血塗られた戦車道   作:多治見国繁

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皆様、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
アンツィオ高校編のお話が続きます。
新年最初の更新です。


第96話 アンツィオ編 一人じゃない

カルパッチョは"夢のようなもの"を見た。戦車道チームの"夢のようなもの"だ。何故"夢のようなもの"という曖昧な表現かといえばカルパッチョにとってはどうしてもそれが完全な夢と思えなかったからだ。何故だかわからない。普通に考えれば夢であるという解を導き出せるはずだが、なぜかそれが単なる夢ではないような気がしたのだ。

その夜、カルパッチョは災害対策本部がある教室で災害対策本部の職員たちとともに眠っていた。本来ならば眠らずに仕事をするのが災害時の行政の実態なのかもしれないが、自分たちは高校生である。高校生が眠らずに仕事をするというのは健全ではない。だからカルパッチョは全ての公務従事者に十分な睡眠をとるように通達を出した。もしも、消防団などその指示を履行するのが無理な者たちもせめて交代制で休息を取るように指示した。そして、カルパッチョたち災害対策本部も夜10時で業務を終了し夜12時には全員床についた。床につくと言っても布団があるわけではないので新聞紙を掛け布団と敷布団がわりにして眠った。眠りについて何時間も経ったころ、カルパッチョは耳元で自分を呼ぶ声に目を覚ました。カルパッチョは目を擦って声のする方を見るとそこにはなんとペパロニと、カルパッチョが搭乗している戦車セモヴェンテの搭乗員たち、さらに、他にも見慣れた顔が何人も整列していた。カルパッチョはペパロニの姿を見て思わず抱きついた。

 

「ペパロニ……?ペパロニ!それにみんな!いつ戻ったの!?大丈夫だった!?本当に心配したんだから!!」

 

ペパロニは抱きついてきたカルパッチョを優しく受け止めて愛おしそうに抱きしめた。

 

「心配かけてごめんな。カルパッチョ。私は苦しいことなんて何にもなかったよ。カルパッチョこそ大丈夫だったか?」

 

「私は平気よ。怪我もないわ。ペパロニたちは怪我はない?」

 

ペパロニは静かに頷くとにっこりと笑う。いつものペパロニとはまるで違うとカルパッチョは感じていた。するとペパロニはカルパッチョの頭を撫でながら言った。

 

「カルパッチョ。今までありがとう。私たち、行かなきゃいけないところができた。だからカルパッチョとはお別れしないといけなくなっちゃったよ。」

 

「え……?どこに行くの?私も一緒に連れて行ってよ!お別れなんて嫌よ!私たちはずっと一緒って約束したじゃない!」

 

カルパッチョがそう訴えるとペパロニは寂しそうに笑って言った。

 

「ごめん。カルパッチョ。それはできないよ。私たちはまだカルパッチョをこっちの世界に連れて行きたくはないっす。みんなとドゥーチェを頼んだよ。私たちはいつまでもカルパッチョの味方だからな。それじゃあ、私たちは行くよ。例え姿が見えなくても私たちはいつまでもカルパッチョの心の中にいるからな。カルパッチョならきっと私がいなくても上手くいくっすよ。カルパッチョは1人じゃないっすから。」

 

ペパロニは、名残惜しそうにカルパッチョの顔を見つめながら髪と頰を触った。それはまるでカルパッチョの肌や髪の温もりや感触を忘れないようにしようとしているようだった。そして最後に頭をポンポンと撫でると教室の扉を開けて去っていった。

 

「待って!私を置いていかないで!」

 

カルパッチョが、ペパロニたちを追いかけて教室の外に出るとそこには暗い廊下が広がっているだけでペパロニたちはいなかった。

 

「あれ……?ペパロニ……?どこ!?ペパロニ!?」

 

カルパッチョは、学校中を探し回ったがペパロニの姿はどこにもなかった。

 

「なんだったんだろう……夢……?私寝ぼけてたのかな……?でも、あれは確かにペパロニの声だった……何が起きたんだろう……」

 

カルパッチョが、呆けたような顔をして教室に戻ると隣に寝ていた対策本部の生徒で保健衛生を担当している2年生の石井千尋が少し怒り気味に言った。

 

「落合さん!こんな夜中にどうしたんですか!いきなり大声あげて飛び出していかないでくださいよ!びっくりして起きちゃったじゃないですか!」

 

「ごめん……ね……」

 

カルパッチョは、立ち尽くしたまま一粒の涙を流した。それを皮切りに、大粒の涙がカルパッチョの頬を伝う。抗議した石井は、狼狽しながら謝る。まさか、少し注意したくらいでカルパッチョが泣き出すなんて思ってもみなかったのだ。

 

「わわわ!すみません!泣かせるつもりは……」

 

「大丈夫よ……なんでもないの……」

 

カルパッチョは、声を詰まらせながら引きつったような笑顔を作った。しかし、そんなことで取り繕えるわけがない。

 

「そんなわけないですよね?何か絶対ありましたよね?話してください。」

 

石井はカルパッチョに迫った。カルパッチョは観念して先ほど起きたことを話し始めた。

 

