痺れは残っていても動けないほどではないのだろう。第1試合が終わり戦った5人がモニタールームに集まったところで好評が始まった。
「さて、じゃあ講評だ!まぁ、みんなわかってると思うけど今回のベストは円城少年だね!」
周りからはだよなぁ、といった雰囲気が醸し出される。今回の演習はおおよそ円の想像通りに進み、効率的に敵チームを無効化できた。円がMVPだというのを疑う者はいないのだろう。
オールマイトのじゃあ説明できる人、という問いかけに1人の少女が手をあげる。痴女コスチュームを身につけている八百万だ。
「よし、じゃあ八百万少女!」
「はい!それは終始円城さんが状況を支配していたからです。上鳴さんと一緒に突撃しなかったのは感知されるのを避けるため。あえて大声を出して突っ込んでいき派手に戦闘をしたのは恐らくは耳郎さんの個性が聴覚を強化する類であることを予測したから。そして、障子さんにずっと張り付いていたのは準備が整うまでの時間稼ぎを最も効率よく行うためですわ」
理路整然と言葉を並べ言い切った八百万を見てオールマイトが少し震えている。恐らくは思っていたより色々言われてしまったのだろう。
「まぁ、概ねその通りかな…。正解だよ!くぅ〜!」
「常に下学上達、一意専心に励まねば、トップヒーローになどなれませんので!」
ものすごく頭の良さそうなことを言っている。きっと見た目の通りに勉強できるんだろうなあ、と円が考えていると横から強い視線を感じた。
ちらっと横を向くと円を睨んでいたのは轟だった。だが円には睨まれる理由がない。確かに訓練では勝利したがそれくらいで睨まれるなんて溜まったんじゃないなあ、と思っていたのが伝わったのか轟が声をかけてくる。
「今回は負けた。作戦でも完璧にしてやられた。俺にできたことなんてほとんどなかった。だから、次は負けねえ」
告げられた言葉は間違いなく宣戦布告。次は負けないという強い意志を感じる言葉だった。睨まれたときは、なんなんだよと思っていた円だが、これには思わず笑ってしまう。
「なに、笑ってやがる」
轟が不機嫌そうな様子で少し低くなった声で告げてくる。バカにされた、と思ったのかもしれない。だが、円にはそんつもりはなかった。笑みは思わずこぼれてしまったものだ。
「悪い、バカにしたつもりじゃねえよ。ただ、嬉しかったからさ」
轟が怪訝な様子で「…嬉しい?」と問いかけてくる。確かに睨まれて、宣戦布告されて嬉しいと感じるのはちょっと変かもしれない。だが、円にとって純粋に闘志をぶつけてきてくれたことが嬉しかったのだ。
「ああ、あんな風に闘志向けられたらさ、燃えてくるだろ」
轟はポカンといった顔をしている。何言ってんだこいつ、といった様子だ。
円は少し慌てて言葉を続ける。
「とにかくさ!次も負けない。勝つのはおれだよ、轟 焦凍」
「ああ、俺も負けねえよ。次は勝つぞ、円城 円」
轟が少し嬉しそうな顔をして応えてくれる。そのタイミングでオールマイトが「次は場所を変えて第2戦を始めよう」、と声がかかる。
次の試合は、緑谷と麗日がヒーローチーム、爆豪と飯田が敵チームのようだ。
爆豪がものすごい形相で緑谷を睨んでいる。なんか敵面に磨きかかってそう、と円は思ったが流石に口には出さなかった。だが、上鳴が爆豪について声をかけてきた。
「なあ、あいつなんであんなに緑谷睨んでんだよ。怖すぎだろっ!」
「さあな、なんか因縁でもあるんじゃねえか」
わからないことは棚上げする。間も無く第2戦の開始だ。自分の訓練は終わったが人のを見るのも訓練だ。他人の戦いを見て自分に活かせるところは活かさねばならない。
「第2戦、開始だ!!」
第2戦が始まった。
▽ ▽ ▽
戦闘訓練は緑谷が大怪我をした以外に目立った怪我もなく終了した。
爆豪にしろ、緑谷にしろやり過ぎたとしか思えない。確かに、熱い戦いを見せてもらったと思うが、なぜ屋内戦闘訓練であんな派手に建物を壊したのか、因縁深い何かがあるんだろう。
「お疲れさん!!」
授業が終わり、オールマイトが2、3言話をしたあと、緑谷に好評を伝えに行くと言ってものすごい勢いで走り去っていった。
クラスメイトたちもあっけに取られている。
「とりあえず、着替えて教室戻ろうぜ」
