紅魔館にてメイドに、後ついでに道中にて白玉楼の庭師に伝言をしつつ、博麗の神主が最後に向かった場所は香霖堂と呼ばれる骨董品屋であった。
「よう、旦那...儲けはどうだ?」
「ボチボチ...って言ったところかな? こんな所まで何の用だい、博麗の神主?」
そこにいる店主に話し掛ける神主。彼は宴会とはある意味別件でこの場所に態々来たようである。
「...何、ちょいとな」
「成る程...」
そう言って店主は棚の方から一つの拳銃を取り出す。今はボロボロとなっているそれは、幻想郷では絶対に見かける事のできない程最新式のもの...外の世界から此処に流れ着いた一品である。
それを手に持って暫く眺める神主。まるで感慨深いナニカを思い出すかの様に彼はじっとそれを見つめていた。
「...それ、買わないのかい? 君のだったんだろ?」
「残念だったな、今は違うんだよ。だから買わねぇ...例えタダでもな」
彼の脳裏に浮かぶのは嘗てこれを持っていた頃の事。長年使っていた謂わば相棒の様な存在であったが、それは過去の話。敢えて口には出さない。
「全く、難儀な性格だよ。君は」
「タダの面倒くさがり屋さ。俺は」
血で錆び付いていた拳銃を置いて、博麗の神主は店主に話し掛ける。
「そういや旦那、宴会が今夜あるんだがどうするよ?」
「残念だけどパスするよ」
「そうかい...んじゃ俺はその宴会の準備があるんでこの辺で」
「あ、それだったら、ツケの件霊夢と魔理沙に伝えてくれないかい?」
その質問に理想的な答えを言うことが出来なかったのか、博麗の神主は静かに何も言わず香霖堂を出て行った。
ドアとベルのカランコロンという音が鳴った後、後に残ったのはいつも通りの静けさであった。
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「遅い! 何処ほっつき歩いていたのよ!!」
博麗神社にて、そんなさけび声が響いたのは夕暮れ時。どうやら神主が集めた人手の何人かが先にやって来て準備していた為、いつでも始められる体勢へと入っていた。
「そりゃあ、あれだよお前。今日は男の日だったからつい遅れちまったんだよ察しろ」
「いや察したくないから。というか男の子の日って何? 知りたくもないけど」
だがしかし、相変わらず博麗の神主は何一つ表情を変えず気怠そうなそれでのらりくらりと言い訳をする。
「とりあえず急ぐのぜ! 人も集まって来たし、そろそろ乾杯の挨拶をするから!!」
そういって、久々の登場である魔理沙が2人の話を遮る。どうやらあの会話の一瞬で神主が声を掛けた人物は全員集まった様だ。半ば強引に駄神主をその中心に頓挫している高台へと移動させて、乾杯の挨拶をさせようとする。
「そうは行くかァァァァァァァ!? この俺とて無理なものは無理なんだ!?」
「大人しくしなさい! もうあんたがやるのは決定事項なんだから!!」
「無理だって! だって俺あがり症だし!!」
ここぞとばかりにコミュ障アピールをかます駄目人間。だがこいつはマイナス方面での精神がダイヤモンド並だという事を皆知っているので、耳を傾けず手慣れた動作で捕まえて壇上へと上がらせた。
「「「「.......」」」」
「...えー、その...あれだ。野郎ども! 宴会じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
当然駄神主は乾杯の際の礼節に関する知識なぞ持ち合わせていない。精々大学の飲み会程度だ。そういうわけなので彼はその場のノリで誤魔化した。
普通であれば白けてしまうであろう状況だが、そこは常識にとらわれてはいけないことに定評のある幻想郷。住人達は総じてこういったノリが許せるタイプであった。
「「「「YEAAAAAAAAAAH!!!」」」」
それ故に、何故かやたらと発音のいい英語とともに幻想郷最大規模であろう宴会が始まのであった。
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「ふぃ〜い。やっぱ一仕事終えた後の酒は美味ぇな...俺は未成年だけど」
賑やかである神社...その外れにて1人酒を飲むは博麗の神主である。
彼は人混みに塗れるのはあまり好きではなく、彼女らとは少し距離を置いてしまっている。博麗の巫女と違い、彼は宴会では人の中心に余り居たがらないのだ。だからこうやって何時も一人酒を楽しんでいる。
「...貴様、見ているな! なんちって」
誰もいないところでそんなギャグをかます神主。酔っているのか少しばかり顔が赤い。しかしその酔いもすぐ様冷める事となる。
「驚いたね〜、まさかこうも見事にバレるのは」
「...へ?」
白い靄みたいなのが集まったかと思えば、1人の少女が出現した。ほっぺをつねるなり目を擦るなりして見たが、幻でも飲み過ぎでもない。その上彼女の頭に付いているものを見て、神主は少しばかり冷や汗を掻く。
「...っち、鬼か。よりにもよって...」
鬼...古来より日本に伝わる割とポピュラーな妖であり、好戦的な性格をしている。その上単純な戦闘力は数ある人外の中ではトップクラスなので、もし遭遇したら余程の事がない限り地獄を見る羽目になる。
万全な状態ならいざ知らず、今の神主は強敵(風見幽香)との戦闘と酔いが回っている事による演算の乱れでまともに戦える事さえ難しい。ましてや面倒が大の苦手な彼のとって強敵との対峙はあまりよろしい展開ではなく、寧ろお腹いっぱいなのである。
「何の用だ? 言っとくが俺よりも魔理沙や霊夢の方が楽しめると思うぜ?」
相手の目的を聞くと同時に、自分の仲間を売る駄神主。はっきり言ってその様は主人公のそれではない。
「あんたも知ってるだろ? 今年は春が短いって事。だから宴会が極端に少ないから逆に増やしてやったまでさ」
「(...オーケー。つまりあの糞剣士とカービィ擬きは後でぶっ殺す)」
鬼がここに来た理由に関する心当たりを瞬時に解し、八つ当たり気味に原因の2人に死刑宣告を心の中でかます神主。その様子を見て知ってか知らずか、鬼はただただ笑みを浮かべていた。
「で、噂の博麗の神主...つまりあんたと勝負をしに来たのさ」
「悪いけどパスでおなしゃす。さっきも言った通り霊夢か魔理沙が適任なんで!!」
駄神主は逃げるを発動した!
「おやおや? 鬼の頼み事を断るってのかい?」
しかし残念! 回り込まれてしまった!!
「断る! この菊池零治が最も好きな事の内の一つは自分で強いと思ってるやつに「NO」と断ってやる事だからなぁ!!」
「ほう...」
そこまで聞いた鬼...伊吹萃香は拳を握って片腕を振りかざし、地面一発殴った。
たったの一撃で、轟音と共に決して小さくないクレーターを形成させる。にっこりと微笑みを浮かべている当事者を見て、博麗の神主は
「嘘です冗談ですアメリカンジョークです!? いやー、勝負したいなほんと!! オラワクワクしてきたぞ!!」
跪いて謝罪と共に前言を撤回するという、別の意味でプロ並みの手の平返しを発動させた。
こうして、半ば無理矢理鬼と勝負することとなった博麗の神主。はてさて、これからどうなる事か? 結末は神のみぞ知る。
To be continued...