血塗られた戦車道   作:多治見国繁

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本日もよろしくお願いします。
突然、侵攻を開始した西住みほ。
角谷杏たち、生徒会は一体どうなる?


第124話 大洗女子学園艦市街地区の戦い

この学園艦に起こっている創設以来最大の危機を警告する不快な不協和音のサイレンが街中にけたたましく響き渡る。いつ聞いてもあの音は気持ち悪くて仕方がない。全くと言っていいほど慣れない。まあ、そんなものは慣れるほど聞きたくもなかったが、今回ばかりは耳にタコができるほど聞くことになりそうである。それもこれも、全ては侵攻した西住ちゃんたち反乱軍の所為だ。ぎゅっと拳に力を入れて、怒りを露わにする。だが、そんなことをやっている暇さえも私にはない。私は急いで放送室へと向かう。市街地へと帰還している者への避難命令と外出禁止命令を出すためだ。学園艦全てのスピーカーの電源を入れて呼びかけた。

 

『緊急!緊急!反乱軍が侵攻を開始しました!全市街地区にいる方は速やかに避難を命じます!また、避難者以外はこれ以降屋外へ出ることを禁じます!繰り返します!反乱軍が侵攻を開始しました!全市街地区にいる方は避難を命じます!また、これ以降避難者以外は屋外へ出ることを禁じます!』

 

私は放送を終えると生徒会室へと戻り、速やかに学園の地図と赤と青の駒を生徒会室の大きな机に並べて現状の確認を行う。監視団から決死の覚悟で伝達された最後の報告を地図上に落とした。軍事境界線を踏み越えて侵攻してきた西住ちゃんの反乱軍は、開戦当初は16000〜21000ほどだった。しかし、後になってわかったことだが、更に増えていたようで現在展開中の3万とも4万ともいわれる歩兵と30〜50輌の戦車そしてどこから持ってきたのかカノン砲600門〜800門、迫撃砲300門〜400門のほぼ全戦力をもって、私たちに襲いかかったとみられている。どうやら西住ちゃんはこれ以上戦争を長引かせたくはなかったようだ。長くて1週間、あわよくば今日中の決着を目論んでいたようである。総攻撃の様相を見せていた。午後13時頃に侵攻を開始した反乱軍は横、左舷側に500メートル、縦、船尾側に1キロメートルの森林地帯で軍事境界線監視団を殲滅しそのまま森林地帯を縦断、そのすぐ近くに広がる街区へと向かっているものと思われる。私は西住ちゃんの軍を示す赤色の駒を森林地帯に置いた。さて、ここから反乱軍がどのように動くかが問題だ。このまま、一方向から攻めてくるだけならまだマシだ。だが、これだけ横に広い森を大人数で抜けてくるのだから、わざわざご丁寧に一方向だけで攻めてくるとは考えにくい。恐らく反乱軍はいくつかの手勢に分けて攻めてくるだろう。一応、私たちも第1連合守備隊2000を森林前中街区、第2連合守備隊2000を森林前左舷街区、第3連合守備隊2000を森林前右舷側街区へ合わせて3部隊を司令部共に配置している。私は私たち生徒会側の軍を表す3つの青い駒を置いた。恐らく接敵までそんなに時間はかからないだろう。私は息を飲みながらそれを待っていることしかできなかった。しかし、なかなか接敵しない。おかしいと訝しんでいると突然複数の爆発音が響いて、グラグラと地面が揺れる。すると、第1連合守備隊、第2連合守備隊、第3連合守備隊からほぼ同時に交信が入った。13時30分頃のことだ。

 

『至急!至急!こちら、第1連合守備隊!砲撃です!砲撃を受けています!』

 

『第2連合守備隊!同じく砲撃を受けています!』

 

『第3連合守備隊!こちらもです!砲撃多数です!』

 

交信している途中も終わってからも絶え間無く砲撃は続いていた。私は青くなって、無線を握りしめたまま固まっている。何を言ったらいいかもわからない。私はチャンネルを全て開いて言った。

 

『みんな!生きて!生きて!お願いだから生き抜いて!ここで死のうなんて思わないで!何が何でも絶対に生きて!』

 

