意味がわからない方はプロローグから見ていただくとなんとかわかるかと思います。
「それが、冷泉殿…あ、またです。どうも癖になってしまって…冷泉さんの誘拐についてです。あっ、もうこんな時間ですか…すっかり遅くなってしまいましたね…」
私は、秋山優花里への取材を続けていた。秋山優花里は全てを話そうとしてくれた。しかし、今回は時間も来てしまったのでお暇することにした。
「今回は、取材を受けていただきありがとうございました。本日は、もう遅いので一旦ここで失礼させていただきます。」
そういうと、秋山優花里は思いもよらない嬉しいことを言ってきた。
「そうですか、では最後に冷泉ど…いえ、冷泉さんの連絡先を差し上げますから持っていってください。冷泉さんを誘拐した時の心境は彼女にしかわからないこともたくさんあるでしょうし、彼女にも色々聞いてみると、何か分かることがあるかもしれません。冷泉さんには私から伝えておきますから。」
なんと、冷泉麻子の連絡先を思わぬ形で手に入れることができた。
「ありがとうございます。では、遠慮なく。」
私は、冷泉麻子の連絡先が書いてある紙を持って嬉々としてスキップでもしそうな気持ちの高ぶりを思いながら秋山優花里の家を出た。
「本当にありがとうございました。失礼いたします。」
「はい、失礼します。またいつでもきてくださいね。」
「お気遣いありがとうございます。」
私は、秋山優花里のアパートの前に待たせていたタクシーに乗り込み、自宅に戻った。
そして、翌日の午後冷泉麻子に連絡を取った。冷泉麻子の家の電話はずっと呼び出し音が鳴り続けるだけでなかなか出なかった。
『はい、冷泉です。』
しばらくするとぶっきらぼうで眠たそうな女性の声で電話に出た。
『私、フリージャーナリストをしております、山田舞と申します。冷泉麻子さんはいらっしゃいますか?』
『あぁ、昨日秋山さんが言ってた記者さんか。私が冷泉麻子だ。結論から言うと、私から話すことは何もない。記者さんに一つ言っておく。この取材から手を引け。その方が身のためだ。』
『そんなことおっしゃらず、お聞かせいただくことはできませんか?』
『無理だ』
『そうですか。分かりました。後日またお電話差し上げます。』
『何度かけて来ようと答えは変わることはないが…一応、了解はしておく。』
『ありがとうございます。それでは、失礼いたします。』
『ああ、失礼する。』
冷泉麻子は、頑なに語ろうとしなかった。何故だろうか。冷泉麻子に何があったのだろう。そして、取材から手を引いた方が身のためとはどう言う意味だろうか。またひとつ謎が増えた。しかし、冷泉麻子が何か重要なことを知っているキーとなる人物であるのは確かだ、粘り強く交渉してみよう。冷泉麻子を説得することで事件の一部がまたひとつ明らかになるはずだ。必ず、冷泉麻子に取材を受けてもらわなければならない。手強い相手だが頑張るしかない。
つづく
次回も、視点が大きく変わります。