血塗られた戦車道   作:多治見国繁

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2週間ぶりの更新です。
今日は麻子の目線で書いて見ました。
うまくかけているかは不安ですがよろしくお願いします。


第106話 悪夢

私は困惑していた。なぜ、私は医療ドラマや健康に関する教養番組でよく見るような手術衣を手に持っているのだろうか。この状況に至るまでの間、何をしていたかわからない。気がついたら私はこの場所に来て手術衣を手に持っていた。まずは、状況の確認から始めよう。ここは一体どこだ。辺りを見回すとどうやらロッカールームのようだ。なぜ、私はロッカールームで手術衣を手に持ちながら佇んでいるのだろうか。頭に、クエスチョンマークがたくさん浮かんでいた。すると背後から誰かが近づく気配がした。嫌な予感がして首だけを後ろに向けてみる。すると、その嫌な予感は的中した。そこには、西住さんが立っていた。

 

「西住さん……」

 

西住さんは私の呼びかけに応えることなくコツコツと靴を鳴らしてさらに私に近づき、背後から私の首に腕を絡ませながら耳元で囁く。

 

「ふふふ。まさか、麻子さんがこんな提案をしてくるなんてね。」

 

「提案?なんだそれは。」

 

別にとぼけているわけではない。本気でわからなかったのだ。ここ最近は西住さんに何かを提案などした覚えはない。強いて言えば、カエサル……いや、鈴木貴子さんが鬱状態であると報告したくらいだ。すると、西住さんは笑顔を崩さずに私に一つのファイルを手渡してきた。そこには機密という印が押されて、確かに私のサインが私の筆跡で記載されていた。私は一度、手に持っていた手術衣を置き、訝しみながら、そのファイルを受け取って中身を確認する。その内容に私は思わず目を剥いた。

 

「なっ!?なんだこれは!?」

 

そこにはおぞましい生体人体実験と生体解剖の計画が記されていた。

 

「ふふふ。惚けるの?麻子さんが立てた計画なのに。」

 

西住さんは私の首筋を撫でながらバカにしたように笑った。

 

「違う……私じゃない……私はもうこんなこと……」

 

私の顔は真っ青に変わって、俯き泣きそうになりながら歯の間から言葉を搾り出すような声で言った。心臓はものすごいスピードで鼓動を打ち、その音が身体中に響いてこだましている。嫌な汗がだらだらと流れ、頭がグラグラと揺れる。すると、突然こめかみに何かが当たった。私は小さく悲鳴を上げて横目でそれが何かを確認する。私のこめかみには西住さんの愛銃が突きつけられていた。

 

「そのまま動かないで……」

 

西住さんの低く地鳴りのような声が聞こえた。私は喉を鳴らして唾を飲み込む。苦い味が口中に広がった。

 

「ニ……ニシズミサン……ナ……ナニヲ」

 

私は恐怖のあまり、股の下に小便の水たまりをつくりながら片言の日本語で言葉を紡ぐ。西住さんは惨めな私の姿を嘲笑った。

 

「ふふふ……麻子さん、おもらしだなんて小さな子どもみたい……可愛いなあ……ね、麻子さん、麻子さんの恥ずかしい姿、もっとよく見せて。」

 

西住さんは前に回り込むと排水管のような金属管に私の手首を縄で縛り、私の制服のスカートを捲り上げて私の膝のあたりから内ももまでを撫で上げながら、そこから滴り落ちる小便を手ですくい取る。西住さんは私の小便でしっとりと濡れた指を見つめ、恍惚とした表情をしながら艶めかしくねぶりとった。

 

「ううっ……あ……」

 

私は恥ずかしさと嫌悪感で声にならない声を上げた。西住さんは満足そうに笑うと私の顎の下を愛銃の銃口を当てた。

 

「冷泉麻子さん。改めて聞くね?この実験と解剖、やるの?やらないの?どっちかな?よく、考えて答えてね。選択次第では麻子さんの頭を銃弾が貫通することになるからね。ふふっ……できるならまだ利用価値のあるあなたを私は殺したくないけど……どうするの?」

