2/23付でペンネームを変えました。
多治見国繁です。故郷を感じる名前にしたくて、故郷の鎌倉時代の武将多治見国長から取りました。改めましてこれからもよろしくお願いします。
今日のお話は第109話の「アンツィオ崩潰の足音」に対応するアンツィオ側のお話です。しかし、皆さんはきっと秋山優花里が語った話と随分違うと思われることでしょう。これは、被害者と加害者がそれぞれ自分の記憶をもとに語っているということを意識して書いています。立場が違えば同じことでも全く違う捉え方をします。被害者はより被害を大きく語り、加害者は加害をより小さく語ります。その特性を考慮しています。そのため、登場人物が言っていることやその人の行動など優花里の目線のお話と違うところがあります。また、これらはいずれも証言であり客観的に検証する資料は今のところ何一つないという設定ですので、どちらかが嘘をついているとも言い切れません。優花里が語ってなくてカルパッチョが語っているところはもしかして、優花里が失念しているだけかもしれません。そのような目で見ていただけると幸いです。
私たちの愛する母校であり必死になって守ってきたアンツィオ高校が大洗反乱軍及び知波単学園に正式に降伏した次の日の朝、その日も私はいつものように朝礼を行なっていた。もちろん内容は今までとは全く違うものとなった。いずれは訪れるであろう占領軍への対応についてを話していたのである。こうした時に一番怖いのは混乱である。とにかく、混乱なく占領軍を受け入れなくてはならない。そのために市民の外出禁止を徹底するように風紀委員会へ厳命した。何度でも言うがアンツィオの市民は自己の感情に素直な者が多い。それは素晴らしいことだが、それが仇となることもある。行政レベルではアンツィオにはもはや大洗反乱軍及び知波単に敵対の意思はないことは伝達済みであるが、だからといって彼女たちへの憎しみそして、仲間を失った悲しみが決して消えるわけではない。私の頭の中には焦土と化した街とあの遺体安置所で出会った酷い状態の遺体、そして人々の涙が走馬灯のように次々と交互に浮かぶ。反乱軍及び知波単はここまでの殺戮と破壊をやってくれたわけであり、彼女たちは決して平和使節ではないのだ。私たちは降伏を受け入れた身とはいえ笑顔で諸手を挙げて歓迎することは誰にもできない。このように私たちのような学園中枢において行政業務に携わる者たちであってもそれはそれは深い憎しみと悲しみを心の中に抱えており、心中穏やかではない。私たち行政の人間はいついかなる時も冷静に対処する事が求められるので、ある程度は自分の感情をコントロールする術を身につけているが、市民はそう言うわけにはいかないだろう。風紀委員が襲撃されたあの時の恐怖が頭をよぎる。今のところ過激派は活発に動く様子は見せていないが、いざ占領軍が現れた時にどのように動くかは未知数だ。そのような状態ではどんな間違いが起きるかわからない。もしも、占領軍に対してこちら側の過激派などの何者かが襲撃を行うなどということがあったら占領軍は報復に何をするかわからない。私は今回の戦争において大洗反乱軍と知波単学園の軍隊の狂気を垣間見た。彼女たちはまさに私たちアンツィオの住民たちを抹殺し絶滅まで追い込もうという勢いだった。襲撃などが起こればそれ以上に恐ろしい事が起きることは必至である。今度こそ総力を挙げて絶滅を企図するかもしれない。不用意に接触して事件や事故が起きるくらいならばいっそのこと外出を禁止してしまった方が良いのだ。他にも、こちらがどんな態度で受け入れるべきかなどを話していたところ、突然空襲警報のサイレンが鳴った。私は終戦後の空襲警報に仰天して職員たちにはそのままその場に止まるように指示して屋上へと駆け上がる。すると、確かに上空に飛行機が何機も見えた。しかし、どうやらあれは爆撃機や戦闘機ではなさそうだ。あれは全日本航空高校が私たちの使者たちを乗せていった飛行機にそっくりである。あれは輸送機だ。もう来たのか。どうやら反乱軍の連中は私たちに考える暇を与えるつもりはさらさらないらしい。まだ受け入れについて準備が済んでいない。どうかそのままお帰りいただきたいとの願いも虚しく輸送機は無慈悲にも大通りに着陸する。私は冷や汗を背中に感じながら監視塔の双眼鏡でその様子を観察する。
