水神編第三話。
水神編もう少し続きそうです。
ペナやエマ、敵をイキイキと描き出したい、けど技量が足りない、というもどかしさで筆が止まりまくっています。
頑張って書いていくので応援よろしくです!
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俺は魔装を施した脚で地面を蹴りつけ、数メートル先にいるマリーへと飛びかかる。
周りの木々がかすむほどのスピードで走りつつ、愛刀『レイソルディー』に自分の魔力を注ぎ込んでいくと、まばゆい光をその刀身から放ち出す。
これが『レイソルディー』に宿る固有魔法。
間違っても「剣が光ってかっこいい」という能力ではない。
この光はれっきとした魔法で名前は『電光石火』。
身体エネルギーの伝達速度を細胞レベルで上昇させ、常人の限界を超えた速度を手に入れることができる優れた魔法だ。
俺はすでに自分の限界まで速度を上げていたが、更に体を前傾させ、加速した。
もはや刀の切っ先は地面に触れてしまうのではないかと思うほどだ・・・。
見ると、長剣を構えるマリーは未だ、何も動いていない。
これはチャンスだ・・・!
相手は全く反応できていない。
しかも、マリーが装備している剣は一メートルほどもある長剣。
至近距離の斬り合いでは小回りのきく俺の方が圧倒的に分がある・・・!
俺は自分の優位性を確信したので正面から切り伏せると決め、マリーの懐に入り込んだ。
「これで・・・終わり!」
最下段にあった俺の剣の切っ先がまるで弾かれたように跳ね上がり、マリーの体を切り裂かんとする。
だが、マリーは依然として動かない。
剣が刻一刻と彼女へと迫りまさに今、彼女の傷一つない美しい柔肌に、硬質で鋭い剣の切っ先が触れる・・・と思われたそのときだった。
「アシュバル。」
一つマリーがつぶやく。
すると、先ほどまで長剣をなしていたアシュバルがまるで鞭のようにしなりだすではないか・・・。
彼女は鞭を稲妻のごとき素早さでしならせ、俺の斬撃を打ち落とした。
キン!と言う金属音が響き渡る。
な・・・に?
俺はあまりの驚きに目を見開くが、彼女の迎撃はまだ終わらない。
鞭は俺の剣を打ち落とした勢いを使い、鋭くとがった先端で俺の肩口を切り裂こうとする。
すんでの所で身をよじるが少しかすめ、耳元でチッという擦過音が聞こえた。
幸い、服を切り裂いただけの浅い攻撃だった・・・が、俺を驚かすには十分すぎる洗礼だ。
俺はひとまず彼女の間合から抜け出す。
五メートルほど距離をとり、顔を上げた。
マリーは鞭のようにしならせたアシュバルをいとおしげに撫でながら形の良い唇を動かす。
「うふふ。驚いた?これがこの子の真の姿。」
「なんだよ・・・長剣じゃねーのか。完全にだまされたわ、俺。」
俺が素直にそう言うと、撫でる手を止め、一瞬驚いた表情になる。
しかし、すぐにいつもの蠱惑的な笑みに戻り話を続けた。
「意外にも正直なんだなあ、君。私、気に入っちゃったかも君のこと。」
「そりゃあ、どうも。君みたいな可愛い子に気に入られるなんてうれしい限りだよ。」