 

西住さんは困ったように眉を八の字にして笑った。選択肢など最初からないに等しい。やらないなどという選択をしたら凶弾が私の頭を通過することは間違いない。私は必死に首を縦に振った。

 

「やるっ!やるから!命だけは助けて……」

 

私の答えを聞いて、西住さんは飛び上がって喜んだ。まるで小さな子どものように無邪気な満面な笑みを私に振りまけながら。私は半泣きになりながら手術衣に着替えて手術室に入った。手術室は真っ暗で真ん中の手術台だけがスポットライトのように明るくなっており、被験者が寝かされていた。

 

「ふふふ。それじゃあ早速、始めてくれるかな?私はここで見てるから。」

 

西住さんに促されて私は被験者の前に立った。

 

「うぅ……ただ……い……今から生体……解…剖…および……血液代用……実験を……行う……メス……」

 

私は嗚咽しながらその非道な生体解剖と人体実験の開始を宣言した。私は震える手を押さえながら手渡されたメスを取り、被験者の胸から腹にかけてすうっと切れ込みを入れた。血が噴水のように吹き出て、私のゴム手袋をした手に血が飛ぶ。私は涙で良く見えない視界のまま臓器を掴んで、フナの解剖のように臓器を身体に繋げたまま体内から引きずり出した。次に、血液代用実験に移った。被験者の動脈を切り取り、失血死する間際まで大量出血させ、サルの血を代用血液として輸血した。もちろん、サルの血で人間の血の代わりができるわけがない。結局被験者は死んでしまった。もちろん、生体解剖を行っている時点で被験者を生かしておくつもりなどないのだろうが。最後に引きずり出した臓器を全て摘出し、脳も全て摘出して生体解剖及び代用血液実験は終了した。その頃にはもはや涙も枯れ果てていた。全てが終わってメスを置いた瞬間だった。

 

「ふふふ……あっはははは!麻子さん!やった!ついにやっちゃったね!あっはははは!」

 

西住さんの笑い声が聞こえてきた。嫌な予感がした。西住さんの"ついにやったね"という言葉が妙に引っかかった。身体が危険信号を発し、冷や汗がダラダラと流れる。

 

「に、西住さん……私は……私は……」

 

私は口をパクパクとさせて言葉を捻り出す。西住さんはクスクスと口に手を当てて面白そうに笑う。

 

「ふふふ……被験者の顔、見てみてください。」

 

私はビクビクと怯えながら被験者の顔にかかっていた緑色のゴムのようなものを取り去った。

 

「え……………?うわあああああああああ!」

 

私は被験者にすがりついた。私が解剖した人、その人は私の大切な幼馴染であり親友だった。

 

「あっはははは!麻子さん!麻子さんが殺したんだよ?解剖して、ぐちゃぐちゃにして肉の塊にしちゃった!あっはははは!酷いよねえ!親友にそんなことするなんて!あっはははは!」

 

西住さんは笑い転げる。私は顔を親友の血で真っ赤に染めて泣き喚きながらその人の名前を何度も呼んだ。

 

「どうして……どうして!沙織ぃぃ!沙織ぃぃ!」

 

西住さんはさらに追い討ちをかけるように、冷たく暗い目で蔑みながら私の耳に口をぴったりとくっつけて囁いた。

 

「あははは。無駄だよ。だって、沙織さんは麻子さんがぐちゃぐちゃの肉の塊にしちゃったんだもん。」

 

西住さんは素手で、むき出しになった沙織の動脈をつまみながら言った。西住さんの白い手が真っ赤に染まる。西住さんは手にべっとりとついた沙織の鮮血をねっとりとねぶりとった。

 

「許せない……!うわあああああ!」

 

