血塗られた戦車道   作:多治見国繁

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お待たせしまし!復帰後初にて今年最後の投稿です!
今回はエルヴィンたちのお話です!


第137話 接触

今度はまたカエサルと行動を共にしていた私たちの動きについて話そうと思う。

その知らせがもたらされたのは突然だった。その日も、朝早くからカエサルは落合さんの世話をするために出かけていった。私たちはその背中を見送る。久しぶりにカエサルに笑顔が戻ったような気がしていた。しかし、その日はいつもと違っていた。それは突然だった。確か昼過ぎだったように思う。私たちの寮の横開きの扉ががらりと勢いよく開いた。私たちは驚いて何事かと玄関まで行くとそこにはカエサルがいた。

 

「どうした?カエサル。忘れ物か?」

 

私が尋ねるとカエサルは力なく首を横に振った。カエサルは青い顔をして俯いている。ただならぬ雰囲気だった。おりょうが口を開く。

 

「何があったぜよ……?」

 

カエサルはしばらく黙ってただ俯いているだけだったが、ポツリポツリと話し始めた。

 

「やられた……」

 

「やられた……?」

 

「ひなちゃんが……虐待された……西住隊長に……!性的な虐待……いや、あれはもう強姦といってもいい……!ひなちゃんは西住隊長に身体を……全身を……触られたらしい……!それだけじゃない……裸に剥かれて……辱めを受けた……!大切な場所に指を入れられて初めてをぐちゃぐちゃにされて全て奪い尽くされて陵辱された……!なんてことだ!私は許せない!こんなこと、許されていいはずがない!絶対に!絶対に許さない!殺してやる!絶対に殺してやる!今すぐに!」

 

カエサルは怒りで冷静さを失っていた。今にも単身でも飛び出して西住隊長を討ちにいこうというような勢いだ。私たちは必死にそれを止める。

 

「お、落ち着け!」

 

しかし、カエサルは聞く耳を持たない。カエサルは暴れに暴れまくった。手足を動かして殴る蹴るのオンパレードだ。人間本当に怒ると味方にも容赦ないらしい。私たちの体はあっという間に青痣だらけになった。

カエサルの怒りはよくわかる。西住隊長のやったことは女同士であるとはいえ一線をとうに超えた強姦であり、断罪され裁かれるべき犯罪だ。そのようなこと、同じ女として、人間として許すわけにはいかない。いずれは西住隊長を裁きの元に引きずり出さねばならない。

しかし、単身で怒りに任せてこのまま西住隊長を討ちに行ったらどうなるだろう。そのオチは捕らえられ、残虐な方法で処刑されるだけだろう。処刑された後、遺体も侮辱されるかもしれない。それは、西住隊長が一番望んでいることだ。彼女は人を殺すこと、とりわけ残虐な方法で殺戮することを何よりも愛している。策なき突撃はそのような悪魔に格好の獲物を与えることになりかねない。それは何としても避けるべきことだ。ましてや、我を忘れた挙句に取る手段ではない。それは、他にやりようがなく、最後の最後に取るべき方法だから、今やるべきことではない。

では、どうすれば良いのか。敵の女悪魔は強大だ。彼女に立ち向かうには力では勝てない。数百倍の兵隊たちによって鎮圧されるだけである。やはり頭脳しかないのだ。知恵と知識で戦略を練り、彼女を超える他ないのである。

その為に、まず最初に私たちが、やること、それはこれ以上、落合さんを苦しめることがないように軍事境界線の向こう側に逃がすことだった。しかし、カエサルは変わらず完全に何も見えていないようで暴れ続ける。

 

「離せ!離せ!行かせろ!行かせて!」

 

暴れるたびに羽交い締めにしていたカエサルの身体がだんだんと私の手から離れてきた。このままでは、カエサルに振りほどかれてしまう。そのまま飛び出されては大変だ。腹ばいにして抑えるしかない。私はおりょうと左衛門佐に叫んだ。

 

「まずい!カエサルを抑えるぞ!」

 

すると、カエサルは潰されながらさらに大声で叫んだ。

 

「やめろ!行かせろ!殺さなきゃ気が済まない!死んでもいい!あの女悪魔め!」

 

