世紀末戦記   作:溶けない氷

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今日も世紀末

 

程度の低い人間というのは、理性や知性よりも感情で動くのだろう。

クビの宣告を突きつけた男に突然背後から突き飛ばされ、電車が迫る線路内へと転落した。

皆様ご機嫌如何でありましょうか。

私、ターニャ・デグレチャフであります。

昔は皆様方と同じく、日本で生活しておりましたが、気づけば転生を果たしておりました。

なんやかんやで

『逆境に追い込めば信仰心を抱くのか』

と謎理論で結論づけられた私は存在Xによって転生いたしました

ここはアメリカ合衆国のボストン・マサチューセッツ州

アメリカで最も古い歴史を持つ古都であり、古くから産業が栄えた都市であります。

今は2287年、23世紀。

そして今の状況はと言うと・・・

『ヒャッハー!新鮮な雌肉だー!』

くそくそくそ!何が新鮮な肉だ!テメェが肉になれ!

手に握った10mmピストルを私に向かって斧を振るおうとしたチンピラ野郎のレイダーに向けて容赦なく撃つ。

弾は貴重だ、無駄撃ちはできない。

転生させられた先はアメリカ、全面核戦争からおよそ200年後の世界。

司法も行政も存在しない、文字通りの無政府状態。

襲いかかる脅威は飢え、渇き、放射線嵐に変異を起こしたアボミネーションなるモンスターども。

かく言う私のこの世界での両親もずっと前にレイダーに殺されてしまった。

そう、いつの時代も何よりも恐ろしいモンスター。

理性も倫理も失くした人間達だ。

『うんぬぅ!』

脳天に弾丸を撃ち込むと、レイダーは倒れこんだ。

『野郎!殺しやがったなぁ!』

激昂した他のレイダー連中がパイプサブマシンガンをメクラに打ちまくる。

だが、連中の馬鹿騒ぎに付き合う暇はない。

労力の無駄ゆえ、私はこの小さな体を生かして崩壊したビルの隙間から他のビルの合間へと瓦礫を避けてさっさと逃げる。

 

『どこ行きやがった!クソチビ!

ぶっ殺してぶち犯してやる!』

今もやたらと銃を四方八方に向けて打ちまくるレイダーの声を尻目に私は逃げた。

逃げて逃げてようやく、安全な場所にたどり着く。

「・・・はぁ・・・腹減った」

崩壊した建物の陰で、周囲に反応がないことを確認するとバックパックから缶詰を取り出して開ける。

レイダー連中の拠点からこっそり持ち出した戦前のドッグフードの缶詰。

もう半分以上食べてしまったが、この世界では贅沢品だ。

脇目も振らずにガツガツと食べる、食える時になんでも食う。

これがこの世界で生きる秘訣の一つだ。

「眠い・・・」

思えばもう3日間も寝ていない、夜はグールを始めとするモンスターの襲撃に怯え

昼はレイダーに怯えながら食料を漁る毎日。

私は腹ごなしを終えると、バックパックを背負って崩壊した建物の中に見られないようにしながら入っていく。

・・・・

「ただいま・・・」

誰もいないビルの中、そしてその地下にあるビル自家発電のリアクタールームが今の私の隠れ家。

電気なら発電機から引ける

幸いにして綺麗な水も海が近いボストンでは朝露を集めれば一日の分量くらいなら集められる。

風呂?何それ?

レザーアーマーにシャツを脱ぐと体が痒いので湿らせた黄ばんだ布で体にこびりついた埃、汗、垢を落としていく。

「はは・・・きったないなぁ。幼女がすることじゃないよ、ほんと」

体の汚れを取ると元々黄ばんでいた布は真っ黒になったので部屋の隅のゴミ箱に放り込んでおく。

地下室にある割れて曇った鏡を見てみるとひどい顔だ・・・

自分で言うのもなんだが、元々整った顔でも疲労と寝不足で目つきの悪いクソガキになっている。

こんなひどい衛生管理でも無いよりは遥かにマシ。

この世界での両親から教わった、ウェイストランドで生きる知恵。

・・・・本当に、いい両親だったよ・・・

軟弱な元日本人サラリーマンで今は10歳程度の幼女にしかすぎない私が生きるにはあまりにも過酷な世界・・

くそ!何が信仰心を抱くだろだ、神も仏もいない世紀末世界じゃねぇか!

・・・はぁぁぁぁ、腹減った 成長期のこの体で慢性栄養失調とかきつすぎ。

お腹と背中がくっつきそうだ、冗談抜きに。

地下室の埃臭いマットレスに横になると疲労と空腹と寝不足で酷使された体はぷっつりと線が切れるように熟睡を意識に関係なく始める。

そして寝るときでも絶対に、絶対に銃は手放さない。

 

みなさま、腹が減るって冗談抜きに辛いぞ!

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