ハイスクールAMEN [リメイク] 作:雑魚グール
ヴァチカンの教会、その室で私ーーー紫藤イリナはある人物を待っていた。 机を挟んで目の前にいるのは私と同じキリスト教徒のゼノヴィア、今度の任務の同行者である。 任務の目的地は日本、それも私の故郷である駒王町。
現在待っているのはもう一人の同行者… アーシア・アルジェントと呼ばれる教会の中でも最強クラスに分類される悪魔祓いだ。
それにしても、遅い。 もう少しで時間のはずだが…
「遅いわね…」
「まあ、しょうがないだろう。 聖女アーシアは任務を知らされたのも昨日だと聞く。」
「そうだけどさぁ…」
聖女アーシアは何しろ多忙で、今回も他の任務から帰ってきたら直ぐに新しい任務だったそうだ。
その上孤児院の先生をしているから準備には時間がかかるのだろう。
「…そろそろ時間ね。」
壁に掛けられた時計を見て、呟いた時に部屋の扉がゆっくり開けられた。
その向こうにいたのは… ブロンドの長髪、黒い修道服を着た少女だった。
「…時間には間に合ったようだな。」
少女は呟いて、木製の椅子を足で引いて腰掛ける。
およそ最強とは思えない見た目だが、言動からしておそらく…
「遅くなって悪い。 私の名はアーシア・アルジェントだ。 あー、そちらがゼノヴィアでそっちが紫藤イリナか?」
「は、はい! そうです!」
「そう固くなるな。 年齢は同じだし我々は同僚だ。」
とは言われても、相手があの聖女アーシアともなると萎縮してしまう。 相方のゼノヴィアはまじまじと聖女アーシアを見つめていた。
「信じられないな。 とても最強クラスの悪魔祓いとは…」
「まあ、初対面の相手にはそう言われるよ。 さて、今回の任務はエクスカリバーの奪還だ。 ふざけた堕天使を皆殺し… にはしなくてもいいがそれなりの制裁を加えるのが好ましい。 向かう先は… 極東か、日本の駒王町だな。 ここは悪魔の領土だからいざこざが起きないように気をつけろ、前もって上が悪魔に許可は得ているそうだが、場合によっては戦闘もあり得る。 こちらから手は出すな。 相手から来たら…」
聖女アーシアはどこからか取り出した資料を読みながら、最後に銃剣を勢いよく机に突き刺した。
「殺せ、一片の慈悲も無く殺せ。 構わん、邪魔立てする悪魔、堕天使は好きなだけ殺せ。」
言い放った彼女は資料をしまい、銃剣を引き抜いて袖の中に入れた。
…話の通り、悪魔への殺意が凄い人だな…
「では、出発としよう。」
「ああ、そうだな。 しかし… 上から移動方法は聞いてないがどうするんだ?」
聖女アーシアに物怖じせずに、タメ口で話しかけられるゼノヴィアはシンプルに凄いと思う。 いや、もうちょい敬語を…
と、その時に聖女アーシアがこれまたどこからか金属で補強された聖書を取り出した。
「私の奇跡で向かう。」
聖女アーシアが聖書に手を置くと、辺りに聖書のページが飛んだ。
淡く光る聖書のページ私たちを取り囲み、私たちは光の中に沈んだ。
♢♦︎♢
「え!? 悪魔祓いが!?」
「ええ、そうよ… それもあの『首斬り
俺は兵頭一誠、高校二年生で悪魔だ。
堕天使によって一度殺されたが、その後グレモリー眷属の
「『首斬り
周りの空気からして、他の眷属は知っているんだろうが…
生憎俺は悪魔になりたてなのでわからない。
「教会の悪魔祓い… その中でも最強に数えられる聖女よ。 つい先日、フェニックス家の長男が封印されたのは覚えているわよね?」
「ああ、はい。 もしかしてそのシスターが…」
「ええ、その通り。 フェニックス家の長男を封印したと推測される悪魔祓いよ。」
フェニックス家ってのは悪魔の中でもお偉いさんの七十二柱に数えられる貴族だ。
ちなみにそのフェニックス家の三男が部長の元婚約者だった。
「教会側、となるとやはりあの事件が原因でしょうか?」