「えへへ。可愛いだなんて・・・。うれしいじゃない。」
鞭をしならせ、ヒュンヒュンとしっぽのようにそれを左右に振る彼女。
うれしいとしっぽふるっていぬか猫みたいな感情表現だな・・・。
まあ、振ってるのがとげとげいっぱいの鞭なんで、めちゃくちゃ怖いんですけどね・・・。
「喜んでくれてよかったよ。その歓びついでにそこ、どいてくれたら俺もうれしいんだけど・・・?」
俺は皮肉をこめた口調で言う。
それを聞いた彼女は左手を口に当て、クスリと蠱惑的に笑う。
「ダーメ・・・。ここは通らせないよ・・・。そんなことよりさ、私はもっともっと君と遊びたいなあ。」
ぺろりと舌なめずりする彼女に俺は不敵な笑みを返す。
「いーや。君との遊びはもうそろそろ終わりの時間だ。残りはジャバさまにでもつきあってもらいな。」
「えー。つれないなあ。まあ、いいや。君を半殺しにして連れ帰ったら良いだけだし。」
「おい、なんでそうなる。」
「いいでしょ?別に。勝負に負けたら君は私のもの。君が勝ったらあの子を助けにいける。どう?このルール。」
「ああ、別になんでもいいや。俺は負ける気なんて毛頭ないからな。俺が負けたら煮るなり焼くなり好きにしろ。」
「やったー!これで私もモチベーションが上がってきたよ!」
ピョンピョン跳びはねて歓びをあらわにする彼女。
はねるたびにどこがとはあえて言わないがとんでもないことになっている。
彼女はひとしきり喜ぶと鞭をしならせ、戦闘態勢に入った。
「それじゃあ、第二ラウンド始めちゃう?」
ニコッと可愛い笑顔。
これだけ見てたら本当に良い子なんだけど・・・。
出会ったのがこんな因果でなければ是非とも友達になりたかった・・・。
そんな一抹の哀しさを胸に秘めながら俺は笑顔で答える。
「ああ。始めよう・・・!」
こうしてマリーと俺の戦闘は続いていく・・・。
「ありゃあ、始まってるねえ。あっちは。こっちもそろそろ始めるかい?」
フリュネが腰に手を当て、もう片方の手でポリポリと頭をかきながら言う。
さも、めんどくさげに見えるが、どこにも隙は見当たらない。
無闇に飛びかかれば一瞬で返り討ちに遭うだろう。
エマは冷や汗を流しながら考える。
ここでベストなのは・・・。
「ステラ。ここは私たちに任せてあなたは先に行って!」
ステラはハッとした顔でエマを振り返る。
「で・・・でも!」
「いいからっ!急いでっ!」
ステラはエマを心配そうに見つめていたが、エマの燃えるように輝く、鉄の意志を秘めた青い瞳を見た瞬間、全身に電撃が走ったような衝撃を受けた。
この子は・・・本気だ。
私のことを本気で想ってくれている。
言葉もなにもない、一瞬の目線のやりとり。
だけど、確かに何かが伝わる。
「うん・・・!分かった!先に行く!」
そう言ってステラは走り出す。
彼女がエマの横を通り過ぎるとき微かに口元が動きなにかをエマに伝える。
エマはそれを聞いて少し笑みを作り「当たり前よ・・・。」とつぶやいた。
それを見ていたフリュネは「いかせないけどねー。」と言い、走り去るステラに向けて右手をかざした。
見ると、彼女の手には炎熱系魔法の術式が浮かんでいる。
マズイ!
