血塗られた戦車道   作:多治見国繁

13 / 150
今回は、30年後の麻子が当時を回想するという流れで書いています。


第8話 冷泉麻子の受難

冷泉麻子は祖母が残した家に住んでいた。麻子の祖母は10年ほど前に亡くなっている。麻子は家でフリージャーナリストから連絡を受け、電話を切ると忌々しい記憶を思い起こしていた。

そう。麻子もまたあの事件の関係者なのだ。

 

「またか、またあの事件を探ろうとする者がいるのか…もういい加減にしてほしい…あのことだけは、もう思い出したくもない…」

 

麻子にとってあの事件の記憶は人生で最大の汚点だ。

 

「あぁ、そうだ私の忌々しい記憶はあの日から始まっている。思えば、あのご飯会は仕組まれたものだったのかもしれないな…」

 

麻子は、優花里にさらわれ、あの廃ビルに連れていかれた日のことを思い出していた。

 

*******

 

あの日、麻子はみほの家で催されたご飯会の後、沙織と他愛もない話をしながら歩いていた。

 

「だからね。私はもっとモテてもいいと思うの。」

 

「今の沙織にモテる要素は見つからないな。」

 

「ちょっと麻子!?それどういう意味!?」

 

いつもの帰り道。早く帰って早く寝よう。そんなことを思いながら歩いていた。途中から沙織と別れ、薄暗い人通りの少ない道を少し行ったところだった。

突然、口と鼻を布のようなもので塞がれた。甘い匂いがする。麻子は何事かと必死に抵抗する。しかし、相手の力が強くて小柄な麻子には敵わない。徐々に意識が朦朧として、そのまま気を失った。

 

どのくらい時間が経ったのだろう。麻子は自身が手足を縛られて拘束されて寝かされていることに気がついた。

 

(なんで私はこんなところで寝ていて、なおかつ拘束されているんだ…?一体何が起こったんだ…??)

 

麻子は、まず状況を整理しようと試みた。確か、家に帰ろうとしているときに何者かに襲われ、意識を失って今拘束されて寝かされている。

 

(誘拐…されたのか…)

 

この危機的状況をどう切り抜けようか考えていると、聞き覚えのある可愛らしい声が聞こえてきた。

 

「麻子さん。気がついた?」

 

そこに立っていたのは、みほだった。周囲を見渡すと優花里もいた。優花里は何やら俯いている。

 

「西住さん。これは一体どういうことだ?なぜ私は縛られている?そして、なぜ西住さんと秋山さんがここにいる?」

 

「えへへ。なんでだと思う?」

 

みほは不敵な笑みを浮かべる。

 

「ま…さか…西住さんがこれを…」

 

頭の良い麻子のことだ。全てを察した。この誘拐の計画の要となった人物がみほだということも。

 

「そう。さすがは、麻子さん。頭の良い子は嫌いじゃないよ。私がこの計画を立案して、優花里さんに誘拐してもらったの。」

 

耳を疑った。みほがそんなことをやるはずがない。あのいつもは優しいみほがこんな犯罪に手を染めるなんて思ってもみなかった。

 

「何が…目的なんだ…?」

 

やっとの思いで声を出した。

 

「目的?それはね、麻子さんの頭脳。その頭脳が私たちには必要なの。優花里さん、どういうことか説明してあげてくれる?」

 

優花里は体をビクッとさせて、消え入りそうな声で説明を始めた。

 

「冷泉殿、私もこうして西住殿にここに連れてこられました。そして、私は西住殿の諜報員になったのです。それで、これからの諜報活動のためには私だけでなく、ブレインとなる人物が必要であろうということで、冷泉殿に白羽の矢が立ったわけです…」

 

麻子は、みほの思惑を探ろうとした。しかし、その思惑がわからない。

 

「優花里さんありがとう。それでね、麻子さんには諜報員として働いてほしいの。」

 

「ま、まて。まず、諜報員って一体なんの話だ?」

 

「ああ、ごめんね。説明忘れてた。諜報員っていうのは文字通りに捉えてくれれば良いよ。私の指令で、他校への偵察はもちろん目標の破壊や暗殺、そして誘拐。そのほか色々なことをやってもらうけど、麻子さんには特にその頭脳で毒薬の開発と作戦立案をしてもらいたいの。」

 

みほはドッキリか何かでこんなことをやっているのだろうか。そんな風に麻子は思っていた。

 

「じょ、冗談だよな?西住さん。」

 

「そう思う?」

 

みほはずっと笑っている。楽しそうに無邪気に子どものように。

 

「えへへ。本気だよ。嘘じゃないよ。麻子さん。引き受けてくれる?」

 

麻子は即答した。

 

