なのはちゃんと一緒   作:ユルい人

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リリカルなのはあまり詳しくないのでおかしな所あってもスルーでお願いします。


なのはちゃんと一緒

ブランコで一人涙を溢す幼女が一人。彼女の名は高町なのは。この物語の主人公である。

 

「ひっく、ひっく…」

 

怪我をした父の入院をきっかけにバラバラになった家族。家を、子を守る為になりふり構わず働く母と、それを支える兄と姉。そんな家族を見て自分も力になりたいと思ったなのはだったが、まだ幼くも賢い自分は家族の力になれる事等無いと理解していた。結果彼女が取った行動は迷惑をかけない事だった。子供ながらの甘えたい欲求を抑え自分を律し、ただひたすらに良い子になった。

 

「ひっく、ひっく…」

 

だが、それもすぐに限界がきた。もっと甘えたい。構って欲しい。そんな欲求を抑えきれなかったなのはが取った行動は迷惑のかからない場所で一人泣く事だった。

 

「ひっく、ひっく………?」

 

鼻を小さくすすり泣くなのはだったが、ふと隣のブランコに誰かが乗っている気配に気付きちらりと視線を動かし、ぎょっとした。

 

「うわぁぁ!うわぁぁん!ずるる!」

 

そこには目、鼻、口の全てから体液を流す少年がブランコをゆさゆさと揺らしながら大声で泣いていた。

 

「うわぁぁん!うわぁぁん!」

 

これが俺の全力全壊だ!と言わんばかりに泣く少年。今まで気付かなかったのが不思議な程声を上げ泣き叫ぶ少年を見たなのはの涙は自然と止まり固まった顔のまま少年を見つめる。自分よりあれなやつを見ると落ち着く法則である。そしてレベルの違いはあれど自身と同じく泣いている少年に僅かながら仲間意識が生まれたなのはは、声をかけてみようと思いおずおずと少年に手を伸ばし話し掛ける。

 

なんで泣いてるの?

 

おっかなびっくりだが、優しく声をかけたなのはに気付いた少年は全力で振り向く。汁が飛ぶ。なのはにかかる。なのはまた泣きそうになる。でもそんなの知らんとばかりに少年が口を開く。

 

「おねじょじだらがあぢゃんにじゃじんどられだぁぁぁぁぁ!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

まだ幼いなのはにはなんて答えれば正解なのか分からなかったので、とりあえず悲しそうな顔で「そうなんだ…」とだけ呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはと少年が運命的な出会いから数日。事あるごとに公園で出会い遊んでる二人は今日も二人で楽しそうにブランコを漕いでいた。

 

「それでね!それでね!母ちゃんもちっちゃい頃お漏らししてたんだって!父ちゃんが教えてくれたんだ!」

 

「そ、そうなんだ」

 

「でね!それを教えて貰った後母ちゃんにそれを言ったら父ちゃんがぼこぼこにされてたんだ!もうすんごいぼこぼこになってた!」

 

「へ、へぇ……」

 

「漫画みたいに血出してたからちょっと心配になったんだけど母ちゃんが幼馴染みだから平気って言ってたんだ!あ、幼馴染みってのは小さい頃から知ってる人の事なんだって!なのはちゃん知ってた?」

 

「う、うん」

 

「おおーすげー!なのはちゃん物知りだ!」

 

「え、そ、そうかな?」

 

「うん!だって俺知らなかったもん!なのはちゃんすげー!」

 

「え?わ、私凄いの?」

 

「うん!なのはちゃん凄い!」

 

「そ、そうなんだ……えへへ……」

 

凄い凄いと褒める少年になのはの頬が緩む。仕事や手伝いに忙しい家族から褒められる事が少なくなったなのはにとって、純粋に自分を褒めてくれる事に嬉しさが込み上げてくる。本当に楽しそうに話す少年に、なのはもにこにこと笑いながら相槌を打ち気付けば日が暮れていた。

 

「あ、キンコン鳴ったから帰らなきゃ。またねなのはちゃん!」

 

「あ……」

 

ブランコを勢い良く振り飛び上がった少年の言葉になのはが寂しそうな声を上げる。が

 

「あ」

 

ドンッ!