私は狂乱して髪を振り乱しながらメスを手に取る。私は西住さんを殺してやるつもりだった。西住さんは特に驚くこともなく悪魔のような笑みを浮かべて私の頭部に銃口をむけた。ああ……もうダメだ。一矢報いてやりたいところだが私はここで死ぬのだ。だが、この憎しみを晴らさないまで絶対に死ねない。私は奇声を上げながら西住さんの心臓に向かって走っていった。

 

「うわあああああああ!」

 

西住さんは、奇声を上げて殺意をもって向かってくる私をバカにしたように鼻で笑うと構えていた拳銃の引き金を引いた。

その瞬間だった。私の意識は突然、先ほどとは別の世界に連れ去られた。いや、その言い方では語弊があるかもしれない。私の意識は戻ってきたのだ。息を荒げながら顔を素早くあげると私の目の前にいつもの研究室の風景が広がっていた。つまり、私は今まで悪夢を見ていたのだ。電気は全てつけたままで、私は椅子に座っていた。目が覚めた時、私は汗だくで泣いていた。夢の中で漏らしたせいか寝小便をしていて、椅子の下には水たまりができていた。高校生にもなって寝小便となると馬鹿にされて笑われそうだが、考えて見てほしい。西住さんは躊躇いもなく人を殺す。そんな西住さんに拳銃を突きつけられ、さらにかけがえのない親友を生きたまま解剖し、人体実験をするという吐き気がするほど最悪な悪夢を見て、漏らさずにいられるだろうか。それが、非現実的な話ならまだ多くの者は漏らさないと言えるかもしれないが、それが現実に起こり、さらに夢と認識できず、現実だと思っていたとすればどうだろうか。多くの者は考えを変えることだろう。それだけ怖い夢だったのだ。さて、私はとりあえず心を落ち着かせるために泣きじゃくりながら机に突っ伏した。夢とはいえ、親友にあんな残虐なことをしてしまったことに私は恐怖と嫌悪感を覚えていた。1時間くらいたち、ようやく心が落ち着いたことを確認して椅子から立ち上がり、寝小便の処理を開始した。時計を見てみるともう6時だ。早くしないとまずい。こんな光景を西住さんに見られたらどうなるか、考えただけでも恐ろしい。いつもの朝の私には考えられないようなスピードで片付けた。なんとか尿を拭き取り、消臭剤をかけて原状回復した。そして、シャワーを浴びて尿と汗で汚れた身体を洗い、同じく汚れた下着や寝間着を洗濯し、制服に着替えて何事もなかったかのようにベッドに潜り込んで睡眠の続きを貪ろうとした。だが、それは叶わなかった。眠ろうとすればするほどあの最悪な夢の記憶がよぎる。結局、西住さんがいつも起こしにくる時間まで一睡もできなかった。まあ、先ほどの最悪な夢と似たような夢を見たらたまったものではないからむしろ一睡もできなかった方が良かったかもしれない。だが、いつもは眠っている時間に起きてしまって身体が重くて仕方がなかった。さて、西住さんはいつもはなかなか起きない私がすんなりと起きて研究室の扉を開けたことに驚いていたようだが、なぜこんなにすんなりと扉を開けたのかは気がついていないようであった。西住さんは嬉しそうに笑いながら「いつもこんな風に早く起きてくれたらいいのに。」と頭を撫でながら私を褒めていた。どうやら、なぜ今日私が早起きしていたのかという真相については気がついていないようだ。というよりも、今日はいつもの西住さんではないような気がした。いつも起こしにくる時とはまるで違う。また何か悪いことを企んでいるといった様子である。西住さんの悪事の憂き目にあう被害者には申し訳ないが、私としては助かった。とりあえず、胸を撫で下ろし、西住さんを見送って今日、一日を始める準備に取り掛かった。気は進まなかったが朝食を食べて、顔を洗って細菌兵器と毒ガスの研究者としての仕事に取り掛かるために椅子に腰掛けて今日はどんな一日になるのだろうかと考えていた。最近は、目を覆いたくなるような出来事が頻発している。この間、秋山さんが自分の両親を自らの手で処刑し、そしてつい1週間ほど前から昨日まで秋山さんが新たに率いることになった殺戮部隊アインザッツグルッペンが絶滅収容所で殺戮に関する訓練を行い、1000人は殺されたという。もしかして、あの悪夢はこれから私の身に起こることへの警告なのだろうか。