「死んでもいい」このカエサルの言葉に私の中で何かが弾けた。私はその言葉に怒りを覚えた。許せなかった。気がついたら私は手を振るわせながら風切り音を上げながら思いっきりぶん殴っていた。今まで暴れていたカエサルが嘘のように静まった。左衛門佐やおりょうも驚いてただ口をポカンと開けて目を丸くして固まっている。ただただ、静寂が支配した。そして、私はカエサルの首根っこを掴んでもう一度頰を思い切りぶん殴ってやった。私の手のひらもジーンとした痛みが伝わってくる。カエサルの頬もまた赤く染まっていた。私はカエサルの頬を両手で挟んで泣きながら心の底から叫ぶ。

 

「バカ!死んでもいいだと?なんてこと言うんだ!?それを落合さんの前でも言えるのか!?それを今までの戦闘や虐殺で死んでいった人たちの前で言えるのか!?ふざけたこと言ってるんじゃない!いい加減にしろ!いいか、カエサル!落ち着け!そして、私の話をよく聞いてくれ……頼むよ……」

 

カエサルはなんとか落ち着きを取り戻してくれた。そして、がっくりとうなだれて泣きながら謝る。

 

「ごめん。私、どうかしてたよ……」

 

私は一二度深呼吸して心を落ち着けて頷くと今度はカエサルの両肩に手を置いて再び口を開く。

 

「いいか、カエサル。カエサルの怒りはよくわかる。今回のことは私も怒りしかない。このような卑劣な犯罪行為は女として、いや人として絶対に許してはならない。尊厳をめちゃくちゃに傷つける行為だ。いつか、西住隊長には裁きのもとに引きずり出して裁きを受けさせなくてはならない。しかし、今は無理だ。敵は連合国軍のように強大だ。私たちには力がないから容易には勝てない。良いか。だから知恵を使うんだ。私たちがやるべきことは何かを考えるんだ。今は復讐をするときじゃない。まずは、落合さんを保護し、この世の地獄から救い出すことだ。全ての大切なものを失っても、陵辱されても、明日は来る。未来はある。もし、単身突っ込んでカエサルが死んだら、落合さんはどうなる?今度こそ、闇に悪魔に囚われたままだ。それどころか、今度こそきっと心が壊れてしまう。しかも、カエサルが死んだ理由が自分が原因と知ったら落合さんはどうすると思う?きっと落合さんは命を絶ってしまうだろう。いいかカエサル。カエサルは落合さんの一筋の光だ。小さくとも強い希望の光だ。地獄の中の道しるべだ。未来そのものだ。カエサル、その光を自ら消そうとするな。照らし続けろ。カエサルの力で落合さんをこの闇の地獄から、悪魔の支配下から救い出し、眩しい光の下に連れ出すんだ。そして、幸せな未来をもう一度歩んでもらうんだ。カエサルと一緒にな。それが、親友として今、カエサルがやるべきことだ。義務だ。決して単身突っ込んで死ぬことじゃない。」

 

カエサルは泣きじゃくりながら何度も頷いていた。カエサルを落ち着かせて、道を示した私は早速動き始めることにした。まずやるべきことは2つだ。1つは情報収集、そして2つ目はパルチザンとの接触である。私は、早速1つ目の情報収集の為に冷泉さんのもとへと向かった。カエサルの話を疑うわけではないものの、興奮してる分、話をもっている可能性は否めない。これが、本当に急ぐ必要があるのか、それとももう少し余裕があるのか慎重に見定める必要があったからだ。

冷泉さんの研究室を訪ねる。ノックするが反応がない。鍵は開いていた。扉をそっと開けてみると中で冷泉さんが机に突っ伏して眠っていた。かなり深い眠りだったようで体を揺すってもなかなか起きない。何度か強く揺すると眠そうに目をこすりながらようやく起きてくれた。

 

「気持ちよさそうに寝ているときにすまない。」

 

冷泉さんは不機嫌そうに顔を上げて私を睨んだ。

 

「すまないと思うのなら起こさないでくれ……今日は朝早くから西住隊長に付き合わされてものすごく眠いんだ……」

 

冷泉さんはそう言うとすぐに机にもう一度伏せた。私は冷泉さんの真後ろから近づいて耳元で囁く。

 

「すまない……例のことで話があるんだ。」

 