 

勢い良く飛び上がり背中から地面に着地した少年を見て呆けたような声を出す。

 

「びええええええええええ!!」

 

なのはは慌てて駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言えばこの子のお名前聞いて無かったな。

 

いつものようにブランコに乗ったなのははそう思い少年に名前を訊ねると「鈴木小太郎!5歳!」と元気良く答えくれた。余りにも元気良く答えた小太郎に感化されたのか、釣られた様になのはも答える。

 

「わ、私は高町なのは!こ、小太郎君と同じ5歳でふ!」

 

「あははは!でふだって!でふ!あはははは!」

 

馴れない大声を出したせいか噛んでしまったなのはに小太郎大爆笑。涙すらながしながらゲラゲラと笑う小太郎になのはが恥ずかしそうに顔を赤くしながら怒る。

 

「も、もう!笑わないでよ!」

 

「あははは!でふ!でふ!あはははは!」

 

精一杯私怒ってるんですアピールをしながら止めるように言うなのはだったが。箸が転がるどころか爪楊枝が転がるのを見ても笑うお年頃の小太郎にそんなもの効く筈なくゲラゲラと笑い続ける。

 

「あははは!あははははは!でふ!」

 

「むぅぅぅぅぅぅ!!」

 

でふでふ言いながら笑い続ける小太郎になのはが頬を膨らまし立ち上がる。そしてゲラゲラと笑う小太郎のもとへ向かい大きく手を振りかぶり

 

「笑わないでって言ってるでしょ!」

 

ドンッ!っと突き飛ばす。突き飛ばされた小太郎は中々の勢いで繰り出された張り手に押し出されブランコから転げ落ち地面にダイブ。

 

「びええええええええええ!!」

 

なのはは慌てて謝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日なのはちゃん家行きたい!」

 

突然そう言い出した小太郎になのはがちょこんと首を傾げる。

 

「なんで?」

 

「面白そうだから!」

 

なるほど、わからん。

 

頭を捻るなのはに行きたい行きたいと喚く小太郎。なにがそんなに彼を動かすのかひっくり返った虫のように暴れる小太郎を未知の生物を見るような目で見るなのは。連れてって連れてってとジタバタする小太郎を見ていたなのはは困ったのように苦笑いを一つした後、まあ別にいいかな?と思い暴れる小太郎に声をかけようと手を伸ばしたが、ふと忙しそうに働く家族の事を思い出す。出しかけた手が止まり自然と引っ込んでいく。

 

……ダメだ、勝手にお家に連れてったらお母さん達に怒られちゃうかもしれない……

 

その考えが浮かんだ瞬間小太郎を家に連れていくと言う選択肢がなのはの中から薄れていく。虫のようにジタバタと暴れる小太郎には悪いがそれだけはダメだ。なのはは喚く小太郎にごめんねと謝りながら連れていけない事を伝える。

 

「やだぁぁぁぁぁ!行きたい!」

 

だが5歳児はそう簡単には納得しない。残像が出る程腕と足をバタバタさせる小太郎になのはが本当に困った顔をした時小太郎の手が近くにあったブランコにヒット。ゴンッと言うナイスな音と共に二人の時が止まる。何が起こったか理解してない小太郎と全てを理解しているなのは。程度の違いはあれど予想外の事に固まる二人。だが段々と痛みを感じ顔を歪める小太郎を見てなのはが一つの確信を得る。

 

あ、こりゃ来るな。

 

「びええええええええ!!」

 

動き出した時の中予想通り泣き喚く小太郎になのはは呆れながら駆け寄って行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛い行きたい痛い行きたい。なのはがこのループを喰らって数十分。何度ダメだと言っても聞かない小太郎に疲れたなのははなんかもうどうでもいいやってなりしぶしぶ小太郎を連れ家へ向かう事にした。

 

「お家についても大人しくしてね?約束だよ?」

 

「分かった!」

 

即答で答えた小太郎に本当に分かってんのかよこいつみたいな目を向けたなのはだったが、約束したんだから守ったくれるだろうと思い家に向かう。手を繋ぎながらお喋りしながらトコトコと家に向かう二人だったが、暫くすると小太郎が騒ぎだす。

 

「まだつかない?あとどれくらい?ねえまだつかない?」

 