 

「まさかな……」

 

私は無表情のまま否定する。さすがにそれはないだろう。沙織は私の研究室の研究者として迎え入れて守っているのだから西住さんの毒牙にかかることはないはずだ。あの計画がバレない限り……私はこれ以上夢のことを考えることをやめた。所詮夢である。考えたところで仕方がない。夢は現実に影響されることも多いという。確か、あの日改めて私が犯した人体実験と解剖についてを沙織に聞かせていたのでそれが影響したのだろうと結論づけた。さて、そんなことをいつまでも考えていても仕方がないので早速今日の仕事に取り掛かることにした。まずはじめに実験データの整理だ。何回かマウスを使った実験をしたが、それらのデータをまとめ忘れていた。パソコンの表計算ソフトに実験データの入力を行う。1時間くらいそれをしてもう直ぐ終わりそうだという頃だった。扉を三回叩く音が聞こえてきた。返事をすると入って来たのはまたしても西住さんだった。

 

「どうした?何か伝え忘れたか?」

 

西住さんは大きくかぶりを振った。

 

「うん。1時間後に鍵を持ってアンチョビさんの独房の前に来てくれないかな?」

 

「なぜだ?何を企んでいる?」

 

私の問いに西住さんははっきりと答えようとしない。

 

「ふふふ。ちょっとしたいたずらをね……いたずらの内容はその時間になってからのお楽しみ。楽しみにしてて。それじゃあよろしくね。」

 

そう言い残し、みほは去っていった。さあ、大変だ。アンチョビさんにこのことを警告しなくてはいけない。私にはこれくらいのことしかできないが何も言わずに酷い目にあうよりはある程度覚悟ができてからの方が良いだろうという私なりの配慮だ。私は鍵を手にしてアンチョビさんの独房に走り、扉の前に到達すると急いで鍵を開けた。

 

「アンチョビさん。起きてるか?」

 

「麻子か!こんな時間に珍しいな。今日はどうした?」

 

アンチョビさんは私の来訪を嬉しそうに歓迎してくれた。この笑顔を曇らせるのは心苦しいがアンチョビさんが少しでも苦しまないようにするためには伝えなくてはならない。

 

「まずいことが起きた……西住さんがアンチョビさんのことで何かまた悪事を企んでいる……何をする気かわからないがどうやら1時間後にそれが行われるらしい。心の準備だけでもしておいてくれ。私にアンチョビさんを守ることができるだけの力があればいいが……すまない……私にはこれしかできない……」

 

すると、アンチョビさんは笑顔を崩さず私に謝意を伝えてきた。その顔はとても穏やかであった。

 

「麻子、ありがとう。私なら大丈夫だ。どんな苦痛も耐えてみせる。」

 

何とも心強い言葉だろうか。私は逆にアンチョビさんに励まされた気分になった。私は大きく首を縦に振ってまた1時間後に来ることを伝えて研究室に戻った。

1時間というものはあっという間に過ぎた。みほに言われた時刻の5分ほど前に私は再びアンチョビさんの独房に向かった。すると、すでに西住さんは私を待っていた。西住さんはソワソワとしてまだかまだかと私を待ちわびている様子である。西住さんは私を見つけると嬉しそうに笑いかけて手招きしていた。私は少し早歩きで西住さんのもとに走り、扉の前に到達すると再びアンチョビさんの独房の鍵を開けた。西住さんは扉を開けると足早にアンチョビさんが寝かされているベッドに駆け寄りアンチョビさんを見下ろしながらいった。

 

「ふふふ。こんにちはアンチョビさん。お元気でしたか?久しぶりですね。」

 

西住さんがアンチョビさんに声をかけるとアンチョビさんは西住さんを睨みつける。

 