「断る。なぜ、私がこんな仕事をやらなければならない。」

 

「いいの?引き受けてくれなきゃ麻子さん死ぬことになるよ?」

 

「ほう。私を殺すことができるのか?どうやって殺すんだ?」

 

麻子はこの時まだ、西住みほという人間を見くびっていた。こんな気弱な女の子に人を殺せるはずがないと。

みほは、ボールペンらしきものを取り出した。

 

「麻子さん。これね、すごいんだよ30秒で人を殺すことができる毒針が中に入っているんだよ。この毒針を刺せば30秒後には死ねるよ。」

 

「ふざけるな。そんなことで私が屈すると思ったのか。」

 

みほは、少し残念そうな顔をした。

 

「麻子さん…私を信じていないんだね…それもそうか、実際見てるわけじゃないし。でも、今麻子さんを殺すのももったいないし、どうしようかな。」

 

みほはそう呟くと、辺りを見回してみた。すると、どこから入ったのか猫が一匹部屋の中を歩いていた。みほは、その猫を捕まえると

 

「あっ、ちょうどいいところに猫さんが。ごめんね。猫さん。麻子さんのために生贄になってね。」

 

「その猫に何をする気だ…?」

 

「こうするんだよ。」

 

そういうと、みほは猫に躊躇なくボールペンを突き刺した。

猫はすぐに苦しそうにもがいて、泡を吹いて動かなくなった。

みほはその様子を楽しそうに眺めていた。

みほは、麻子の耳元で囁き、ニヤリと笑う。

 

「ほら、麻子さんが私を信じないせいで猫さんが犠牲になっちゃったよ?どう?信じてくれたかな?麻子さんもあの猫さんみたいになりたい?」

 

みほの顔は陰になって黒く見えた。まるで、闇に染まるように。

麻子は悟った。これは本物だ。本当の毒で、みほは誰でも躊躇なく殺せる。

麻子は、嗚咽と震えが止まらなくなった。

みほは、それを見ると悪魔となった。

トドメと言わんばかりに、囁く

 

「麻子さんの身内って、おばあちゃんだけだよね。おばあちゃんが苦しみながら死ぬ姿見たくないでしょ?私の言うことを聞いたほうが麻子さんのためだよ。」

 

なぜだ。この女はなぜそれを知っている。怖くなった。麻子はとうとう屈した。

 

「わかった…やる…」

 

みほは、麻子の答えを聞くと笑顔を見せた。

 

「ありがとう。麻子さん。でも、麻子さん一度私に逆らったよね?じゃあ、罰を受けてもらわないとね。」

 

そう言うと、みほは麻子の頬を愛おしそうに撫でた。

みほは、麻子の恐怖の表情を見るとさらに嬉しそうに呟いた。

 

「麻子さんの恐怖してる顔、可愛いなあ。」

 

みほは、麻子の服を胸より上までたくし上げた。そして、品定めをするように舐めるように麻子の身体を眺めた。そしてお腹を撫でながら

 

「えへへ。麻子さん。肌綺麗だね。真っ白。優花里さんとは違って胸は控え目だけど、その発展途上の小ささがまた可愛い。」

 

「な…やめてくれ…」

 

麻子は消えそうな声をやっと振り絞った。

その後、麻子はみほに身体中を弄られた。抵抗すれば殺されるかもしれない。そう思うと、抵抗できない。

みほは、服を脱がせてきた。そして、麻子は裸にされた。その後、そのままみほに身体中を舐められた。

 

「麻子さんの身体も甘くていい匂いだね。それにおいしい。もっと触っていたいな。」

 

「下半身はどうなってるのかな…?」

 

そういうと、みほは下半身を触ってきた。

 

「ふふ…可愛い。まだ、少しだけ成長が足りないかな。」

 

みほは、追い討ちをかけるように麻子の恥ずかしい動画を撮った。色々な角度から舐めるように。

そして、みほは麻子の耳元で囁く。

 

「麻子さん。もし、このことを一言でも他言したら、麻子さんのこと殺しちゃうし、この動画をインターネット上に名前と住所付きでばら撒くよ?あと、その手の業者に売っちゃおうかな。麻子さん背も低いしまだまだ発展途上の身体だから、特定の趣味をお持ちの方の人気者になれるかもね。」

 

麻子は泣いた。こんなに屈辱的なことはない。

 

「わ…かっ…た…」

 

みほは、その様子を見て満足気に笑った。その笑いは、悪魔以上のものだった。

麻子もまた、心も身体もみほのものになった。

しかし、麻子は完全に落ちたわけではない。心のどこかでこの屈辱は必ず晴らすことを誓っていた。

 

つづく

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。