「大丈夫か? 魔理沙に紫もやし」
駄神主はあらかじめ張ってあった2つの薄い氷の膜を叩き割り、中にいた人物の安否を確認していた。
「おう...なんというか。本当なんでもありだな、お前って」
「そうは言うが、俺からしてみればテメェらの方がなんでもありだよ」
彼が元いた世界では自分の様な能力者は余りいない。微弱なものだったり、解析不能なものだったり、実験によって発現したりは存在するが、それでも6割方は普通の人間だ。
そんな彼からしてみれば、スペカ越しとは言え努力さえすれば人間だって弾幕といった超常を発動できてしまうこの世界が異常だと思っている。
「...あれ? そういや紫もやしの返事が」
ふと、神主が返事が一つ足りない事に気付き紫の魔女の方へと視線を向けた。
( ꒪﹃ ꒪)<むきゅぅ...
「...さーて先進むk「おいぃぃぃぃぃ!? 何で死に掛け何だぜ!?」...知らん」
白目むいて口から泡をブクブク吹きながら、パチュリーの霊圧がどんどん下がっていた。運動不足気味なのに、無理矢理流れ弾を避けるがために身体を動かせられてグロッキーな状態だったところを駄神主の外道技によるトドメ。既に彼女のライフポイントはゼロだった。
「どうすんだぜ?! なんか魂みたいなの出かかってるんだけど!? 空から聖なる光っぽいのが照らし始めたんだけど!?」
後半、最早だぜ口調さえ忘れて魔理沙は目の前の駄神主の首根っこを掴んで揺らす。先程戦った相手とはいえ目の前で死なれては気持ちの良いものではない。というか絶対この神主が原因だっていうのに何もしないのに軽い殺意が湧いていた。
「大丈夫だっつーの。こんな事もあろうかとこいつを持ってきたから」
さて...読者の皆様もすっかり忘れているだろうが、この駄目人間は一応神主である。つまりは霊とか魂とかの扱い方も心得ている訳だ。そんな彼が取り出したのは白い三角巾。
「死装束じゃねぇか!?」
死人に着せる衣装をそっと彼女の頭に取り付けて手を合わせる神主。心なしかパチュリーの霊魂みたいなものが安らかな笑みを浮かべている。徐々に、徐々にへと彼女が天国への階段を登って行く証拠でもあった。
「死ぬなぁぁぁぁ!? それ以上は進んじゃ駄目だぁぁぁぁ?!」
魔理沙が心臓マッサージをしながら必死に叫び出す。それが功を成したのか、あと一歩の所で彼女の霊魂らしきものは宿主の所まで戻っていき、入ると同時に彼女の顔色が元どおりとなる。
「む...きゅう...わたしは...いったい...あ」
むくりと起き上がり、現状を確認しようとするパチュリー。周囲に広がるは嘗てないほど荒れ果てた元図書館。長年集めた本や研究資料がチリになっている様を見せつけられた彼女は涙を流していた。今日は彼女にとって最悪の厄日だったのかもしれない。
「んじゃま、帰るとすっか。いやー、ちかれたちかれた。もう身体がガッタガタで動けねぇ」
そう言いつつ図書館から出て行こうとする神主。吸血鬼との戦いをあっさりと終えた彼は何の心残り一つせずさっさと行動に移る。後ろで2人の魔法使いが喚いているが彼には御構い無しである。
「ふぁ〜あ。これ終わったらBBAに特別手当貰お。何せ久々に、おっと」
彼は少しばかり首を傾げる。するとさっきまで頭があった場所をエネルギー弾が通過した。それを放ったのは普通の魔法使いでなければ、紫の魔女でもない。
「嫌...もっと遊びたいの...まだ終わりたくないの!!」
先程吹っ飛ばした筈の幼き吸血鬼であった。博麗の神主はやれやれと気怠そうに後ろを振り返り、少女の方に視線を移す。
最早ボロボロ、戦いなんてとてもではないができない。そもそも動くことさえできれない筈の負傷。再生能力を持つ吸血鬼ですら重傷と言えてしまう程の傷を負いながら彼女は泣いていた。痛みにではない、終わってしまう事に涙を流していた。
「やめとけ。これ以上は面倒くせぇ上に...死ぬぞ?」
神主は殺気を放ちながら少女と向き合う体制になる。先程の面倒くさそうな表情ではない。まるで人を殺す獣の様な視線を相手に向けたのだ。これ以上は容赦しない...そんな意思表明を示す。
「だって...私は一人ぼっち。お姉様は外に出してくれない。私が全部壊してしまうから...でもお兄さんは壊れなかった!! 思いっきり遊ぶ事が出来た!!」
それでも彼女は叫んだ。自分の寂しさを誤魔化したいがために自身の胸の内を神主に伝えた。それでも神主は何もしようとしなかった。
「...お兄さんも私を怖いと思うの? 私と遊びたくないと「違ぇよ」
神主は視線を元のだらけきったそれに戻して、彼女の言葉と寂しさを否定した。
「甘ったれんじゃねぇ...大体、そんなにこの館が嫌ならぶっ飛ばして外へ出ればいい。それが嫌だったらお姉様とやらに不満を言えばいい」
「でも...言っても駄目だった」
「何度も言うんだよ。何度も...何度も...な。我儘を言って、駄々をこねて道理を通すのは
彼女は納得できなかった。目の前の神主の言い分を聞き、自分の495年間が否定されていると思い、激情に駆られた。
「何が解るの...私の寂しさの何が解るの!!」
「...」
その言葉を聞いた神主は少し口を閉ざして沈黙し、やがてゆっくりと口を開く。
「ちっとも解らなかった...そもそも解ろうともしなかった。だからこそテメェには同じになって欲しく無いんだよ」
「同じ?」
神主が少しばかり悲しそうな目をしている。フランには、そう見えたのだった。
「...ま、本音を言うとテメェとこのまま戦いを続けるのがめんどいだけだが」
「珍しくまともっぽい事言ってると思ったらそう言うことかい」
しかし、最後の最後で彼が平常運転に戻った事により、魔理沙が突っ込んだ為に真相は闇の中となってしまうのだった。
「まぁ...あれだ。そんなに遊びたいんだったら今は無理だがいつでも遊んでやるよ」
「ほんと...?」
ただし、と神主は条件を一つ提示した。
「俺が態々出向くのは面倒くせぇから、お前が自分から外に出て博麗神社まで来い」
「え...でもお姉様が...「大丈夫だって、どんな野郎でも言う事を聞くであろう魔法の言葉を教えてやっから」魔法の言葉?」
神主はすぐさま少女の近くまで寄って、耳打ちをする。その際物凄く黒い笑顔の表情を取ったので絶対碌な事ではないだろう。
「...で、その時にこう言うんだ...........てな」
「...でもそんなので「大丈夫だって、この言葉を聞いて揺らがない奴なんざいねぇ」
「「(何故だろう。絶対碌な事じゃないってわかってしまう...と言うか何で戦いの時よりイキイキしてるんだよあの神主)」」
その光景を見て、2人の魔法使いがほぼ同じことを神主に対して心の中で思っていたのだった。
To be continued...