エマはそう思い、凍結系魔法を急いで詠唱した。
「フリーズ!」
「ありゃ・・・?」
フリュネがそんな間の抜けた声を上げて固まる。
エマ最強の凍結系魔法で、ある一定時間対象者の動きを止めることのできるすごい魔法である。
かのジャバウォックもこの魔法の前では動くことができなかった。
だが、強力な魔法にリスクはつきものでこの魔法は魔力消費量が激しすぎ、長くは使えない。
今もほんの十秒ほどで術が溶けてしまう。
「はあ、はあ・・・はあ。」
エマが膝をつき、苦しそうに息を上げる。
ペナが「大丈夫?エマ!」と声をかけるが答えられない。
そんな様子をみたフリュネは笑みを浮かべる。
「あらら。かのジャバウォック様が今喉から手が出るほど欲しい魔女『エマ』。どれほどのモノかと想っていましたけど私ごとき足止めするのにそれほど疲労なさるなんて・・・期待外れかしら?」
妙に丁寧な言葉を使って、エマ達を挑発するフリュネ。
エマはその挑発にキッと鋭い目つきで答える。
青い瞳と赤い瞳。
両者の視線が交錯する。
一触即発。
まさにそんな言葉がふさわしい緊張感だ。
フリュネの威圧するような目線にもエマは全く怯んでなどいない。
フリュネはめんどくさそうに頭を掻いた後、手の平をエマに向け、詠唱を開始した。
「これ喰らってもそんな顔できんのかあ?」
ニヤリと笑って術式を唱えるフリュネ。
『メテオカノン』
そう唱えると彼女の手のひらに赤い閃光がきらめきだし、
「死ね。」
爆発的な炎の奔流がエマとペナを飲み込む。
「はっはっはー!どうだ。まいったか!」
高笑いをかますフリュネ。
依然、彼女は炎の光線は手のひらから放出し続けていたが、突然何かに飲み込まれたようにすべての炎が消え去る。
そして、炎の中から出てきたのはほとんど無傷のエマとペナだった。
しかも、どうやらぺナが何かをやったらしい。
エマは消耗していて動けそうになかった。
フリュネもそれに気づき首をかしげる。
「んー?なんだ、お前は?魔力もろくに持ってないお前がなにかやったのか?」
心底不思議そうな口調で聞くフリュネの事を鋭い目つきでにらみ返すペナ。
いつもにこにこしている彼女には珍しい表情だ。
ペナはエマとフリュネの間に割って入るようにして立ちあがり、人差し指を敵に突きつける。
「お前がエマを馬鹿にするなあ!何にも知らないくせに!」
「はあ?」
憤慨するペナに対して心底うざそうにするフリュネ。
だが、ペナの怒りは収まらない。
顔を紅潮させてペナは叫ぶ。
「エマはなあ、私を助けてくれたんだ!魔力でおかしくなっちゃってた私のことを見捨てないで・・・。普通、そんなことできないよ!命を狙ってきた敵のことを助けるなんて!あなたにそれができる?できないでしょ!そんなあなたがエマのことを馬鹿にするな!」
ハアハアと息を切らして最後まで言い切ったペナちゃんは目元に涙を浮かべている。
「ペナちゃん・・・。」
エマも涙目だ。
しかし、フリュネには響かなかったらしい。
冷笑を浮かべ、つまらなさそうに髪の毛をいじりながら口を開いた。
「確かに、そんな軟弱なこと私にはできないわねえ。」
「軟弱・・・?」
ペナが聞く。
すると、フリュネは途端に興奮した様子になり、バッと手を大きく広げた。
「ええ、そうでしょう!だって、エマは結局のところ人を殺す勇気がなかっただけじゃない。それを軟弱と呼ばずしてなんと呼ぶのよ。とどのつまり、人の強さっていうのはどれだけ人を殺せるか、支配できるか、屈服させるかでしかないの!負ければすべてが否定され勝者はすべてが肯定される。それがこの世の絶対の真理!負けても命を助けるだとか、対等な関係だとかそんなのは詭弁であり嘘よ!本当は軽蔑し、見下していることを自己欺瞞によってうわべでは取り繕ってるだけ。本心では彼女もあんたのことをどうでもいい、おもちゃぐらいにしか思ってないわよ。飽きたら捨てられる運命だわ。かわいそうにね?」
フリュネはそう言うと、手を口元に当て、クスリと笑う。
ペナはうつむいて何も言わずに聞いていた。
ショックを受けてしまったんだろうか?
傷ついてしまったんだろうか?
