大淀パソコンスクール   作:おかぴ1129

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昼2

 3人でぐだぐだと無駄口を叩きながらも、本日の掃除は終了。ほどなくして、今年最後の生徒さん、神通さんと岸田のアホが来校した。

 

「みなさんこんにちは! 今日もよろしくお願いします!!」

「こんちわ〜。今日も来ましたよ〜」

 

 今日の予定では……俺が担当する岸田のアホはスタイル設定の活用方法の一つ、目次の作成だ。神通さんの方は、条件付き書式を学ぶらしい。

 

「では岸田さんはこちらへ……」

「神通はこっちだな」

「はい」

 

 教室の二つの島に分かれてそれぞれ別に座る。俺と岸田のアホは窓際だ。太陽の光が当たり、この季節はぽかぽかと暖かい。俺は岸田のアホを席につかせた後、PCの電源を入れる。このアホが太陽のぬくもりに包まれて、眠くならなければいいのだが……

 

――貴公っ!

 

 何やら頭の中に、ソラール先輩のテレパシーが聞こえた気がした。気になって先輩の方を見てみるが、2人は仲良さそうにExcelの画面を眺めていて、先輩がこちらの様子を伺っている素振りはない。ということは、このテレパシーは俺の幻聴か? もう少しその声に心の耳を傾けてみた。

 

――貴公も、太陽の偉大さが理解出来たようだなっ!

 

 うわー……嬉しそうな声してるなー……もう『貴公』の発生の仕方だけで、口角が上がって上機嫌でニッコニコしてるのが分かる発音だよー……。確かに冬場の太陽のぬくもりは心地いいけれど、それって勉強中は天敵なんですよ。

 

――確かにぽかぽかとあったかいですが、今はいりません

 

――貴公……

 

 俺の心の声の拒絶を聞いた妄想ソラール先輩は、実に落胆した声を上げた。改めて先輩と神通さんの様子を眺める。

 

「……じゃあまず手始めに、計算結果がプラスになるところは、背景が太陽色になるように……」

「せ、先生!? 突然がっかりしないでくださいっ……!?」

「……」

 

 ……あの声、まさか本人が俺の心に直接語りかけていたわけではあるまいな……?

 

「ところで先生、今日は何をやるの?」

「……ああ、中断してたWordの使い方をやります。なので、前回のオリジナル小説をひら……ぐばってしておいて下さい」

「はいよー」

「もしナビゲーションウィンドウが表示されなかったら、それも表示させておきましょう」

 

 俺がソラール先輩の幻聴とキャッキャウフフしている間に、岸田さんのパソコンは立ち上がっていたらしい。岸田のアホに促され、俺は岸田さん作の小説をひら……ぐばってしてもらった。

 

「ところで先生」

「はい?」

「開くでいいから」

「そういうことは早く言って下さい」

 

 岸田のアホに気を使ってた自分が恥ずかしい……。そういうことは、早く言ってくださいよ岸田さん。

 

 岸田さんによって展開されるオリジナル小説『殉教者の魔弾』のデータはそれなりのページ数の為、読み込みにほんの少しのタイムラグがある。そのタイムラグの間に岸田さんはナビゲーションウィンドウを開き、準備は万端となった。

 

「んじゃ続きをやっていきましょ。ナビゲーションウィンドウを見る限り、ちゃんとスタイル設定も終了してるみたいですね」

「うん」

 

 なんでそこで、ドヤ顔で俺の顔を見つめるんだ……。

 

「え、えーと……岸田さん、目次って作ることあります?」

「あるある。あれ作るの、結構めんどくさいんだよね」

「だったら話は早いです。あれ、スタイル設定さえしっかりしとけば、自動で作れますよ?」

「へ? そうなの?」

 

 おっ。急に目が爛々と輝き始めたぞ。俺は興味津々といった感じでこっちを輝く眼差しで見つめてくる、アホの岸田の画面をボールペンで指差し、目次の挿入を試みることにしてみた。

 