「元気だったかだと?そんなわけないだろ!?」

 

「ふふふ。そんなに興奮しないでください。可愛い顔が台無しですよ。」

 

西住さんはアンチョビさんの頰に触った。アンチョビさんが小さな悲鳴をあげて小さく身体を震わせる。

 

「やめろ!触るな!」

 

西住さんはアンチョビさんの抗議を無視してアンチョビさんの服を捲り上げ、素肌を撫で回しながら舐めるように眺めている。

 

「ふふふ。可愛い。これなら傷つけがいもありそうです……アンチョビさん。ちょっと来てもらいます。大人しくしていてください。さもないと……」

 

西住さんは懐から拳銃を取り出して天井に向かって発砲した。天井に小さな銃痕ができた。西住さんの銃が本物で弾も詰まっていることを理解したアンチョビさんはすっかり怯えてしまって今までの威勢の良さが嘘のように泣きじゃくっている。西住さんは大人しくなったアンチョビさんの様子に満足してくすくすとバカにしたように笑いながらアンチョビさんの首に犬用の首輪をはめた。

 

「あははは。惨めですね。まるで奴隷みたいです。えっと、腰縄をはめて手錠をかけてと……できあがり!さ、アンチョビさん。行きましょうか?」

 

「私をどこに連れて行くつもりだ……?処刑場か……?」

 

アンチョビさんが泣きじゃくりながらたずねると、西住さんはしばらく不思議そうな顔をしてそして思い出したように笑いながらアンチョビさんの問いに答えた。

 

「あははは。そういえば、伝えるの忘れてましたね。安心してください。アンチョビさんはよっぽどのことがない限りは殺しません。アンチョビさんにはまだまだ利用する価値があります。アンチョビさんは私たちの目的の駒として役立ってもらいます。その一つ目として、現在交戦中のアンツィオ高校へのプロパガンダに出演してもらいます。今回のプロパガンダは戦車隊隊長のアンチョビさんはすでにこちらの手の中にあり、生かすも殺すもこちら次第であるというメッセージを伝え、抗戦意欲を挫く目的で作ります。安心してください。もし、このままアンツィオ高校が降伏してくれたらすぐにみんなと会えます。それまでの辛抱です。」

 

西住さんは優しく甘い声でアンチョビさんに語りかけていた。アンチョビさんはどうあってももはや逃れることはできないことを悟って、プロパガンダの出演を承諾し力なく頷いた。西住さんは満足そうな顔で万歳の形で固定されていた手錠と足枷をベッドの柵から外して暴れないように腰縄と後ろ手に手錠をかけた。そして、腰縄を少し引っ張って出発を促した。それを合図にアンチョビさんも俯きながら歩き始める。しばらく歩いていつもパーティーなんかをやる部屋の前まで来た。そこから何やら大勢の声が聞こえる。どうやら目的地はここのようだ。西住さんはアンチョビさんを連れて部屋の中に入った。部屋の中にはカメラが一台とたくさんの観衆たちがいた。観衆たちはアンチョビさんの姿を認めると一斉に罵り始めた。恐らくこれもプロパガンダの演出なのだろう。西住さんはアンチョビさんの手首を鎖で拘束した。

 

「ふふふ。それじゃあ、始めましょうか。」

 

「何をするつもりだ……?」

 

「何って……こうするんですよ」

 

西住さんはクスリと笑うと腰に手を回してナイフを取り出し、アンチョビさんの服をビリビリに切り裂いた。

 

「な……な……何するんだ!こんなこと……こんなことって!」

 

アンチョビさんは必死に抗議するがそんなことを西住さんが聞くわけがない。手首を縛られているのでアンチョビさんは抵抗できない。それをいいことに西住さんはアンチョビさんを辱めはじめたのだ。

 

「えへへへ。今日のテーマは辱めです。アンチョビさんにはたっぷりと辱めを受けてもらいます。ふふふ。下着が邪魔ですね。それも切っちゃいますね。」

 