円の一言で、それもそうだな、と全員が更衣室へ向かった。
午後の授業もすべて終わり、帰りの準備をしていると切島が円に声をかけてきた。
「円城、今日の戦闘訓練やばかったぜ!めっちゃつよいじゃねえか!」
切島だけじゃなく周りのクラスメイトたちも次々にすごい、すごいと言ってこられて円は少し狼狽えた。
ガラッと扉の開く音がして、そちらを向けば爆豪が既に帰ろうとしてるところだった。
爆豪に向かって切島が声をかける。
「おい、爆豪!爆豪も凄かったぜ!一緒に反省会してかねーか?」
チッ、と1つ舌打ちをし「帰る」とだけ告げて爆豪は帰って行く。きっと何か今日の戦闘訓練で思うところがあったのだろう。
周りの空気が少し悪くなる。仕方ない、と円は空気を変えるために声をあげた。
「まぁ、ほっとけよ切島。ああゆうプライドが高いタイプは構っても逆効果だ。それより反省会すんだろ?」
「ん…、ああそうだな!」
クラスメイトたちが反省会で盛り上がっていると、ドアが開き緑谷が入ってくる。
緑谷が入ってきて周りが一気に盛り上がった。凄かった、熱かったぜ、などの言葉が飛び交い、緑谷は何やら照れている様子だ。賞賛されることに慣れていないのかもしれない。
確かに今回の緑谷の、戦いは熱いものがあった。見ているクラスメイトたちも画面に釘付けで、その後の試合は影響されているようなクラスメイトもいたほどだ。
話が盛り上がっていると上鳴と麗日が荷物を持って教室に戻ってきた。麗日は緑谷を見るとそちらに走って行く。
「なんだ、フラれたのか上鳴」
円が笑いながら麗日にスルーされた上鳴に声をかけると「うるせぇ…」とテンションの下がった声が聞こえてきた。
上鳴と話していると緑谷が教室を飛び出していった。
「切島、緑谷急に走ってどこいったんだ?」
円は、疑問に思い緑谷の近くにいた切島に声をかける。
「わかんねえけど、多分爆豪追っかけてったんじゃねえかな?」
そうか、と生返事を切島に返し、円は帰りの準備を進める。
緑谷と爆豪は幼馴染だと聞いたし、あの爆豪の性格だ。きっと色々とあったんだろう。
「幼馴染らしいけどお前と拳藤の関係と全然違うよなあ」
近くにいた上鳴が思わずといった様子で円に声をかけてきた。
「まあ、あいつらと、おれと一佳は違うからな。色々あんだろ」
そんな話をしている間に帰りの準備を終えて帰ろうかと思っていたらふたたび上鳴に声をかけられた。
「そうだ!円城せっかくだしさ飯食ってかねえ?拳藤さんも一緒に、どうだ!」
上鳴からの飯のお誘いだった。
「なら一佳に声かけてくるからちょっと待ってろ」
そう上鳴に返事をして教室を出て行くと後ろの方から上鳴の「よしっ!」という喜びが隠しきれていない声が聞こえてきた。女子とご飯を食べに行くことがよほど嬉しいらしい。
やはり見た目通りチャラいやつだ、と上鳴の評価を再設定しながら隣のB組のドアを開ける。
「一佳〜。いるか?」
円が声を上げると教室の後ろの方でB組の女子たちと話していた一佳が返事をしながら歩いてくる。
「なに?どうしたの円?」
「今日帰り飯食ってこうぜ。上鳴が一佳も一緒にって」
「私今日クラスの子とご飯食べに行こうと思ってたんだけど」
どうやら一佳たちも飯を食べに行くようだ。これは無理かなと思っていると、後ろから円を押しのけて上鳴が話し出す。なぜかその横には峰田がいる。
「じゃあさ、B組の子も一緒にどうよ!クラス交流って感じで!」
こいつ女子と飯食うために必死だなぁと思ったが、一佳には思いの他高評価だったようだ。「クラスの子に聞いてみる」と言ってさっきの女子たちの元へ歩いていく。
そして、円の前では上鳴と、峰田が激しくガッツポーズをしている。よほど女子と飯を食いに行けるのが嬉しいらしい。ここまでくると逆に清々しいかもしれない、と円が思ってると一佳が戻ってくる。
「大丈夫だってさ、こっち5、6人くらいになりそうだけどA組は?」
「わかんねえから聞いてくる」
一佳の質問に円が答えてA組の教室に戻る。
A組にこの話を持っていくと、こちらでも思いの他高評価でありこれはかなりの人数になりそう、と円は思ったが面倒は全部上鳴に押し付けよう、と決意しなにも考えないことにした。
▽ ▽ ▽