「ここの『参考資料』タブをクリックしてください。そしたら、そのものズバリな『目次』ってボタンが左端にありますから、それをクリックしましょう」

「ほいほい」

「クリックしたら、入れたいタイプの目次を選んで、クリックしてください」

「おおっ。なんか色々種類あるね」

「クリックしたら、自動で作成された目次がカーソル位置に挿入されるはずです」

 

 言われるままに、自動作成の目次の種類の一番上をクリックした岸田さん。数秒のタイムラグのあと、カーソルがあった文書の先頭に、自動作成された目次が入った。

 

「ぉおッ! 毎回苦労して作ってる目次が自動で出来た……!!」

「こうやって目次作ると楽なんですよ。しかも例えば……」

 

 ここで俺は感激している岸田さんのマウスを奪い去り、ナビゲーションウィンドウを使って第一話と第二話をドラッグで入れ替えた。この操作方法は以前に説明したはずだから、今回は言及しない。

 

「入れ替えたね」

「はい。でも目次は入れ替わってないですよね?」

「うん」

「ここで、『目次の更新』ボタンを押します」

 

 俺は『目次の更新』ボタンをクリックする。しばらくのタイムラグの後、目次の第一話と第二話の順番が入れ替わり、正しい順番に更新された。

 

「おおっ」

「自分で作ってたら、ここで修正作業っていうめんどくさい工程がありますけど、これなら、順番を入れ替えようが見出しを修正しようが、最後に更新ボタンさえ押してしまえばキチンと反映されるんですよ」

「たくさんの見出しを修正したときとか、目次の部分も変更するの大変だしね」

「ええ。だからこの機能、便利なんです。同じ様に表紙を自動で作る機能もありますけど、そっちよりはこっちのほうが融通が効きますし、覚えておいて損はないかと」

「たしかにね!」

 

 俺の説明を受けて、面白そうに目次の項目をいじり始める岸田さん。フォントやフォントサイズを上機嫌で変更し始めたところを見ると、この機能を気に入ってくれたようだ。大淀さんの知り合いの作家さんからのアドバイスを受けての一連の機能紹介だったわけだが、さすがは同じ創作者。創作者の気持ちがよく分かっている。オータムクラウド先生だったかな? 聞いたことあるようなないような……

 

 岸田さんは順調に一人遊びを始めたし、これ以上この場にいると、調子づいたこの人が、俺に対してグチをこぼしかねん。一度距離を置くべく、俺はソラール先輩と神通さんの元に行き、様子を伺うことにする。この場であれば、別にピンク色の空間を展開することもないだろう。2人の邪魔にはならないはずだ。ソラール先輩の授業も見学したいし。

 

 二人の画面を覗いてみる。画面に表示されているのは、『Pizza集積地 商品別売上集計表』という表だ。確か『Pizza集積地』といえば、昨年に近所にできたピザ屋さんのはずだ。その店名を勝手に使って、架空の売上集計表を作ったらしい。いいのかな……そんなことして……。

 

「……さて神通。ここで前年比の項目を見てみよう」

「はいっ」

「前年比の項目には、値がプラスのセルとマイナスのセルがある」

「ですね。電さんのスペシャルメニューは売上一位である上、前年比も伸びています。今年は大躍進を遂げたメニューなのでしょう」

「ああ。逆に集積地殿の『燃料・弾薬・鋼材・ボーキの集積地』は売上の絶対数も芳しくない上、単価も安く、その上前年比もマイナスだ。これはメニューを考案した集積地殿本人には見せられん」

「ですね。泣いてしまいます」

「ああ。太陽の戦士として、これは秘匿しておく情報だと判断する」

「二水戦旗艦としても、それは正しい判断であると思います」

 

 ……あなたたち、条件付き書式の話をしてるんですよねぇ……?