すると冷泉さんは顔を上げて、背筋を伸ばした。そして、私の目をじっと見つめると口を開く。

 

「カエサルさんから話は聞いたか……?」

 

「ああ……聞いた……落合さんが酷い目にあったって……」

 

「そうか……聞いたか……かなり酷い目にあったようだ……さっき、私も医務担当として診たが、驚いたよ……相当酷かった……下腹部も肛門も傷だらけだったし、体には噛まれた歯型が無数にあった……それだけじゃない。首輪をされていたんだ。実際に彼女から話も聞いたが、それはそれはおぞましいものだったよ……今度は何されるか分かったものではない……西住隊長は落合さんを人間として扱っていないぞ……玩具だと思っている。私もここまで酷いとは正直思っていなかったよ……急げ……とにかく急げ……」

 

私は息を飲んだ。今まで、最前線で西住隊長を見てきた冷泉さんがここまで言うのだ。そこまで酷いとは思っても見なかった。もちろん、カエサルを信じなかったわけではない。

ただ、ここまでの酷さであったとは思えなかったのだ。少なくとも女同士だから少しはマイルドなものであると思っていた。しかし、現実は厳しいものだった。

 

「わかった……」

 

私は震えながらコクリと頷いた。冷泉さんはさらに続ける。

 

「それともう一つ、報告しておくことがある……今日、戦闘訓練があったんだ……私のための戦闘訓練だ……生身の人間を使った戦闘訓練をさせられた……知波単では精鋭部隊が厳しい訓練に励んでると聞くし、この大洗からもかなりの人数が行って戦場さながらの訓練をしているらしい。本格的な準備が加速してる。西住さんが軍事境界線を超える日は近い。超えてしまったら最後、もはや接触をできない。既にあちら側と再び戦火を交えるのは秒読みの状態だ。一刻も早く、パルチザンと接触するんだ。」

 

私はもう一度首を縦にゆっくりと、でも確実に振った。しばらく、沈黙が研究室を支配した。事態は思ったよりも深刻だった。次の言葉が見当たらない。急がなくてはいけないが、慎重に行動しなくてはいけない。失敗は絶対に許されないという緊張で冷や汗が溢れ出て、カチカチと歯が鳴った。

更に、私が恐怖を覚えたことが、冷泉さんが行ったという「生身の人間を使った戦闘訓練」だ。それが何なのかを知ることは、大変な恐怖だった。しかし、人間は不思議なもので、怖いもの見たさというものがある。私も怖いもの見たさで、冷泉さんに尋ねた。

 

「なあ、冷泉さん。生身の人間を使った戦闘訓練って一体なんだ……?」

 

冷泉さんはピクリと身体を震わせると怯えたような目で私を見つめる。私もその瞳を見つめ返すと冷泉さんは目を逸らしてボソリと呟いた。

 

「知りたいか……?」

 

私はコクリと頷く。

 

「ああ、知りたい。」

 

すると、冷泉さんは諦めたように深く息を吐くと目を逸らしたままボソリボソリと話し始めた。

 

「あれは、収容所の囚人を使った訓練だった……隊長曰く、人を殺すことに慣れる訓練だったそうだ……原寸大の街のレプリカに収容所の囚人を住まわせて、そこを攻撃するという訓練だった。酷いものだったよ……私は罪のない人に向けて銃を撃ちまくって……全員を……殺した……西住隊長は、それを見て笑っていた……自らもライフルで狙撃して楽しんでいた……」

 

私はこの話を聞いたことに後悔した。私は言葉を失っていた。何を言えばいいかもわからなかった。私は無意識に、震えている冷泉さんの小さな身体を抱きしめていた。

 

「すまない……すまない……こんな辛いことを話させてしまって……わかった……私は私のできること、やるべきことをやるよ……今日の夜にも向こう側に行こうと思う……」

 

冷泉さんは泣きながら何度も頷いていた。

私は、冷泉さんと別れて、その足で西住隊長の執務室へと向かった。今回、向こう側へと渡る名目は、冷泉さんの研究に使うモルモットを狩ってくるという任務の為だ。出発する旨を伝えて、越境の許可を貰わなくてはならない。西住隊長の部屋を尋ねてノックをする。

 

「どうぞ。空いてるから入っていいよ。」

 

