そして、作品をまたいであるキャラが中の人繋がりでゲスト出演しています。その人はこれからも何かと頑張ってもらうことになるでしょう。クロスオーバーではなく、名前だけ借りる形です。
落合陽奈美は静かに語りかけるように自らの体験を語っていた。私は彼女の壮絶な体験に彼女の手を取り目を見つめて頷きながら聞いていた。彼女の手は震えていた。彼女は話の中で今でもあの時の色を喪った埃にまみれた街の光景や血と焦土の臭い、死んだ街の空気がありありと蘇ってくると言って、証言するのは本当に辛い、本当はもう思い出したくもないと何度も何度も涙を流した。でもこのことを伝えて後世に語り継がなくてはいけないからと自らに何度も言い聞かせるように言って私に伝えてくれていた。私もまた彼女の思いを受け取って涙をこぼしながら話を聞いていた。
「それで、私は大洗の学園艦に連れていかれたんです。」
落合陽奈美は酒の入ったグラス片手にどこか遠くを見つめていた。
「そんな……ひどい……ひどすぎる……」
私は気の利いたことなど言えずそんなことくらいしか言えなかった。ただ俯いて咽び泣くことしかできなかった。取材ノートが涙で滲む。すると、落合陽奈美は私を抱き寄せて背中を撫でてくれた。
「ごめんなさい……辛い話を聞かせてしまって……」
彼女は心配そうな顔をして私の顔を覗き込んでいる。そんな、こちらこそ辛い話をさせたのに彼女に謝らせてしまうなんて。私は慌てて涙を拭いて頭を下げた。
「いえ、私こそ辛く、思い出したくもないはずの話をさせてしまって申し訳ありません。」
すると落合陽奈美は目を閉じて胸の前で手を重ねる。
「あの日々を伝える。それが生き残ってしまった者の責任ですから。」
私は彼女の"生き残ってしまった"という言葉に衝撃を覚えた。彼女は他の大勢が亡くなり、自分が生き残ってしまったことに罪悪感を感じているのだ。なぜそのような心理になるのか、これはサバイバーズギルドやサバイバー症候群というらしい。これは広い意味でのある種のPTSDであるらしい。戦争や災害、事故、事件、虐待などに遭いながらも生き残った人が良く引き起こす症状だ。これによって助かった後に自ら命を絶ってしまう者もいるという。特に落合陽奈美は被害者であるが、その反面、それが刑罰執行と強制された場合であったとはいえ人を殺めた加害者でもある。だから、今ここで話を聞いている誰よりも"自分は生きてはいけない。自分こそ死ぬべき人間だった"と思っているのだろう。死ぬべき人間など重大な犯罪者でもない限り誰一人いないというのに。さて、いつまでも感傷に浸っているのも、忙しい日々の中で集まってもらった貴重な時間が勿体無いので、涙を拭いて次の話題で取材を続けることにした。私は彼女の話を聞いている間、取材ノートを見ながら秋山優花里が語ったことと付き合わせて聞いていたが、彼女の話と秋山優花里の話は合うところもあるが見解が異なっているところもある。証言なのだからそうなることは予想できたし指摘することは落合陽奈美を傷つける恐れもあるのでやめておいたが、検証する必要はあるだろう。他に何か彼女に聞くことはあるかと他のページをめくると冷泉麻子とカエサルこと鈴木貴子のエピソードが出てきた。彼女たちのことを尋ねようと口を開いた。
「大洗に連行された後はどうなったんですか?」
すると、彼女は自分の話ばかりになって他の人が話す時間が無くなるのは申し訳ないから詳しくはまた別の機会にするが、と前置きをした上で次のように話した。
「そうですね。輸送機の中で弄ばれながら連行されたら私は、大洗に到着しました。そこでまた別の黒い服を着た人物に引き渡されて、小突き回されながら私はある建物に連れていかれました。その建物がどんな建物なのかはわかりませんでしたが、何か特別な雰囲気を醸し出していました。普通の施設ではないことは明らかでした。そして、その建物で私は命の恩人に出会ったんです。冷泉麻子さんです。彼女がいなければ、今の私はいません。冷泉さんは私を人道的に扱ってくれました。あの時、白衣姿で表に立って私たちが来るのを待っていました。そして、私たちを見つけると私を連れてきた黒服の人と引き継ぎをしていました。私は冷泉さんの白衣姿に何をされるのかもわからず怯えて震えていました。冷泉さんは普通の隊員ではなく、それこそ幹部クラスであることは私を連れてきた黒服の人の態度で分かりましたから、彼女もまた西住みほたちのような残虐な思考をしているのではないかと。