血塗られた戦車道   作:多治見国繁

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もうしばらくだけみほ陣営のお話が続きます。よろしくお願いします。
今日は前半が麻子の視点、後半が優花里の視点です。


第109話 アンツィオ崩潰の足音

2日目の朝が来た。その日は朝から和平交渉会議の予定であったが、私たちはゆっくりと朝食をとった後、会議開始予定時刻から3時間ほど遅れて今からホテルを出て会議所へ向かうところだ。これは、別に私が寝坊したからこうなったとかではない。これはわざとそうしたのだ。これには思惑があった。実は交渉の場に遅れて現れるということは主導権はこちらにあることを暗に示し、精神的な優位に立つことができるのだ。この手法はよく使われる手法であるらしく現に実際の外交の場ではよく行われていることであるようだ。実際に使われている手法であるのならば使わない手はない。それに、寝坊もできるし一石二鳥だ。私は昨夜のうちに秋山さんや直下さんと遅刻することを提案した。最初こそ秋山さんと直下さん、その中でも特に直下さんが時間はきっちりと守るべきだと主張していたが、外交は仲良しごっこではないので相手には十二分とも言える揺さぶりとどちらが優位で主導権を持っているのかということを相手に伝えるためにも絶対に遅刻していくべきだと説得して結局、遅刻していくことになったのだ。 さて、私たちはホテルを出ると突然、継続の学園艦を見学しようと思い立って学園艦を走るメイン道路をぐるりと一周してからようやく私たちは会議室の扉の前へ立った。昨日はあれだけの恨みを買った。扉を開けるのが言いようもないほどに怖かった。西住さんではないのだから流石に相手に暗殺される心配はないだろうが、それでも怖いものは怖い。私は大きく2度深呼吸をして3回ノックをして相手の返事を聞かずに扉を開ける。扉を開いた瞬間、恐怖と憎しみが入り混じった視線が私に注がれた。私はそれを無視して席に着く。

 

「おはよう。遅れてすまなかった。こちらの当局からの問い合わせの対応に追われてしまった。」

 

私は無表情のまま深々と頭を下げる。すると、田上さんが冷たい声で痛烈な皮肉を言った。

 

「遅刻とは随分と面白い趣向を凝らしてくれますね。冷泉さん。」

 

「ちょ、ちょっと!結衣!失礼だよ!」

 

依田さんは田上さんを黙らせようとした。しかし、私は依田さんを手で制した。

 

「いや、私たちが悪いんだ。田上さんの怒りも最もだ。遅れて申し訳なかった。改めて謝罪する。さて、時間も惜しいし申し訳ないがそろそろ話を進めよう。最初に昨日の答えを聞かせてもらおう。どうだ?降伏か抗戦か答えは決まったか?」

 

私の質問に依田さんは視線を落としながら躊躇いがちに口を開く。

 

「ええ……決まりました……」

 

「そうか。それで、答えは?」

 

「当局に問い合わせました。落合さんはこれ以上の市民の犠牲は望んでいません。これで市民が救われるのならば降伏します……ただし、私たちからの条件は必ず守ってもらいます……私たち、中枢の人間はどうなっても構いません。ですが、罪のない市民は……市民の命だけは助けてください……これは、落合さんからのたっての願いです。どうかお願いします。」

 

「ああ。わかった。条件に盛り込もう。市民の命は助けよう。罪がなければな。これは絶対だ。では、今から文書の作成に入ってもいいか?」

 

「はい……お願いします……」

 

私はパソコンのワープロソフトで降伏文書を次のような文面で作成した。

 

一、下記に署名する者は、アンツィオ高等学校生徒会及び学園(以下アンツィオと表記)の許可を得て茲に大洗女子学園高等学校反乱軍(以下反乱軍と表記)に対して降伏する

二、アンツィオは反乱軍の提示した条項を誠実に履行する

三、反乱軍は罪なきアンツィオの市民の安全を確保する努力を行わなければならない

四、反乱軍はアンツィオに対して全ての所有物を保全することを命ずる

五、アンツィオの統治の権限は反乱軍の下に置かれる

 

アンツィオ高等学校生徒会及び学園の命により、またその代表として

 

アンツィオ高等学校生徒会及び学園の軍事及びそれらの組織の代表として

 

大洗女子学園高等学校反乱軍総司令官の命により、またその代表として

 

大洗女子学園高等学校反乱軍代表者

 