「落合さん……あれって……」
監視塔の監視官は今にも泣き出しそうな顔をして震えながら私の顔を見つめる。私は険しい表情で頷いた。
「うん。そうだよ。あれが多分占領軍だよ。すごい数の輸送機だね……一体何人連れてきたんだろう……」
輸送機は着陸すると扉が開きバラバラと同じ服を着た集団が降りてきた。その兵隊たちは銃を背負っているものの気品溢れる少女たちで構成された兵隊たちだった。それを見て、私は初めて敵がいかに強大であったかを思い知った。私たちは大洗反乱軍や知波単だけでなく、聖グロリアーナとも戦っていたのだ。私たちの学園艦が壊滅寸前にまで追い込まれるのも頷ける。今まで敵の大きさを正確に測りきれていなかったのは私のミスであるが、あの時は攻撃に対して抵抗するという選択肢をするしかなかったのだから今さら悔やんでも仕方がない。さて、これからどうしようか。私は知波単の輸送機が着陸しては大勢の兵隊たちを降ろしてまた離陸するという一連の流れをルーティーンのように繰り返し、降りてきた兵隊は秩序よく整列すると一糸乱れずに右向け右をして駆け足でメイン道路から少し外れた広場のようになっている場所に整列する様子を双眼鏡で監視しながら考える。そうは言ってもできることなど何も無い。されるがままというのが現実である。占領軍は広場に整列したきりしばらく動く様子はない。せめてもの抵抗として、私は風紀委員に校舎前にバリケードを設置するよう指示した。少しは兵隊たちがなだれ込むまでの時間を稼げるだろう。私はそれからしばらくずっと双眼鏡で監視していた。相変わらず輸送機は着陸して百人程度を降ろしては飛び去っていくという一連の流れを繰り返していた。昼になった。広場には既に数千人規模の兵隊たちが集結している。その全てが聖グロリアーナの兵隊たちだった。それならば少しは安心だ。占領軍が彼女たち聖グロリアーナなら残虐なことはしないだろう。むしろそうしたことを嫌うのが彼女たちであるはずだ。しかし、そんな一筋の希望の光はその日の午後太陽も低くなり始めた時刻にやって来た悪魔たちによって消え失せた。私は休むことを忘れて相変わらず、ずっと占領軍の監視を続けていた。途中、休憩を取ることなくずっと飽きずに監視を続ける私を昼食をとって休憩しないかと対策本部の職員が呼びにきたが、適当な返事を返していたら呆れて戻っていってしまった。今はとにかく占領軍がどう動くか気になる。食事など問題にしている余裕はなかった。そして、もうすぐ16時になるという頃だった。今日何度目かになる輸送機が着陸した。そこから降りてきた者たちその者たちは今までに降りてきた聖グロリアーナの者とは大きく異なっている。真っ黒な軍服を着た集団だった。そうだ。彼女たちこそ、大洗反乱軍から派遣された占領軍だ。その中に、私は見つけてしまった。あの忌々しいビラで見た少女の姿を。西住みほ大洗反乱軍隊長、その人である。そうだ。彼女こそ多くのアンツィオの生徒、市民の命を奪った張本人だ。彼女の野望の所為で多くが命を落とした。ギリッギリッと歯ぎしりの音が鳴る。私は露骨に怒りをあらわにしていた。この部隊のことをもう少し詳しく調査するため、私は双眼鏡を少し横にずらすと別の人物が目に入る。そこにはあの日、ドゥーチェが行方不明になったと同時にこの学園艦から姿を消した秋山優花里の姿があった。ああ、やはりそういうことだったのか。やはり、秋山優花里は敵だったのか。頭の中でわかっていたこととはいえ実際に敵の制服を着た姿を見るのはきついものがある。しかも、西住みほの側近く控えており、他の隊員とは明らかに違う雰囲気である。確証は持てないが他の隊員とは身につけているものも違うことから彼女は幹部クラスであると思われる。秋山優花里はこの後"アンツィオの心優しき屠殺人"の異名で呼ばれることになる。聞くところによると彼女は人々を処刑を任務とする特別行動部隊、アインザッツグルッペンを率いる司令官だったようであり、少なくとも200人の殺害の責任を負っていると言われている。