その時にはもう私は全裸である恥ずかしさなど忘れていましたし、もちろん死ぬ覚悟はとっくの昔にできていました。でも、やはり怖いものは怖い。冷泉さんの白衣を見て、私の頭の中に"人体実験"の4文字が浮かびました。こういう捕虜みたいになった時に白衣の人物が出てきたら何をされるのか、知識としては持っていましたから、どんな苦痛がこの先に待つのか、死よりも怖いものが待つのではないか、不安でどうにかなってしまいそうでした。でも、全然そんなことはありませんでした。冷然さんは私が全裸でやってきた光景を見てひどく狼狽えて冷泉さんは何にも悪くないのに何度も私に謝ってくれて服を着せてくれました。そして、私を抱きしめて、"辛かったな。もう大丈夫だ。君は私が何があっても絶対に守る"って言ってくれました。そして、その後すぐにドゥーチェと、たかちゃんにも会わせてくれました。本当に嬉しかった。冷泉さんがやったことは決して特別なことではない……誰にでもできることです……でも、こんな小さな優しさがこんなに尊いなんて……大洗の反乱軍幹部にも……あんな残虐な悪魔たちの中にも……こんな天使みたいな人が……残酷な戦争で忘れてしまった誰もが持っているはずの良心をしっかりと……いまだに保っている人が……ちゃんといるんだって……そう思いました。」
落合陽奈美は今度は微笑みながら嬉し泣きをしながら語った。そして、語り終わるとグラスに入った酒を全て一気に飲み干した。
「おお……良い飲みっぷりだね。」
その様子を見て、角谷杏は驚いて思わず呟いた。私にはその声が聞こえていたが、他の人は聞こえていなかったのか聞こえてないふりをしていたのか特に反応を示さなかった。1分ほどの沈黙の後、落合陽奈美は持っていた空のグラスをコンっと音を立てて置いた。
「私の話は一旦これで終わります。続きはまた、できたら当事者同士でお話しします。」
「貴重なお話ありがとうございました。また、お願いします。」
私が感謝の言葉を伝えると落合陽奈美はにこりと微笑んで軽く会釈をした。そして、私以外の3人の顔を見て尋ねる。
「いいえ。こちらこそ、聞いてくれてありがとうございます。それで次は、誰が話しますか?」
すると、角谷杏と小山柚子が手を挙げた。
「それじゃ、私たちが話すよ。カルパッチョちゃん。チョビ子。いいよね?」
「チョビ子じゃない!アンチョビ!まあ、今はそんなこといいか……ああ、いいぞ。話してくれ。」
安斎千代美は角谷杏の呼び方が気に入らなかったのか抗議する。角谷杏は面白そうに笑っていたが、急に真剣な顔つきになって私に尋ねる。
「えっと……山田さん。どこまで話してたっけ?」
私は取材ノートをめくって角谷杏と小山柚子の話がまとめられているページを見た。だが、そのページを見て私は戸惑った。一体どう言うことだろう。取材ノートにはアンツィオが物資を持って大洗にやってきたと書かれているのだ。アンツィオにはそんな余裕なかったはず。私は、何か聞き間違いをしたのだろうか。戸惑い気味に恐る恐る口を開く。
「あの……えっと……一応見つけたのですが……こちらの聞き間違いかもしれません……アンツィオのアンチョビさんが物資を持ってやってくるって言う連絡を受けたって取材ノートの最後に書いてあります。」
すると、戸惑う私をよそに皆、"ああ、あの時のことか。"と言わんばかりの顔をしていた。皆を代表して角谷杏が口を開く。
「山田さん。別に、間違ってなんかいないよ。それであってる。確かに、私たちのところには補給物資をもってアンツィオがやってきたんだ。チョビ子も一緒にね。その時、私たちは食料不足だったって話はしたよね?いつまで持つか懸念していたって。食料施設が全て西住ちゃんに奪われちゃったからね。チョビ子がやってきた時、私はこれでしばらく食料問題は大丈夫だって本当に安心したし嬉しかったんだ。でも、私の認識は甘かった。私は大局が見えてなかったんだ。その時にはもう、アンツィオは破滅していて、西住ちゃんの手に堕ちていたってことに。私も学園艦時代も含めて長い間、政治にたずさわってきたけど、あれは私の犯した失策の中でも最大の失策だよ。」
角谷杏は悔しそうに拳を握って小さな身体を震わせる。すると今度は安斎千代美が申し訳なさそうな面持ちで俯きながら口を開いた。
「あの時のことか……あの時、私は最初で最後に人を料理で傷つけた。それどころか、殺してしまったかもしれない。笑顔を届けて食べてくれる人を幸せにするはずの美味しい料理で許されないことをしてしまったんだ。」