歩くのに飽きてきたのか、ねえまだ?まだ?まだまだ?としつこく聞いてくる小太郎。最初は「ごめんね、後もうちょっとだから」と宥めていたなのはだったが、延々と聞いてくる小太郎に軽くイラッとしたなのはは「少し、黙ろう?」とにっこり笑みを浮かべる。本能で何かを察した小太郎がぷるぷる震え謝るのを見て溜飲が下がったなのは。大人しくなった小太郎を連れ歩き自宅へ到着した。ドアの前に立ったなのはは軽く深呼吸をしゆっくりとドアノブに手をかけるが、ドアは開く事なくガンッと音をたてるだけだった。

 

やっぱりまだ帰ってきてない、か

 

迷惑をかけずに済んだ安心感と、いつも通りもぬけの殻だった家に寂しさを感じつつ鍵をガチャリ。

 

「おじゃましまーす!」

 

住人のなのはを押し退け小太郎が家の中へ入っていく。遠慮なんて文字が欠片も存在しない小太郎は初めて来た家に興味津々。ドタドタと音をたて家の中を駆け回る。ここで一つ、今のなのはの事を語ろう。なのはは同年代の子より賢く倫理を弁えている。言い換えれば糞真面目。只でさえ家に連れてくのに葛藤を重ねしょうがなく連れてきたのに、向かう途中もまだ着かないの?なのはちゃん足おそーい。足くさーい等と煽られ、終いにはこの暴挙。普段温厚でびくびくしているなのはであったが流石に我慢の限界というものがある。つまり

 

ブチッ

 

なのははキレた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まてぇぇぇぇぇ!」

 

「あはは!鬼さんこちら!屁の鳴る方へ!」ブッ!

 

「ブッ殺すのぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「きゃー!」

 

追い掛けてくるなのはに屁を放ちきゃっきゃっと走り回る小太郎。普段ブランコしかせず、余り活発に動く遊びをしないなのはが鬼ごっこをしてくれてるものだと思ってる小太郎は笑い声をあげながら鬼の形相で追い掛けてくるなのはから逃げる。

 

「まてぇぇぇぇぇ!」

 

屁を喰らったなのはは更に怒りのボルテージを上げ、今までに上げた事の無い声量で叫び、小太郎を追いかける。だが体力の無いなのはがやんちゃ坊主と言っていい程元気な小太郎に追い付ける筈もなく、段々とその動きが鈍っていく。

 

「ま、はぁ、はぁ、ま、まてぇぇ……はぁはぁ……」

 

ついには足を止めその場にへたり込むなのは。そんななのはの背後に逃げていた小太郎がにやりと笑いながら迫り尻を向け一踏ん張り。

 

ブッ!

 

第2ラウンド開始である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日も暮れ、肌寒くなってきた頃。なのはの母である桃子と兄と姉である恭也と美由希の三人が息を切らせ走っていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

「またこんなに遅くなってしまった、なのははもう寝てしまっただろうか」

 

「朝は仕込みで早いし、夜は片付けで遅くなるし……最近、なのはとまともに顔も合わせてないよね……」

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

「母さん、大丈夫か?少しペース落とそうか?」

 

「だ、大丈、夫、よ」

 

「でも」

 

「もし、なのはが起きてたら、少しでも、会話がしたい、の」

 

汗をかき息を切らしながらも強く願う母に子供達は口を閉ざし、無理の無い程度の早さで家へと向かう。

 

ごめんね、ごめんね。

 

息を切らし走る母。桃子は家で独り寂しく過ごしているだろうなのはの事を想い、涙が流れそうになるのをなんとか耐え家へたどり着くと、何も考えずに乱暴にドアを開ける。

 

あら、開いて、る……?

 

なのはは家に帰って来たら必ず鍵を閉める子だ。なのに普段掛かっている筈の鍵が開いてる事を軽く不審に思いつつ家へ入る桃子。それに続き後ろに居た子供達が家に入ると家の中は物が倒れ誰か暴れていたのか軽く争った後があり、普段の我が家とは別物の様に荒らされていた。それはまるで強盗でも押し入ったかのように。

 

「え…」

 

荒らされた家を見て魂の抜けたような声を出し顔を青ざめる桃子。そんな桃子を余所に家の様子を見た恭也と美由希は互いに目を合わせ頷き合うと慎重な足取りで家の奥へと消えて行く。呆然とする自分を置いて去って行く子供達を見送った桃子はその場に崩れ落ち、両手で顔を覆った。