そのような人物がなぜ"心優しき"という異名が付いているのか疑問に思うかもしれないが、彼女は処刑に当たってなるべく恐怖と痛みを与えないように工夫するなどしたため"心優しき"という異名が付いたと言われている。また、処刑前に微笑みを浮かべて優しげな表情を見せて処刑対象者を安心させるが処刑は淡々と無慈悲に行う様から"アンツィオの微笑みの悪魔"とも呼ばれた。それにしても、彼女とは一度じっくりと話しをしたいものだと思って遂には30年もの月日が流れてしまった。いつか彼女にこの時の心境などを尋ねたいと思う。私が穏やかに話し合いができるかは甚だ疑問だが。さて、話を戻そう。西住みほ、秋山優花里の他にもう一人、アンツィオの歴史の中で外すことができない人物が占領軍部隊の中にはいた。後にその残虐さから"アンツィオの血に飢えた魔女"だとか"アンツィオの吸血鬼"と呼ばれ、このアンツィオ学園艦を恐怖で支配した総督、直下璃子である。彼女は大洗やアンツィオなどに設置された絶滅収容所に大勢のアンツィオ市民を送り込んだ。それだけでなく、笑顔を浮かべながら自らの手であの世に送ったという。その殺害した人数は一説によれば1000人を超えるとも言われている。そして、彼女はサディストで人々が血まみれで死に絶える様を笑顔を浮かべて眺めていたという。ただ、30年経った今でも調査が不完全なので詳しくは分かっていない。さて、黒色の軍服を着た軍団が上陸して、整列が終わると秋山優花里やその他の数人の指揮官と思われる者たちが一言二言言葉を交わしてそれから西住みほが兵隊たちの前に立つ。西住みほは手を大きく振り上げるとサッと下ろした。それと同時に兵隊たちは一斉に行動を開始した。遂に来る!私は身体を大きく震わせる。怖くて仕方がなかった。急いで階段を駆け下りると勢いよく扉を開けて、中にいた人に呼びかける。
「遂に占領軍が来ます!備えて!」
そうは言ってもできることなどない。ただじっとして現れるのを待つだけである。だんだんと外が騒がしくなってきた。窓から外を覗くと真っ黒な服を着た兵隊たちがこちらの近くに集まってきた。その中にかすかに悲鳴も聞こえる。その次に聞こえたのはバリケードを壊す音だ。ガラガラと破壊音が聞こえてきた。まさか全員で突入することはないとは思うがかなりの人数が突入するのだ。抵抗のないバリケードなど気休めに過ぎないことはわかっていた。10分程度で壊す音は終わった。その後5分間ほど沈黙が続いたが、その後すぐのことだった。バンッ!と耳を劈く音が響いた。私たちはお互いの顔を見合わせる。まさか……今のは銃声……?一体何が起こっているの……?私は混乱していた。まさかそんなことはあるまいという願いと銃声らしき音が聞こえたという現実が頭の中でぶつかり合う。その後も何度か銃声らしき音が聞こえると何かが階段を駆け上がってくる音が聞こえてくる。
「近いです!」
バタバタという音がすぐそこまで迫る。そして、再びシンとするとガラッと扉が開いた。そこには精悍な顔つきをしてライフルの銃口をこちらに向けた秋山優花里が立っていた。
「動かないでください!動いたら撃ちます!両手を挙げてください!」
私たちは一斉に素直に両手をあげて無抵抗の意思を示した。秋山優花里の部下と思われる者たちが私たちのポケットなどを丁寧に調べて武装していないことを確認する。私たちは極度の緊張で震えていた。すると、今度は別の声が聞こえた。
「責任者はどなたですか?」
目だけで声のした方を見ると、茶色の髪の少女が笑みを浮かべながら立っている。西住みほだ。黒い軍服のようなものを着て黒い手袋をつけている。その手袋にはべっとりと赤黒い何かとピンクがかったクリーム色の何かが付いていた。
「私です。」
返事をすると、西住みほはゆっくりと靴を鳴らして手袋を外しながら私に近づいて乱暴に顎の下から頰を片手で掴む。
「ひあっ!」
突然掴まれたことに私は間の抜けた声を出すと西住みほはもう片方の手で一度二度と頰を手の甲で撫でて悪辣な笑みを浮かべながら言った。