小山柚子もまた怒りに震え、手に持ったグラスを今にも割りそうになりながら口を開く。
「私たちは西住さんに踊らされていたんです。」
角谷杏は30年前の記憶を蘇らせて震えていた。
「起こること全てが西住ちゃんの計画の中にあったんだよ。全ては西住ちゃんが書いた筋書き通りだったんだ。」
安斎千代美も関わった、角谷杏最大の失策、一体何が起こったのか。私は、角谷杏の目をまっすぐに見つめて尋ねた。
「一体何があったのですか?」
角谷杏は私から視線を少し外して静かに語り始めた。
*********
あの時、チョビ子たちアンツィオ高校がたくさんの物資を持って救援に来てくれるという情報をサンダースから得た時、私は喜びを爆発させた。軍事的な問題は解決ようやく私たちは救われる。そう感じたのは嘘ではない。耐え忍べば必ず光を掴める。そう思っていたことは間違ってはいなかった、嘘ではなかったと安心したものである。チョビ子はもう、アンツィオを発ったという。これで久しぶりにお腹一杯美味しくて暖かい食事を避難しているみんなや、兵隊としての役割を負って西住ちゃんの侵攻を水際で防ぎとめているみんな、そして西住ちゃんの支配地と生徒会が実効支配している地域の境界線であり、危険地帯である軍事境界線で西住ちゃんが率いる反乱軍の動向の監視を続けている生徒会の職員たちに食べさせてあげることができる。まるで、戦時中や戦後の混乱期、闇市などでやっとのことで手に入れた食料でとっておきのご馳走を夕食で家族に振る舞う母親のような気分だ。それがなんだか面白くて笑い声が溢れる。小山もそんな私の姿を見てにこにこ微笑んでいた。私たちは急いでチョビ子を乗せた航空機の受け入れのために滑走路代わりになるメイン道路に誘導灯などを設置するなどチョビ子たちの来訪を今か今かと楽しみに待っていた。すると通達から大体、1時間ほど経過したところで、轟音とともに1機の輸送機が着陸した。中立の立場を表明している学園の一つである、沖縄県を拠点としているブルースカイ高校の輸送機だ。やっと来た。私たちは急いで階段を駆け下りる。輸送機が止まると扉が開き、チョビ子と数人のアンツィオの生徒たちが降りてきた。私は急いで駆け寄って笑顔で出迎える。
「やあ!チョビ子!来てくれてありがとう!本当に助かったよ!」
チョビ子は私の顔を視認すると、とっさに視線を逸らした。私はその姿に違和感を感じた。いつもなら、「チョビ子って呼ぶな!アンチョビ!」とか言うなり、私の顔を見た瞬間に元気よく挨拶を返してくれるのに。今日は、何か元気がないように思えた。その表情の変化はきっとチョビ子からの最後のメッセージだったのだろうと今では思う。しかし、その時は上空から見える、ところどころ焼け野原になっている大洗学園艦の惨劇を見て心を痛めているのだろうとその意味を捉え間違えてしまった。というのも、チョビ子は着いた瞬間、私の小さな身体にガバッと抱きついて泣きながらこんなことを言ったのだ。
「おまえが、こんなに苦労して、こんな悲惨な戦いに身を投じてるなんて思わなかった。どうか、今まで気がつかなかった私を赦してほしい。私ができることは微力だが、何もしないよりはマシだ。傷ついた心を食事の力で癒してほしい。」
そんなことを言われたら、その言葉の裏にある声のないメッセージを見破ることは到底不可能だろう。私もその例に漏れなかった。私も精一杯の背伸びをしてチョビ子を抱きしめ返す。
「ありがとう。本当にありがとう。チョビ子は救世主だ……」
チョビ子の身体が震えているのを感じた。そうなるのも無理はない。その時は、あの光景を見たからだと思い込んでいた。チョビ子はしばらく私を抱きしめ続けたが、やがて、私から離れてふうっと一つ深く息を吐いてパシリと自分の頰を軽く張る。
「よし、それじゃあさっそく準備を開始するぞ。食材や器具を下ろすのだけ手伝ってくれ。あと、できたら食事の準備も手伝って欲しい。何だってこの人数だ。私たちだけでは流石に無理がある。」
「ああ、もちろん手伝うよ。」
