"貴方に永遠の愛を"   作:ワーテル

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今回もよろしくお願いします


それでは本編スタート


届かぬ願い

翌日

 

私達は部室でりゅうくんから受け取った曲を聴いている

 

「すごい…」

 

子供のような感想だけど、ただひたすら凄かった

りゅうくんのaqoursへの想いがいっぱいに詰められた曲

まさにそんな感じだった

私達の今まで、そして、これから

そんなものを表しているみたいだった

 

 

「龍って予備予選来れるのかな…」

「曜さん、どうしましたの?」

「いや、これを歌ってる私達を見てほしいなって思って…ダメ、かな…?」

 

 

この曲で予備予選に。

そしたらきっとりゅうくんに見てもらえる

それでいいのかな

 

 

「曜、それいいね!」

「マルも賛成ズラ!」

「千歌ちゃんどうする?」

「…うん、決めた!予備予選で歌う曲は…」

 

 

 

 

 

 

 

その日の午後

すぐ目の前に迫る予備予選の準備のためaqours全員で衣装などの準備をする

だけど、私は我儘言って今日もりゅうくんのお見舞いに来てる

 

 

昨日はお母さんに案内されながらしかもかなり急いで入ったのでうろ覚えだけど、なんとなく記憶を辿りながら病室を探す

すると…

 

 

「あっ、りゅうくん」

 

 

そこには車椅子を押されているりゅうくんが居た

 

 

「千歌どうしたんだ?」

「えへへ、様子見に来ちゃった」

「あら、可愛い彼女さんね」

 

 

え?彼女?

 

 

「なっ、何言ってるんですか、こいつはただの幼馴染ですよ、西木野先生」

「あら、そうなの?」

「か、彼女なんて//」

 

 

私は恥ずかしくなって顔を伏せた

 

 

「あらあら、じゃあ、えっと…」

「高海です」

「そう、じゃあ高海さん、漆原君のことお願いできるかしら?」

「はい」

 

 

こうして龍くんの乗る車椅子を押して病室に向かう

 

だけど、さっきのことがあってりゅうくんを直視できない

何か話してくれてるけど、全然中身が入ってこない

ハァ、何してるんだろう私…

 

 

「おい、千歌!ここ、ここ」

「ふぇ?」

 

 

いつのまにかりゅうくんの病室の前に着いていた

 

 

「ったく、昨日来たのにもう忘れたのか?」

「いやー、急いでたから道覚えてなくて」

 

ていうか、あっちから来たってことは私って反対方向に歩いてたんだ…

 

「まぁ、しょうがねぇか。じゃあ開けるぞ」

「うん」

 

 

りゅうくんが扉を開けてくれ、私も部屋の中に入る

 

 

「ベッド乗れる?」

「馬鹿にすんなよ、乗り降りぐらい出来るよ」

「むぅ!馬鹿になんかしてないもん!せっかく心配してあげたのに」

「はいはい、それはどうもお構いなく」

「なんか嫌な感じ」

「まぁまぁ、ほら、いつまでも立ってないでここ座れよ」

 

 

ベッドの空いているスペースを叩いて私に座るように促す

なんか話を晒された感じで納得しないけど、とりあえずりゅうくんの隣に座った

 

 

「ラブライブ近いのに練習しなくていいのか?」

「もちろんしないとダメだよ、予備予選から間が少ないから大変だよ〜」

「じゃあ、やめるか?」

「やめない!」

「ふっ、ははは」

「もう!なんで笑うの!」

「いや、本当に千歌は昔から変わらないなって思って」

「りゅうくんだって変わってないよ」

「変わってるよ、ほら」

 

 

そう言って自分の腕に繋がれた管を指差す

 

 

「それは…そうだけど…」

「ごめんな」

「え?」

「いや、あの時さ、せっかく曜と2人で迎えに来てくれたのに、俺はお前に…」

「ううん、気にしてないよ、だってこんな状況だったなんて知らなかったし。でも、ちゃんと言ってほしかったな」

「うん、ごめん」

「昨日も言ったけどさ、私達はりゅうくんに本当に感謝してるの。いつも私達のこと支えてくれて…そんな人を見捨てるわけないでしょ?