「ペパロニに……戦車道の仲間に会ったの……夢だったのかもしれない寝ぼけていたのかもしれない。そう思ったけどどうしてもそう思えないの。あれは確かにペパロニたちだった。私たちは長い間一緒にいたからそれだけは間違いないわ。それにペパロニたちは私の髪と頰を触ってくれた。私もペパロニを抱きしめた。その感触は覚えてるわ。だからなおのこと……だけど行方不明だから会えるはずないのに……でもどうしてもそれが夢に思えなくて……」

 

石井は、カルパッチョが話した最後の言葉を聞いてハッとした表情をした。そして、カルパッチョには見えないように後ろを向いて涙を流しながら小さく手を合わせた。石井は、一連の出来事がどういうことなのか全てを理解した。そして、カルパッチョに自らの私見を伝えるべきか否か悩んだ。そして、カルパッチョの様子を伺いながら呟く、

 

「落合さん……それはもしかしたら……」

 

「なに……?何かわかるの……?」

 

「ええ。私も同じような体験をしたことがありますから。でも、スピリチュアルな話で確証もなにもない話になっちゃいますけど、それでも聞きたいですか……?」

 

「聞きたいわ……なんでもいいから話して。同じような経験をしたならなおのこと……」

 

「わかりました。」

 

石井は頷くと少しためらいながらしばらく時間をおいて息を整えてゆっくりと口を開いた。

 

「落合さんもどこかで気がついているかもしれませんが、多分、ペパロニさんは落合さんに最期のお別れに来たんじゃないかなって思います。ペパロニさんたちはきっと、もうこの世には……でもきっと、落合さんに強く生きて欲しかったから……だからきっと会いに来てくれたんだと私は思います。私の友達も中学生の時に事故にあって亡くなってしまいましたけど、私を励ますためなのか会いに来てくれました。だから落合さんの気持ちはよくわかります。」

 

カルパッチョは膝から崩れ落ち、両手で顔を抑えた。カルパッチョの体は小刻みに震えていた。

 

「やっぱり……そういうことなんだ……」

 

弱々しく呟き、悲しみに項垂れているカルパッチョの背中を石井は優しくさする。

 

「大丈夫です。泣いてもいいんですよ。苦しいときや泣きたいときは気がすむまで泣いてください。上に立つ者は泣いてはいけないだとか感情を出してはいけないなんて言いますけどそれじゃ壊れちゃいますよ……さあ、思いっきり泣いて吐き出してください。」

 

カルパッチョは我慢の限界が来ていた。石井の言葉に堰を切ったかのように石井の胸を借りて思いっきり声をあげて泣きじゃくった。周りで眠っていた他の対策本部の生徒たちは、カルパッチョの大きな泣き声に何事かと起きて来たが石井の目を見て何かを察したのか各々が静かに手を合わせて再び眠りについた。

 

「嫌だ……嫌だよ……そんなの受け入れたくないよ……なんで……なんでみんなこんな目にあわなきゃいけないの……?なんでペパロニが命を奪われなくてはいけないの……私たちがなにをしたって言うの……?私たちはただ平和な暮らしがしたかっただけ……今まで通りの生活をしたかっただけ……なのに何故それさえも奪われなくてはいけないの……!気が狂いそう……もうあの眩しい笑い声は聞けない……この悲しみは絶対にもう一生消えない……もう私の隣にペパロニはいてくれない……なぜ……ねえ……?なぜなの……?なぜ私たちに平和をくれないの……?西住さん……なぜ私たちに憎しみを振りまくの……なんで殺されなくてはいけないの……?本当は私は誰も恨みたくない……でも、友達を奪われたらそういうわけにもいかないわ……私は絶対に知波単と西住さんを許さない!絶対に復讐してやる!西住さんに復讐するその日まで……それまで私は死ぬわけにはいかない。絶対になんとしても生き抜く!ペパロニたちの分まで生きて生きて生き抜くこと、これが亡くなったペパロニたちやアンツィオ高校の生徒たちへの供養と慰めになるはず……西住さんはアンツィオを思い通りに操ろうとしているけどアンツィオ高校学園艦の魂は西住さんの思い通りには操れないってことを永久に不滅だってことを見せつけなくちゃ!だから例え辛くて苦しくて悲しくてもそれでも私は前に進むわ!」

 

カルパッチョは、手を強く握りしめて知波単とその裏で攻撃を命じたであろう西住みほへの怒りと憎しみ、そして自らへの激励と誓いを立てた。カルパッチョは凛とした表情だった。石井は、真剣な眼差しでまっすぐカルパッチョを見つめて頷くと口を開いた。

 

「前に進む、ですか。そうですね。それがせめてもの犠牲になられた方への慰めになるでしょう。辛いですが私たちは1日も早い復興を目指しましょう。でも、そのためには睡眠と休養も重要。さあ、今日はもう眠りましょう。おやすみなさい。」

 

「ええ。起こしてしまってごめんなさい。おやすみなさい。」

 

そう言うとカルパッチョは眠りについた。なんだか晴れやかな気分だった。もちろん。悲しみは心に深く突き刺さっている。でもそれ以上に、ペパロニたちの分まで生きなくてはと言う使命感にも似たような感覚がカルパッチョを奮い立たせていた。