大洗女子学園高等学校副使

 

以上4つの条項を打ち込み、厚手の用紙に反乱軍用とアンツィオ用の2枚の文書を印刷して、綺麗に装丁すると依田さんに降伏文書とペンを差し出した。

 

「それでは、今から調印式を行う。これに自分の名前をサインをしてくれ。欄を間違えないようにな。間違えたら格好悪いぞ。アンツィオの恥にならないようにな。」

 

依田さんは悲しそうな顔をして文書を受け取ると一番上の[アンツィオ高等学校生徒会及び学園の命により、またその代表として]という欄に「依田奈央」と書き込んだ。その後、田上さん、私、秋山さん、直下さんという順に2つの降伏文書を回して自らの名前を署名していった。これで、アンツィオは正式に降伏となった。アンツィオという一つの学園艦が滅びの道を歩み始める瞬間だった。私の脳裏には地獄となったアンツィオ高校学園艦の姿が浮かぶ。目の前の彼女たちはこの先、アンツィオにどのような災厄がもたらされるのか知る由もないだろう。その後、秋山さんが武装解除など軍事関係の話をして会議は終了して、私の任務は終わった。全ての任務が終わった時、私という存在を覆っていた何かが私の心を元の状態に戻した。言うなればアドレナリンが出ていたが全てが終わった瞬間、アドレナリンが切れるのと似たような感じである。その瞬間、私は罪悪感に苛まれた。私はなんということをしてしまったのだろうか。私は彼女たちを騙し、彼女たちを搾取しひいては大量虐殺するために行動してしまった。私は悪魔の他何者でもない。いくら生存のためとはいえ、こんなことは許されることではないのだ。私は心底自分が嫌になった。消えて無くなってしまいたかった。そこから先はよく覚えていないが、とにかくその日のうちに私たちは大洗女子学園の学園艦まで戻った。西住さんは全てのサインが埋まった降伏文書を目にして飛び上がるように喜び、私たちの労をねぎらうためにご馳走を食べさせてもらった。しかし、そのご馳走は味が全くしなかった。別に西住さんが意地悪をしているわけではない。私の身体が味を感じるのを拒否しているのだった。今回の交渉はそれだけ辛いものであった。私は食事をしてから即座に研究室のベッドに潜り込んで眠りに落ちた。ひどく疲れていたのかあっという間に真っ暗な世界に引き込まれた。

 

*******

 

西住殿は、私たちが継続高校から帰ってきた次の日の昼頃に私、秋山優花里を呼び出した。用件は分かっている。ついに特別行動部隊(アインザッツグルッペン )が出動する時が来たのだ。私は西住殿からもらった将校服を着込んで西住殿の執務室に向かった。

 

「西住殿、失礼します。」

 

執務室の中に入ると西住殿がにこやかに私を迎えてくれた。

 

「あ、秋山さん。わざわざごめんね。来てくれてありがとう。」

 

「いえ、大丈夫ですよ。今日、呼ばれたってことは……そういうことですよね?ふふっ」

 

私はいたずらっぽく笑った。すると西住殿は首を縦に振った。

 

「うん。察しのいい子は大好きだよ。あと少ししたら直下さんが来るからソファに座って少し待っててね。」

 

「わかりました。」

 

そんなやりとりをしてから5分ほど経過したころ、直下殿がやってきた。

 

「失礼します。西住隊長、お呼びですか?」

 

「うん。突然呼び出してごめんね。それじゃあ揃ったから始めようか。二人ともなんとなく察しがついてるとは思うけど、二人には今からアンツィオへ行ってもらいます。それで、はいこれ。直下さんに辞令です。中身を確認してください。」

 

西住殿は直下殿に封筒を差し出した。直下殿はそれを恭しく受け取ると封を開けて中身を確かめた。

 

「西住隊長!これは!」

 

直下殿の顔がパッと明るい笑顔になった。西住殿も微笑を湛える。

 