それに、私は…」

 

「ん?千歌がどうしたんだ?」

「ううん、なんでもない」

「そうか」

 

 

『りゅうくんのことが好きだから』

 

そう伝えられたらどれだけ楽だろう

何年も何年も心に留めていたこの想いを彼に伝えられたら…

でも、今私がそれを言ったら…

 

 

「りゅうくん!」

「ん?」

「本当にいつもありがとね!」

「何だよ急に」

「なんでもないよ、あ、そうだ!」

「今度は何だよ…」

「決勝の日さ、私達と一緒にステージにいてほしいなんて言わない。でも、出来たら観に来てほしい。私達の輝きをりゅうくんに見てほしい」

「千歌…」

「えへへ、ごめんね、何言ってるんだろうね、私いつも感情のままに行動しちゃうから…ごめんね?」

「行くよ」

「え…?」

「観に行くよ、だから、俺に千歌の、aqoursの輝きを見してくれよ」

「でも…」

「ふっ、何そんな暗い顔してるんだよ、ほら、もっと笑えよ

アイドルはみんなを笑顔にするのが仕事だろ?」

「りゅうくん… うん!私頑張るから、輝いてみせる、みんなを笑顔にしてみせるから」

「あぁ、頑張れよ」

「うん!じゃあそろそろ行くね?」

「あぁ、じゃあ」

「うん!()()()!」

 

 

ラブライブで成長した私を見てもらう

今はこっちに集中しないと

 

 

それに、

 

 

もし、私の想いが彼に伝わったとして、その時彼はどう思うだろう

彼の状態を知る私が、そんなことしてもいいのだろうか…

私のこの想いが彼を苦しめるのなら、私は胸の奥底にこの想いは閉まっておこうと思う

 

 

 

 

 

 

ラブライブ予選決勝まであと10日

 

夏真っ盛りの屋上は燃えるような暑さだけど、そんなことも言ってられない

全体練習、ステップや発声、動きの細かいところまで抜かりなくチェックし、修正を繰り返す

練習後は1、2、3年生で毎日交代でりゅうくんのお見舞いに行った

 

次の日の練習はまず、りゅうくんの話題から始まる

昨日こんなことしてたとか、りゅうくんが呼んでも全く反応しないみたいなドッキリを仕掛けてきた、というような話をしてから練習を始めた

 

この時私はこのままこんな日々がずっと続くんじゃないか。

そんな気がしていた、そして、また10人でステージに立てる。

そんな未来を描いていた

 

 

しかし、状況は一変する

 

 

ラブライブ1週間前

 

この日は動き全体の確認をして一通り合わせてからみんなでお見舞いに行くことになっていた

ステップのミス、音程のズレ、自分達の出来る限りを尽くす

 

そして、練習が終わり今から病院に行こう、まさにその時だった

 

りゅうくんの容態が急変したという知らせが私達の元に届いた

 

 

 

 

 

 

なんで、あと少しなのに

 

最後に貴方に見てもらいたいのに

 

私が好きな貴方に、ただそれだけなのに…

 

 

 

「お母さん!」

「千歌ちゃん」

「りゅうくんは?」

「こっちよ」

 

 

病院の廊下をひたすら走る

奥の方へひたすら進む

すると、大きな透明な壁に囲まれた部屋の中にりゅうくんはいた

 

 

「りゅうくん!」

 

 

呼びかけても返事がない

壁越しだからだろうか

もう一度呼んでみるけど、やっぱり返事はない

曜ちゃん達もひたすら名前を叫ぶけど、彼は反応すらしない

 

 

「ねぇ、りゅうくん、からかってるなら怒るよ!前みたいにからかってるんでしょ?ねぇ、、お願いだから、目、開けてよ…」

 

 

以前より多くの管が付けられ、酸素マスクまでされて、周りの機械はどれも忙しくなく動いている

 

