入学初日いきなり始まった個性把握テストの翌日、今日からは普通に授業が行われる。
雄英の教師はプロヒーロー、つまり授業もプロヒーロが行うことになる。
プロヒーローからの授業を受けるという貴重な体験を終えて昼休み。雄英の食堂はプロヒーロー、ランチラッシュのご飯が安価で食べられるとあって大人気だ。もっとも一佳の母親が毎日円と一佳の分の弁当を作ってくれるので円には関係ないが。
「円城ー、弁当持ってどこ行くんだ?」
円が弁当を持って教室を出ようとすると、クラスメイトであるしょうゆ顔男子瀬呂 範太が声をかけてきた。
「いや、外で一佳と食べようかと思って」
「一佳って言うと昨日のすげえ怖え円城の幼馴染か!」
「なんだと!女なのか!」
円の答えに過剰反応してきたのは昨日の個性把握テストの反復横跳びで圧倒的記録を叩き出した頭にぶどうのようなものがついた小柄な男子峰田 実だ。
「まぁ、生物学上は女だな」
そんなことを話しているとA組の扉が開く。入ってきたのは迎えに行こうとしていた一佳だった。
「円、遅い!なにしてんの」
「悪りぃ、ちょっと話してた。それじゃ、後でな瀬呂、峰田」
瀬呂と峰田に別れを告げて一佳と一緒に外へ出る。
適当なベンチに座り2人で中身が同じ弁当を食べる。ちなみに中には円の好物であるおにぎりが俵型になってたくさん詰まっていた。
「次はヒーロー基礎学なんだっけ?」
一佳の質問におにぎりを頬張りながら答える。
「ほぉだな」
「ちゃんと飲み込んでから話しなよ…」
円の返事に少し呆れた様子を見せて水筒からコップにお茶をうつし円に手渡してくれる。
お茶を受け取り、おにぎりと一緒に流し込む。
「ありがとな。んで、次はオールマイトのヒーロー基礎学だよ」
「オールマイトかぁ。後でどんな感じだったか教えなさいよ」
「ああ、もちろん」
その後はたわいのない話をしながら昼食を終え、お互いの教室に戻る。
円が教室に戻るとほとんどの生徒がすでに教室に入っていた。
円が席について弁当を片付けていると上鳴が話しかけてくる。
「円城、拳藤と飯食ってきたんだろ」
恐らくは、瀬呂か峰田、もしくは教室に残っていた誰かが言いふらしたのだろう。聞き方こそ疑問系だがほとんど確信しているようだった。
「ああ、俺と一佳は弁当だからな。外で食ってきた」
「くっそ、羨ましなお前、あんな可愛い子と…」
「別にお前らが邪推するような関係じゃないっての。小さい頃からずっと一緒なんだ、今更別々なのも変だろ」
上鳴の恐らくは妬みであろう言葉に答えたのは円の本心だ。別にわざわざ別れて食べる必要もない。そのうちクラスメイトたちと食べるようになるだろうしな。
「なんだったら今度お前も一緒に食うか?」
円のこの言葉に上鳴の目が輝いたように円は見えた。
「食う!ぜひ、一緒させてくれ!」
「だったらオイラも頼む!円城!!」
「いや、なんかお前ら必死すぎて怖いわ」
上鳴や峰田が何かを言っているがもう無視することに決めた円は着席して次の授業を待つ。上鳴と峰田に言ったことは事実だ。必死しすぎる様子がほんとに怖かった。
昼休みが終了しこれ以上は無駄と悟ったのだろう。上鳴と峰田も自分席に向かう。
次の授業はさっき一佳と話していたようにヒーロー基礎学。そして教師はオールマイト。ヒーローを志している者なら彼を尊敬していない人はいないだろう。クラスメイトたちは多くが興奮を隠しきれずにそわそわしている。かくゆう円も少しワクワクしている。なんと言ったってNo. 1ヒーローなのだから。
「私が、普通にドアからきた!!!」
扉を豪快に開けながらオールマイトが教室に入ってくる。
周りから、オールマイトほんとに先生やってんだなあ、画風違いすぎて鳥肌が、なのどの声が聞こえてくる。
確かにオールマイトはまるでアメコミから出てきたかのようだ。画風が違うと言いたい気持ちもわかる。
オールマイトが担当するのは何度も言っているがヒーロー基礎学。単位数も最も多い非常に重要な科目だ。
「早速だが今日はこれ!戦闘訓練!」
battleと書かれた札を掲げるオールマイト。
いきなりの戦闘訓練。思わず円は笑みを浮かべた。今まで自分の力を試せる相手は一佳しかいなかった。自分の力を試す絶好の機会だ!