次の日、カルパッチョは朝目覚めると外に出ているという置き手紙をしてこっそりと3号棟を抜け出し道端の小さな花を摘んで階段前広場、戦車倉庫そして最後に1号棟校舎に向かった。辛かったが、会いにきてくれたペパロニたちにこちらからペパロニたちが命を落としたであろう場所に出向くのは義務だと思った。カルパッチョはそれぞれ3つの場所に向かうと小さな手の中に握られた小さな花を手向けて両手を合わせた。そして最後の1号棟校舎でカルパッチョはペパロニたちに呼びかけるように小さく呟く。

 

「ペパロニ、みんな……待ってて。すぐに迎えに行くから……貴女達の遺骨は私が引き取るわ。みんなに会えなくなるのは悲しくて辛いけど私は……負けない。みんな見てて。生き残った子たちと一緒に頑張るから。みんなの分も生き抜くから。」

 

「うん……待ってるっす。苦労かけるけどよろしくっす。カルパッチョ。大丈夫。大丈夫っすよ。私たちはいつまでも見守っているからな……カルパッチョの側にずっといるからな……」

 

風が強く吹いた。その時に、ペパロニたちの声が聞こえて抱きしめてくれているような気がした。カルパッチョは頷き、来た道を戻った。カルパッチョはもう後ろを振り向くことはなかった。胸を張って力強く地面を踏みしめながら歩いて行った。しばらく歩いてもうすぐ3号棟の建物がある大通りにに差し掛かかる頃だった。突然、カルパッチョを呼ぶ声がした。

 

「もしかして、カルパッチョさんっすか?」

 

カルパッチョは驚いて声のする方を見ると3人の生徒が立っていた。その生徒たちの顔にカルパッチョは見覚えがあった。それは紛れもなく戦車道の隊員たちだった。

 

「アマレット!ジェラート!パネトーネ!無事だったの!?良かった……本当に良かったわ!」

 

カルパッチョは事件の後初めて仲間と再会できた。カルパッチョは喜びを爆発させた。気がつくと嬉しくて思わず抱きついていた。

 

「うお!びっくりした!」

 

カルパッチョに抱きつかれてアマレットは心なしか嬉しそうに笑った。今度はジェラートが口を開く。

 

「カルパッチョさんこそ、怪我はありませんか?」

 

「うん。私は無いよ。」

 

「そうっすか。それは良かったっす。あの、ウチらペパロニ姐さんや他の奴らを探しているんですけど見ませんでしたか?」

 

カルパッチョは迷っていた。1年生であるアマレットたちにペパロニはもうこの世にいない可能性があると伝えるべきなのか。しばらく黙り込む。アマレットは心配そうな顔をしてカルパッチョの顔を覗き込む。

 

「さあ……私は……見てないわ……私も探してみるね。」

 

カルパッチョは声を詰まらせながら答えを返した。普通なら疑われそうだが純粋なアマレットたちは疑うことなく納得した。

 

「そうっすか。知ってたら良かったっすけど……きっと大丈夫っすよね。ペパロニ姐さんたちはきっと他のところにいるっすよね。」

 

こんな事態になっても希望を失っていないかのような笑顔でアマレットは言った。カルパッチョは躊躇いながら答えた。

 

「うん。そうね。きっと。それじゃあ私は仕事があるから行くね。貴女達もそろそろ朝ごはんが支給されるけどこんなところで油売ってていいの……?種類無くなっちゃうよ」

 

「朝飯はうちらの寮は爆発に巻き込まれなかったので一旦寮に戻って食ってくるっす。ところでカルパッチョさん。仕事ってなんすか?」

 

「生徒会の仕事を手伝ってるの。ここの運営とか色々と。」

 

カルパッチョの答えにアマレットたちは感服して賞賛と激励の言葉を贈った。

 

「さすがカルパッチョさんっす!頑張ってくださいね!」

 

「うん。ありがとう。みんなも気をつけて帰ってね。」

 

カルパッチョはアマレット達の後ろ姿を見送りながら苦しみをこらえた声を洩らす。

 

「言えるわけがないじゃない……ペパロニたちが亡くなったかもしれないなんてそんなこと言えるわけがないじゃない……あまりにも残酷すぎるわよ……あの子たちにペパロニたちの死を背負わせるなんて……そんなこと私にはできないよ……そんなことを知ったらあの子たちはきっと壊れてしまう……」

 

カルパッチョは建物と建物の間の暗い路地裏に逃げるように走っていって泣いた。路地裏はジメジメとした陰鬱な空気をしていた。まるでカルパッチョの心の中を表したような空間だった。すると、奥から突然声がしてきた。

 

「おう!おまえ何者だ?天下のジェノベーゼ一家の縄張りに入るとは良い度胸じゃねえか!」

 

