを戒めて先程の質問に答えてあげる。
「俺たちはこの先にいる精霊使いに会いに来たんだ。お嬢ちゃんはどうしたのかな?」
ピクッと反応する幼女然とした女。
顔をうつむけ何事かをつぶやく・・・。
「・・・おじょうちゃん・・・?」
すると、目の前から女の姿が消えた・・・。
否、そう感じるほどのスピードで俺の懐に入り込んでいる。
ヤバイ、速すぎて反応できねー・・・!
両の脚に懸命に力を込めて飛び退こうとするも、敵の方がそれよりも速い。
女はさらに晋介に肉薄し耳元に口を近づけ何事かを囁いた・・・。
「・・・舐めんな・・・ガキが・・・。」
言葉を理解する前に女の猛烈な掌底が俺のみぞおちに打ち込まれる。
なんとか体を引き、右手でその掌底を受けるがあまりにも強烈な攻撃で、俺の体は浮き上がり、五メートルほど吹き飛ばされた。
空中で一回転して着地し体勢を整える。
追撃に備えていたがどうやらしてこないらしい・・・。
エマとペナが慌てた様子でこちらに走り寄ってきて、けがはない?大丈夫?と心配してくれるのを大丈夫だ、と軽く答えて目の前の敵を見据える。
掌底を放った体勢からすくと立って今は直立してこちらを見ている。
どう見ても五歳児にしか見えないが、先ほどの言葉を鑑みるとどうやら違うらしい・・・。
「あなたは誰で何歳なんですか?」
と率直かつ丁寧に聞いてみる。
すると彼女は不敵な笑みを浮かべながら
「私の名前はサテラ。今年で十六になる。だから、ちっちゃい子扱いは揺るさんぞ!」
十六だって・・・あり得ない・・・幼女にしか見えないぞ。
しかし、さっきの動きがとうてい幼女にできるとは思えない。
なら、やはりこの子の言ってることを信じるしかないようだ。
ふふん、と不遜な態度をとるサテラに俺は聞く。
「それは失礼したな。サテラはここで何をしているんだ?」
「私はあなた達を迎えに来たのよ・・・。師匠が、客が来ているはずだから連れてこい、って命令してくるから仕方なく来てやったんだ。感謝しろ!」
ふはは、と笑いながら無い胸を張るサテラ。
どう見てもちっちゃい子が賢しらぶってるようにしか見えないんだよな・・・。
だが、案内してくれるならこれほどうれしいことはない。
俺は少しまじめな顔になってサテラの顔を見る。
「じゃあ、案内お願いする。サテラ。」
「ええ、任しなさい。早速行くわよ・・・。」
サテラはそう言って今来た方向に体を向け、ずんずんと進んで行ってしまう。
俺たちもその後を慌ててついて行った・・・。
そのまま、サテラの後ろについて行くこと約十分。
目の前の少し開けた場所に古臭い石門が見える。
サテラはその石門の前に着くと俺たちの方を振り返る。
見ると、彼女の顔には得意げな表情が浮かんでいる。
「見たことないだろう?これは転移門と言って私たちの霊力を動力源としてこの森の中にならどこへでも転移できるという優れものだ。」
どうだ!凄いだろ、と言わんばかりにドヤ顔をするサテラ。
可愛らしい、やっぱり美少女はどんな顔しても最高だぜ!