「そしてそいつに伴ってえ、こちら!!」
オールマイトの言葉と同時に教室の壁から数字のついた箱がでてくる。
「入学前に送ってもらった個性届と!要望に沿って誂えたコスチューム!!」
オールマイトのその言葉に教室が盛り上がる。ヒーローといえばかっこいいコスチュームを思い浮かべる人も多い。それだけにテンションが上がってしまうのだろう。
「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!」
「「はーい!!」」
▽ ▽ ▽
「円城のコスチュームお前、スーツって…」
コスチュームに着替え終わり、グラウンドβへ移動しているところで円のコスチュームについて上鳴が突っ込んでくる。
円のコスチュームは確かに他の生徒たちとは全く違う。口元を覆うマスクとフードがついていること以外は、いたって普通のスーツだ。
ただ、もちろんコスチュームと言うからには色々と改造してある。
「ただのスーツじゃねえぞ。耐熱、耐水、耐電、耐衝撃、さらに防刃、防弾、保温まで兼ね備えて、服のいたるところには武器が仕込まれてんだぞ。ついでに腰のとこのポーチには便利グッズが詰まってる。つーかお前のコスチュームなんてただの私服じゃねーか」
「いやいや、かっこいいだろ!それに耳のこれは通信できんだよ」
「俺のスーツだってかっこいいだろうが」
「いや、まぁ確かにかっこいいけどよ…」
何か言いたそうな顔をした上鳴と連れだってグラウンドβに到着するとそこには各々のコスチュームを身につけたクラスメイトたちが勢揃いしていた。
「なぁ、上鳴」
「なんだよ」
「あのポニーテールのやつ、八百万だっけ?あれいいのか?」
円が気になったのは明らかに露出過多なコスチュームを身につけたポニーテールの少女八百万 百だ。
はっきり言ってしまえば円には痴女にしか見えない。
「いいんじゃねぇの。あれくらい露出してるヒーローもいるし。なにより眼福じゃねえか」
「お前それは最低すぎるだろ…」
最低なことを言いだした上鳴に一言突っ込んでおいて周りを見渡す。被服控除というシステムにより、雄英入学前に個性届と要望やデザインなどを書いて送ると学校専属のサポート会社がコスチュームを作ってくれる。見た限り、全員が自分にあったコスチュームを要望したんだろう。
「さぁ、戦闘訓練のお時間だ!」
オールマイトのこの発言にいきなり白いメットを被ったやつが手を上げて質問している。この真面目すぎる感じは恐らく眼鏡君こと飯田 天哉だろう。
オールマイトは飯田の市街地演習を行うのか?という質問に答える。
「いいや、もう二歩先に踏み込む。敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪敵出現率が高いんだ!監禁、軟禁、裏商売!このヒーロー飽和社会!」
ここで1つ咳払いをいれて続ける。
「真に賢しい敵は闇に潜む…。君たちにはこれから敵組とヒーロー組に別れて2対2の屋内戦をやってもらう!」
「基礎訓練なしに?」
オールマイトの発言に蛙のような女子生徒、蛙吹 梅雨が最もな質問を投げかける。
「その基礎を知るための実戦さ!ただ、今回はぶっ壊せばいいロボじゃないのがミソだ!」
恐らくは入試の市街地演習のことを言っているんだろう。当然のように対人戦闘と機械相手では勝手が違う。
一気にたくさんの質問をされて(中に1人全く関係ないことを言っているのがいたが)オールマイトが唸る。いかにNo. 1ヒーローとはいえ流石に聖徳太子の真似事はできなかったらしい。
オールマイトはカンペを見ながら演習の説明を始める。カンペが用意しているあたりまだまだ新米の教師であることが見てとれる。
オールマイトによると、状況設定は敵がアジトのどこかに核兵器を隠していて、ヒーローがそれを処理しようとしているという、何というかアメリカンな感じの設定だ。
ヒーローの勝利条件は時間内に敵を捕まえるか、核兵器を確保すること、敵側の勝利条件はヒーローを捕まえるか時間まで核兵器を守ることらしい。
そして、コンビと対戦相手はくじで決めるらしい。
「君たちは21人いるからね。1試合だけちょっと変則的に、敵側が3人、ヒーロー側2人で対決してもらうよ!」
オールマイトの補足にヒーロー側が不利過ぎませんか?という質問が飛ぶが、オールマイトのヒーローとは逆境を打ち破るものさ!という言葉に納得したらしい。
くじを全員が引き終わる。円とペアを組むのはまるで、入試のときのように上鳴だ。
「円城!また一緒だな!よろしく頼むぜ!」
「まぁ、誰かよく知らない奴より上鳴の方がマシか」
そして、最初の対戦相手が決まる。
「最初の対戦相手は、これだ!」
そこに書いてあったのはヒーロー側が円と上鳴、敵側が3人、髪の色が半分で違う轟 焦凍と触手のようなものを持っている障子 目蔵、最後に耳たぶからイヤホンジャックのようなものが伸びてるボブカットの少女、耳郎 響香だ。
「げ、3人のとことかよ」
「いいじゃねえか!腕がなるだろ!」
敵チームが先に入ってセッティングを行い、5分後にヒーローチームが潜入という流れらしい。他のクラスメイトたちはモニタールームで待機のようだ。
「よし、上鳴作戦立てるぞ」
「おうよ!」
▽ ▽ ▽
「作戦は理解したな?」
「ああ、大丈夫だ」
上鳴と5分という短い時間だか作戦を煮詰めた。あとは開始を待つつだけだ。
「それでは屋内対人戦闘訓練開始!!!」
オールマイトの合図で対人戦闘訓練が始まった。
戦闘訓練です!
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