 

「ああ、あぁぁぁぁぁ……」

 

私の、私のせいでなのはが……

 

「ごめん、なさい、ごめん、なさい……」

 

止まる事なく流れる涙とシンクロするかのように流れ出る懺悔の言葉。なのはにもしもの事があったらと、最悪の事態を考え自責の念に潰されそうになる桃子。頭の中がぐしゃぐしゃになり泣く事しか出来なくなった桃子に二つの足音が自身に近付いてくるのを感じゆっくりと顔を上げると、そこには先程走り去った子供達が苦笑いをしつつ桃子の体を起こした。

 

「こっち来て」

 

苦笑いしたままの美由希に従い離れにある道場へ向かうと、そこにはアザだらけになった少年に抱き付くよくにして眠るなのはの姿が。

 

「ううん、うぅぅん……」

 

「すぅ、すぅ…んふふ」

 

魘されたような声を出し顔を歪める小太郎とは対照的に、嬉しそうな声を出しながら小太郎にすり寄るなのはを見て、桃子は再び崩れ落ちた。

 

「んん……?」

 

安堵から腰が抜けるように桃子が崩れ落ちた音でうっすらと覚醒した小太郎が目を擦り音のした方を見ると、安堵の息を吐き呆然とこちらを見る桃子と苦笑いをする恭也と美由希の姿が目に入った。

 

「んー、誰ー?」

 

それはこっちが聞きたいんどけど。と思いつつ近くに居た美由希が小太郎の近くに優しく座り声をかける

 

「初めまして。私はなのはのお姉ちゃんの美由希って言うんだ。僕は誰かな?」

 

「んー?鈴木、小太郎。五歳、です」

 

「そっか、小太郎君か。小太郎君はなのはとどういう関係なのかな?」

 

「なのはちゃん?お友達だよ?」

 

「そっか、お友達かー。今日小太郎君はなのはとお家でなにしてたのかな?良かったらお姉ちゃんに教えてくれない?」

 

「んー?鬼ごっこ」

 

ははっと渇いた笑い声が道場に響き渡る。

 

「あはは、鬼ごっこかぁ。ちなみに小太郎君アザだらけだけど、それはどうしたの?」

 

「……なのはちゃんにおならしたら怒って殴られたの……なのはちゃん、すっごく怖かった」

 

小太郎の言葉を聞き桃子達は驚きで声を失う。

 

あのなのはが人を殴った?それもこんなにアザだらけになるほど?

 

「そ、それは本当になのはがやったの?どっかにぶつけたとかじゃなく?」

 

「ううん。なのはちゃんにやられた。最初はおならで怒ってたんだけど、お家の物倒したらすっごく怒って追い掛けてきたの。なんでそんなに怒るのって聞いたらお母さん達にもっと邪魔者扱いされちゃうって言って殴られたの」

 

「っ!」

 

「なのはちゃんは邪魔者じゃないよって言ったのに聞かなかったからお返しに殴ったらもっと殴られて、気付いたら寝ちゃってたの。お姉ちゃん達なのはちゃんの家族?」

 

「そ、そうだよ……」

 

「なんだ。なのはちゃん家族ちゃんといるんじゃん。いつもお家で独りぼっちって言ってたから家族居ないのかと思ってた」

 

ちゃんと居て良かったね。と隣で眠るなのはを撫で撫でする小太郎に3人は二の口が告げないでいた。

 

「うぅぅ、ううぅぅぅぅぅ……」

 

「母さん……」

 

小太郎の言葉を聞き再び涙を溢す桃子に、恭夜が悲しそうに呟く。

 

「?なんであのお姉ちゃん泣いてるの?」

 

子供を産んだとは思えない程年若く見える桃子は小太郎にとってお母さんではなくお姉ちゃんに見えた。疑問の声を上げる小太郎だったが、恭也も美由希もそれに答える余裕等無く、ただ顔を伏せ自身の不甲斐なさを噛み締めていた。

 

「んー?…………よいしょっおわっ!」

 

泣いている桃子を見て何かを思った小太郎ご立ち上がろうとしたが、腕に引っ付いているなのはのせいで転びそうになる。

 

「んー」

 

「なのはちゃん手ほどいて」

 

「んー」

 

「もういいや」

 