カルパッチョは驚いて前を見ると、2人の所謂不良少女が鉄パイプのようなものを手にしてゆっくりと迫ってくる。路地裏は非常に治安が悪く、通称マフィアと呼ばれる物騒な連中が支配している。カルパッチョはそのことをすっかり忘れていた。特にこの裏路地は、間違って立ち入った生徒が1週間もしないうちに学校を退学していくという噂があった。2人のマフィアは、カラカラと鉄パイプのようなものを地面に引きずりながらカルパッチョに迫る。カルパッチョは怖くて生きた心地がしなかった。なぜなら彼女たちが所属しているであろうジェノベーゼ一家はアンツィオ高校学園艦中にその名を轟かせる札付きの荒くれ者たちである。風紀委員の警告を幾度となく受けてもそれを無視して暗躍しては風紀委員の大掃討作戦で何度も構成員が矯正所送りにされている。また、コンビニ船などの定期船に忍び込んで学校を抜け出しては外部から盗んできた酒やタバコを学園艦内で生徒に密売して荒稼ぎしているとの噂も囁かれている組織だった。何をされるかわからない。カルパッチョは思わず後ずさりしながら声を裏返して言った。

 

「ご、ごめんなさい……貴女たちの縄張りに入るつもりはなかったんです。すぐ立ち去ります。」

 

そう言ってカルパッチョは瞬時に回れ右をするとその場から走って逃げようとした。すると今度は別の2人のマフィアがカルパッチョの行く手を阻んだ。カルパッチョはマフィアに四方を囲まれてしまった。

 

「へへへ。行かせねえぜ。謝って済むって問題じゃねえんだよ。ちょいとこっちに来てもらおうか。へへへ。」

 

4人のマフィアはあっという間にカルパッチョを捕まえて後ろ手に縛ってしまった。

 

「痛い!痛い!な、何するんですか!離してください!」

 

「離せって言われて離すバカなんざここにはいねえな。へへへ。」

 

4人のマフィアは不気味に笑うとカルパッチョを廃屋に連れて行き、万歳の形で手首を柱に縛り付けた。

 

「私をどうするつもりなんですか……?」

 

「へへへ。そうだなあ。おまえの綺麗な顔潰してやるのも良いし、その細くて白い指を詰めるのも良いかもな。それか、裸で踊ってもらうとか。身ぐるみ引っ剥がして甚振って略奪して路上に晒すとか色々方法はあるよな。」

 

「嫌だ……そんなの嫌よ!誰か!誰か助けて!」

 

カルパッチョは声を張り上げて助けを求める。声がカラカラになるまでとにかく叫びまくった。でも、誰も来ることはない。無理もないことだ。ここは、大通りから何十メートルも離れているのだ。誰かが助けに来てくれるなんていうことはないということはわかっていた。でも、諦めるわけにはいかない。必死に叫ぶカルパッチョを悪党どもはいやらしく笑って眺めていた。やがて、悪党どもの1人がこちらに近づいて来て、頰を片手で掴みながら言った。

 

「へへっ、叫ぼうが喚こうが誰も来やしないぜ。いくらでも喚いて叫べば良いさ。おい!おまえら!こいつを引っ剥がして裸にしろ!たっぷり可愛がってやれ!」

 

「「へい姉貴!」」

 

4人の中で一番階級が高いと思われるマフィアの指示で残りの3人の子分のマフィアはカルパッチョの服を引き剥がそうとした。カルパッチョは縛られていない足をばたつかせて必死に抵抗をする。するとマフィアはカルパッチョの耳元で恫喝した。

 

「おい!じっとしてな。2度と見れないような顔にしてやろうか?」

 

マフィアはそう言ってカルパッチョの顔に鉄パイプを押し当てる。カルパッチョは恐怖で身体を硬直させた。

 

「やめてください……やめてください……」

 

カルパッチョは悲痛な声をあげる。しかし、マフィアはそんなカルパッチョを嘲笑うと両手でカルパッチョの制服を掴みボタンのところから思いっきり引き裂いた。

 

「いやあああああ!」

 

カルパッチョは悲鳴をあげる。その声と同時に股の下がじわじわと濡れていくのがわかった。カルパッチョがこの学校に来て2度目の失禁だった。まさかこの短期間に2度も失禁することになるとは思わなかった。カルパッチョは恥ずかしさに顔を真っ赤に染めた。

 

「へへへ。こいつ漏らしてやがりますよ。姉貴!」

 

1人のマフィアがカルパッチョのスカートを捲りながら言った。すると姉貴分のマフィアはニヤリといやらしい笑みを浮かべてカルパッチョの股をタイツの上から確かめるように撫でる。

 

「あっははは!おまえマジかよ!高校生になっておもらしなんてガキみたいで恥ずかしいな!?濡れてると気持ち悪いだろう?すぐに下も脱がしてやるよ!」

 

そういうと、姉貴分のマフィアはカルパッチョのタイツを掴んで一気に引きおろそうとした。カルパッチョは泣きそうな目で懇願した。

 

「やめてください……もう許してください……お願いします……」

 

カルパッチョの声に姉貴分のマフィアはイラつきながら子分に命じた。

 

「こいつ。さっきから九官鳥みたいにやめて、やめてとうるせえな!おい!バローロ!ガムテープ持ってこい!こいつのうるさい口を塞いどけ!」

 

「へい!姉貴!」

 

「え?ちょ、ちょっと!ん!んー!」

 

カルパッチョの口はあっという間にガムテープで塞がれてしまった。マフィアの姉貴分はそれをいいことにカルパッチョを甚振った。

 