それだけを伝えると交信を終わる。しかし、相手からは返事はない。一体現場で何がおきているのか全くわからなかった。砲撃の最中、私には全員の無事を祈ることしかできなかった。しばらくすると、砲撃が一度止んだ。私は、無線を手に取り、隊員たちの無事を確認する。

 

『みんな!無事!?』

 

すると、無線の向こう側からは砂塵に咳き込み、息を切らしながら苦しそうな返答があった。いずれの部隊も重症者が多数出たとのことだった。混乱しているようであちこちから声が漏れている。3つの部隊にすぐに外科医を派遣することを伝えた。開戦に際して、怪我人が大量に出ることは十分に予想がついていた為、あらかじめ茨城県立病院大洗女子学園艦分院の外科医たちに協力を仰いでいた。もちろん、この協力医たちは最前線やその近くに設置される野戦病院で働くことになる為、危険を伴う仕事である。その為、志願制ではある。だが、20人が派遣を了承していた。直通電話で連絡するとすぐに向かうと言ってくれた。やがて、今回攻撃を受けた森林地帯近くの街区のすぐ後方の街区に野戦外科病院を設置したと連絡があった。私はそのことを無線で伝える。状況は最悪だが少しは良くなった。しかし、攻撃はそれだけで終わらない。次は砲撃よりももっと最悪なものがやってきたのである。絶え間なく鳴り響くサイレンの間に低い轟音が空気を震わせる。空を見上げるとそこには無数の爆撃機。超低空で飛んできた。そして、先程砲撃を受けた街区のあたりに到達すると、爆弾を次々と隙間なく投下していく。それだけではない。今度は小型の戦闘機が飛んできて、校舎のすぐ近くに設置してあった自走砲を爆弾と機銃掃射で破壊した。更に、シャーマンファイアフライも爆弾と機銃掃射で破壊され、使い物にならなくなってしまった。私たちは最後の切り札を早々に失ったのである。

そこからは早かった。以下、後の調査研究と私の体験、更にあの戦闘の当事者の中で生き残った者たちの証言をもとに戦闘の経過を話そうと思う。この話が明らかになったのはこの時からもっとずっと先のことだった。反乱軍は森林地帯の手前に配置されたカノン砲と迫撃砲、更に戦車と知波単の爆撃機、戦闘機で砲爆撃の無差別の猛攻を3時間に及んで繰り返し行い、徹底的に街を破壊した。第1・第2・第3のいずれの連合守備隊も多大な被害を受け、犠牲者を増やし続けた。そして16時30分頃、ついに反乱軍は市街へと侵攻した。それはとても言葉では言い表せないような4時間に及ぶ悲惨で壮絶な戦いだった。司令部に砲弾が直撃した第3連合守備隊は司令官を早々に失い、組織的な統率が取れなくなった。結果として早々に防衛線が崩壊し、部隊は散り散りになった。そして街の隅々まで反乱軍に浸透され、右舷の端まで追い詰められ、かなり早くに全滅したと言われている。第2連合守備隊も執拗な砲爆撃で多くの人命を失い、同じく第1戦線を突破された。その為、一度態勢を立て直そうと第二戦線まで後退し、苛烈な戦闘を繰り広げたが、戦車部隊の猛砲撃に敵うはずもなく、突破され止むを得ず更に後退、しかし、碁盤の目状に張り巡らせた道路から敵が深くまで浸透してくることを察知した第2連合守備隊は、この地で戦うのは不利であると判断し、街区を放棄、撤退を余儀なくされた。第1連合守備隊は砲爆撃をあらかじめ築いていた防空壕などで凌いだが、第2連合守備隊の撤退に加え第3連合守備隊も崩壊したことにより、正面の本来引き受ける敵だけでなく、右舷と左舷の敵を引き受けることになった。更に反乱軍の別働隊に更に後方へと回り込まれ第1連合守備隊は四方向から包囲された。しばらくは地の利を生かして抵抗を続けていたが、戦車部隊にじりじりと追い込まれ、同じく各戦線は崩壊、包囲されていた為、撤退は絶対的に不可能であることを悟った司令官は降伏を潔しとせず、最後の攻撃を行い全員で屍の砦になることを決意、正面の敵に対して斬り込み攻撃を行った。何とか一矢報いることはできたものの、彼女たちは機銃の雨の前に斃れ全滅した。反乱軍は、その日の20時30分頃までには完全に森林地帯前の3街区を占領を宣言し敗残兵の掃討を開始した。反乱軍は止まることなく更に前進した。第2連合守備隊は少ない兵力で野戦病院が設置されていた後方の街区に到着して、態勢を立て直し、野戦病院の前方の防衛線を防衛する任に着いたが、わずか600名ほどに減っていた第2連合守備隊が援軍なく守りきれるはずもなく、3時間に及ぶ砲爆撃と4万の兵力の前になすすべもなく殲滅された。結果としてこの決戦とも言うべく戦いではこちら側は5200人以上が戦死したと考えられている。反乱軍は次の街区でもまたその次の街区でも無差別の猛砲爆撃を繰り返して街区を完全に破壊した後に侵攻し掃討作戦を行った。この市街地への砲爆撃はそのあまりの苛烈さから"大洗の鉄の暴風"と言われている。この"鉄の暴風"と掃討作戦の結果、反乱軍が通った後には何も残らなかった。残ったものは瓦礫と焦土と人間と認識できないほどに損傷した遺体だけだった。

