博麗の(やる気の無い)神主   作:執筆使い

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門番? 面倒くせぇ

「...」

 

 

 紅魔の館の最上階に存在する玉座の間。そこにある立派なそれに座っている主人は紅茶を飲みながら高みの見物をしている。

 

 

「お嬢様、良いニュースと悪いニュースがございます。どちらからお聞きしますか?」

 

 

 何も前触れもなく、突然とでも言わんばかり現れ方で館の主人の傍らにメイドであろう服装を身に纏った銀髪の女性が立っていた。

 

 

「そうね...じゃあ良いニュースから」

 

 

「良いニュースは...博麗の巫女、そして博麗の神主が此処を嗅ぎつけたようです」

 

 

 その言葉を聞いて、彼女はくすりと笑みを浮かべながら、備え付けられていたスプーンをカップに差し込み中身をかき混ぜ出す。

 

 自分の退屈を満たしてくれるものがやって来たかのをまるで喜んでいるかのような笑みは、思わず見惚れてしまうほど残酷なそれであった。

 

 

「そして悪いニュースなのですが...博麗の神主が館そのものを破壊しに攻撃を加えてきました」

 

 

 歯切れの悪いメイドの言葉を聞き、いじくり回していた右手をピタリと止める。

 

 

「幸いにも美鈴が阻止した事により一発だけで済みましたが、それだけでもあらかじめパチュリー様が張っていた結界にかなりの罅が入る始末です」

 

 

「理論上鬼の攻撃も耐えうることが出来る結界を一発で...っくくくく」

 

 

 俯き、体を震わせ始める館の主人。悔しがっている訳でもなければ、恐怖に怯えている訳でもない。今の彼女が抱いている感情は

 

 

「アッハッハッハッハ!! 実に面白いじゃない...博麗の神主」

 

 

 興味という2文字であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面は変わり、こちらは紅魔館の入口前。先程放たれた巨大エネルギー波は、いつの間にか起きていた門番に軌道を逸らされ館を覆っていた結界を掠めて上空で爆発を起こした。

 

 片手に吹いている煙を振り回して消す動作をしながら、博麗の神主はつまらなそうに門番の方へと視線を向ける。

 

 

「危ないですね...寝てる人に攻撃し、あまつさえ他人の館を吹き飛ばそうとするなんてどんな神経しているんですか? 貴方」

 

 

「だから言っただろ霊夢。こいつ絶対起きているから不意打ちするなって」

 

 

「何で私のせいになってるのよ!!」

 

 

 さも自然な流れで隣の巫女に罪をなすりつける博麗の駄神主。およそ主人公に似つかわしくないその態度に、門番は苛立ちを募らせながら目の前の外道を睨みつける。

 

 

「貴方みたいな卑怯者...はっきり言って私は大嫌いです」

 

 

「だってさ魔理沙」

 

 

「私じゃない。お前の事だ」

 

 

 此の期に及んで自分の非を一切認めないどころか、他の人物になすり付けようとする駄神主。それが彼女の苛立ちを余計に募らせていく。

 

 

「その上自分の非を認めようとしない...何なんですか?」

 

 

「一応博麗の神主をやってる者でーす」

 

 

 瞬間、目の前に放たれた拳。それは、温厚で滅多に激情を見せる事のない門番が戦闘を開始した合図でもあった。不意打ち気味に放たれた速く重い一撃はしかしながら、右手でしっかりと握り締められ止められてしまっている。

 

 

「すんませーん、先輩方。面倒くさいんで、こいつの相手頼めないでしょうか?」

 

 

「元はと言えばあんたが招いた事だからパス」

 

 

「残念だが、私も先を急ぐんでな...パスだぜ」

 

 

 余裕を見せながらの受け答えに、彼女の門番としてのプライドが刺激され表情が歪む。

 

 

「あなた方を通すわけには...!?」

 

 

 すぐさま先へ進もうとする2人を迎撃しようと動こうとする門番であったが、それが出来ずにいた。

 

 

「ちょいと冷えるが...動かない方がいいぜ? 下手したら粉々に砕けるからよ」

 