「へへへ。いい格好だな。ブラもパンツも可愛いのつけてんじゃねえか。」

 

姉貴分マフィアは慣れた手つきでカルパッチョの下着を脱がせた。今まで何人の生徒が彼女たちマフィアの魔の手にかかったのであろうか。なるほど。間違って立ち入った何人もの女子生徒もこうして辱めを受け、屈辱に耐えかねて心を破壊されて退学していったのであろう。カルパッチョの身体から全ての布が奪い去られて全裸にさせられた。

 

「綺麗な肌してんなあ。やっぱりカタギの人間の身体は汚れがなくていいな。こいつの身体はいい金づるになりそうだ。おまえら!よくやったな!」

 

マフィアたちが何を企んでいるかカルパッチョも一応は年頃の女の子なのでわかっている。マフィアたちはカルパッチョに売春させるかポルノ映像を撮って荒稼ぎしようと考えていたのである。そんなことされてはたまったものではない。純潔は自分の好きな人に捧げたい。カルパッチョは塞がれた口で出来る限りの大声で助けを呼ぶ。

 

「んー!んー!」

 

「あははは!姉貴!こいつまだ喚いてるっすよ。黙らせましょうか?」

 

「いや、いい。この叫び声を聞くのも楽しいからな。こうして捕まえた時だけに聞ける特別な音楽さ。へへへ。」

 

マフィアたちはカルパッチョの叫び声を楽しんでいた。

 

「あっははは!姉貴も悪趣味っすねえ!」

 

マフィアたちは大声で笑った。カルパッチョはマフィアの大きくて豪快な笑い声に負けないように何度も叫ぶ。しかし、誰かが来る気配はなかった。もうダメなのであろうか。このまま自分は辱めを受けるのだろうかと諦めかけた時だった。突然ガチャリと扉が開いた。助けが来てくれたのだろうかとカルパッチョは期待して扉の方を見た。しかし、その期待はすぐに砕かれた。入って来た人物はカルパッチョをどん底に叩き落とした。

 

「ジェノベーゼ姐さん!お疲れ様っす!」

 

先ほどまで偉そうにしていた姉貴分のマフィアが、廃屋に新しく入って来た金髪のショートヘアでサングラスをかけた人物を見た途端いきなり敬語を使い大人しくなった。そう。この人物こそ、このマフィア集団ジェノベーゼ一家を取り仕切っているジェノベーゼ本人であった。ジェノベーゼは全裸で万歳の形で手首を縛られているカルパッチョをちらりと見ると地を這うような低い声で姉貴分マフィアに尋ねた。

 

「おい。あいつは誰だ?何で裸にされて縛られてんだ?」

 

「ああ、あれはうちらの縄張りに勝手に入った奴です。」

 

「こっちの人間なのか?」

 

「いいえ。持ち物や身なりからすればカタギっすね。」

 

姉貴分マフィアがそう答えた瞬間である。姉貴分マフィアの頰にジェノベーゼの拳が飛んだ。姉貴分マフィアは突然殴られ、吹っ飛ばされてその場に倒れ込み驚いた表情をしている。ジェノベーゼは姉貴分マフィアの胸ぐらを掴むと大声で叱責した。

 

「馬鹿野郎!てめえ!カタギのお嬢さんには手を出すなって何度言ったらわかるんだ!?」

 

そういうとジェノベーゼはカルパッチョの腕に巻かれた縄を解くと口に貼られたガムテープを取ってやり制服を差し出して頭を下げた。

 

「うちの若いのがこんなとんでもねえことしちまって本当にすまない!許してくれ!こんなことしておいて言えたことじゃねえがどうか風紀委員には通報しないでくれねえか?あいつら次風紀委員に捕まったら今度こそ退学になっちまう!この通りだ!頼む!ほら!おまえらも何ぼけっと突っ立ってんだ!おまえらも頭を下げろ!」

 

カルパッチョは突然のことで何が起きたのかわからずに混乱していた。カルパッチョは呆けた顔で全裸のまま制服を抱きしめる。そして、カルパッチョの眼の前で4人のマフィアとともに土下座をしているジェノベーゼに尋ねた。

 

「助けてくれるんですか……?本当に帰ってもいいんですか……?」

 

「ああ。もちろんだ。本当にすまなかった。」

 

カルパッチョは全裸のまま脱力してへたり込み、同じことを何度も繰り返し口にした。

 

「ありがとうございます……ありがとうございます……」

 

カルパッチョの目からは涙が溢れる。それが身体に伝って滴り落ちた。これでようやく恐怖から解放されたカルパッチョは震える手で服を着る。カルパッチョの制服は無理やり引き裂かれたせいでボタンがところどころどこかに吹っ飛びなくなっていた。こんな格好を見られれば何があったかしつこく尋問されるだろう。対策本部に戻ったらどうやって言い訳しようかとカルパッチョは考えながら帰ろうとした。すると、ジェノベーゼはカルパッチョを呼び止めた。

 

「待ちな。あんた。何でこんなところに来たんだ?あんたあたいたちの世界にいるべき人間じゃないだろ?何かあったなら聞くぞ?詫びもしたいことだしな。」

 