次に野戦病院についてだが、最前線より少し離れたとある学生寮に設置された第1外科野戦病院は砲撃後に約700名ほどの兵隊が収容された。しかし、病院と名が付いているが満足な設備もなければ、包帯や薬も全く足りないという絶望的な状況の中で、外科医たちは懸命な治療を行っていた。しかし、すぐに何もかもが底をつき、励ますことしかできず、専門職業人として知識も十分あるのにも関わらず、何も治療を施すことができないという屈辱を味わった者も多かったという。野戦病院の悲劇はこれだけでは終わらない。反乱軍は前方の3つの街区の占領を完了すると後方の野戦病院が設置された街区まで侵攻し野戦病院を襲撃したのだ。野戦病院へ突入した反乱軍は医療従事者以外の傷病兵のうち動けない者をその場で殺害した。生きたままガソリンをかけられて焼かれた者も数多いという。火だるまになり、苦しみ悶えながら死んでいった。野戦病院に勤務していた医療従事者はその後の利用価値などの観点から命は助けられ捕虜になった。

この一連の戦闘では市民が巻き込まれなかったことが、不幸中の幸いと言えよう。しかしながら、市民に確実に悪影響を与えていたことは言うまでもないことで戦闘の最中、教室のあちこちから砲爆撃があり、悪魔が奏でる死への音楽と揺れが襲うたびに避難民たちの悲鳴が聞こえていた。無理もないことだ。かく言う私も怖くて怖くて仕方がない。いつ砲弾や爆弾がこの校舎に直撃するかさえもわからない。そして、何の障害もなくなった反乱軍は留まるところを知らなかった。合流した反乱軍は私たちがいる校舎のわずか300メートルの距離まで侵攻してきた。砲撃も校舎のすぐ近くに着弾するようになった。時刻は午前2時頃、反撃する戦力もなく、もはや、これまでと私は降伏を決断しようとしていた。この短い間に、一体何人の人たちが命を落としたのだろうか。これは全て私の責任である。私が西住ちゃんの本性を見誤り、彼女に軍事力である戦車を与えてしまった。すなわち、この戦争は私がそのきっかけをつくったようなものだ。ならば、私はこの戦争を終わらせる義務がある。

これ以上、人々に苦難を強いることはできない。私一人の命で終わるならば、喜んでこの命を捧げよう。私は遂に決断して、小山に言った。

 

「小山。私、決めたよ。私はこれ以上の犠牲は望まない。降伏しようと思う。今、生きている全ての生徒会職員をここに集めてくれないか?」

 

