博麗の(やる気の無い)神主   作:執筆使い

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よっしゃラスボス...って違うのかよ、面倒くせぇ

 

 

 

「さーて...つーか見た目より広いなぁ、おい」

 

 

 屋敷を入って少しばかり進んだ場所にある長い廊下にて、神主は呑気にそんなことを呟いていた。彼の傍らにはPと書かれた大量の札...妖精メイドの屍がばら撒かれていた。

 

 

「ったく、どいつもこいつも客の持て成しをするどころか襲いかかって来やがる。どんな教育をすりゃあこんな風になるんだか」

 

 

 そうは言うが、そもそも侵入者に対しておもてなしをする住人などあまりいない上にこの駄神主の場合、正当防衛どころか過剰防衛にみなされる事をやっていた。

 

 襲いかかって来た妖精メイドが一人残らず一回休みとなっている事から、彼の容赦のなさがわかるだろう。現に、終盤に至っては命乞いをして来たものも居たのに、そんなの御構い無しに迎撃している。

 

 

「せめて道案内の一つでもしやがれってんだよ」

 

 

 しかも理由が数が多くてイラついたからというのだからというのだから、メイド達にとっては災難なことこの上なかった。

 

 

「........仕方ねぇ。面倒くせぇが、アレをやるか」

 

 

 辺りを暫く見渡した後、このままいっても迷うと判断した神主は片膝をつきながら右手を地面に添え、目を瞑る。

 

 

『感知 サーモグラフ』

 

 

 瞬間、彼の暗闇に映るのは赤や緑、黄色の配色をした線。赤外線とも違う、所謂熱エネルギーを神主は感じ取っていた。

 

 

「...こっから上の方...こいつは霊夢か。戦闘中みたいだが...空間移動(テレポート)の類の相手と戦ってんのか? 座標が安定しねぇ。んで、その先には...成る程。一際でかいのが一人」

 

 

 最初に自分がいる場所より上の階を探知する。大抵こういう類の異変やゲームではラスボスというのは最上階とか兎に角高い所にいると相場が決まっていると、彼は思っていたからだ。

 

 一通り見た後、次は自分が進む先の方を探知し始める。先...先...少しばかり降りた場所。そこまで探知した彼は一瞬顔を歪ませる。

 

 

「っ、こっちは魔理沙の野郎か。不味いな...今んところ接触してねぇみたいだがあいつの性格上絶対そのまま進む可能性がある」

 

 

 別に彼女が死んでしまうのは、この外道にとっては一切問題ない。だが問題なのは、自分にまでそれが降りかかる事である。他人の落ち度でこっちまで迷惑を掛けるというのがこの駄目人間には我慢ならなかった。

 

 

「...出てくる前にぶっ飛ばす(魔理沙を)」

 

 

 動機こそ、主人公とは思えない程酷いものではあったが、彼は珍しく早足で廊下を駆けるのだった。

 

 

 ..................................

 

 ....................

 

 ...........

 

 

「ずっと...1人だったの」

 

 

 先程、図書館らしき場所で自分と同じ魔法使いと戦闘し、見事勝利を収めて幾つか本を拝借した霧雨魔理沙はそのまままっすぐ地下深くへと進み牢屋の様な個室にて1人の少女に出会った。

 

 

「そっか。私もその気持ちわかるぜ...誰かの都合で閉じ込められる気持ちは」

 

 

 曰く、彼女はずっとこの部屋に閉じ込められて寂しい思いをしていたらしい。魔法使いを否定する父の反対を押し切り家を出てった魔理沙にとって、彼女の気持ちは良くわかってしまう。故に幼き少女の寂しさを紛らわす為に、彼女の遊びに付き合う事としたのだ。

 

 

「...で、何して遊ぶんだ? 生憎私は時間がないから、決まってるんなら早くやろうぜ」

 

 

「良いの? やった! それじゃあ」

 

 

 七色の羽根を持つ吸血鬼は遊んでくれるといった魔理沙を見て、無邪気な笑みを浮かべた。彼女の手の平からあるものが飛び出す。

 

 

弾幕ごっこ(コロシアイ)♪」

 

 

「うおっと!? 危ない危ない...そういう手合いか」

 

 

 辛うじてそれを避ける魔理沙。かなり頑丈な造りである筈の壁に穴が空いているのを見て、冷や汗を少しばかり流した。

 

 

「(不味いな...さっきので消費した魔力はまだ回復してないし、今のを見る限り手加減ってものを知らないみたいだ)」

 

 

「どうしたのー? じっとしてたら遊べないよ!!」

 

 

 そこまで考えてるとすぐさま次弾が飛ぶ。それを冷静に回避してこちらも弾幕を打ち込む。現段階での、割と魔力を込めた1発は少女に当たった後爆発し、煙となって包み込んだ。

