どうでも良い事ですが、駄神主のテーマ曲はbad apple!!をイメージしています(エリー? 知らない子ですね)
「よっ、気が付いたか」
「...まさか1番見たくない顔を最初に拝める羽目になるとはね...」
宴が終わり、神主を含めた多くの参加者は後片付けをしつつ各々自分の住まいへと帰る。しかしながらそのタイミングでも酔い潰れていた萃香は起きなかったので、ほぼ満場一致で博麗神社に暫く置いておく事となったのだ。
日にちを跨ぎ、漸く目が覚めた彼女。そんな様子を博麗の神主は何時もの如く気怠そうに見つめていた。
「とりまあれだ。大体の事はBBAから聞いたぜ...何でテメェが今回の異変を引き起こしたか、本当の理由をな」
「...聞いたのか。全く、随分とお喋りな親友を持ってしまったようだ...私は」
嘗て、妖怪の山にはそれなりの数の鬼が存在していた。力や妖力こそ強大であった彼らだが、決してそれを用いて多種族に襲いかかったりなどはせず、精々が力比べをするなどといった決闘を重んじる種族であった。
多くの妖怪達はそんな彼らに敬意を評して、力比べを申し込まれた際は正々堂々と正面からぶつかり合うという事をしていたのだがただ一種族...それをしなかった種族がいた。
「結局、同じだな...こうやって正々堂々と単純な比べ合いすら、たった一つの悪知恵を引き絞った策略には勝てなんだ。私も...鬼も...時代遅れなのかもしれないねぇ...」
人間は、生きるため、勝つ為だけにただ貪欲に知恵を用いて勝利をもぎ取った。力に頼らないその方法見て、鬼達は激怒し愛想を尽かしてしまった。それからだ、1人...また1人と妖怪の山から鬼が居なくなっていったのは。
今や、自分を含めて4人しか鬼という種族が居ない。他は、何処にいるのかさえわからない...彼女はあちこちを探し回った。本当は気付いて居ただろう。妖怪というのは人の畏れから成り立つ。詰まりは人間に負けて、抱かれる恐怖が薄れてしまった彼らは...それでも彼女は、諦めなかった。こうやって、人を集めて賑やかな宴会を開けば嘗てみたくまた一緒に盃を交わしつつ、力比べをして...そんな日が戻ってくると信じて居たから。
「...時代遅れ、か。俺が此処に来る前もテメェらみたいな連中は居たよ」
博麗の神主はそれを聞いた上で話し出す。彼の脳裏には、彼自身の捨てた思い出が映っていた。
「其奴は、裏の世界の住人でありながら今時類を見ない程相手を思いやる連中でな...正々堂々、殺しを行わず、決して卑怯な手を使わない連中だった。例え仲間を人質に取られても見捨てたりはせず、助け出そうと馬鹿やってたのさ...」
「其奴らは...」
神主は目を瞑りながら敢えて言おうとしなかった言葉を口に出す。
「ああ、死んだよ。そういう奴は何時だって早死にする...ましてや裏の世界じゃあほぼ確実といってもいい程にな」
「...じゃあ「けどな」
「其奴らは皆死ぬ時は満足そうに死んでいくのさ。己のルールを貫き通した、例え此処で死んでも自分の信念は守り通したって...俺はそういう奴らを見ていると、思わず憧れてしまう。そういった連中は時代遅れかもしれないが、捨てたもんじゃねぇと尊敬の念を抱いちまう」
それは、今の自分とは正反対の者達に対する憧れだったのかもしれない。もしくは自分が持っていないものに対する嫉妬だったのかもしれない。それでも博麗の神主は、自分の言った連中の事を思い出しては尊敬の念と共に黙祷を捧げている。
「...その割には随分とえげつない手を使うらしいじゃないか、博麗の駄神主」
「それはアレだ。俺のアイディンティティだし、最終的に勝てばよかろうなのだァァァァァァァ! だし...つーか今俺の事なんて言った? ごく自然な流れで悪口言っただろ角女。俺これでもその言い方結構気にしてるからね? 主人公として自覚している分それ言われるととめっちゃ傷付くからね?」
「おっと失礼。外道駄目人間と呼べばよかったかい?」
「それもうただの悪口じゃねぇかぁぁぁぁぁ!? なんで割といい感じの雰囲気醸し出してあげたってのにこんな事言われなきゃなんない訳?! あれか! ツンデレのツンの部分でこの後滅茶苦茶デレ」
瞬間、駄神主の頭上に確かな衝撃音が鳴り響く。人知を超えた怪力で放たれたそれは彼の頭蓋骨に確実なダメージを与え昏倒させる。
GENKOTU, 通称メメタァは古来より収拾がつかなくなったボケを鎮圧する為に用いられた最終手段であった。
「本当...あんたは私の神経をつくづく逆撫でして嫌いだよ」
呆れ顔になりながらそんなセリフを吐く萃香。割と寛容である彼女にここまで言わせるのはある意味この駄神主の才能なのかもしれない。
「それでいて、面白い奴だよ...本当」
そして、人知れず寂しさに包まれていた彼女にここまで言わせるのはある意味この神主の人となりからなのかもしれない。
彼女は自分の能力を用いて霧となり、お礼である特製の酒瓶を一升残してその場を去った。
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「痛っつつ〜」
「全く...鬼から拳骨貰うって一体どんな事を口走ればそうなるのだか」
暫くして、痛みに悶絶する神主に湿布がわりのお札を貼り付ける霊夢。一応霊力が込められていて、治癒能力を高める上にある程度の痛み止めになる優れものらしい。
「仕方ねぇだろ...ったく、なんで俺が何かしら行動を起こしたり喋ったりするとこんな目にあうんだか」
「一度鏡見てみればわかる事だと思うわ。まぁ、見えるのはあんたのその頭の手入れされてない野原だけだけど」
「テメェもかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 天然パーマで何が悪い?! あれか、サラッサラのストレートヘアー以外はdisられなきゃいけない決まりでもあんのか幻想郷には!?」
最早涙目になりながら博麗の駄神主は霊夢に思った事を言い出す。これが何処にでもいる普通のタイプの主人公であれば同情する余地の一つでも生まれるだろうが、生憎駄神主にはそういったものは生まれてこない。
「泣くんじゃないわよ。女々しいわね」
「女々しくもなるわ! そもそも今回の異変が解決したのって俺のお陰でもあるのに誰も感謝の一つもしないってどういう事だおい!!」
それでも叫ぶ事をやめない博麗の駄神主。宴会での珍しく結構働いたツケなのか、彼は不平不満を垂れ流しにする。
宴が終わり、何時もと変わらない光景が広がる博麗神社。
「少し黙ろうかしら?」
この後博麗の巫女の少しドスの効いた声と共に博麗の駄神主が先程とは別の意味合いで叫び出すのも何時も通りの流れである。
幻想郷にて最早恒例になるかもしれない、正真正銘の小うるさい夏が漸く始まりを迎えたのであった。
To be continued...