 

「先生」

 

 

やがてりゅうくんの担当医師がやってきた

 

 

「龍騎は、龍騎はどうなんですか…」

「…みなさん、落ち着いて聞いてください。大変申し上げにくいのですが、今晩が山場かと…」

「そんな…」

「なんで、もう少しなのに」

「ねぇ!りゅうくん!りゅうくん!てば!」

「千歌!やめなさい!」

「だって、このままじゃりゅうくんが…」

「でも、私達じゃどうしようも…」

「どうしようもできないから諦めろって言うの?」

「じゃあ、何が出来るってのさ」

「私、約束したもん。りゅうくんに見てもらうって。私達の輝きを見せるって、約束したもん」

「千歌…」

「千歌ちゃん…」

「お兄ちゃん、本当に死んじゃうの?」

「ルビィちゃん何言ってるズラ、そんなはずないよ…」

「そうよ、ルシファーよ、そんな彼がこんなもの屈するわけ…ないじゃない」

 

 

みんな俯いてしまった

本当にこのまま何もできずに、見ていることしかできないのかな…

結局私達はりゅうくんに何も返せないまま…

 

 

「ち……か……?」

「え…?りゅうくん?りゅうくん!?」

「龍!」

 

 

気がつけば私達はりゅうくんのいる集中治療室の中に入ってしまっていた

 

 

「こら、あなた達!」

「いえ、いいんですよ、高海さん」

「でも、龍騎くんが」

「あの子は最期までaqoursに尽くすと決めましたから、彼女達に看取られたら、それで本望でしょう。いいですよね、先生?」

「漆原さんが宜しいのであれば…」

 

 

「りゅうくん、りゅうくん!」

「千歌ちゃん、あまり大きな声出すと…」

「は、は、あれ、お前ら、決勝近いんだろ?なんでこんな所にいるんだ?」

「龍騎くんの症状が悪化したって聞いたから…」

「そっか、悪いな…」

 

こんなに衰弱しきった彼を私は初めて見た

 

「ごめんな、約束果たせなくて」

「なんでそんなこと言うの?まだわからないでしょ?」

「そうだよ、龍。そんなこと言わないでよ」

「は、は、ほんとバカだな。自分の最期ぐらい、自分でわかるさ…」

「嘘ですよね?龍騎さん冗談はやめてください」

「そうだよ、そんな縁起でもない。」

「はぁ…はぁ…この半年間、本当に密度の濃い時間を過ごせた、最後にお前らと一緒に走れてよかった」

「りゅうくん!ふざけてると本当に怒るよ!言ったじゃんか、見にきてくれるって、約束したのに…こんなことになるなら私が誘わなければ…」

「千歌、それは違うよ。俺はaqoursのマネージャーをやったことに後悔はしてない。寧ろ千歌やみんなに感謝してる。ライブをする度に成長する君達、増していく輝き。それを最も近い場所で見せてもらった。」

 

「龍….」

 

「ただひとつ悔やまれるのは、aqoursの未来、君達が1番輝いた姿を見れないことだ。」

 

「りゅうくん…」

 

 

嫌だ、まだ何も伝えてないのに、私の想い、まだ何も…

 

 

「はぁ、まぁ声も出せないや…母さん外にいるのか」

「呼んでこようか…?」

「いや、いいよ。その代わり、千歌、後で母さんに伝えてくれ

こんな息子を産んでくれて、育ててくれてありがとう、って」

「うっ…ん」

「それから、千歌、曜、果南姉、それからみんな。最後までこんな身勝手な俺だったけど…」

 

 

伝えなきゃ、伝えなくちゃいけないのに、声が、出せない…

 

 

「一緒に過ごしてくれて、輝きを見せてくれて」

 

 

待って、まだ、私は何も…

 

 

「ありがとう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を最後に彼は息をひきとった。

 

 

そして、ただ単調な機械音と悲しみに暮れる彼女達の声だけが病室に響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も読んでいただきありがとうございます

また明日もよろしくお願いします
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