 

 

「悪りぃな。ちょっとした考え事だ」

 

 

 不敵な笑みを浮かべながら右手に八卦炉を持つ魔理沙。爆発によって動かない少女の懐まで一気に入り込み、自分が最も使う必殺技を放つ。

 

 

『恋符 マスタースパーク』

 

 

 先程の弾幕をみて、目の前の少女が自分より格上だと悟った彼女。駄神主と違って、例え遊びであろうと必要以上に手抜きをしないが故にこの一発は今持てる全ての魔力を込めたものである。これで戦闘不能になれば万々歳、多少の傷を負えば一矢報いた事となる。

 

 その一撃は少女ごと斜め上に放たれ、天井に大きな穴を一つ開ける。

 

 

「ぜぇ...ぜぇ...少し、無茶をしちまったな。思う様に身体が動かねぇ」

 

 

 魔理沙は片膝をついて息を整えようとする。しかしながら、図書館での戦闘に加えて先程の無茶も祟ってか思う様にいかない。

 

 やがて、天井の大きな穴から先程吹っ飛ばした吸血鬼が降りてきた。服は所々焼け焦げているが、少女自体はほとんど無傷。戦い始めの時と変わらない無邪気な笑みをこちらに向けていた。

 

 

「凄い凄い! 外の人間って面白いんだね!!」

 

 

 怯むどころか寧ろ楽しんで面白がっているという事実に、魔理沙は笑いしか出てこなかった。

 

 目の前の少女は嘗ての自分であり、自分が持っていない【力】を持っている。努力家である彼女にとって、努力なしの圧倒的な力はあまり良いものではない。だからこそ踏ん張った。

 

 

「まだだ..まだ私は倒れるわけにゃいかねぇ!!」

 

 

「私の遊び相手はみんなすぐ壊れちゃうんだ...貴方はどこまで遊べるの?」

 

 

 方や数百年の寂しさを紛らわそうと遊びを全力で楽しもうとする吸血鬼。

 方や長年の努力を持って、目の前の強敵に立ち向かおうとする魔法使い。

 

 2人の本当の戦いの火蓋が切って落とされた!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『加速 ソールジェット』

 

 

「くたばれゴラァァァァァァァァ!!」

 

 

「え!? ちょま、ぐふぅっっっ!?」

 

 

「へ? きゃっっっっ!?」

 

 

 

 なんてことはなかった。ドアを無理矢理蹴破りその場にいる2人を纏めて蹴り飛ばす一つの影。先程の熱い展開やらシリアスに入りかけた雰囲気すら読もうともしない外道。博麗の神主が不意打ち気味に2人に攻撃を加えたのだ。まさに主人公失格、まさにクソ野郎である。

 

 

「って、何すんだ零治?! 死ぬかと思ったぜ!?」

 

 

「...っち、生きてたか」

 

 

「死んでたまるか! というか舌打ちしたいのはこっちの方だ!! 何でいきなりこんな場所まで来て、あまつさえ私を巻き込んで容赦ない一撃加えたんだよ?!」

 

 

 割と強力な一撃を横から受けたが、魔理沙は辛うじて生きていた。壁にめり込みつつも博麗の駄神主にツッコミをいれる。

 

 

「良いじゃねぇか、敵はぶっ飛ばせたんだし。多分今のがラスボスっぽいし、異変解決って事で万々歳だ」

 

 

「良くねぇよ!!」

 

 

 駄神主の余りの言い分に限界を超えたパワーを発揮したのか、めり込まれた壁から無理矢理出て来た魔理沙。その際帽子の中に入っていた図書館の本を離さずに抜け出て来たあたり、ちゃっかりしている。

 

 

「痛たたた...今の誰〜? フランの遊びの邪魔をしないでよ〜」

 

 

 少し遅れて壁ごと貫通して吹っ飛んでた吸血鬼が戻ってくる。さっきと違い余程堪えたのか首のあたりをさすって痛そうにしている。

 

 

「...悪いけど俺、急ぎの用事「逃すと思うか?」ですよねー」

 

 

 駄神主は逃げようとしたが、魔法使いに回り込まれてしまった。このまま何もしないで帰ることは無理だと悟った彼は気怠そうに目の前の少女を見た。

 

 

「...お兄さんもフランと遊びたいの?」

 

 

「出来ればパスしたいんだが、どうもさっき遊んでた先輩が限界みたいなんで、」

 

 

 駄神主は構える。

 

 

遊んでやる(本気を出す)...少しだけな」

 

 

 幻想郷最強の男は不敵に笑っていた。

 

 

 

 

 To be continued...

 

 

 

 

 

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