小山をうつむき気味で悔しそうに唇を噛んでいたが、私の意思が変わらないことを悟ると頷いて、皆を集める。皆はすぐに集まってくれた。いつになく、真剣な表情の私に皆、顔を強張らせていた。私は、全員が集合したことを確認すると息を深く吸って唇を動かす。

 

「みんな、これからとても大事な話をする。どうか、心して聞いてほしい。まず、みんなにはお礼を言いたい。今日までよく戦い、生徒の為に働き、私に仕えてくれた。本当にありがとう。感謝するよ。みんなは私の誇りだ。だけど、もはやこれまでだ。反乱軍の重火力を主とする攻撃は苛烈を極め、街はあのような灰燼に帰してしまった。反乱軍は更に前進し、遂にはあんなにも近くまで迫っており、いずれここが包囲されるのも時間の問題だろう。私はこれ以上の犠牲は望まない。だから、反乱軍に全面的に降伏をしようと思う。だから、これからしばらく後に反乱軍の司令官西住みほ隊長のもとへと出向く。もしかしたら、その場で私は殺されるかもしれないし、何が起きるかも全くわからない。だから、この大洗女子学園高等学校生徒会は今日、解散することにする。みんなは、これからは自由に行動してもらっても構わない。今後はこちらから特に何か命令をすることは一切ない。各々が自由裁量で行動してくれ。ただ、皆に一つだけ言いたいことがある。生きろ。どうか生きて生きて生きぬいてくれ。命より大切なものはこの世にない。だからどうか死に急ぐことだけはしないで。生に貪欲であってほしい。常に生きることのみ考えて。そして、生きぬいて、この悲劇を大洗女子学園の最期を次の世代の人たちに伝えてほしい。私からは以上だ。それでは、大洗女子学園高校の校歌を歌って笑顔で解散しよう。」

 

皆、私の突然の宣言に戸惑っていた。中には、「まだ戦えます」と言って徹底抗戦を主張する者もいたが、現実を見るように説得したら、泣きじゃくりながらも納得してくれた。そして、校歌を歌って私たち生徒会は本当に解散した。とはいえ皆、他に何をやればいいのかもわからず、結局いつもの持ち場に戻っていった。私は、しばらく生徒会役員室の会長の椅子に座ってゆらゆらと揺らしていたが、すぐに反乱軍総司令官西住みほ宛の親書の作成を始めた。親書の内容はいたってシンプルなものだった。内容は次の通りである。

 

1.この責任は生徒会長である角谷杏一人が負うものである

2.市民及び傷病者の安全の確保とその保障を求める

 

この二つを親書にしたためて私は西住ちゃんの元に赴こうと席を立った。すると、近くに控えていた小山が声をかける。

 

「本当にそれでいいんですね?」

 

私はコクリと首を縦に振る。私の意思は固かった。

 

「うん。もちろんだ。迷いはないよ。こんな戦争、もう終わらせなくちゃ。その為には私が責任を取らなくちゃいけないんだ。ここで逃げちゃ絶対にダメだ。だから、頼むよ。西住ちゃんのところに行かせてくれ。」

 

すると、小山は私の固い意思を聞いて納得してくれた。それどころか驚きのことを口にした。

 

「わかりました。私も一緒に行きます。私と会長は常に一緒ですから。」

 

私は嬉しくて再び涙が出てきた。私は白い布を生徒会室から見つけてそれを左手に持って小山と右手を繋いで生徒会室を出た。時刻は午前3時だった。階段を一歩一歩踏みしめて歩いていく。もしかして、これでこの階段を降りるのはこれで最後かもしれない。もしかして、これで死ぬのかもしれない。私の心臓ははちきれそうだった。外に出ると星空が綺麗に見えた。洋上で明かりが少ないからだろう。この綺麗な星空の下で死んでいくと思うと私の心は幾分楽になったていくように感じた。

 

「綺麗だね。」

 

私は思わず小山に声をかけた。すると、小山も目をキラキラさせながら頷く。

 

「はい。とっても綺麗です。こんなに綺麗なものを見たのは久しぶりですよ。」

 