カルパッチョは少し迷った。正直早くこの場から離れたかったがこの人物を怒らせたら今度は命がないかもしれない。仕方がない。話した方が早くこの恐怖から解放される。そう思ってカルパッチョは頷いた。すると、ジェノベーゼはカルパッチョをさらに奥の建物に誘った。カルパッチョは少し警戒しながら中に入る。すると中にはおびただしい数の酒瓶らしきものとタバコが入った箱と思われるものがぎっしりと詰め込まれており、テーブルと椅子2脚が置いてあった。ジェノベーゼはカルパッチョに椅子を勧める。カルパッチョが腰掛けるとジェノベーゼはその中の一つの瓶を手に取り、グラスに注ぐ。

 

「お酒ですか……?」

 

カルパッチョが尋ねるとジェノベーゼは特に隠すことなく答えた。

 

「そうだ。酒だよ。ウイスキーさ。あんたも飲むか?」

 

今、問題行動を起こして退学するわけにはいかない。それはペパロニの思いを裏切る行為だ。カルパッチョは首を横に振る。

 

「いいえ。結構です。」

 

「あははは!嘘だよ。あたいはもう20歳超えてるからいいけどあんたが飲んだら大問題になっちゃうもんな。あんたはオレンジジュースでいいか?」

 

ジェノベーゼは自分の古びた生徒手帳をカルパッチョに投げ渡しながら言った。ジェノベーゼの生徒手帳の身分証明のページには確かにジェノベーゼが20歳であることを示していた。カルパッチョはジェノベーゼに生徒手帳を返しながら尋ねた。

 

「20歳って何でまたそんな歳まで高校に……?ええ……それじゃあオレンジジュースで……」

 

「ああ、留年しまくってっからな。この学校は留年10年まで大丈夫だし、学校行くのもめんどくせえし。それでまだあたいは2年生さ。あっはっはっはっは!」

 

ジェノベーゼはオレンジジュースを注いだグラスをカルパッチョに渡しながら豪快に笑った。カルパッチョは苦笑いをつくる。ジェノベーゼはカルパッチョに手を差し出した。

 

「改めて、あたいはジェノベーゼだ。ジェノベーゼ一家っていうやつの頭領をやってる。改めてよろしく。」

 

「カルパッチョです。高校2年生です。」

 

「高校2年生か!それじゃあたいの同級生じゃないか!あっははは!」

 

カルパッチョは特に反応を示さずちらりと外を見てジェノベーゼに尋ねた。カルパッチョはなぜあの女子生徒たちが自分をこんな目に合わせたのか知りたかったのだ。

 

「あの、あの子たちは一体……」

 

「ああ……あいつらか……本当にすまなかったな……あいつらは学校に適応できなかったはみ出し者たちさ。いるだろう。どこの学校にも。勉強ができない奴もいれば運動ができない奴もいるしその両方もいるよ。そんなはみ出し者たちをあたいが拾ってやってんだ。居場所を作ってやったんだ。みんなでつるんでさ。自由にワイワイ騒ぐ。もちろん、あたいたち落ちこぼれと違って学校生活を送ってる奴らも大歓迎さ。そいつらとも色々楽しく過ごす。それが本来のジェノベーゼ一家の正体さ。もともとあたいたちは犯罪なんてするような奴らではなかったよ。特にあんたたちカタギに手を出すなんて絶対しない奴らだった。もっともあたいたちと過ごしているうちに自信を取り戻してやりたいことができたって一家を抜けた奴もいた。その日はみんなでお祝いしたものだよ。それが、いつだったかな。確かあれは別の地区の奴らが支配地域を広げようとあたいたちが縄張りとしていたこの地区に攻めてきた。その時からだったかなあいつらの心が荒んでこんなことやるようになっちまったのは。あたいはあいつらを守るために自分の身は自分で守るように言った。つまり武装するように言ったんだ。そうしたら、何を履き違えたのか自分たちの力を誇示し始めたんだ。そこからは転げ落ちるようだった。気がついたらマフィアだなんて呼ばれちまってな。今やあたいが目指した一家とはほど遠い。カタギの子たちに対して暴力を振るったり、裸にして辱めたり犯罪に手を染めて……全くざまあねえよな……何人もの仲間が風紀委員の掃討作戦で拘束されたよ……ここにある酒やタバコも元々は密売するためにあいつらが外から盗んできたやつだ。少しでも流通させないようにあたいが少しでも飲んだり使ったりしてるけどすずめの涙だよな。はは……」

 

ジェノベーゼはウィスキーを片手にしみじみと語った。時折涙も見せる。ジェノベーゼ一家はもはや統制を失っているというような状態であった。ジェノベーゼだけではとてもじゃないが手に負えないのだ。

 

「そうですか……そんなことがあったんですか……」

 

カルパッチョはそう呟いた。しばらく部屋に沈黙が広がる。ジェノベーゼはグラスに入ったウィスキーを飲み干すと再び床に手と額をつけた。

 

「頼む!あいつらを許してやってくれ!あいつらは本当はみんないい奴なんだ!今度こそ何かあったらあいつらは退学になっちまうしこの一家も強制解散になるかもしれない!無理は承知だ……頼むよ……」