んーとしか喋らず手をほどいてくれないなのはが面倒臭くなった小太郎は腕を掴むなのはをずるずると引き摺り桃子の前まてで行くと、その頭にぽんっと手を乗せ

 

「痛いの痛いのとんでけー。痛いの痛いのとんでけー」

 

母に教えてもらった魔法の言葉を唱える。

 

「痛いの痛いのとんでけー、痛いの痛いのとんでけー。どう?もう痛くない?」

 

小太郎にとって泣いてるのはどこかが痛い人だ。自分が怪我をした時して貰って嬉しかった事を泣いてる桃子にもしてあげた小太郎は覗き込むように桃子に問い掛けると、その体をぎゅっと抱き締められた。

 

「わっ!」

 

「ごめん、ね。ごめん、ね……」

 

「なんで謝るの?」

 

「私、なのはに、悪い事を、沢山しちゃったの…だから、ごめんね……」

 

「なのはちゃんに悪い事したなら僕じゃなくてなのはちゃんに謝らないとダメなんだよ?」

 

ちょっと待っててねと言った小太郎は桃子の拘束を外し横でむにゃむにゃ言うなのはの体を揺するが、起きる気配が全く無い。中々起きないなのはにどうしたものかと少し悩んだ小太郎は閃いたみたいな顔をした後なのはの顔に尻を向け一踏ん張り。

 

ブッ!

 

放屁した。

 

小太郎のブレイカーが顔に直撃したなのははむにゃむにゃと幸せそうにしていた顔を段々苦悶の表情に変えていき「うにゃああ!臭いの!」と言って跳び跳ねるように起き上がった。

 

「あ、起きた。はいお姉ちゃん。なのはちゃんにごめんなさいしいてっ!」

 

「なに、する、のっ!」

 

最高に不愉快な目覚めをしたなのははこの臭いの原因を一発で探し当て腕を思いっきりつねった。

 

「そっちこそなにすんだよ!なんでつねるんだよ!」

 

「当たり前でしょ!なんでなのはにおならするの!すっごく臭かったんだから!」

 

「なのはちゃんが起きないから悪いんじゃん!この乱暴者!」

 

ぎゃーぎゃーと喚きながらぽこぽこと殴り合っていたなのはだったが、ふと、自分達以外に誰か居る事に気付き周りを見る。そして目に入った人物を見て段々顔を青くするなのはに小太郎が攻撃の手を止めどうしたの?と問い掛けると、なのはは小太郎の背後にささっと隠れ身を縮める。

 

「なにしてるの?かくれんぼ?」

 

「…………」

 

今のなのはに小太郎の頓珍漢な質問につっこむ余裕がある筈もなく、ただひたすらに体を縮め小太郎の服をぎゅっと握り締める。

 

「なのは……」

 

桃子に呼ばれなのはの体がビクリと震える。なのはに声をかける桃子を見て本来の目的を思い出した小太郎は後ろに隠れるなのはを桃子の前に差し出そうとするが、ピクリとも動かない。

 

「なのはちゃん。このお姉ちゃんがなのはちゃんにお話しがある「いや!」お話しがある「いや!」お話しが「いーや!」

 

ブッ

 

「臭っ!」

 

今だ!反射的に鼻に手をやるなのはの後ろに回り込み背中をトンっと押し桃子の前に差し出す。屁の臭みに耐えながら強制的に桃子の前へ差し出されたなのはが思う事はただ一つ。

 

小太郎ブッ殺すの。

 

どうやらなのははおならの臭いが嫌いらしい。不屈の心で小太郎の殺害を誓ったなのはだったが、目の前にいる母の姿を見て顔を伏せ縮こまり震える。

 

怒、られる……

 

勝手に小太郎を連れてきた上に家を荒らした事を怒られると思ったなのはは顔を伏せ小さな体を震わしこれから来るだろう叱咤に身構えていた、が

 

「え…」

 

ふわり。懐かしくも優しい匂いと体温に身を包まれる。

予想と違い温かい感触になのはが戸惑いの声と共に顔を上げると、そこには涙で染めた母の顔があった。

 

「ごめん、ね」

 

「え?」

 

「独りで、寂しい想いをさせて、ごめんね」

 

「あ……」

 

なのはの胸に熱が持つ。

 

「気付かないでごめんね、不安にさせてごめんね、いっぱい、いっぱいごめんね」

 