「ふふふふ。これで直下さんも晴れて幹部の仲間入りだね。直下さんのますますの活躍を期待しているよ。それで、早速なんだけど直下さんにはアンツィオ総督府の総督を任せたいと思ってるの。私に直属してアンツィオをしっかりと支配して、私の理想の帝国の一端を築いて欲しいな。それで仕事なんだけど、仕事は基本的に直下さんの裁量で決めて、自由に支配して貰えばいいけど、最初は私が命令するね。まず手始めに……そうだなあ。何やってもらおうかな……あ、そうだ!アンツィオ市民の選別からやってもらいましょうか。住民票と死亡者名簿を全て洗い出して生存しているアンツィオ市民のうち、65歳以上の者、社会科・国語科の教員、学園中枢部にいた者、生徒会関係者を見つけ出して秋山さん率いる特別行動部隊(アインザッツグルッペン )に引き渡してください。それ以外の市民はゲットーに閉じ込めてください。」

 

「はい!お任せください!」

 

西住殿は満面の笑みで頷くとアンツィオの地図を広げて言った。

 

「うん!よろしくね!優花里さんも、死刑執行人としてたくさん殺してね!ふふふふ。もうすぐ、110機の輸送機部隊が2000人の聖グロの兵隊を下ろしてアンツィオから帰って来ます。向こうではすでに先遣隊を含めた4000人の兵隊たちがいます。優花里さんたちは特別行動部隊(アインザッツグルッペン )の隊員たちと一緒にアンツィオに向かってください。一応、今回派遣予定の兵力は聖グロの6000名を予定しています。それで、皆さんを降ろすのはここのメイン大通り。アンツィオに着いたらすぐに総督府となる建物と特別行動部隊(アインザッツグルッペン )司令部となる建物を探して接収してください。」

 

「わかりました。」

 

「わかりました。西住殿。すぐに準備します。」

 

私たちは西住殿の執務室を後にすると自室に戻ってアンツィオに向かうための準備をした。とりあえず、着替えとアメニティグッズを旅行用の鞄に詰め込んで滑走路になっているメインの道路に向かった。飛行機はすでに55機が到着しずらりと整列していた。残り55機は知波単の学園艦から離陸するようだ。そのうちの1機の輸送機の近くに西住殿が待っていた。

 

「あ、来た来た!こっちだよ!今日は私もアンツィオ行くね!アンツィオの学園艦がどうなってるか見てみたいし。やっぱり、私がアンツィオに上陸する姿をアンツィオ市民に見せつけることこそ意味があると思うの。彼女たちに敗北観を植え付けることで支配もしやすくなると思うし、相手の抵抗力も奪うことができるはず。まずは相手に屈辱を与えることから始めなきゃね。ふふふふふふ。」

 

「屈辱を与える……ですか。」

 

「うん!ふふふふふ。何か考えはあるかな?」

 

西住殿は首を傾げながら私を見つめる。何をすればアンツィオに十二分な効果をあたえる屈辱を与えることができるだろうか。私は思考を開始した。そして、ある一つの考えが私の頭に浮かんできた。

 

「そうですね……文化を破壊するというのはいかがですか?アンツィオはイタリア風の学校なのでイタリアゆかりの建物がたくさんあると聞きます。例えばコロッセオなどですが、それらを破壊、解体してアンツィオの文化を否定すればかなりのダメージを与えられるはずです。」

 

「それ、いいね。アイデアもらうね。聖グロの兵隊たちにやらせましょう。ふふふふ。さあ、輸送機に乗ってください。あとは優花里さんが乗れば離陸準備完了だよ。」

 

「あ、お待たせしてしまってすみません。すぐに乗りますね。」

 

私と西住殿はタラップを駆け上って、席に着いた。中には直下殿の他にルクリリ殿やイェーガー殿など数十人の特別行動部隊(アインザッツグルッペン )の隊員が乗っていた。私は「すみません。」と会釈しながらルクリリ殿の隣の席に着いた。それを確認すると輸送機の扉が閉まり、シートベルトをきちんとしめるようにアナウンスが入り、先発の飛行機が離陸した5分後にゆっくりと道路を滑り出し始めた。やがてスピードは速くなりふわりと身体が浮いて輸送機は離陸した。私は離陸後しばらくは窓の外の景色を眺めていた。すると、隣の席のルクリリ殿が話しかけてきた。

 

「秋山さん。これから私たちはどうすればいいの?何をやればいいの?」

 

「そうですね。ひとまずは司令部の設置ですね。その後に恐らく総督府の方から処刑リストが来ると思うのでそれに従って射殺ですかね。その他にもゲットーの監視など様々やることはあると思います。」

 

「わかったわ。やること山積みね。一緒に頑張りましょう。」

 

「はい!ルクリリ殿には期待していますよ!」

 