 

カルパッチョは一つ大きなため息をつくと顔を上げさせた。そして手を差し伸べながら告げた。

 

「わかりました。わかりましたよ。みなさんを許します。」

 

「ありがとう!本当にありがとうな……嬉しいよ……あいつらにはきつく言っとくから……もう2度とあんなこと誰にもしないようにするから……」

 

「彼女たちがしたことは私の尊厳を傷つけることで罪が消えるわけではありません。でも貴女の言うことは信用できる気がします。あの子たちが本当はいい子たちなんだってあなたの言葉を信じています。環境があの子たちを狂わせただけ。だからもう気にしないでください。今度は私の話を聞いてくれるんですよね?」

 

「ありがとう……ああ、もちろんだ。あんたはあたいたちとは全く違いそうだし何でこんなところに来たのか気になってな。よかったら話を聞かせてくれないか?」

 

カルパッチョは頷くと涙を流しながら語り始めた。

 

「それじゃあ聞いてください。実は私、戦車道をやっているんです……戦車道の副隊長を……」

 

「あんた戦車道やってんのか。しかも副隊長なんて凄いじゃないか!戦車道っていったら1年前戦車道やりたいってこの一家を去ってった奴がいたな。懐かしい。ペパロニって知ってるか?」

 

カルパッチョは目を剥いた。確かに1年前のペパロニは荒れていたがまさか目の前のジェノベーゼ一家の関係者だったとは思わなかった。なんと言う因果であろうか。気がつくとカルパッチョはジェノベーゼの肩をがっしりと掴んでいた。

 

「ペパロニを知ってるんですか!」

 

突然飛びついてきたカルパッチョにジェノベーゼは戸惑いながらも懐かしそうな顔をして話し始めた。

 

「あ、ああ。そりゃうちの一家にいたからな。ペパロニも荒れててな。でも、やりたいことが見つかったから抜けさせて欲しいって言われた時は素直に嬉しかったよ。それで、ペパロニは元気か?」

 

カルパッチョは下を向きながら首を振る。

 

「ペパロニは……ペパロニは……亡くなってしまったかもしれないです……」

 

「亡くなった?ペパロニがか?あっははは!変な冗談言うな。そんなわけあるかよ。あんな元気なペパロニが。」

 

ジェノベーゼの呑気さにカルパッチョの心に怒りがこみ上げてきた。カルパッチョは立ち上がり両手をテーブルに打ちつけると絶叫した。

 

「嘘じゃありません!本当のことなんです!そもそも、何が起きているかわかっているんですか!?ことはもっと重大なんです!深刻なんです!今、この学園艦では数百人単位が死亡し、1万人単位の行方不明者がいるんですよ!もし、私の話が信じられないなら今すぐにでも1号棟に行ってみてください!私の言葉の意味がわかるはずです!」

 

カルパッチョの声が部屋中に響いた。ジェノベーゼはうろたえカルパッチョが何を言っているのかさっぱりわからないと言うような顔をしていた。

 

「なんだよ……どうなってんだよ……さっぱりわからねえ……一体表の世界で何が起きてるんだよ……」

 

「武力攻撃ですよ……」

 

カルパッチョはか細い声でぼそりとそう言うと今このアンツィオ高校学園艦で何が起きているのか全てを打ち明けた。知波単から爆撃および機銃掃射を受けたこと、その裏に大洗女子学園で武装蜂起した西住みほの影が見え隠れしていること、被害が甚大で火災が各地で発生していること、ペパロニは1号棟校舎に向かったきり行方不明になっており、1号棟校舎は爆撃の餌食になったことを途切れ途切れに大粒の涙を流しながら説明した。

 

「それじゃあ、ペパロニはその西住みほとかいうやつと知波単の爆撃機に殺されたってのか!?」

 

「ええ……まだ行方不明なのでなんとも言えませんが恐らくは……もしかしたら生きて救助される可能性もありますが……現場の状況と収容される遺体の状況などの各種報告を総合的に判断すれば恐らくもう亡くなっている可能性が……」

 

「知らなかった……知らなかったんだ……あたいらその時ちょうど地下トンネルの中にいたからさ……確かに地響きみたいな音がして揺れたから地震がきた程度にしか思ってなかった……表の世界でそんなことが起きていたなんてな……くそ!西住みほとか言う奴と知波単め!絶対に許せねえ!なんでこんなこと起きてんだよ!なんであいつを奪われなきゃいけねえんだ!あいつが何をしたってんだよ!夢を追いかけてただけだろうがよ!せっかくやりたいことも見つけたのになんでこんなことになるんだよ!」

 

ジェノベーゼは鬼のような形相で、悔しそうに自らの拳を机に叩きつける。今度はジェノベーゼの声が部屋中に響いた。しばらくの沈黙の後カルパッチョはぼそぼそと呟いた。

 

「悔しいですよね……私も大切な仲間を守れなかったから悔しいです……消防団から戦車道の隊員らしき遺体が発見されたという知らせも入りました……その時は気が狂ってしまいそうでしたよ……」

 