そんなことを考えていると冷たい二つの視線が後頭部に刺さった気がしたので、キリッと表情を引き締める。
「じゃあ、こっから師匠のところにまで転移させてくれるっていうことだな?」
「そういうこと。だからみんな手を繋いで。」
サテラが俺に向かって手を差し出すので自然、それを取る俺。
俺が手を差し出すと、エマとペナがなぜかもめだしたので
サテラ、エマ、俺、ペナの順に手をつなぐことになった。
サテラは呆れたようにため息をついて
「はー、もう良いわね?早速行くわよ。」
そう言うやいなや、門が薄緑色に輝き出す。
どんどんと輝きを増し、その光の奔流が俺たち全員を飲み込んだ・・・。
目を開けると、目に飛び込んできたのは直径が五十メートルはあろうかと言うほどの巨木だった。
見上げても巨木の一番上を視認することは敵わないほどの高さである。
そんな巨木の根本付近に人が入るためのドアが着いているのが見える。
サテラがそのドアに駆け寄っていき、師匠ー?つれてきたよー。と呼びかけるとまもなくドアが開かれる。
そこから出てきたのは、まるで妖精のような女性だった。
髪の毛は綺麗な栗色で腰のあたりまで垂れており、目鼻立ちはくっきり、すらっとした立ち姿でなんとも美しく絵になる。
俺は彼女の美しさに圧倒されて呆然としてしまっていた。
しかし、突然両の脇腹に激痛が走ったので我に返る。
「何見とれてんのよ?」
「晋介、見とれすぎ。」
二人がとんでもなく冷たい目でこちらを睨んでくる。
やべー、めっちゃこえーよ、二人とも・・・。
ゴメンゴメンと二人に軽く謝りもう一度視線を戻す。
その女性は優雅な足運びでこちらに歩み寄り、スカートの裾を軽く持ち上げて美しい所作で礼をする彼女。
「よくいらしました。私は精霊使いのエイラと申します。どうかお見知りおきを。ささ、お疲れになっているでしょ?中で紅茶でもいただきましょう?」
そう言って俺たちを巨木の中へと招き入れてくれるエイラさん。
「失礼します・・・。」
他の二人も及び腰になりながらも失礼します、と中に入ってくる。
そして中に入ると、三人とも驚きの声を上げる。
「うおー、これはすげーな。巨木をくりぬいてそのまま使ってるのかー。」
「うわー、すっごい・・・。木の香りとかぬくもりで気持ちいい。」
「うわー!すっごいな!これ。見たことないよこんな家・・・。」
三者三様ながらも皆一様に驚きと感動をあらわにする。
そんな俺たちの様子を見てエイラさんがふふ、とほほえみ
「皆さんほど驚いてくれると私としましてもここに住んでいる甲斐がありましたわ・・・。さあ、こちらにおかけになって?」
エイラさんは優しく微笑みながらテーブルの椅子を引いてくれる。
俺たちは礼を述べ、促されるままに席に着いた。
すると、向こうからエイラさんとサテラが紅茶を持ってきてくれる。
全員の前に配置し終えると二人も席に着いた。
「さあ、いただきましょう。」
「いただきます。」
そう言って、目の前に置かれた湯気立つ紅茶のカップを持つ。
良い香りだ・・・。
コクリと一口飲むと鼻の奥に茶葉の良い香りがスーと抜けていき、実に芳醇である。
「うまい・・・。こんなうまい紅茶初めてです・・・。」
「あら、そう?うれしいわ、そんなこと言ってくれて。」
うれしそうにはにかんでくるエイラさん。
うわー、めっちゃかわいいですやーん。
年上のお姉さんっぽくて優しくて包容力もあって・・・完璧すぎる。
「ふん!」
小さなかけ声とともに俺の脚を踏みつけてくるエマちゃん。
「痛いよ、エマちゃん。どうしたんだよ・・・?」
「さあ?どうしたんでしょうね・・・!」
ふん、とそっぽを向きながら紅茶をすするエマちゃん。
うーん、俺そんなに顔に出ちゃってる?
首をかしげながらそんなことを考えているとフフ、とエイラさんがほほえみ
「皆さん仲が良いんですね?うらやましいわ・・・。」
と言ってくるのを聞いてペナちゃんがさもうれしそうに言う。
「うん、そうなんだよ!私たちとっても仲良いんだ!」
「そう、仲良きことは美しきことです。お仲間を大事にしてくださいね?」
「うん!ありがとう、お姉さん!」
「ふふ、どういたしまして。」
えへへ、ふふふと二人はうれしそうに笑みを交換する。
そんな暖かな空気に感化されて、少しすね気味だったエマちゃんも自然と笑顔になり、エイラさんのお宅訪問一日目は無事終えることができたのだった・・・。
いかがでしたか。
お楽しみいただけたでしょうか?
次の話は修行をメインに据えてやっていこうと思いますので期待しておいてください。
感想、評価、お気に入りお願いします。