「やめろ……!やめてくれ……」

 

西住さんは悲痛な声で嘆願するアンチョビさんの姿にその嗜虐の心をくすぐられたようだ。ニヤリと悪い笑みを浮かべてアンチョビさんのブラジャーとショーツを切り裂いた。アンチョビさんは叫び声をあげる。それと同時に嘲笑うような歓声が観衆からあがった。西住さんは全裸になったアンチョビさんを眺めて舌舐めずりをすると白くて綺麗な肌を撫で回した。

 

「ふふふ。美しい……アンチョビさんの裸、とっても綺麗ですよ。肌はすべすべで、透き通るみたいで……今日はたっぷり時間もありますしたくさん遊びましょうね……えへへへ。でも、いつも通りじゃつまらないし……どうしましょうか。一旦カメラを止めてください。」

 

西住さんはカメラを止めるように指示し、少し腕を組みどうしようか考えていた。そして、私の方を向くとこちらに歩いて来た。西住さんは私に一体何をさせる気なのか私は怯えた表情で悪魔の笑みを浮かべる西住さんを見つめる。

 

「麻子さん。麻子さんはアンチョビさんと仲良しだったよね?よく、アンチョビさんのところに行ってるし、今日も見てたよ?私にこのことを知らされてからアンチョビさんに何かを言いに行くところ。アンチョビさんも相当信頼してるみたいだし、なかなかの信頼関係を築けているみたいだね。」

 

「それがどうした……?」

 

冷たい汗が背中を伝う。とてつもなく悪い予感がした。西住さんは満面の笑みでとんでもない要求をしてきた。西住さんは腰のポーチに入れてあった鞭を取り出して私に投げ渡す。

 

「だからね、麻子さんにはアンチョビさんをこの鞭で殴ってほしいの。もしくは、素手で鳩尾を殴ってくれてもいいけどね。ふふふ。」

 

西住さんの言葉に私は大きく目を見開いた。そんなことできるわけがない。やりたくもないことだ。友人ともいえる絆を築いた相手にそんなことしたくもなかった。

 

「そ、そんなことできるわけないだろ……!私にとってアンチョビさんは……」

 

「ふふふ。いいのかな?私に逆らって、もし逆らったらどうなるかはもう教えてあるよね?でも、麻子さんはもう殺すことはできないほどに重要な役割を担うようになっちゃったから殺さないけど、その代わりに沙織さんとおばあちゃんを殺してあげる。ただ殺すのも面白くないし、生体解剖しちゃったりとか人体実験のモルモットにしたりとか。ふふふ。」

 

なるほど、今朝の夢はこのことの警告だったのかもしれない。私はどうすればいいかわからなくてブルブル震えていた。選べない。どちらも同じくらい大切だ。優劣などつけられない。だが、選ばなくてはならない。私は考えて考えて考えた。だが、どうしても選択できない。その時、アンチョビさんが口を開いた。

 

「麻子、いいよ。やってくれ。」

 

「でも……」

 

「私は少し身体に傷がついたり痛かったりするだけだ。それよりは、友達やおばあちゃんの命を助けるべきだ。私は殴られたくらいでおまえを恨んだりはしない。おまえが心からこんなことやりたくないってことはわかってるからな。」

 

アンチョビさんは穏やかに笑っていた。西住さんはクスクスと笑う。

 

「ふふふ。素敵な友情です。では、麻子さん。やってください。手を抜いて優しくやったりしたら麻子さんを鞭打ちしますから手を抜こうなんて思わないでくださいね。」

 

私はアンチョビさんに目で合図を送ると大きく鞭を振り上げた。アンチョビさんは目で「遠慮なくやれ。」と訴えかける。私は振り上げた鞭を思いっきりアンチョビさんの白い背中に打ち付けた。

 

「ぎゃあああああああああああ!」

 

アンチョビさんの叫び声が響き渡った。西住さんはアンチョビさんの叫び声を恍惚とした表情で楽しんでいた。

 

つづく

 

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