エマは彼女の心傷がいかほどか想像もできなかった。
顔色で判断しようにも俯いているため彼女の表情はよく見えない。
「ペナちゃん?」
私は彼女に向かって慎重に呼びかけた。
すると、ペナちゃんは突然ぱっと顔を上げてフリュネを見た。
その顔にはなんと笑顔が浮かんでいる。
誰もが意外に感じて、中でもフリュネは驚いていた。
驚いていたのも束の間、フリュネはそれまでの整った相貌を崩し、醜い憤怒の表情を浮かべた。
「なにがおかしい!」
そう叫ぶフリュネ。
割れんばかりの大声だ。
エマは心配そうにペナを見つめる。
だが、当のペナは穏やかな笑みを浮かべつづけている。
そして彼女はフリュネを見ながらこんなことを言い放った。
「あなた、愛を知らないんだね?」
「なに・・・愛だと?」
疑問を呈するフリュネにかまわず続けるペナちゃん。
「そう、愛だよ。本当に愛って不思議でね、言葉にしなくてもちゃんと伝わるんだよ・・・その人が本当に自分のことを思ってくれていたらなんでかわからないけど伝わるの。私も昔は分からなかった。愛も恋も友情も。形もなくて、明確な定義もないそんな曖昧なものなんかいらないって思ってた。自分だけが信じられる、自分だけが確かなものだって・・・そう思っていたの。」
エマは心配そうにして涙目だ。
そんなエマを気遣ってか少し目線をエマに移し、ニッコリと笑うペナちゃん。
そして、フリュネをその優しげな眼差しで捉えて言う。
「でも、違ったんだよ。愛は確かに存在する。愛を向けられればそれは自分の心に必ず染み込んで、自分の心があったかくなるの。そしたら、次はその暖かさを自分も誰かに届けたくなるんだよ。そうやって人と人とが繋がっていくの。この世界もそうやってできているの。それこそが本当は一番大切なことなんだよ。」
そこでペナはいったん区切ると、ペナは胸元に両手を引き寄せ、悲しそうな表情になり
「だから、あなたみたいな人を見ると私はその人が愛を貰えなかったんだなあ、ってかわいそうになる。私の愛を分けてあげたくなるんだよ。」と言った。
エマはもう流れる涙を抑えることができなかった。
ペナちゃん・・・あなたそんな風に思ってくれていたのね・・・ありがとう。ありがとうペナちゃん。
この二週間ほどの間、私とペナはエイラとともに三人で過ごすことが多くなっていた。
その中で、はじめはどこかぎくしゃくしていた三人もいつしか仲良くなり、私は本当の家族かそれ以上に思っていた。
ペナちゃんも楽しそうにしてくれて、私のことを『大好き』って言ってくれたときには本当にうれしくて泣き出しちゃいそうだったの。
でも、心の中で少し不安もあった。
ペナちゃんが心の奥底では私とも晋介ともまだ敵だと思っているんじゃないか?
仲良しなのはうわべの上でだけなんじゃないか?と。
でも、そんな不安は全く必要なかった。
だって、こんなにも今、私の心は温かいんだから。
ペナちゃんの言葉がすべて真実で彼女も私のことを愛してくれているんだと伝わってくるんだから。
それが私にはうれしくてうれしくて。
もううれしくてたまらなかったのだ。
ペナちゃんが声を上げておいおいと泣く私のことを優しげな目で見つめてくる。
そして、口の動きだけで『大好き』と言うのだった。
エマはもう涙を止めることができなかった。
ペナはそんな彼女を笑顔で見ていたが、すぐにフリュネの方に向き直る。
するとフリュネは怒りの形相を表面上は沈めて言う。
「なるほど・・・。友情談義。とてもためになりました。ありがとう。でも、今ここで必要なのはなんだと思う?そう!力よ!力。貴方たちの言うその『愛』って言うやつがどれだけ素晴らしくて尊いものだとしても今この場に於いてはなんの意味も力ももたらさない!この場に於いては力こそすべて。力こそ正義。それが純然たる真実なの。そして、この場における勝者だけが歴史を作っていくの。社会を作っていくのよ。『愛』か『力』か。どちらが正しいのか今この場に於いて決めましょう?二人とも。」
蠱惑的な笑みで満足げに笑うフリュネ。
ペナはフフッと勝気に笑い、フリュネを見据える。
「うん、そうだね。どっちが正しいのか決めようか。私はそれでも負けないよ。負けたらあなたに『愛』がすごいって事教えられないし!」
「うふふ。生意気なこと・・・。」
二人は五メートルほど離れて対峙する。
エマも加勢しようと立ち上がるが未だ魔力が戻らずふらつく。
すると、ペナちゃんが背中を向けたまま「エマは休んどいて。つらいでしょ?」などという。
そんなことできるはずない・・・!
