異世界で剣術修行してみた件   作:A i

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今回はエマと師匠の過去編です。
神聖剣帝の強さやその他諸々が分かる話となっていると思います。
楽しく読んでいただけたら幸いです。
二話に変更したところがあるのでまだ確認していない方はそちらを確認してからお読みください。
感想、評価待っています。


始まりの始まり

「エマ、すまんな。負けてしまった・・・。」

 

師匠が苦しそうにうめきながら私にわびてくる。

そんな・・・。私の師匠が負けるなんて、考えられない。信じたくない!

 

「うそ!まだ戦えるでしょ?そうだよね?師匠・・・。」

 

自然と涙が次から次へとあふれ出てくる。ぬぐってもぬぐってもいっこうに止まってくれない。

 

「すまない・・・。ゴホッ!」

 

師匠の口からは一筋の血。当たり前だ。あんなすさまじい剣撃を浴びたのだから。

頭ではもう、師匠に戦う力なんて残されていないことを分かっている。

だが、心は師匠が負けることを認めない。

あんなに強い、私の大好きな人が負けるわけ無いもん。そんなわけ無い!

そう言って聞かないのだ。

もう涙と鼻水で顔はぐしゃぐしゃだ。

 

「立って、立ってよ。師匠・・・。」

 

「あきらめろ、小娘。そいつはもう立てん。」

 

上方から高圧的な声がそう告げる。顔を上げて声のした方を向くが、声の主の顔は陰になっていてよく見えない。

しかしその男の名前はよく知っている。

師匠が剣聖剣術武闘大会の初戦に戦っていた相手にして最強の覇者。

 

「神聖剣帝 ジャバウォック・・・!」

 

その剣技があまりにも神々しく、美しいことからつけられた異名であるが、剣技とは裏腹にその性格は凶暴かつ残忍。これまでのすべての大会で死者を出している。

 

「では、約束通り、してもらおうか。上書き契約を。」

 

エマは魔女の中でも飛び抜けて魔力保有量が多い。

魔力消費量が膨大なことで知られている転移魔法を得意していることからも分かるだろう。

そこで、ジャバウォックはエマに目をつけた。

今、契約しているミカエルの魔力は良質だがエマに比べると魔力の絶対量が少ない。

魔女とのシンクロ率など気にせずとも自らの力ずくで魔力を魔女から引っ張り出すことのできるジャバウォックにとっては魔女の持つ魔力の質などに関心は一切無かった。

量だ。

どれだけ多くの魔力を持つかだけが問題だ。

世界最強の称号をその当時からほしいままにしていたジャバウォックであったが、強欲な彼はカーティスに話を持ちかける。

今度の剣術大会でエマを賭けて勝負をしよう。

そちらが勝てば今後一切エマには近づかない。しかし、負ければエマに俺と契約を結んでもらう。勝負から逃げたら俺の総力を持ってして貴様をつぶす、と。

 

そして、今カーティスは倒され、軍配はジャバウォックに上がってしまった。

 

エマにはそのとき選択肢なんか残されていなかった。

もう、何も見たくなかった。聞きたくなかった。

愛する師匠は瀕死にまで追い込まれ、自らの運命もこの憎き相手に握られてしまっているのだ。

これを絶望と呼ばずしてなんと呼ぶ・・・。

もう、終わりにしよう・・・。

契約を結んで楽になってしまおう。

依然として涙は止まらなかったが、何か心の内にぽっかりと穴が開き、吹っ切れてしまった。

口元には引きつった笑みが浮かぶ。

 

「いいわ、契約を結びましょう・・・。」

 

ふらつく体を懸命に支える。

そして、ジャバウォックに近づこうと一歩前に踏み出したときだった。

 

「あきらめんじゃねぇぇぇぇええええ!!!!!」

 

頭の中を知らない男の声がこだまする。

誰の声?これ。

頭の中に直接語りかける魔法なんて私ぐらいしか使えないと思っていたのに・・・。

でもどうやら、その男はエマに語りかけてる訳ではないようだ。

男は幼女向け番組をみている様だ。「〇〇ちゃん負けるなー。」などと言って本気で応援している。

なんてバカな男なの?

幼女向け番組でそんな真剣になっちゃって・・・。

 

でも・・・。私もバカ。

この男のこんなくだらない戯言のおかげで間違いに気づくなんて・・・。

情けないったらないわね。

 

なんでこの美少女魔女の私があきらめようとしてるの?

師匠が負けたから何?ジャバウォックが強いから何なの?

 

そんなこと、あきらめる理由なんかにはならない。

負けたらもう一度立ち上がれば良い。彼が強いならこちらはさらに強くなれば良い。

ただそれだけじゃない。

よかった。気づけて。

このまま、取り返しの付かない間違いを犯すところだった。

ありがとう、知らない男の人。

私、あきらめないよ、絶対に。

 

そう決意するといつの間にか涙は止まっていた。

両の脚に力も入る。

よし!もう大丈夫!

そう自分の中で確認した後、顔を上げる。

眼にありったけの力を込めて相手の顔を見やった。

 

「私、やっぱりあなたと契約を結ぶことはできないわ。ちょうど今、好きな人ができてしまったの。ごめんね?」

 

それを聞いたジャバウォックはここからでも分かるほどに顔を紅潮させて、

 

「何を言っている!これはもう決定事項だ。逃しはしない!」

 

と怒り狂って今にも飛びかからんばかりだ。

しかしエマは平然とした顔でこう言う。

 

「あなた程度に捕まる私ではないわ。」

 

「小娘ぇぇぇえええ!!!」

 

我慢の限界に達したジャバウォックがついに飛びかかる。

しかし、エマの詠唱の方が一瞬早い。

 

「freeze!」

 

魔法が発動すると同時に何もかもが止まった。風の音も歓声も聞こえない。

 

「あなたを倒すことはできなくても動きを止めることぐらいはできるわ。五年後に剣術大会でリベンジよ!

首を洗って待ってなさい。」

 

「殺す、絶対に殺してやる!」

 

さすがはジャバウォック。この魔法を食らってもまだ動けるなんて。

しかし、そんなジャバウォックを横目にカーティスの元に駆け寄る。

まだ息はある。

大丈夫、大丈夫だ。

師匠は生きてる。

 

また泣きそうになってきたがそうゆっくりもしていられない。

ジャバウォックは今にも動き出しそうだ。

 

「transport!」

 

転移の呪文を唱えると周りの景色がゆがんでいく。

時空のひずみができあがり自分たちはそこに飲み込まれていく。

ジャバウォックが術を破りこちらへと向かってくるのが見えたところで転移が完了し、あたりはイースト・ステイトの森の中であった。

安心感から涙がこぼれる。

何もかもが終わったような感じと何かが始まった感じとが入り交じった奇妙な感覚である。

頭の中はまだ混乱していて何が何だか分からない。

でも、一つだけ決めていることがあった・・・。

 

 

「あの声の主を絶対に見つけて契約を結んでやる!」

 

 

これがエマと晋介の物語の始まりの始まりである。

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
この物語の始まりの始まり。
ジャバウォックの傍若無人さ。
いろいろ入った回となりました。
楽しく読んでいただけていたらうれしいです。
次話もよろしくお願いします。
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