 

「で、問題はここからなのだが……前年に比べて伸びがプラス20%以上……つまり成長著しいメニューには上向き矢印を……逆に伸びがマイナスのメニューには、警告として下向き矢印を表示させる」

「はい」

「では神通、前年比の項目を選択し、条件付き書式『アイコンセット』の設定を……」

「承知いたしました……」

 

 いつも思うんだけど、2人の授業って無駄に緊迫感が凄いんだよなぁ……なんでExcelの条件付き書式の設定なだけなのに、こんな命のやり取りみたいな凄まじい緊迫感が漂ってるの? それとも、艦娘さんってみんなそんな感じなの?

 

 フと気になって、教室入り口に移動し、事務所の大淀さんを見てみた。……あくびしてる。かと思えば、涙目のまま両手で上品にお茶をすすって、ホッと一息ついた。その様子は、さながら縁側のひだまりで日向ぼっこを亭主と楽しむおばあちゃんのようだ。緩みきってるぞあの人……やっぱ神通さんが変なのか……。

 

 ソラール先輩が見守る中、神通さんは構成比の項目を選択し、『条件付き書式』の『アイコンセット』の項目にポイントしていた。

 

「先生、自分で条件を設定する場合は、『その他のルール』をクリックでしたよね」

「その通り。さすが俺の太陽」

「ありがとうございます」

 

 ……。

 

 ……あ、ソラール先輩がこっちを振り返ってる。

 

「ニヤニヤ」

「カシワギ。なんだその何かいいたげな顔は」

「いやいや先輩、授業を進めなきゃ。ニヤニヤ」

「ンガァアッ!?」

 

 盛大に鎧兜と鎖帷子の音を響かせて、ソラール先輩は椅子から転げ落ち、どちゃりと倒れ伏した。おもしろーい。先輩をからかうっておもしろーい。

 

「先生……ここまで来たのですが……」

 

 自身の太陽、神通さんの悲壮な声をきき、ソラール先輩はむくりと起き上がる。そしていつもの珍妙な歩き方で盾を構えながらのそのそと神通さんに近づき、画面を覗いた。ついでに俺も画面を覗き込んでみる。条件付き書式の設定ウィンドウが開いているが……ここ、ちょっと設定が込み入ってるんだよね。

 

「上出来だ神通。あとは矢印の表示設定だけだな」

「はい。矢印の設定は出来たのですが……その、数値の設定がよく分からなくて……」

 

 条件付き書式『アイコンセット』の設定は、こちらで数値を設定してあげることが可能だ。だがそのためには、数学記号の『>』『<』『=』の意味をしっかり把握しておかなければならず、そこがちょっとしたネックとなる。

 

 今回でいえばプラス20%以上が上向き矢印なのだから、上向き矢印の条件『>=』の部分を『0.2』で、『種類』を『数値』に。逆に下向き矢印の項目は『>=』の部分を『0』にしてあげる必要がある。

 

 さらに今回はひっかけとして、値がパーセントであることに留意しなければならない。見たまんま『20』で設定してしまうと、それは間違いだ。キチンと『0.2』で設定しなければ……

 

「神通、それぞれ種類を『数値』とし、あとは数値の部分に、それぞれの条件となる数値を入力すればいい」

「……それだけでいいのですか?」

 

 え……せ、説明それだけ?

 

「ああ。貴公はどうにも難しく、大げさに考えすぎるきらいがある。確かに数学記号の意味を把握することも重要だが、その前に、数値を入れる項目がそこしかないのだから、まずはそこに、数値をそのまま入力してみればいい」

「なるほど」

「結果がずれていれば、その時に数値を変えればいいのだ。一度間違えたぐらいで、偉大な太陽は我らを見捨てたりはしない」

 

 ……なるほど。確かに数値を入れるところなんてそこしかないわけだから、考えてうんうんうなるぐらいなら、さっさと入力して結果を見てみた方が早い。確かに唸って路頭に迷うよりは、建設的でいいかもしれない。

 

 とはいえ、『大げさに考えすぎるきらいがある』てのは、そのままソラール先輩にも突き刺さる、壮大なブーメランだと思うんだけど……

 