「ふふふふふ……あなたが責任者だったんですね。なかなか食べごたえのある綺麗で可愛い顔してるじゃないですか……名前は?」
「うぅ……お、落合陽菜美……です……うっ……うぅ……」
答える間に西住みほは頰を掴んだ手を強めたため思わず声が漏れる。
「ふふふふ……随分と耐えてましたね……どうでしたか?大切な学園艦が蹂躙されて滅びゆく姿を見た気分は?友達が無残な死を遂げた姿を見た気分は?あはははは!早く降伏をすればいいものを……あなたたちが無駄な抵抗をした所為で犬死が増えちゃったみたいですね。」
私たちだけではなく死んでいった仲間たちを侮辱したような発言をするこの悪魔を許すことはできない。私は彼女を睨みつけながら言った。
「仲間たちを侮辱するのはやめてください!」
「ふふふふふ……」
西住みほは私の抗議に対して特に反応を示すことなく嘲笑う。私は怒りで頭が痛くなるほど歯を食いしばった。ギリっと歯と歯が擦れる音がする。睨みつけた体勢を崩さないまま私は西住みほに言った。
「私たちをどうするつもりですか……?」
西住みほは笑みを浮かべたまま私の顔を頰を掴んだままグイッと引き寄せる。
「あなたに会うまで、責任者は処刑しようと考えていましたが、あなたにはまだまだ利用価値がある。だから、大洗の学園艦に連行します。」
「連行してどうするんですか?」
西住みほはコクリと首を傾げる。
「そうですね。あなたはなかなか可愛い顔をしている。それなら使い道はたくさんありますよ。例えば、あなたのその白くて綺麗な肌に触れたい者は何人いるでしょう。あなたの柔らかい体で遊びたい者は何人いるでしょう。きっと欲しがる者は大勢いると思いますよ……ふふふふふ……」
私の目の前には女性としての尊厳さえも失いかねない絶望の未来が提示された。だが、少なくともしばらくは生き残れるようだ。だが、他の皆のことがまだ言及されていない。皆をいったいどうするつもりなのか尋ねる。
「みんなのことはどうするつもりですか……?」
すると、西住みほは掴んでいた頰を乱暴に離して私の身体を強く押した。
「きゃあっ!」
私は思わず悲鳴をあげてよろけて尻もちをつく。すると、西住みほは私を見下ろしながら無表情のまま冷たい声で言った。
「そんなこと、あなたには関係がないことです。」
西住みほはそう言ってやにわにナイフを取り出す。何をする気なのか。私は警戒すると彼女は私の制服を乱暴に掴んでそのナイフを襟の部分から差し入れて切り裂き始めた。
「いやっ!な、何を!?」
私は仰天して抵抗しようと腕を胸の前で押さえた。しかし、西住みほはくすくすと嗤うと私の手首を掴んで強制的に頭より上に上げさせられた。
「あははは。本当に真っ白で綺麗な肌ですね。せっかくですからあなたの綺麗な裸をみなさんに見てもらおうと思いましてね。あはははは。抵抗しちゃダメです。じっとしててください。あなたが抵抗するたびにここにいる人たちを一人ずつ殺します。ふふふふふ。」
そんなことを言われたら抵抗することはできない。私は俯いてじっとしていた。顔がだんだん真っ赤になっていくのがわかった。西住みほは背後に回り込み、手を差し込むと私のへそのあたりを二度三度と手のひらで撫でて、胸の辺りにそれを持っていき、はらりと私の破れた服を脱がせた。私は下着だけにさせられた。すると、西住みほは舌舐めずりをしてその手を背中に持っていき私のブラジャーを脱がせて、私の胸を掴んで弄ぶ。そして再びへそのあたりを通って太ももを撫で回してショーツを脱がせた。私は生まれたままの姿になった。西住みほは私の裸体を興味深げに眺めて嗤った。
「あっはははは!やっぱり!なんて綺麗な身体!それにこんなに柔らかい!この身体をもっと触れてみたいなあ!」
身体中を蛇のように西住みほの腕が駆け回る。その気持ち悪い感触に私は唇を噛んだ。すると、西住みほは縄を取り出して手首を後ろ手にして腰と一緒に縛り始めた。他の対策本部職員も秋山優花里たち黒い服を着た集団に服は脱がされないにしても後ろ手に縛られ、腰も縛られている。
「これでよし……っと。それでは、全員連行します。」
