「うふふ……もう大丈夫、私も、貴方の望んだ永遠に……ふふふ」
人目を避けるようにひっそりとたたずむ山荘の一室にてそう呟いた女性の手には純白のガシャットが握られていた。
「患者の名前は郁政和音。病歴も無く、健康体のようですが……」
「万が一ということもありますからこちらでいったん預かりましょう」
「了解です!鏡院長!」
聖斗大学付属病院の深部にある、部外者には存在が知られていない部署、CR。5年前のとある事件を発端に発生した新病“ゲーム病”の治療を専門に行う、聖斗大付属病院長鏡灰馬が設立した部署であり、灰馬のいったこちらとはつまりCRのことである。
診察の結果、郁政和音はゲーム病だと診断されたものの、ゲーム病には本来その感染源となるバグスターが存在するはずなのだが、彼女のゲーム病に対応するバグスターが発見できないという事案が発生した。
「ッ!一体どうなっている!」
「大我さんに連絡してみましょう。もしかしたら何か知っているかもしれません」
30分後、高い技術を持つ闇医者であり、ゲーム病に関してもっとも知識を持つであろう男、花家大我がCRに到着した。
「はっ、珍しい顔じゃねぇか。どうした、不養生か?お前らしくないな、“アサルト”」
「5年……人間が変わるには十分すぎる歳月ですよ。“スナイプ”」
大我も同様に診察を試みるがやはり結果は同じ。ゲーム病であるはずなのにバグスターの姿が見えない。
「ったく、どこでゲーム病拾ってきやがった」
「さぁ?ただ、以前よりは“濃く”なってますね。ゲームショップの辺りが特に濃厚でしたが……最近のゲームショップはバグスターでも袋詰めして売っているんですかね?」
「んなわけねぇだ……ろ」
大我のみならずその場にいた医師全員が凍りついた。原因は和音がテレビをつけたときに流れた広告である。
『仮面ライダークロニクル本日発売!ヒーローになるのは……君だ!』
「ポッピー……」
「どういうことだ?」
大我の疑問に答えられるものはいない。大我が幻夢コーポレーションに殴りこみに行くと出て行った後、バグスター出現の報が届いた。
「ふむ、お仕事ですか……腕が鈍っていないと良いのですが」
「アサルト……と言ったか、お前も適合者をなのか?」
「ええ、一応最初期のゲーマメントシステムでテストプレイヤーをやっていましたからね。だからこそ私がゲーム病に罹るのがおかしいというのが先ほどのスナイプの反応ですよ。ま、それは別にどうでもいいことですね。今は目の前の問題を片付けましょうか」
「あれは……一体?」
茶色の仮面ライダー、とでも形容すべき存在がマイティアクションXのバグスター、ソルティと交戦していた。
「研修医!」
『タドルファンタジー!』
「はい!」
『マキシマムマイティX!』
「へぇ、5年もあればCRも変わりますか。確かに討伐者が極端に少なかったですからね。人海戦術というのも正しいと言えば正しい選択肢でしょう」
目の前の状況を考察する和音の眼前で“仮面ライダークロニクル”の起動音が響く。
『仮面ライダークロニクル!Enter the game!Riding the end!』
「おっ、おっ、おおっ!」
「ジャジャーン!ポッピーピポパポがゲームをナビゲートするよ!このゲームの目的は全13体のバグスターを倒してクリアの証を集めて、ラスボスに挑むこと!でもでも、バグスターは強いから普通に戦うと負けちゃうの!」
突如として現れた“ドレミファビート”のバグスター、ポッピーピポパポ。和音の記憶ではCRに所属していたはずだが……どうやら今は違うらしい。そしてこの茶色のライダーたちは……どうやらCRの管轄下にはないらしい。
「ポッピー……」
「オペに集中しろ!研修医!」
「ごく稀に現れるボーナスキャラ、仮面ライダーを倒すと……攻略に役立つアイテムを落とすから積極的に挑んでね!ヒーローになるのは君だ!」
そこまで言い切るとポッピーピポパポは姿を消してしまった。
「仮面ライダー、あいつか?」
「あいつだよなぁ……アイテムゲットだぜ!」
「え、ちょっと待って」
エグゼイドは一般人に対して攻撃を躊躇しているようでされるがまま、プレイヤーたちから攻撃を受ける一方でありソルティの討伐もままならない。