その後、私たちは他愛もない話をしながら過ごした。しばらくするとアンツィオ高校にもうすぐ着陸するというアナウンスが流れて、高度が低くなっていき、アンツィオのメイン道路に到着した。

扉が開き私たちはタラップの階段を降りる。他の輸送機からもぞろぞろと銃を抱えた兵隊が降りてきて整列をしていた。その様子をアンツィオの市民が建物の窓や道路から泣きながら眺めていた。私はそれを横目に特別行動部隊の隊員を集めて点呼を行ない、集合完了を報告した。

 

「西住殿、特別行動部隊(アインザッツグルッペン )の集合完了しました。」

 

他の部隊も人数が揃ったようである。次々と報告が上がった。

 

「こちらも全員揃いました。」

 

「こちらもです。」

 

西住殿はその報告を満足そうに聞きながら頷く。

 

「みんな報告ありがとう。ふふふ。ここがアンツィオか。いいところだね。とても居心地がいい。」

 

「はい。とてもいいところです。さて、まず何から始めましょうか。」

 

西住殿は整然と並ぶ皆の顔を一瞥するとクスクスと楽しそうに悪い笑みを浮かべる。

 

「ふふふふ。そうですねえ……特別行動部隊(アインザッツグルッペン )は私と一緒に学園中枢部に向かう!学園中枢の人間は他の聖グロの部隊は全居住地区のアンツィオ市民を全員引きずり出せ!そして住民を焼け跡のガスタンクコンビナート跡地に集めろ!」

 

「「はい!」」

 

西住殿の命令で私たちは一斉に行動を開始した。私たち、特別行動部隊(アインザッツグルッペン )は西住殿を先頭に学園中枢部へと向かった。私たちはその道中でも建物から住民たちを引きずり出し、「死にたくなければガスタンクコンビナート跡地に向かえ。」と脅しながら向かった。しばらく走ると私たちはやがて校舎にたどり着いた。校舎の入り口は固く私たちのような招かれざる客を拒むようにバリケードで閉ざされていた。私たちはそれらのバリケードを破壊、取り除きながら進む。バリケードを取り去り、扉を蹴破ると私たちは中に侵入した。中は人が居る気配は感じるが、姿が見えない。私たちは銃をいつでも発砲できるように構えながら前へと進む。すると、かさりと何かが動く音がした。その音に西住殿が素早く反応する。

 

「どこですか?出てきてください。出てこないなら手榴弾を投げ込みますよ。」

 

するとがさりと再び物音がしたと思ったら両手を挙げながら一人の小さな少女がおずおずと出てきた。彼女は高校生には見えなかった。背丈から言うとちょうど角谷杏会長くらいだろうか。

 

「やめて……ください……撃たないで……」

 

少女は歯をカチカチと鳴らしながら震えていた。西住殿は少女の腕を引っ張って後ろ手に縛りあげると拳銃を突きつけながら尋問した。

 

「私の質問に素直に答えてくれたら解放してあげます。生徒会や教員の皆さんはどこにいますか?」

 

少女は顎で上を指し示し、唇を震わせ、まくしたてるように言った。

 

「上です。一番上です。最上階です。最上階に現在この学校を動かしている災害対策本部があるはずです。そこが中枢です。はい。」

 

「なるほど。わかりました。それじゃあ解放してあげます。」

 

そう言うと、西住殿は後ろに回り込み、その少女の背中を蹴飛ばした。

 

「痛い!何するんですか!」

 

「何って解放してあげるんですよ。」

 

西住殿はそう言いながら拳銃のスライドを引いて銃口を少女の頭部に向けた。

 

「え……?何を……!」

 

少女は尻をつきながら後ずさる。

 

「だから、解放してあげるんですよ。この地獄からね。ふふふふふふ。さようなら。」

 

西住殿は引き金を引いた。少女は崩れるようにばたりと倒れる。頭からはドクンドクンと脈打つように血が溢れる。だが、私たち特別行動部隊(アインザッツグルッペン )の隊員はそんな光景はもはや慣れきってしまっていた。私たちはそんな残虐の光景を目にしても特に何も感じることなく死体を横目で見ながら前進した。私たちは各階で逃げ遅れたアンツィオ生を人質に取りながら階段を最上階まで駆け上がり、ついに災害対策本部がある部屋の目の前にやってきた。西住殿はハリウッド映画でやるように銃を構えて壁にぴったりと張り付くと私に手で合図する。私はその合図を見て、ライフル銃を構えながら部屋に突入する。