私たちは黒い服を着た集団に小突き回されながら歩かされて連行された。その途中、赤黒い液体でまみれた何かが目に入った。
「あの……」
「黙って歩け。」
私はあれは何かを尋ねようと声を発したがすぐに黒服集団の中の一人に制されてしまった。私は口を閉じてとぼとぼと歩く。すると、その様子を見ていた西住みほがクスクスと嗤った。
「ふふふふ、あれが何か知りたい?」
コクリと頷くと西住みほは突然近くにあった扉を勢いよく開けて二人の少女のこめかみに拳銃を突き出して連れ出した。二人はこれ以上にないというほどに震えている。西住みほは彼女たちを跪かせて向かって左側の少女の後頭部に銃口を突きつける。
「え!?な!何を!?」
そう叫んだ瞬間、西住みほは引き金を引いた。銃声とともに血飛沫と少女の脳が飛び散って西住みほの白い手を赤黒く染め上げる。西住みほはくるりと私の方向に向くとあっはは!と声を上げて笑った。
「あっははは!こういうことだよ!」
「そんな……こんなことって……」
私は全身を震わせて膝から崩れ落ちた。西住みほは冷たい目で私を見下ろして他の隊員たちに銃を借りると私に自らの拳銃を手渡した。一体何をさせる気なのだろう。私は混乱してそれを受け取れずにいた。
「撃ってください。」
「へぇ……?」
情けない声を出す私に西住みほは他の隊員から借りた拳銃を突きつけながら言った。
「この子はあなたが撃ってくださいって言ってるんです。やらなかったら……どうなるかわかりますよね?」
私の顔は先ほどよりもさらに青い顔になっていく。つまりは、私に二人目の命を奪えと言っているのだ。私はブンブンとかぶりを振った。
「い、嫌です!そんなことできるわけないじゃないですか!」
すると、西住みほはため息をついて数人の真っ黒の軍服を着た集団に対して、先ほど撃たれた犠牲者たちを連れ出した教室に入るように告げた。中からは怯える声と悲鳴が聞こえる。
「何をする気ですか!?」
すると、西住みほはニヤリと蔑んだような笑みを浮かべて再び私の頰を掴むと教室の方を向かせた。そして、アイコンタクトを取ると中にいた黒服集団は銃を構え一斉に射撃した。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!やめてええええええ!!」
私は絶叫する。しかし、そんな叫びが彼女たちに届くはずもなく、中の避難民たちは黒服集団に狙い撃ちされて悲鳴をあげながらバタバタと倒れていく。西住みほは愉しそうに笑っている。
「あははは!いい叫び声でしたよ。人の苦痛の叫びはいつ聞いても愉しいです。さあ、どうしますか?ここでこの娘一人だけの命を絶つか、それともこの子を救う代わりに大勢を死なせるのか。ふふふふふ……もっとも、結局誰かが死ぬことになることは変わらないけどね。ふふっふふふふ……」
私はしばらく俯いて動作することを忘れていた。西住みほは私の顔を覗き込む。しばらくして、私は西住みほから拳銃を受け取る。西住みほは嬉しそうに笑った。
「あ、そうだ。変な動き見せたらすぐ殺すからね?ふふふふ……」
私はそれに対して特に反応を示すことなくゆらりと立ち上がると拳銃を倒れている少女の右側に跪かされていた少女に拳銃を突きつける。
「嫌だ……死にたくない……やめてください……やめてください……お願いします……」
少女は命乞いをするが私は彼女の願いを聞いてあげることはできない。生きるという当たり前のことをさせてあげることさえできない。私は伏し目がちに顔を背けた。
「ごめん……ね……すぐに楽にしてあげるから……」
そう言って引き金を引く。私の白い肌に血糊と脳の一部と思われるものがべっとりと付着した。嗚咽の声が漏れる。それに対して西住みほはまた冷酷な目を私に向けた。
「立ってください。行きますよ?」
先ほどまでの悪い笑みとは打って変わって全くの無表情を見せていた。逆らったら何をされるか分からない。素直に従うしかなかった。私たちはまた小突き回されて連行され、玄関までやってきた。そこで西住みほは二人の隊員を選ぶ。
「私たちはまだやることがあります。あなたたち二人は落合さんを輸送機まで責任を持って連行してください。落合さん、他の娘たちとはここでお別れです。」