「ええ、そうでしょうね。 堕天使、本当に面倒ごとを持ち込んでくれたわ…」
副部長である朱乃さんの言葉に、部長は頭を悩ませたように言う。
「ですが、なぜいきなり?」
「魔王様から今朝連絡があってね。 だからこうして朝にみんなを集めているのよ。」
いけ好かないイケメンの木場の質問に答える部長。
いや、まあそんな大切なことならもっと前もって言って欲しいよな。
「とにかく、その悪魔祓い達には手出ししちゃダメよ? 私たち眷属が束になって掛かっても恐らく敵わないわ。」
「…そんなに強いんですか?」
「ええ、現在最も多く悪魔を殺している悪魔祓いとまで言われているわ。」
そ、そんなにか… 紅髪の
「では、解散とするわ。」
部長の一声で、俺たちはそれぞれ教室へ向かった。
♧♣︎♧
「ま、まさか奇跡でここまで転移だなんて…」
私ことイリナは、とことん常識外な聖女アーシアの凄さに驚いていた。
あんなに遠いところからここまで転移、しかも奇跡は移動には向いてない。 それを単独で、片手間に済ませてしまったのだ、彼女は。
「さて、行くとしよう。 すまないが私には日本語が話せん。 通訳はイリナに頼むぞ?」
「は、はい!」
「タメでいい。 名を呼ぶときの聖女もやめろ。」
「えっと… 任せて!」
「イリナは堅いなぁ…」
私の背を叩きながら言うアーシアと、その私の反応を見てつぶやくゼノヴィア。
しょうがないじゃない! 目の前にあの聖女がいるんだもん!
「早い所堕天使を残滅してエクスカリバーを持ち帰ろう。 ずっと滞在していると悪魔を狩ってしまいそうだ。」
なんともなさそうな表情で言うアーシア。
いや、冗談に聞こえない… というよりも冗談でも無いのだろう。
「しかし、どうする? 今のところなんの情報も無いぞ?」
と言って、ゼノヴィアが辺りを見回す。
どうやらここは山奥のようだ。 確かに、駒王町には山があった。
「取り敢えずは山を降りるとするか… 一先ずは寝床を確保するのが吉だ。 野宿でも構わんが日本でそれは難しいか?」
呟きながら、私たちを先導して山を下る凸凹の山道でもその体がブレることはなく、それがアーシアの強さを表していた。
数分で山を下り終え、アスファルトで舗装された道に出た。
「さて、私は単独でそこらを見回る。 そちらでも探しておいてくれ。 ああ、そうだ、これを持っておけ。」
そう言ってアーシアのから手渡されたのは携帯電話だった。
「業務用の携帯だ。 何かあったらこれを使って私を呼べ。」
と言って振り返らずに手を振り、アーシアはどこかへ行ってしまった… さて、どうしたものか…
☆★☆
「どうするか… 廃教会があるそうだが、それは先日破壊されているらしいしな…」
イリナとゼノヴィアと別れ、私は怪しい場所をしらみ潰しに探していた。
しかしまあ、一朝一夕に見つかるものでもあるまい。
しかしもう夕暮れ時か… ちらほらと下校中と思われる学生も見える。
と、その時、携帯が鳴った。
向こうに何か進展があったのか? そう思い、電話に出る。
「どうした?」
『あ、もしもし、アーシア? 今私、ある家の前にいるんだけど、私の記憶が正しければ私の幼馴染の家なんだけど… 悪魔の匂いがするのよね。』
「…ほう?」
『ええ、それで… 一応悪魔の側にも挨拶をしたほうがいいんじゃ無いかと思って、これでも天界の命令で来てるのだから、ある程度の礼儀は必要だと思ってね?』
『…悪魔どもに敬意など要らん。 奴らにすべきは顔を踏みつけて唾を吐きかける行為だ… いや、すまない、お前たちの考えを否定はしない。 確かに上から悪魔側にも一応の挨拶はするように言われたが… 私としてはそれはここにいるグレモリー眷属の
「…わかったわ、ありがとう。」
では、とイリナとゼノヴィアと通話を切る。
まあ、例え悪魔だとしても古い友人というのは大切なんだろう。 私には理解できんが。