 

「動かないでください!両手を挙げてください!」

 

中にいた人たちは皆、素直に従った。皆、私たちの姿を目にすると一斉に両手を挙げる。私は皆が武装等していないか確認する。武装をしていないことが確認されると、背後から西住殿が声をかけた。

 

「責任者はどなたですか?」

 

「私です。」

 

金髪で端整な顔立ちの可愛らしい女の子である。西住殿はその少女に近づき、顎の下に手を入れて頰を片手で掴む。

 

「ふふふふ。あなたが責任者ですか。なかなか綺麗で可愛い顔してるじゃないですか。お名前は?」

 

「うぅ……お、落合陽菜美です……う……うぅ」

 

「ふふふふ。落合さんですか。あなたがこの学校を率いていたんですね。探しましたよ。」

 

「私をどうするつもりですか……?」

 

「そうですねえ。まずは、大洗女子学園の学園艦にきてもらいます。」

 

「大洗女子学園の学園艦に私を連れて行ってどうするつもりですか?ただ連れて行くだけじゃないですよね?」

 

「そうですね。もちろんそれだけじゃありません。あなたはなかなか可愛い顔をしている。なら使い道はたくさんありますよ。例えば、あなたの白くて綺麗で美しく柔らかな身体を欲しがる人は何人いるでしょうね。ふふふふふ。」

 

西住殿はそう言いながら、落合殿の服をナイフで切り裂いた。

 

「いやっ!な、何を!?」

 

「あははは。本当に真っ白で綺麗な肌ですね。せっかくですからあなたの綺麗な裸をみなさんに見てもらおうと思いましてね。さあ、抵抗しないでください。あなたが抵抗するたびにここにいる人たちを一人ずつ殺します。ふふふふふ。」

 

すると、落合殿は真っ赤な顔をしながら途端に大人しくなった。西住殿は舌舐めずりをしながら落合殿の太ももに手を這わせてショーツを、さらに胸に手を持っていき触れると背中に手を回してブラジャーを脱がせた。

 

「あっはははは!なんて綺麗な身体なんでしょう。早くその身体に触れてみたい!えっと……手を縛ってと……これでよし!それでは、落合さんあなたを大洗女子学園まで連行します。あなたとあなた、輸送機まで連れて行ってください。」

 

「はい!」

 

「はい!わかりました!」

 

西住殿は連行される落合殿を見送ると災害対策本部にいた全員の手首を後ろ手に縛って集合させた。

 

「皆さんも連行します。着いてきてください。」

 

西住殿は災害対策本部のメンバーをぐるりと囲ませるように私たちを配置して、西市街地まで連行した。皆、何をされるのかわからずに不安げな表情をしている。西市街地は廃墟とかしていた。西住殿は西市街地に着くと爆弾でクレーターになっているところを見つけてそこで災害対策本部のメンバーにスコップを手渡した。

 

「ここで穴を掘ってください。」

 

皆、懸命に穴を掘る。一体穴を掘って何があるのだろうかという表情をしている。西住殿はその様子をケタケタと笑いながら眺める。そして、しばらくしてある程度の深さになったところで西住殿は小さな声で私を含めた10人の隊員に穴の周りをぐるりと囲むように指示した。皆、そんなことには気がつかずに穴を掘っている。

 

「はい。その辺で大丈夫です。自分の墓の穴の穴掘り、お疲れ様でした。ふふふふ。」

 

穴の中にいる者たちは皆、西住殿が何を言っているのかわからないという様子である。西住殿はニコリと微笑むとさっと手を挙げて銃を構えさせる。そして、挙げた手を振り下ろしながら叫ぶ。

 

「撃て!」

 

その瞬間拳銃よりも長いライフルの銃口から凶弾が発射されて今まで生きていた少女たちは絶命して折り重なるようにして倒れた。西住殿は一人も生き残りがないように死体の上にも執拗に銃を撃つように命じた。西住殿は処刑を楽しむ。嬉しそうに笑いながらその様子を眺めていた。

 

「ふふふふふ。生徒のリーダーたちは死んだ。次は教員と大人たちだ。必ず探し出して射殺する!みんな絶対に逃さないようにね!」

 

アンツィオへの大量虐殺の幕が開いた瞬間であった。

 

つづく


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