そう言うと、私たちは別れを惜しむ暇もなく別れさせられた。西住みほは河村さんたち他の職員側の方についていった。これが、私が河村さんたちを見た最後の瞬間になった。私はしばらくどこかに連行されていった河村さんたちが消えた方角を見ていたが二人の隊員に促されて歩き始める。
「許してくださいなんて言いません……でも、私たちも生きるためなんです……」
二人の隊員のうちの一人がポツリと呟く。
「え……?」
私が声がした方に顔を向けると目に大粒の涙を流しながら言った。
「私たちはもともと絶滅収容所の囚人たちなんです……この部隊に志願すれば命は助けてやるって言われてこんなことを……私たちは悪魔に魂を売ってしまったんです……私たちにやられたことをそのまま他の人にやるなんて……」
「そんなことが……」
私は突然のあまりにも残酷な告白に何を言えばいいのか分からなかった。私は気の利いたことも言えずに沈黙したまましばらく歩いていた。その時、またしても街に銃の音が最初に10回ほど、間隔をおいて2回、さらに間隔をおいて2回響いた。私はピクリと身体を震わせて立ち止まる。泣きそうな顔で隊員の顔を見ると彼女もまた泣きそうな顔でこちらを見ている。そして、首を横に振った。何が起きたのかは理解できた。恐らく、河村さんたちの命はあのいずれかの銃声で終わったのであろう。私はついに膝を落として泣き崩れた。隊員たちも同じように泣いた。1人の裸の少女と黒い服を着せられた2人の少女が瓦礫の街で抱き合いながら泣きわめくという異様な光景が広がっていた。しばらく時間が経った。こんなことをしていても状況はちっともよくはならないし、いつかはここを去らねばならない。私たちは再び立ち上がってオロオロと歩いていく。そして、輸送機が駐機している場所まで連れてこられた。そして、2人の隊員は輸送機に乗るように促すと何処かへいなくなった。代わりに輸送機の中には輸送機から大洗へ引き渡す担当官が待っていた。その担当官はここまで連れてきてくれた二人の黒服の隊員とは違って性格がかなりひねくれていた。
「ふんっ。哀れですね。そんな姿で街を歩かされて。」
彼女は私を侮辱するようなことを言って挑発してきた。もはや反応する気力もないので無視をしていたら、やにわに胸を掴まれ乱暴に揉みしだき甚振られる。私は唇を噛んで俯きながら痛みと恐怖を我慢していた。しかし、私の反応が薄いことに満足できなかったのか担当官は私の下腹部に手を伸ばして弄り始めた。流石にそれは耐えられない。私は顔をますます真っ赤にして俯きながら消えそうな声で拒否する。
「あっ……いやっ……!やめてください……」
私が真っ赤で弱々しく抗議する姿を見て彼女は嬉しそうに嗤うと下唇を舐り私の頰を手の甲で撫でながら言った。
「ふふふふ……可愛い……いじめたくなっちゃう……」
「嫌だ!嫌だああああ!やめてください!」
私は最後の抵抗とばかりに大声をあげた。すると、担当官は私に覆いかぶさり、片手で私の手を押さえて上に上げるともう片方の手で私の身体を弄り回しながら言った。
「せいぜいこの学園艦が滅びる様を指をくわえながら特等席で見ていてください。」
そう言って私を離すと担当官は、輸送機になぜか設置されていたモニターをつける。すると、そこには隊員たちがつけているらしいカメラから撮られたライブ映像が流れていた。その映像には音声まで入っている。どれも目に光を失った少女たちの姿と処刑される人々の姿が映っておりそして悲痛な叫び声と悲鳴が聞こえてきた。薄気味悪い笑い声と悲鳴が混ざり合う。狂気が学園艦を飲み込んだ。もう、私は彼女たちを助けることはできない。私は目を背けてただ九官鳥やオウム、あるいはものまねぬいぐるみのようにごめんなさいを繰り返していた。
つづく
優花里と直下さんの異名のうち
直下さんの「アンツィオの吸血鬼」と優花里の「アンツィオの微笑みの悪魔」はユーザー名 槙野知宏さんに考えていただきました。ありがとうございます。
次回の更新は3月17日の21:00に行います。
よろしくお願いします。