「…う、ん」

 

「邪魔なんかじゃない、なのはが邪魔なんて思った事一度も無い!それをちゃんと伝えなくてごめんね!なのはが頑張っていい子にしてかれてるのにかまけて蔑ろにしてごめんね!お母さんバカだった!本当にごめんね!」

 

「う、ん、ひっく、うん…」

 

「もういい子になろうとしなくていいの!いっぱい、いっぱい迷惑かけてくれていいの!」

 

「ひっく、ひっく、うんっ」

 

「なのはは私の、私達の自慢の娘よ!大好きな娘よ!それなのにいままで我慢させてごめんね!後もう一つごめんね!お母さんも限界だからもう一回泣くわ!ごめんなざいなのばぁぁぁぁぁ!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!おがあざぁぁぁぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ざみじがっだよぉぉぉ!」

 

「ごめんなざいぃぃ!」

 

「ゆるずぅぅぅぅ!」

 

「ありがどぉぉぉ!」

 

「「うわぁぁぁぁぁん!」」

 

泣き声の大合唱。良い子になってから押さえ付けていた涙と想いを母にぶつけ抱き合う。泣き崩れる母の温もりを全身で味わいながら流すそれは悲しみの涙ではなかった。抱き合う母と妹の姿を見て恭也と美由希も涙を流す。だがその顔は笑みに溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの人お姉ちゃんじゃなくてお母さんだったんだ」

 

「「しっ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうね小太郎君。また来てね 」

 

目は腫れ声も枯れ切った桃子だったが、憑き物が落ちたかの様に晴れ晴れとした笑みを浮かべた桃子は、すがり付く様に首に手を回すなのはを抱き締め小太郎に微笑む。

 

「ありがとうな小太郎君。君のお陰で取り返しのつかない事にならずに済んだ。本当にありがとう」

 

桃子と同じく目を腫らした恭也が五歳児にするとは思えない程綺麗に腰を折り頭を下げ感謝の言葉を送る。

 

「ごだろうぐんありがどねぇぇぇ!ぼんどにありがどねぇぇぇ!」

 

美由希は、まあ美由希だ。

 

「仲直り出来たの?」

 

「ええ」

 

「ああ」

 

「でぎだよぉぉぉぉぉ!」

 

異口同音で答える3人に小太郎はそっかと呟き笑うと、桃子に抱き付くなのはを見る。

 

「良かったねなのはちゃん!仲直り出来て!」

 

元気良く喋る小太郎を見て更に笑みを深めた桃子は、抱き付くなのはの背中をトンっと叩き優しく地面に下ろす。

 

「ほらなのは。小太郎君行っちゃうわよ」

 

「うん……」

 

下ろされたなのは桃子の服をぎゅっと握りながら恥ずかしそうにもじもじしていた。どうやら泣いてる所を見られたのが恥ずかしかったようだ。もじもじと体を揺らしながらチラチラと小太郎を見るなのはは「あの、その……」と何を言えば良いかわからないと言った様子で言葉を詰まらせる。そんななのはを見た小太郎は頭に?を浮かべながらいつもの様に元気良く声を出す。

 

「なのはちゃん!」

 

「は、はい!」

 

「また明日ね!」

 

あ……と声を漏らしたなのはの表情が恥ずかしそうなものから呆けたものとなり、ついには笑みへと変わっていく。

 

「う、うん!ま、また明日!

 

「うん!」

 

「そ、そのまた明日も!そのまた次の明日も!」

 

「うん!」

 

「いっぱい、いっぱい、また明日しよ!」

 

「うん!あそこの公園でいっぱいまた明日しようね!」

 

にっと笑う小太郎と約束を交わしたなのはは、小太郎に負けない位の笑みを、今までで一番の笑みを浮かべ声を上げる。

 

「うん!また明日!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何時だと思ってんだこのバカ!」

 

「びえぇぇぇぇぇぇ!」

 

「その辺で許してあげてもいいんじゃないか?小太郎も反省してるだろうし」

 

「鬼ババァァァァァァ!」

 

「なんだとゴラァ!もういっぺん言ってみろ!」

 

ブッ!

 

「ぶっころ」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「…………ご飯、冷めちゃうぞ」

 

 




三人称難しい……

尚続かない模様
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