面倒ごとを上鳴に押し付けることはできなかった。A組と、B組で飯を食べに向かった場所は円と一佳が小さい頃から通っている馴染みのお好み焼き屋だ。値段もお手ごろで種類も豊富だとあって結構な頻度で食べにくることもあるほどだ。
「こんにちは〜。ごめんねおばちゃんこんな大勢で」
円がみんなを代表して扉を開けてこの店のおばちゃんに声をかけると、中から嬉しそうな声が聞こえてきた。
「大丈夫よ〜、円ちゃんも一佳ちゃんもそのお友達もゆっくりしていってね」
おばちゃんの円ちゃん発言に笑っていた上鳴を、しめながら中に入ると奥の座敷に案内される。
座敷に適当に座り注文をすませ、飲み物がきたところで一佳が場を仕切る。
「それじゃあ、とりあえず親睦会って感じで。かんぱーい!」
「「「かんぱーい!!」」」
一佳の乾杯の音頭に、全員が合わせそこら中で会話が始まる。やはり1番多い会話のネタは今日の屋内対人戦闘訓練のようだ。
ちなみに、自己紹介などはここにくる途中で全員が済ませた。
A組からは円と上鳴、峰田、切島、耳郎に蛙吹、八百万の7名が参加している。
B組は一佳に髪がイバラのようになっている女生徒、塩崎 茨、髪で左目が隠れている女生徒、柳レイ子、そして何やら熱い雰囲気を醸し出す男子生徒、鉄哲 徹轍、しゃれこうべのような顔をした男子生徒、骨抜 柔造の5名が参加している。
「さっき教室でも言ったけどさ、やっぱり円城の格闘戦やべぇって!教えてくれよ!」
「いや、切島だったらおれみたいに小技使うよりもゴリ押した方強いだろ。教えてくれってんなら教えるけどさ」
「円、今日の訓練勝ったんだ」
「ああ、上鳴とコンビでな。やっぱ電気を操る"個性"は強いわ」
「B組も今日のヒーロー基礎学は屋内対人戦闘訓練でしたの?」
「うん、そうだよ。私はなんとか勝てたかな」
やはり今日の訓練の話題が尽きない。こんな試合があった、こんなことしてくるやつがいた、この"個性"が強かった、と運ばれてくるお好み焼きやもんじゃ、さらにはたこ焼きなどのサイドメニューを食べながら話がどんどん盛り上がり、遂には自分の"個性"の話にまで辿り着いた。
「そういえば円城ちゃんの"個性"、今日の訓練でも使っていたようだけどどんなのかよくわからないのよね」
梅雨ちゃんが円の"個性"について聞いてくる。名前にちゃん付けは蛙吹と呼んでいたら訂正された。
「拳藤と、上鳴は知ってんだよな?」
「そりゃ、私は長い付き合いだしね」
「俺は今日教えてもらった」
「"個性"教えろよ、円城!」
梅雨ちゃんの一言で円の"個性"は一体なんなのかという話題になってしまった。
別に隠しているわけではないし話してもいいのだが、せっかくだし当ててもらおうと円は思う。
「まぁ、考察して当ててみろよ。当たってたらちゃんと教えるからさ」
円のこの一言に、B組の連中までもが盛り上がり"個性"の予想を始める。会話の中心は八百万だ。今日の訓練でも思ったが八百万はかなりの洞察力を有しているらしい。
「まずは、円城さんの今日の戦いを見るに"個性"で索敵などをできると私は思いますの」
「索敵?なんでだよ?」
「円城ちゃんは今日の訓練でなんの迷いもなく核兵器の部屋まで到達したわ」
「確かに、円城1分もかかんないで部屋まで来るからすごいびびった」
「つまり、広範囲を索敵できる"個性"であるということですか?」
「いえ、それだけではないと思います」
円の"個性"がどんどん予測され話し合いが活発になる。"個性"の詳細を知っている一佳と上鳴、それに円の3人はそんな輪に入らず3人でのんびりお好み焼きに舌鼓をうつ。
「やっぱり、ここのお好み焼きうまいな〜」
「そだね、昔から通ってるしね」
「いや、ここのほんとうめーよ。今度は他のやつらも連れてこようぜ」
ちなみにこのクラス交流で主に八百万によって円の"個性"は大まかに当てられ、ここにきているメンバーに"個性"を説明しなくてはいけなくなったのは、また別の話。
戦闘訓練編終了です!せっかく拳藤さんと、幼馴染設定なんだしB組と絡ませたいけどB組の子たちがよくわからないっ!
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