 

 先程駄神主に放たれた拳から広がる冷気...0を下回りマイナスにまで達する温度のそれは周囲の水分ごと彼女の腕を凍らせていた。瞬間的な冷凍により、一瞬遅れて激痛が走る。

 

 

「ーーーーっっっ!? くっ!!」

 

 

 悶絶するのは一瞬、直ぐ様凍った右腕を引っ張ってその場を離れる。その際脆くなっていた右腕は肘から先を地面に切り落としてしまう。

 

 

「...で? まさか片腕でこのままやり合おうってか?」

 

 

「それは半分正解、です、ねっ!!!」

 

 

 凍った右腕を拾い自分の気で解凍した門番は、元あった場所に無理やりくっつけた。

 

 彼女が人間でなく妖怪であること、素早く引っこ抜いた時に出来たもののため切断面が綺麗だったこと、その2つによりくっついた右腕はボロボロではあるが元の肌色を取り戻し動かしてみせることが出来た。

 

 

「...随分と無茶すんなぁ。別にほっといても壊死するわけじゃねぇのに」

 

 

「私はこの館を守る門番です...こんな所で足止めを食らっている場合じゃありません!!」

 

 

「...だから、俺をこの場で止めると?」

 

 

 相手が本気になっているのを見て、神主も少しばかり構えをとる。いくら面倒くさがりの外道である彼とて、場を弁える事ぐらいはするのだ。ましてや相手が死ぬ気であれば尚更に...

 

 

「(状況ははっきりいってピンチ。先程彼が放った弾幕でさえ、全力を持ってわずかに軌道を逸らすことしか出来なかった...気を読めるからこそ...わかってしまう)」

 

 

 底が読めない。目の前の神主を見て思った感想である。その気怠さな表情とは裏腹に全身から放出しているエネルギーの質は、自分の主人どころか妹様をも上回っているのではないか? そう思わずにいられない程だった。

 

 

「...沈黙は」

 

 

 肩で息をして動こうとも返事をしようともしない彼女を見兼ねてか、彼は一瞬で腕一本分の間合いまで詰めた。

 

 決して油断していたわけではない。

 長年生きてきて、主の為に尽くし、そこらの妖怪程度であれば苦戦一つせずに倒す程の実力を身に付けている門番...そんな彼女が全く反応できない程の刹那と速度で彼は攻撃体制に入っていたのだ。

 

 

「肯定と見なすぜ?」

 

 

 迫り来る()。彼女の脳裏には今までの思い出が溢れかえると共に、絶対的なそれに対する恐怖で身体が動かせずにいた。

 

 10...5...1...だんだんと近づく毎に、確実に心を蝕む恐怖。最期に彼女が思い浮かんだのは、最初に主と出会った時の思い出。涙を流しながら彼女はゆっくりと死を受け入れる...

 

 

 

 

 

 

 

「...やーめた」

 

 

 寸止めされた。その事実は死を受け入れた彼女に疑問符を浮かび上がらせ、侮辱として捉えさせてしまう。

 

 

「...どうして、殺さないんですか? 少なくとも私は貴方を殺すつもりで...」

 

 

「一つ、こいつは異変解決だ。化け物を殺す依頼じゃない。

 二つ、幾ら向こうが殺ってきたからって、殺り返すのは餓鬼のする事だ。生憎俺は餓鬼じゃねぇ。

 そして三つ、面倒くさい。テメェを殺した所で、テメェの仲間から恨みを買われるんだ...面倒くさいことこの上ねぇだろうが」

 

 

 彼女は目の前の神主を見て、最初とは違う評価を下した。

 

 

「...甘いんですね。貴方は...」

 

 

「甘くて結構。俺の大好物だからな」

 

 

 決して周りに流されない、だらけきった信念を心に持つ人間。

 

 

「んじゃ、この先通らしてもらうぜ〜」

 

 

 そう、彼女が評価を下した駄目人間は主が待ち構える館へと歩を進めていくのであった。

 

 

 

 To be continued...

 

 

 

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