「貴公にも心当たりがあるはずだ。かの強者、オーンスタインとスモウ……あれこれと戦略を張り巡らせるより、黒騎士の斧槍でスモウをゴリゴリと攻撃するほうが、意外とうまくいくことが多いということが」

「なるほど。ルート固定要員を難しく考えるより、大和さんや武蔵さん……大鑑巨砲な人たちで艦隊を揃えたほうが、案外うまく海域を突破する時がある……それと一緒ですね」

 

 ……ほら出た。この、意味不明な二人の比喩。なんだ、この『言いたいことは伝わるけれど、比喩としては確実に間違ってる比喩』は。二人の会話を聞いてて、納得出来たためしがない。たまには聞いてる俺を納得させてくれよ。『さすがはソラール先輩と、その教え子だ!!』て手をポンと叩かせてくださいよ。

 

「ま、そう思ってスモウばっかり攻撃してた結果、俺はオーンスタインに横から散々突っつかれて、人間性が限界に達したけどな。アッハッハッハッ」

「私も同じことをやったら資源がなくなって、提督が口から魂をはみ出させてました」

「おっ。やっぱり神通はおちゃめさんだな!」

「先生もやっぱりおっちょこちょいですね!」

「「アハハハハハハ!!!」」

 

 ……段々頭が痛くなってきた……誰かあの二人を止めてくれ……。

 

「先生!! ねえ先生!!」

 

 いかん。岸田のアホを放置しすぎた……岸田さんを見ると、こっちに向かって手を振り、俺にヘルプを要請していた。はいはい。今行きますよー……俺は小走りで岸田さんの元にかけより、画面を覗く。そこには、本文と同じ書式設定がほどこされた目次が表示されていて、特に問題点はないような気がするが……

 

「どうしました?」

「この目次さ。ページ数が入ってるんだけどさ」

「入ってますね」

「これでもいいんだけど、もうちょっと便利な使い方とかないかな?」

「……紙に印刷しない前提でいいのなら、もうちょっと便利に出来ますよ?」

「そうなの?」

 

 Wordの目次挿入機能では、設定の変更によって、ページ数の表示だけでなく、該当部分へのリンクを追加することが出来る。ページ数の表示は実際に紙に印刷する時にすごく便利だし、データとして残しておくのなら、リンクにしてしまった方が、完成したものの使い勝手はいいはずだ。

 

「ではちょっとやってみましょう。目次を選択して、もう一度『目次ボタン』を押して下さい」

「はいー」

「クリックしたら、下の方に『目次の挿入』て項目がありますから、それをクリックしましょう。

 

 俺に言われるままに、目次のボタンを押して『目次の挿入』をクリックする岸田さん。来た当初と比べると随分と従順になったもんだなぁ……感慨深い気持ちを抱いていると、画面に目次ダイアログが立ち上がった。

 

「おお。ここで細かい設定が色々デキそうだ」

「ええ。でも今回は、ウィンドウの右側を見て下さい。『ページ番号の代わりにハイパーリンクを使う』って項目がありますから、そこにチェックを入れてみましょう」

「これだねー。えいっ」

 

 ……白状する。今の、この岸田さんの『えいっ』て感じのカワイイ言い方、妙にイラッとした。……だからさー。ドヤ顔でこっち見るのはやめてくれって。

 

「チェックを入れたら、そのままOKをクリックしましょう」

「はいよー……。うん。目次が入ったね」

「入ったら、ちょっとそこにマウスを持ってきてみて下さい」

「はいさー」

 

 本当に従順になったな……これもロートレクさんのタイピング・ブート・キャンプのおかげか? 岸田さんは言われたとおりに目次の項目の一つをマウスでポイントした。『Ctrlキーを押しながらクリックでリンク先を表示』というメッセージがぼやっと浮かび上がる。

 

「先生、これは……?」

「コントロールキーを押しながらクリックしてみて下さい」

 

 もはや俺の神経を逆撫でするアホの岸田はどこへやら……俺の言葉に対してすっかり従順になった岸田さんは、俺に言われるままにコントロールキーを押しながら、目次の項目をクリックした。Wordの画面が切り替わり、クリックした項目の見出しの部分が先頭に表示される。