小山と私はしばらく星空を見上げて一緒に星を見ていた。私たちは今まで苦しくて汚いものばかり見てきたので心が洗われるようだった。小山は私の手をギュッと握った。小山は心なしか震えているように感じた。無理もない。今から自分の命が終わるかもしれないのだ。私は心配になって小山の顔を覗き込みながらいった。

 

「小山、大丈夫?」

 

「実を言うと少し怖いです。」

 

「そうだよね。私も怖いよ。もし、無理そうなら戻ってもいいからね?」

 

すると、小山はぶんぶんと首を横に振った。

 

「いいえ、絶対に会長と一緒に行きます。」

 

「わかった。それじゃあ行こう。」

 

私は再び小山と一緒に歩調を合わせて歩き始めた。しばらく歩くと反乱軍の歩兵部隊が見えてきた。こちらに向かってなおも前進している。彼女たちは私たちの姿を認めると銃口をこちらに向ける。異様にピリピリとして臨戦態勢だった。私は大きく白い布を振りながら、大きく息を吸い込んで叫ぶ。

 

「生徒会長の角谷杏だ!私は大洗女子学園の代表として反乱軍に降伏する!繰り返す!私たちは降伏する!親書を持ってきた!西住ちゃんと面会したい!会わせてくれ!」

 

すると、西住ちゃんはすぐに出てきた。軍服姿の西住ちゃんはまるで全ての闇をまとっているように見えた。西住ちゃんは銃を下ろすように指示すると数人の兵隊たちと共にツカツカと私たちの正面まで歩いてやってきた。そして、私が何も武装していないことを確認すると私の生気を失ったような顔を眺めてふふふと声を上げて笑いながら言った。

 

「ふふふふ。お久しぶりですね。角谷杏生徒会会長、小山柚子生徒会副会長」

 

「ああ……久しぶりだね。西住ちゃん。親書だ。受け取ってほしい。」

 

私はなるべく余裕をかましたような態度で西住ちゃんと対峙して、親書を手渡した。小山を西住ちゃんを睨むと何も言わずにそっぽを向いていた。西住ちゃんは親書を読むとにっこりと笑みを浮かべた。

 

「ふふふふ。あっさりとした親書ですね。良いでしょう。了承しました。私、小山先輩には随分と嫌われちゃってるみたいですね。まあ、当然ですよね。こんなことやっちゃったら。」

 

小山は怒りを露わにして地を這うような低い声で言った。

 

「あんなことやって……許せるわけないでしょ……?」

 

すると、露骨に表された小山の怒りに対して西住ちゃんはニヤリと悪い笑みを浮かべると私たちの挑発を始めた。

 

「今日の殲滅ショー、特等席でご覧になってていかがでしたか?私たちの猛攻をあんなに少ない人数で防衛しようだなんて愚かですね。あんなことしても意味がない。ただ皆殺しになるだけなのに。あ、当然みんな実際に皆殺しにしてあげましたよ。街はひどい状態だったなあ……手足がちぎれて呻く兵隊。腹わたが飛び出て引きずりながら敗走してく兵隊。あ、そうそう。野戦病院では生きたままガソリンかけて火をつけてやりましたよ。火だるまになって苦しみ暴れながら死んでく様は見ものでしたよ!あっはははは!」

 

私は愕然とした。人間という生き物はここまで残酷になれるものなのであろうか。西住ちゃんはその行為もさることながらそれを悪びれることもなく、死んでいった者たちへの侮辱を繰り返す。私は思わず西住ちゃんを睨みつけて声を荒げる。

 

「私のことはいくら侮辱しても構わない。でも死んでいった子たちのことは侮辱しないで!」

 

西住ちゃんは私の抗議に対して鳩尾のあたりを殴りつけてきた。私は大きく咳き込み倒れこむ。小山は私を介抱しようと慌てて屈み込み、私の背中に手を置いた。そして、西住ちゃんの顔をキッと睨みつけて叫んだ。

 

「乱暴するのはやめなさい!」

 

すると、西住ちゃんは深く息を吐き、近くに控えていた兵隊たちに指示を出した。兵隊たちは小山の両脇を掴んでどこかに連れて行こうとした。小山は抵抗したが殴りつけられて制された。そして、小山は近くの電柱に縛り付けられて口も塞がれた。西住ちゃんは蔑むような目でふふふふと嘲笑う。

