【ゼロの使い魔】×【Bloodborne】助言者ゲールマンの転生記 作:古い底の王
──学園では、既に夜の帳がおり、学生達は自室で眠り、教師達も、明日の準備のため部屋にこもるか、早々にとこについている。
ルドウィークは、星を見ていた。吸い込まれるような群青の空に、雲一つ無く、輝く満点の星空。
静かに染み入るように空を眺めるルドウィークは、ゆっくりと前方の【ナニカ】に語りかける。
「……良い夜だろう。我々が、手を伸ばし、見上げた空だ。君らもあちらから来たのだろう?」
反応は求めていなかった。彼等が凄まじい知識を持つことは知っているが、会話をするような者はいなかった。
しかし、それは答えた。
『我々とて、来たくて来たのではない。あるものは呼ばれて、あるものは興味本意で、あるものは安住の地を求めやって来た。
……我は静かに暮らしたかったのだ。』
茂みから現れたのは雷と海を司る上位者【ゴース】。教会の度重なる実験によって、命を落としてしまったそれは、ゆっくりと、ルドウィークの隣に座り込む。
暫く、なにも言わずに星を眺めていた二人だったが、ルドウィークがそっと切り出した。
「……貴方には、謝らなければいけない。」
反応はないが、話を聞いていることはわかる。ルドウィークは続けた。
「月の魔物、アメンドーズ、メルゴーの乳母、姿なきオドン。やつらは人をたぶらかし、洗脳し、無理矢理に孕ませる。
あれを見逃してはならない。我等は見逃してしまったのだがな。
……だが、貴方と星の娘は違う。」
オドンは何も喋らない。しかし、その心情は伝わってくる。彼は今安らいでいる。この月夜を眺めることで、きっと昔のことを思い返している。
「我々は交信を求めたあなた方を辱しめた。謝罪して許されるような簡単なことではなく、組織を崩壊させなければならんほどの屈辱を与えた。」
「私は、あの組織の長だった。私は……いさめなければならなかった。それが、どれほど組織の信頼をなくすもとしても。」
拳を握りしめる。力が入りすぎて、手袋のしたからじんわりと血が滲み出す。
ゴースはふっ、と笑い、
『……我々が浅はかだったのだ。高き空から。深き海のそこから、我々は貴様を見た。貴様と、貴様の仲間だ。同族を守るため、無い力を振り絞っていた。それでいて助けられぬと、血の涙を流すその姿を、我とあの娘は、見ていられなかったのだ。』
語られなかった真相。彼等は突然現れ、教会人は、喜んでそれを実験に使った。彼等の話を聞くことなど殆どしなかったのだ。
『元はと言えば、遥か昔に現れた突然変異の女王。奴の血から全てが始まった。まして、あの頃は月の魔物が焦っていてな。
一人間に合わなかったが、我々の血を取り込んだものは一先ず奴の洗脳を避けられた。……もっとも、皆狂ったようだがな。』
そう、ゲールマンが洗脳されたとき、ルドウィーク、ローレンス、マリアは無事だった。なぜなら相反する上位者の血液をその身に宿していたからだ。
しかし、ルドウィークは獣とかし、ローレンスも獣に堕ちた。
マリアは絶望し、すべてを教会の恥として隠そうとした。それが不可能であると薄々感じながら。
上位者を冒涜し、得られたものは強大な二体の獣に、滅びた漁村である。これを成果とは言えまい。
『……我々は、あの時選択すればよかったのだ。月の魔物のように、強制的に操るか、アメンドーズのように、静観するかを。
貴様らを救うこともできなかった。星の娘は哭いていたよ。どうしてあなたが死ぬのか。どうして皆獣に堕ちてしまうのか、どうしてこれほどまでに冒涜されてしまうのか、と。』
ルドウィークは、震える声を必死でもとの調子に戻す。
「……貴方と戦いたくはない。どうにか、もとの時代へと戻っていただけないだろうか。」
『………無理だ。我にその力はない。そして……』
立ち上がるゴース。全身から雷光が迸り、中庭にどこから現れたのか、海水が流れ込む。
──あっという間に、そこは小さな浜辺と化した。
『無抵抗で殺されることを、我は良しとはせん。さぁ、かかってくるが良い。月光よ。』
闘気をみなぎらせたゴースをみて、迷いを振り払い、月光の大剣、長銃を構える。
その刀身には、月光の光が満ち、ルドウィークの狩りを導く。
「…ゴース。貴方に恨みはない。だが、私は人を守らねばいけない。」
『それで良い。だからこそ、我等は貴様を選んだ。……さぁ、その力を我に示せ。』
月光の下、かつてその血を分かち合った上位者との、最後の決闘が始まる。
備考【ゴースとルドウィーク】
ゴースと星の娘は、人を観察し、人に救いを授けようとした。愚かなる人間はそれを払い、冒涜的な儀式を行った。
直前に、ゴースから血と力を授かったルドウィークは、それに絶望し、しかし教会の為になるならばとゴースを裏切った。
その後、血が暴走しルドウィークは獣となる。
獣と化したルドウィークは、皮肉なことにゴースを冒涜した教会人を次々と殺し、その血で下水道を濡らした。
彼は、弟子に伝えたという。
【人は、自らの望みが叶うと知ったとき、その望みを自ら汚し、その事に気がつかない。哀れな人は、失ってから、望みの尊さに気付くのだ。】