 

「ぉおっ!?」

「こんな風に、目次の項目をクリックしたら、本文中のその見出しがあるところまで勝手に表示を切り替えてくれるようになるんですよ」

「へぇぇええええええええ!!」

 

 しかもこの機能の便利なところって、この文書をpdfに変換しても、キチンとそのリンクを保持してくれるところなんだよね。

 

「だから、例えばこれを電子書籍として配布する時に、このリンク付き目次を作成しておけば、わざわざページをめくらなくても、そのページにジャンプしてくれるようになるんです」

「これはイイ……」

「小説を書いてるのなら、pdfの形で電子書籍として配布する可能性もあるはずです。その時にこうやって作れば、少なくとも利用者にとって優しい電子書籍になるんじゃないかなと。本来の電子書籍がどういうものなのかは分かりませんが……」

「いや、こういうのを知りたかった。これは作る側としては便利な機能だと思うよ……!」

 

 リンク付の目次の完成がよほど嬉しかったのか、岸田さんはほくほく顔で目次をクリックしては該当部分へのジャンプを繰り返している。ホントにこれが電子書籍の作成の役に立つのかどうかは知らないが、本人が喜んでくれるという事実は、何より嬉しい。

 

 動作確認をしたいのか、岸田さんは自作小説『殉教者の魔弾』をpdfとしてエクスポートし始めた。

 

「ほんほ~ん……ふふんふん~♪」

 

 汚らしい鼻歌が聞こえているが、あえてそこは突っ込まずに見守ってやろう。本人が上機嫌なことと、鼻歌がダーティーこの上ないことは無関係だ。

 

「燃料・弾薬・鋼材・ボーキの集積地もキチンと下向き矢印……出来ました……先生、出来ました!!」

「よし! さすがだ神通! 貴公も、太陽のようにでっかく、熱くなったな!!」

「そんな……先生の、太陽のように熱く、粘り強い指導のおかげです!!」

「神通……俺だけの太陽……」

「先生……いや、提督……私の……私だけの提督……!!」

 

 あの2人の方から、そんな聞き捨てならない声が聞こえてくる。はいそこー。まだ昼間ですし俺たち部外者もいるんですよー。臆面もなく自分たちだけのあったかい太陽艦隊戦ワールドを展開しないでくださいねー。見ますよー。俺と岸田さん、ガン見しちゃいますよー。

 

 そもそもさー……2人だけのすんごくロマンチックな時間のはずなのに、言ってることがなんかおかしい気がするんだけど……

 

――俺だけの太陽……

 

――私だけの提督……

 

 いや、ソラール先輩にとって太陽ってのが特別な意味を持ってるのも分かるし、以前に川内が『提督は艦娘みんなのあこがれ』て言ってたし、2人にとって、それが最大限の賛辞で、愛情の意思表示だというのは分かってますよ? でもさー……なんかこう、釈然としない。臆面もなくこんなところで意思表示しあってるからか?

 

「先生、出来たよ」

 

 不意に岸田さんに声をかけられたので、慌てて画面を覗いてみる。Wordのウィンドウとは別にpdf閲覧ソフトが立ち上がっていて、そこには、先程岸田さんがpdfとして出力したと思われる、作:岸田さんの小説『殉教者の魔弾』の一節が表示されていた。

 

「おお、pdfにしたんですね。動作確認ですか?」

「いや、これはぜひ、先生に読んでもらおうと思って」

 

 ……ほわっつ?