 

「ふふふふ。小山先輩、しばらく会長のストリップショーを大人しくそこで見物していてください。」

 

西住ちゃんは、膝をついて咳き込む私のツインテールの髪を乱暴に掴んで持ち上げて立たせる。

 

「痛い!痛いよ!やめて!」

 

 

西住ちゃんは一体何をするつもりなのか"ストリップショー"という言葉のニュアンスに明らかな危ないものを感じ取る。

 

「じっとしててくださいね。」

 

西住ちゃんはそう言うとクスクスと面白そうに笑いながら私の手首に手錠をかけて腕を肩より上に上げさせて、手錠に付けられた鎖を戦車の砲塔に括り付け、丁度吊られるような形にさせられた。

 

「止めて!止めてよ!」

 

私は当然、抵抗して脚をバタバタと動かして西住ちゃんを蹴とばそうとしたが西住ちゃんはまた、私の鳩尾辺りを殴りつける。

 

「ふふふふ。自分の立場、理解してますか?次抵抗したら、あそこにいる小山先輩の命はありません。」

 

私は抵抗をやめた。手首に食い込む手錠の痛みを唇を噛みながら耐え忍ぶ。西住ちゃんは痛みの苦しみに喘ぐ私の頰を片手で顎の下から手荒く掴む。そして、闇を孕んだ瞳で私を覗き込みながら愛おしそうに耳元で言った。

 

「ふふふふ……やっと……やっと……捕まえた……私だけの可愛い可愛いおもちゃ……沢山遊んであげますね……?」

 

私はこれから受けるであろう苦しみと屈辱に震えていたが、勇気を振り絞って西住ちゃんに尋ねる。

 

「私をどうするつもり……?」

 

すると、西住ちゃんは私の身体をあちこち撫でながら耳元で囁く。

 

「さあ?ここからどうしてやりましょうか?どうしてほしいですか?」

 

西住ちゃんは無邪気に笑いながら私の身体を弄った。私を辱めるためなのか、わざわざスカートをめくって下着を晒したり、私の高校生にしては貧相すぎる胸に触れたり、下着の中に手を入れて下腹部に触れたりしてきた。しかし、それだけでは終わらない。西住ちゃんは思い出したかのように言った。

 

「あ、そうか!ストリップショー!ストリップショーをやる予定でしたよね?だったら、服は邪魔ですよね?私が脱がせるの手伝ってあげますね。ふふふふふ。」

 

そう言うと西住ちゃんは腰に刺していたサーベルを抜く。そして、私の制服のリボンをはらりと取ると胸当ての部分から入れる。殺される!そう思った。肌にひんやりとして硬い金属のサーベルの感触を感じる。刃をセーラー服の方向に向けると思い切りサーベルを手前に引いた。ビリビリと鈍い音がして一気に縦の破れがセーラー服に走る。西住ちゃんはクスクスと笑うと人差し指を一本立てて露わになった私の腹部の肌に触れる。そして手のひらで私の素肌の感触をたっぷりと楽しむともう片方の手も私の腹部に触れてそのまま腕を通り、肩に到達し破れて観音開きのようになってしまったセーラー服を脱がせて、スカートもおろした。西住ちゃんは下着だけ身につけて吊られている私を眺めた。

 

「うわあ!綺麗な身体!さあ、会長……楽しみましょう……?ね……?」

 

西住ちゃんは嬉しそうに感嘆の声をあげると私を抱きしめて手のひらと身体全体で私の素肌の感触を楽しんでいた。

 

「うぅ……私の身体なんか触って楽しいの……?」

 

私は西住ちゃんに問う。しかし、その弱々しい姿を西住ちゃんに見せてしまったことは失敗だった。西住ちゃんは嗜虐心を煽られて後ろから抱きしめて身体を弄りながら耳元で囁く。

 

「はい。とっても……会長の綺麗な身体に触れることができてとっても楽しいですよ。まあ、胸がないのが残念ですけどね。」

 