「いいえ。私もやる。ペナちゃんのこと私も大好きだから。」
ペナが驚いたように横を向く。
エマはそんなペナににっこりと笑みを作った。
しかし、そんな隙をフリュネは見逃さない。
「なに・・・ほっこりしてんのよ!ここは戦場!気を抜けば死ぬ!それを思い知れ!」
またも、『メテオカノン』を放つフリュネ。
先ほどよりも起動するまでが早くエマには対応できない、
まずい・・・間に合わない。
せめてペナちゃんだけでも・・・。
そう思いペナちゃんをかばおうとすると彼女が驚きの行動にでていた。
なんとペナが両腕をその炎につきだした。
エマは彼女の腕がやけどを負うことを想像して息をのむ。
しかし、そうはならなかった。
ペナの手に触れた炎は一瞬で吸収し、彼女自身は何もダメージを負っていない。
みるみるうちに炎を吸収し、後には何もなくなる。
フリュネも驚きを隠せない様子だ。
「なんだ、その技は・・・。見たこともないぞ。」
「これは『ゲヘナドレイン』っていう私の固有魔法。そして、こんなこともできる。『メテオカノン』!」
詠唱が済むと同時に手の平をフリュネへと向けると赤い閃光が煌めき出し、次の瞬間には炎の光線がフリュネに向かって放出された。
ズガーン!
という大きな音がし、あたりの木々が爆風によって吹き飛ばされる。
煙が立ち上り、フリュネの姿が見えない。
エマは驚きの表情でペナを見つめる。
「ペナちゃん。あなた、魔法が使えるの?私が全部取り除いたっていうのに。」
するとペナはイタズラが成功したような無邪気な笑顔でエマに答える。
「これ、見て?」
ニッと口角を上げたかと思うと手首の内側に刻まれている刻印を見せてくる。
晋介も使っていたとおり、魔法について素人のものでも扱える低級の魔法術式である。
刻印を身体に刻んであると魔力を必要としないため、ペナも使える、と言うことなのだが・・・。
「これがなんだって言うのよ・・・ただの収納用の術式じゃない・・・。」
エマはいぶかしげなまなざしを向けていたが、一つ妙なことに気づく。
収納用の術式に似てはいるのだが、より高度で複雑な術式になっており、エマにすら所々解読できない。
「え・・・!これってまさか・・・古代魔術?」
エマは信じられない、と言う様子でペナの顔を見る。
するとペナはうん、と一つ大きくうなずくと腰に手を当てて偉そうにしゃべり出した。
「えっへーん。すごいでしょ?これは遙か昔の魔法文明が使っていたとされる、古代魔術の術式を応用して作られたんだよ!まあ、私には詳しいことは分からないんだけどね?」
たはは、と最後は照れている彼女。
すると、突然、煙が晴れ、フリュネが現れる。
どうやら、炎の防御壁によってさっきのペナちゃんの攻撃は防いでいたようだ。
ダメージらしいダメージは見られない。
彼女はその豊かな赤い髪を鬱陶しそうに払いながら、エマたちの元へと歩み寄ってきた。
「あなた、ペナちゃんだっけ?」
「私はペナって言うの。よろしく。」
ピースサインで答えるペナちゃん。
「ええ。よろしく。ところで、あなたその技がどれだけすごいことか分かっているのかしら?」
「え?しらないよ?興味もないし。」
「な・・・!あなたねえ。」
「だって、今ここでエマのことを守れたらそれだけで十分だもん。私。」
それを聞いたフリュネは呆れたように両手を上げる。
「やれやれ。ほんとお馬鹿さんと話していると嫌になるわ。」