私たちは生徒会の職員を中心にたくさん積まれた食材の山を降ろす。魚も肉も野菜もたっぷりあった。思わず涎が溢れてくる。皆の喜ぶ顔がまぶたに浮かんだ。チョビ子たちを運んできた輸送機から全ての荷物を降ろすと、次の輸送機がやってきた。その輸送機にも沢山の食料が積まれていた。それをまた、何往復もして降ろしてまた、輸送機がやってきてまた降ろしてを何回も何回も繰り返した。何せ、全生徒の3分の1は私たち生徒会のところにいるので、大量の食料がいるのだ。大量の食料が必要になるのも無理はない。ようやく、全ての食料を運び込むと、今度は巨大な調理器具を積んだ輸送機が何機もやってきた。それも、みんなと協力して何往復もして運動場に降ろしてようやく、みんなでワイワイと食事の準備を開始する。私が避難しているみんなにも協力してほしいと呼びかけたら、喜んで応じてくれた。結局、怪我人、病人、妊婦、老人など動けない人以外のほぼ全員が手伝ってくれた。巨大な鍋にペットボトルの水を何百本も入れて、火にかける。その姿はさながら炊き出しだった。その結果、あっという間に料理は出来上がった。食にうるさいアンツィオ監修の料理なので、海老のトマトクリームパスタとビステッカ、スズキのアクアパッツァ、生牛肉のカルパッチョ、イタリアンサラダ、ミネストローネといったイタリア料理中心の食事だった。皆、久しぶりの温かくて美味しい食事に目をキラキラ輝かせていた。皆、配膳場所にきっちりと並んで嬉しそうにその食事を受け取る。避難民と兵隊のうち、サンダースは自分たちは攻撃は受けていないので、帰還したら、温かい食事は嫌という程食べられるからと辞退したのでサンダース以外の兵隊、そして最前線で勤務する軍事境界線監視団の職員に配ったら私たち生徒会室で勤務している職員の分はほぼ残らなかった。しかし、それは承知の上だったのでどうだっていい。私たちはいつもの非常食で十分である。学園艦で上に立つ者は常にみんなのことを考えなくてはならない。それが、最善だ。ただ、少しだけミネストローネが余っていたので私たちはそれだけいただくとしよう。注がれたミネストローネは鮮やかなオレンジ色で具がたっぷり入っていた。一口分をスプーンですくうと野菜の甘みと旨みが口いっぱい広がる。最大級の悪意に触れて氷のように冷え切った私の心が徐々に溶かされていくようだった。美味しくて、本当に美味しくて、私は大粒の涙を流しながらミネストローネを次々と口へと運ぶ。他の皆も、同じような顔をしていた。ミネストローネはあっという間に皿からなくなった。避難民の嬉しそうな笑顔と、それに入り混じった涙をチョビ子は何とも言えない、複雑そうな顔をして眺めていた。食事が振舞われたあと、少ししてチョビ子が私のところにやってきた。
「私たちはそろそろ帰るよ。器具とかは全部置いていくから機会があったら使ってくれ。まだ、食料も数日分くらいは残ってるだろう。レシピも置いていくからまた、こういう機会を設けてやってくれ。きっと、勇気付けられる……はずだ……」
私たちは、チョビ子の随分早い帰還する旨の報告に珍しいなとは思ったが、よく考えるとこんな危険な、いつ西住ちゃんが攻めてくるかもわからないところにいつまでも引き止めておくわけにはいかない。私は改めて今日来てくれたことに感謝して、チョビ子を見送った。私たちの心はチョビ子という救世主に幸せ一杯だった。
しかし、それは突然打ち砕かれた。次の日の朝のことだったと思う。ぐっすりと気持ちよく眠っているところに突然叩き起こされた。
「なになに……?どったの……?」
眠い目をこすりながら起きると、そこには保健衛生を担当している職員が青い顔をして立っている。何か大変なことが起きたことは瞬時に理解した。
「会長……大変です……病人が出ました……」
私の脳裏にはある可能性が既に頭に浮かんでいた。それを確かめるために症状を尋ねる。
「え……?症状は?」
「腹痛と嘔吐と下痢です。」
これで全てが確定した。これは食中毒だ。考えられる要因は、間違いない。チョビ子たちが持ってきた食材が汚染されていたのだ。となると、かなり大勢の人間が感染及び発症している可能性が高い。
「これは……一体何が……」
私は目の前に広がる現実に理解が追いつかず、立ちすくんでしまった。すると、そこに私より少し背が高いくらいの一人の女医が近くを通りかかった。その女医は私の姿を視認すると半ば叫ぶような形で声をかけてきた。
「角谷杏生徒会長ですか!?」
「はい!そうです!あの、これは一体……!?」
私も同じように叫ぶように返事をする。すると、女医は一瞬ほっと胸をなでおろすような顔つきになるとすぐに真剣な表情に戻って言った。
「ちょうどよかった!今、電話を入れようと思っていました。私は、消化器内科部長の宮藤芳佳です。この惨状のことでちょうどお話があります。私についてきてください。」