西住ちゃんは私の同年代よりも小さな胸を掴みながら言った。私はあまり触れて欲しくないことに触れられたので少し声に怒りを込める。

 

「う、うるさい!」

 

西住ちゃんは私の怒りに特に反応は示さなかったが、私の小さな耳に指を這わせると抱きしめながら再び囁く。

 

「さあ、最後の仕上げ、クライマックスです。最後は下着も脱がせますね。あ、抵抗しないでくださいね。抵抗したらあそこの小山先輩が……わかりますよね?」

 

私はコクリと頷くと真っ赤な顔をして俯く。西住ちゃんはふふふと怪しく笑うとまずはブラジャーに手をかけた。片腕を私の首に絡ませながら耳を口に含み、もう片方の手でブラジャーのホックを外した。そしてそのままスルスルと胸から腹を降りていき、ショーツに手をかけるとそのままずり下ろされて私は全裸にさせられた。西住ちゃんは再び私の全裸姿を眺める。

 

「止めろお……!見るな……!見るなぁ……!」

 

私は弱々しく抗議すると、西住ちゃんは再び私の身体にくっつき素肌の感触をしばらく楽しんだ。そして髪を撫でながら唇を塞がれて貪られる。西住ちゃんは、顔をまるでゆでだこのように耳まで真っ赤に染めながら俯く私の顔を覗き込みながら言った。

 

「ふふふふ。ああ……はははは……会長。とっても……最高に可愛いですよ。最高のストリップショーです。ねえ、会長。今、どんな気持ちですか?徹底的に蹂躙されて……大切なもの全て奪われて……そして今、私の前で裸にさせられて晒される……ふふふ……憐れですね。でも、まさかこれだけで終わりだなんて思ってませんよね?これだけじゃ終わりませんよ?会長は私の奴隷になるんです。会長にはこれからもその小さくて柔らかな身体を私に差し出し続けてもらいます。たくさんいじめてあげます。良い声でたくさん鳴いてください。ふふふふ。」

 

「許さない……私は……私は絶対に負けないよ……!絶対に負けない……負けてたまるもんか……!」

 

私は睨みつけながら言う。それを聞いて西住ちゃんは鼻で笑いながら言った。

 

「ふふふふ。ああ……あははは……良いですね。その顔……その目……強がって、本当は折れそうなのに必死で心の均衡を保とうとしてる……でも私、そんな風に必死な人を見るともっといけないことをして心を折りたくなるんです。ああ……会長の心を折ってやりたい……一体その会長の強がりがいつまで持つのかな?あ、でも、完全に心を折って壊しちゃうと楽しくなさそうだなあ……ギリギリ折れないようにしっかり考えていじめてあげなくちゃ……」

 

西住ちゃんはもう一度背後から私の身体を抱きしめて身体中を一通り撫で回すと、口付けをした。

後に聞いたことだが、西住ちゃんはいつでもどこでも女の子に対してこんなことをやっていたらしい。私にしたことは捕虜に対する西住ちゃんの常套手段だったわけだ。この辱めを受けさせる意味は二つあると言われている。まず、一つ目は、辱めを受けさせることによってその人だけでなく他の人にも抵抗する意欲を失わせることだ。共同体の中のうち一人でも辱めを受けさせると、その人を守ることができなかったと周りの抵抗意欲を削ぐことができるらしいのだ。そして、もう一つが奴隷としての品定めである。私たち捕虜がたどる道の一つに奴隷というものがある。その中でも西住ちゃんが関心を抱いた者の中で琴線に触れる者を見つける奴隷市場の役目も果たしていたらしいが、それを知るのはまだまだ先のことだ。

さて、その後西住ちゃんは私を砲塔に吊るしたまま戦車に乗り込み、再び前進を始めた。西住ちゃんは、その日のうちに校舎の中に乗り込み生徒会室へ入った。私も西住ちゃんに抱きかかえられながら、連れていかれて生徒会役員室に監禁された。大洗女子学園は悪魔の手の中に完全に堕ちたのである。この日以降、西住ちゃんの支配する学園艦という本当に恐ろしい地獄のような暗黒の日々が始まるのである。

 

つづく


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