「あたいも悔しいよ。あたいにも何かできたらいいけどな……あたいには何もできない……」

 

カルパッチョはジェノベーゼの言葉を聞き逃さなかった。ジェノベーゼは何かしたい。でも、自分には何もできないと言った。しかし、それは違う。彼女はやり方を知らないだけだ。何かしたいならさせてあげる、カルパッチョは今それができる立場にいる。ならばその思いを汲むのが今カルパッチョがするべきことである。カルパッチョはジェノベーゼの手を取って頭を下げた。

 

「ジェノベーゼさん!お願いがあります!私たちの手伝いをしてくれませんか?」

 

「あたいが?なんの冗談だ?でも……あたいのせいであんたに迷惑がかかったらどうするんだよ……あたいはあんたと違ってマフィアだっていって怖がられているんだぞ?あんたの信用に関わるかもしれねえ。頼りにされるのは嬉しいけどやめておいた方がいいんじゃないか?」

 

ジェノベーゼは突然の申し出に戸惑っている。冗談か何かだと思った。カルパッチョが自分たちのせいで何か迷惑を被ることがあってはいけないと考えていたのだ。しかし、カルパッチョはいたって本気だった。なんとしてもジェノベーゼたちの力を借りたかった。特に今回は自発的にジェノベーゼが何かやれたらと言った。これほど心強いことはない。無理矢理ではないからきっとやる気も高いはずだ。カルパッチョはこの頼り甲斐のある人物をなんとしても喉から手が出るほど欲しかった。今はどこの部署でも人手が足りない。とにかく1人でも多くの人員が必要だったのだ。

 

「ええ。そうです。あなたです。私はあなたがいいえ、欲を言えばあなたたちジェノベーゼ一家の構成員全員が必要です。他のみんなからどう見られるなんてことは関係ありません。どうしても必要なんです。ジェノベーゼさん、さっき何かできたらって言ってくれたじゃないですか。ジェノベーゼさんたちだって人の役に立てるんです!今、色々なところで人手が圧倒的に足りていません。どうかお願いします。私たちを助けてください。」

 

ジェノベーゼは無言で目を瞑りしばらく考え込んでいた。そして5分ほど経ち目を見開くとカルパッチョの目を見つめてようやく口を開いた。

 

「わかった。手伝おう。あたいらが何かできるならこれほど嬉しいことはないよ。あたいらは今までみんなに嫌われてきたけど見返してやるよ!」

 

「期待しています。みんなを見返してください。」

 

「おうよ!だけど、あいつらを説得するにはちょっと時間かかるかも知れねえからさ、あんた先に戻ったほうがいいと思うぜ。こんなこと頼むなんて、あんた何か生徒会関連もやってんだろ?もし説得できなくてもあたいは必ず行くからさ。約束だ。絶対に裏切らねえ。何しろペパロニが殺されたかもしれねえのに放っとくことなんてできるかよ。それに、一度飲み交わした仲は永遠だ。」

 

「わかりました。こっちもこっちで皆さんの受け入れの準備をしておきます。きっと反対意見もあるでしょうから説得しておきますよ。」

 

「ああ。迷惑かけるけど頼むよ。それじゃあまた後でな。表の大通りまで送るよ。」

 

「はい。また後で。ありがとうございます。」

 

カルパッチョは裏路地から大通りに戻ると対策本部のある3号棟へ戻っていった。カルパッチョが対策本部に戻るともう昼になっていた。カルパッチョは慌ただしく出入りする大勢の人の中に紛れてこっそりと部屋に入ったが、早速石井に見つかってしまった。石井はカルパッチョの姿を見るなり叫びながら駆け寄ってきた。

 

「あ!落合さん!こんな時間までどこに行っていたんですか!?朝起きたら隣にいなくてすぐ帰ってくるかと思ったらお昼まで帰ってこないなんて!心配していたんですよ!って!なんですかその格好は!シャツはビリビリでタイツも履いてないじゃないですか!本当に一体何をしてきたんですか!?大丈夫なんですか!?」

 

石井は機関銃のようにカルパッチョに説教を始めた。カルパッチョは石井を適当にあしらう。

 

「あははは。ごめんなさい。心配しないでください。大丈夫です。あ、そうだ。石井さん。後で大事な話があるから各班の責任者を招集しておいてもらえませんか?そうですね……ちょうどお昼でみんなお昼休憩に戻ってくると思うのでその後すぐ午後13時に始めます。みんなに伝えておいてください。」

 

「全く……心配するなって……そんな格好でそんなことは通りません!後で色々と話を聞かせてもらいますからね!招集の件了解しました。」

 

カルパッチョはようやく石井のうるさい説教から解放されてふうっとため息をついた。しかし、カルパッチョは説教されたにも関わらずなんだか不思議と嬉しい気持ちだった。自分は1人ではないと改めて確認できたような気がしたからだ。カルパッチョは心の中でペパロニに問いかける。

 

(私、1人ぼっちじゃないのね。こんなに私を支えてくれる人がいるんだもの。今日1日でペパロニの言葉の意味が改めてよくわかったわ。ペパロニありがとう)

 

心の中のペパロニは満足そうに頷きながら静かに笑っていた。

 

つづく




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