「ええー。ペナはお馬鹿じゃないよ!」
軽く頬を膨らませて抗議する彼女だが、真剣さはあまりない。
フリュネもそれを分かっているので取り合わず話を続ける。
「あなたのその『ゲヘナドレイン』は異常なの。他人の魔力を吸い取って、自分のモノにするだけじゃなくて敵の魔法をコピーするなんて聞いたこともないわ。そこのエマちゃんにも聞いてみなさい。知らないって言うから。」
「そうなの?」
不思議そうな顔をして聞いてくるペナ。
ペナは正直に答える。
「ええ。聞いたこともなかったわ。」
「へー!って事は私結構すごいんだ。」
「いいえ。すごいなんてものじゃない。未だ成功した被験体は存在しなって言う術式よ。こんなところで成功例が見つかるなんて・・・。残念だけど、エマだけじゃなくあなたも連れて帰らなくてはダメみたい。」
鋭い目つきになるフリュネ。
ペナはそれを見てえへへ、と笑う。
「うーん、なんか褒めてくれてるところ悪いんだけど、私成功例、っていうのじゃないと思うよ?」
「なんだと?現にあんたは今発動させることができているじゃないか?」
「今は、ね?この技ができるようになったのはごく最近。しかも、魔力を抜き取られてからなの。だから、私はもう魔力がないし、なにも魔法を放つことができない。唯一、敵の魔力を吸い取ったときだけ、一時的に魔法を使えるの。しかも、敵の魔法があまりに大きいと、吸収しきれないからね?そんな便利ですごいものじゃないんだよ、残念ながら。魔法が使えないなんて危険すぎるでしょ?だから私は成功被験体なんかじゃない。失敗作だよ。」
少し悲しそうに『失敗作』といったペナちゃん。
彼女にとっては未だ、被験体時代の記憶が心に深い傷を残しているのだろうか。
エマは心配になりながら彼女の横顔を見つめるがペナはまっすぐにフリュネを見据えている。
フリュネはまっすぐにペナを見据えていたが覚悟が決まったのか、瞳に鋭い光を宿して私たちに言う。
「なんでもいいわ。あなたは今、『ゲヘナドレイン』を使えている。それだけで研究するに値する価値があるに違いない。あなたもエマも今ここでたたきのめしてジャバ様に差し出す。私はもうそう決めた。せいぜい死なないようにしてね?」
ニコッと可愛らしい笑顔を見せるフリュネ。
ペナもそれににっこりと優しく笑い
「お姉さんはその顔が一番可愛いよ。その顔でずっといれば良いのに。」
「ふふふ。ありがとう。あなたも笑顔が一番愛らしいわ。」
「えへへ、ありがとう。」
二人はしばらく笑顔を交し続ける。
エマには彼女たちがとても初対面の仲には見えなかった。
それが少し悔しくて、ペナちゃんと肩を組む。
「うひゃあ!エマ、突然なに?」
突然エマに肩を組まれてペナは驚く。
「ペナ。私たちであの性悪女をやっつけて『愛』のパワーを見せつけてやりましょう?」
それを聞いた彼女は驚いていた顔を次第に不敵な笑みに変える。
「うん!そうだね。お姉さん。覚悟してね?」
可愛らしくウィンクを決めるペナちゃん。
それをふん、と鼻を鳴らして受け止めるフリュネ。
「ふん、まあ、こちらもそろそろ第二ラウンドに入っていきますか?」
「ええ!」「うん!」
こうして、エマ、ペナ、フリュネの三魔女による対決も本格的に激しさを増していったのだった。
いかがでしたか?
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