「ふむ……なるほどねぇ……殺りますか」
和音は懐からガシャットを取り出すと、白と黒のツートンカラーで構成されたそのガシャットを起動する。
『ギリギリチャンバラ!』
「始式変身」
『ガシャットォッ!ギ・リ・ギ・リ・チャンチャン・バラバラ・ギリギリチャンバラァッ!』
「和音さん?」
光がやむと、蒼銀の鎧を身に纏った雪白のライダーがそこに立っていた。
『ガシャコンザンバー!』
「掛かる火の粉は払わねばなりません。無謀なる死か、賢しき撤退か、選ばせてあげましょう」
雪白のライダーは白磁の刃を携え、ライドプレイヤーたちに問いかける。
「へっ、強敵登場って感じで燃えるイベントじゃねぇか!やってやるぜ!」
「アイツにアイテムをとられてたまるか!俺も行くぜ!」
交渉決裂といったところか。雪白のライダーはやれやれといった調子で肩をすくめ、眼前の灯篭を切り崩しエナジーアイテムを入手する。
『手加減!』
「どうやら痛い目を見ないと気がすまないようですね」
『ガシャットォッ!イアイクリティカルディバイド!』
白磁の刃に閃光が集い、一条の光芒がその場にいたライドプレイヤーらとともにソルティバグスターを切り裂く。
「ぐおっ!」
「うわああっ!」
ライドプレイヤーたちは次々と変身解除に追い込まれ、ソルティバグスターも這う這うの体だ。その場からなんとか逃げ出そうとするソルティに雪白のライダーは白磁の刃を突き刺す。
「ぐっ!?ぬおああああっ!!!」
「さて、貴方がたもこうなりたいですか?」
雪白のライダーは再度問いかける、最後通告である。
「ひっ!難易度が高すぎるぜ!」
「何だよ!ゲームのボーナスキャラなんだろ!なんでゲームが終わっても襲いかかれるんだよ!?」
プレイヤーたちは恐れをなし、バラバラと逃げ散っていった。
『『『ガッシュゥゥゥン!』』』
「あんなことをする必要があったんですか!?」
「何がでしょうか」
永夢の問いかけに反応する和音。とぼけていると言うわけではなく、本気で永夢に責められる理由が分からないといった様子だ。
「彼らを攻撃する必要がありましたか?」
「ああ、あの逃げてった子達?だって、あの子たちはバグスターの討伐が目的ではないでしょう?こちらの作業の邪魔をしたのですから排除されてしかるべきです。むしろ見逃しただけ有情だと思いますがね」
「一般人を巻き込むのはおかしいでしょう!?」
和音ははぁと息を吐いた後、あきれたような表情で永夢に返す。
「彼らは巻き込まれたのではないでしょう?どの程度リスクを承知していたのかは知りませんが、彼らは自身の意思でこの戦い(ゲーム)に参入してきました。であれば、巻き込まれたという表現は間違いであると思いませんか?」
「だったとしても!」
「宝条さん、貴方はCRに属していますね?」
突然の話題転換に面食らう永夢。
「え、ええ、はい」
「ドクターは理想だけでやっていけるものではありませんし、現実を見なければ衛生省にいいように利用されて捨てられますよ?かつての大我のように」
それだけ言い残すと、和音はその場を立ち去った。
設定的な何か
仮面ライダーアサルト チャンバラゲーマー(プロト)
パンチ力 55.0t
キック力 60.4t
走力 1.92秒(100m)
ジャンプ力 49.5m
ギミック
頭部 ムミョウシーカー ライダーゲージ残量に反比例して攻撃力、視覚、聴覚を強化する。
腕部 シラハアブソーバー 50t以下のダメージを完全に吸収する。
手 ライヨウガントレット ライダーゲージ残量に反比例するように腕の速度を向上させる。
脚部 シチアヴォイダンサー ライダーゲージ残量に反比例するように速度が上昇する。
これがこの作品における主人公の初期形態です(白目)。ぶっちゃけこの時点で歴代ライダーの最強フォームの多くを鼻で笑うスペックです。イメージはクロノスのブランク体。ポーズ機能を持たず、スペックは(ジャンプ力を除き)全てがクロノスの半分。その上ステータス強化もライダーゲージ依存のため、ヒット数、時間経過依存のクロノスに比べ全体的に弱い(比較対象がおかしい気がするが、そもそもエグゼイドってレベル5の時点で最強フォーム相当の基礎スペックあるのでこれ位しなければならないと思った)