 

「えーとすみません……今、何と?」

「だから先生に、俺の話を読んでほしくて!!」

 

 そう言って岸田さんがちょんちょんと指差す画面には、総ページ数183ページ、文字数にして16万字もの表示が、すみっこで小さく、しかしギラギラと激しい自己主張をしていた。

 

「え、えーと……あ、ありがとう……ございます……」

「読んだら感想を聞かせてくれ! あ、もちろん直接じゃなくて、掲載サイトで!!」

 

 ……いや、そこは直接本人に伝えるのはいかんのか? とはいえ、俺に自分の作品のデータを進呈しようとする程度には、俺のことも受け入れてくれたようだ。その点は素直にうれしい。

 

「ところで先生」

「はい?」

「これだけ色々と紹介してくれて、本当に感謝してる」

「はぁ」

 

 唐突に真顔になり、突然こんなしおらしいことを行ってくる岸田さんに、俺は違和感を覚えた。どうした岸田さん。今日のあなたはやたらと素直で従順じゃないか。いつものように隙あらば毒を吐いてきてくださいよ。こっちの覚悟が無駄になるじゃないですか。こっちは毎回臨戦態勢で臨んでいるというのに。

 

 その後、岸田さん本人に言葉の真意を聞いてみたのだが……なんと岸田さん、ある程度Wordを習ったところで、さくっと教室をやめるつもりだったそうだ。自分が知りたいことを教われば、あとはもう教室なんて用なし。なんなら今年いっぱいでやめてしまっても構わない。そう思っていたらしいのだが……

 

 ここに来て、『pdfでの電子書籍の作り方』という、新たな可能性を見出したらしい。それを無駄にせず、ゆくゆくは自分のwebサイトで自分の作品の電子書籍をpdfの形で配布出来れば……そう思ったそうだ。

 

 電子書籍にも色々な形式はあるが、pdfの電子書籍も、決して需要がないわけではない。

 

 そして、それを制作するのに、お手軽度を優先するなら、Wordはそう悪くない選択肢といえるはずだ。Wordであればある程度自由に本の装丁をいじることが出来るし、なにより、使い慣れたソフトで作成することが出来るというメリットもある。

 

 俺は以前に電子書籍作成ソフトを使って実際に電子書籍を作成してみたことがあるが……結局意味が分からず、満足いくものは出来なかった。Wordなら、その辺が直感的にわかりやすい。いつものように文書を作成し、最後にpdfの形式で保存してしまえば、それが電子書籍となるわけだ。

 

 それは岸田さんも考えたらしく、そのためにも、もっとWordの機能を色々と知った方がいい……岸田さんはそう判断したそうだ。画像の挿入方法を知れば、挿絵を追加することも出来る。段組みの方法を覚えれば、1ページに、よりたくさんの文章を書き込むことも出来る。縦書きだってできるし、ページの色を黒い色に変更すれば、暗闇でも目に負担をかけることのない、読みやすい電子書籍に出来るはずだ。

 

「だから先生、これからもよろしく!」

「はぁ……よろしく」

「そのためにも、一度俺の話を読んでみて下さい!!」

「し、承知しました……」

 

 『自分の作品を電子書籍にする』というモチベーションがあるのなら、きっと長続きもするだろう。岸田さん、改めてよろしくお願いいたします。

 

「この作品はね! 主人公とヒロインの関係が……」

「あーはいはい……読みます。読みますからネタバレしないで……」

「ヒロインのウザかわいさに力を入れてみて……」

「それホントにカワイイんですか……?」

 

 小説なんて普段はほとんど読まないが……岸田さんからの感謝の印と受け取って、今回はちょっと読んでみようか。授業が終わった後、おれは岸田さん作の『殉教者の魔弾』のpdfを、自分のスマホに移動させておいた。

 




Word
タイトルや見出しのスタイル設定をしていると、
目次を簡単に作成できます。

1.『参考資料』タブをクリック
2.『目次』ボタンをクリック
3.『目次を挿入』をクリック
4.『ページ番号の代わりにハイパーリンクを使う』をクリック
5.『OK』をクリック

4番はスルーしても可ですが、pdfにする場合は入れておいたほうが融通が効きます。


Excel
条件付き書式を使うと、特定条件に合うセルの書式を変更できます。
『ホーム』タブの『条件付き書式』に色々なものがあるので、
色々と設定してみて下さい。

今回神通が作成した『Pizza集積地・商品別売上一覧』

【挿絵表示】

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