私も顔を強張らせながら戦場のような院内を歩く。私は、会議室へと通された。宮藤医師は私が会議室の席に着いたことを確認すると、すぐに話し始めた。
「まず、何が起きているかだけを簡潔にお話しします。今朝から大勢の患者が激しい腹痛と嘔吐、水様性の下痢の症状を訴えています。患者の糞便を臨床検査部に回したところ、腸管出血性大腸菌O111、コレラ菌、赤痢菌が発見されました。患者の問診結果を総合的に判断した結果ですが、恐らく、生物であるカルパッチョかサラダが汚染されていたものと思われます。私たちの病院では、現状を鑑みこの学園艦は
「わかりました。薬などは足りますか?」
「今のところはなんとか……でも、この人数なのですぐに底をつくと思います。なんとかなりませんか?」
「わかりました。サンダースに掛け合ってみます。他に何か注意事項などありますか。」
「絶対に下痢止めを飲まないように伝えてください。下痢止めを飲まれると大変です。溶血性尿毒症症候群を発症する可能性があります。楽になりたい気持ちはわかりますが、死に至ることもあります。もし、下痢止めを飲んでしまうと、腸の運動が抑えられてヒ素の5000倍のベロ毒素を体外に排出できなくなってしまいます。もちろん、そうなった患者は最優先で診ますが、それが何百人となると厳しいです。だから、どうかお願いします。あと、O111は感染力がとても強いです。徹底した防疫もお願いします。吐瀉物の処置などは必ずマスクとビニール手袋を使ってください。」
だらだらと話している時間は全くないので、私たちは必要最低限の連絡事項を交換する。他に何かないかと聞かれたので今、校舎内に発症者が数百人規模でいるがどうすればいいか尋ねたら、すぐに連れてきてほしいと言われたので保健衛生担当の生徒会職員に完全防備をさせて連れて行ってもらった。これからも、さらに患者は増えることが予想される。私たち生徒会職員以外は皆、あの汚染されたカルパッチョかサラダを食べてしまったのだから。これからどうなってしまうのだろうか。どうか皆、軽症で済むように何かに祈っていた。あとは、宮藤医師をはじめとする内科医に任せるしかない。私にできることは校内の消毒や呼びかけくらいだ。だが、できることをやろう。まずは、対策にあたる組織が必要だ。私はその日のうちに、感染症防疫対策連絡委員会を設置した。そこには、専門家である宮藤医師と保健所職員、そして保健衛生担当生徒会職員そして私がメンバーとして参加した。私は各教室を周り、各人の命を守るために決して下痢止めを飲まないようにすることと、感染力が強いので素手で処理しないことを厳命するなどし、これ以上被害が増えないように措置をとった。そして、すぐに午後になった。バタバタと動き回っていたので時が経つのが早い。大体、午後の13時頃だった。生徒会室に緊急入電が入った。発信先は軍事境界線の監視団からだった。
『至急至急!至急至急!軍事境界線監視団から生徒会室!軍事境界線監視団から生徒会室!』
私は慌てて無線機を手に取った。小山も突然の入電に心配そうな顔をしている。
『はい、こちら生徒会室。どうぞ。』
『軍事境界線に、戦車部隊及び、歩兵部隊が集結しています!』
『数は?』
『わかりません……でも、歩兵部隊は1万は優にいます!戦車部隊も全戦力です!あ!大洗の戦車隊以外もいます!あ!超えた!超えました!軍事境界線を越えて侵攻!反乱軍侵攻!反乱軍の歩兵部隊が侵攻!戦車部隊の一両砲塔こちらに旋回……あっ!はっぽ………………』
通信は途切れた。無線機を持ったまま固まる。小山は泣きそうな顔をしている。西住ちゃんはまるで、この状況がわかっていたみたいだった。まさに絶妙なタイミングで侵攻を開始した。まさか、チョビ子は……西住ちゃんの手先……?いや、そんなバカな……そんなはずない……でも、完全な否定はできない。去り際に発した宮藤医師の一言、「食にうるさいアンツィオが食中毒を起こすなんて珍しいですね。なんだか奇妙です。」という言葉が頭の中に響く。いや、今はそんなことどうでもいい。来る。ついに来る。西住ちゃんが……いや、悪魔が迫ってくる。遠くから風に乗って戦車の主砲の発砲音が聞こえている。それはまるで、滅びの音楽のようだった。感染症の
つづく
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次回についてはまた、Twitterと活動報告でお知らせします