部屋の中からはいつもの西住隊長の聞こえてきた。その声を聞いて入室すると、西住隊長は真っ直ぐこちらを見つめていた。

 

「あ、エルヴィンさんか。何か用かな?」

 

「ああ、今日の夜、出発するから、越境の許可を貰いに来た。」

 

「あ、そうか。今日なんだね。わかった。えっと、向こう側に行く人数は全員でいい?」

 

「ああ、全員で行くつもりでいる。」

 

「わかった。じゃあ、そこで待ってて。」

 

西住隊長は、机の引き出しから一枚用紙を取り出すと、印鑑と自らの名前をサインする。

 

「はい。これ持っていってね。この許可証は往復に必要だから、任務中も絶対に無くさないでね。無くすと色々面倒だから。それじゃあ、気をつけていってきてね。あと、パルチザンたちにも重々気をつけてね。最近、境界線付近で目撃情報が相次いでて、何してくるかわからないから。」

 

西住隊長は、まさか私たちの目的がそのパルチザンと接触することとは思ってもいないようだ。今は、まだ私たちの計画は発覚していないようである。私は安心して大きく縦に首を振った。

西住隊長と別れて再び寮へと戻った。寮では皆が心配そうに待っていた。私は西住隊長から渡された越境許可証を皆に見せつける。皆からは歓声が上がった。

 

「今夜、早速だが動き始めるぞ!もはや猶予はあまりない。再び戦端を開くための準備が色々と加速しているようだからな。」

 

とりわけ喜んだのがカエサルだった。カエサルの目は異様に鋭く光っていた。

私たちは早速、越境するための準備を始めた。人を入れられる大き目の鞄を人数分と眠らせるための薬、それにロープとガムテープというなんとも物騒なものを鞄に詰め込む。準備を完了させて夜を待った。

7時間ほど後に暗闇に慣れるために外に出た。出発予定は10時だ。それまでには慣らさなくてはならない。だんだん夜目に慣れてきて完全に慣れた頃の10時に私たちは出発した。真っ暗な道を進んでいく。やがて、森が見えてきた。その森を少し進むと関所のようなところがある。そこが軍事境界線警備兵の詰所になっており、兵士役の女子生徒が4人ほどで警備していた。彼女たちは私たちの姿を認めると、2人が近づいてきて、声をかけてきた。

 

「あの詰所から向こう側は西住隊長の支配圏外の生徒会支配地域です。越境は特別な許可がなければ許可できません。戻りなさい。」

 

普段なら言われた通り戻るが、今日に限っては私たちは正当な理由という名目で向こう側に越境する。私は、満を辞して西住隊長に渡された越境許可証を警備兵に手渡す。

 

「西住隊長の命令で、越境する必要がある。この通り、許可証もある。」

 

警備兵は手渡された書類を確認し、本物であることが分かるとやおら慌てて背筋を伸ばした。

 

「し、失礼しました!どうぞお通りください!最近、境界線付近にパルチザンゲリラ隊が目撃されていますのでお気をつけて!」

 

私たちは警備兵たちに見送られながら、関所の門のようなところを通った。

警備兵たちは私たちが見えなくなるまで見送ってくれた。戦闘が始まるまでは当たり前のように往来していた森だが、久しぶりに一歩向こう側に踏み入れてみると空気が全く違っていた。怒りと憎しみ、そして悲しみが満ち溢れた空気がしていた。背中に冷や汗が流れてくる。今回の本当の目的はパルチザンと接触することであるとはいえ、パルチザンからしたら明確に私たちは敵であり、仲間たちを収容所に送り込んだ悪魔であるという認識だろう。いつどこから銃弾が飛んでくるかもわからない。周囲警戒しながら歩き続ける。しばらく歩くと、どこかから誰かに見られてるような

気配を感じた。私は、皆に一度停止するよう指示を出した。悪い予感がした。明確なものではないが、ものすごい殺意を感じた。その時だった、銃声が響いた。誰か撃たれた!そう思って急いで伏せて顔を前後左右に動かして見回してみるが、誰も倒れてはいない。幸いにも弾は外れたようだ。もう一発銃声が聞こえる。今度は、私の顔の30センチ手前の石に当たって弾かれた。まずい。明確に狙われている。私は鞄の中に入っていた白いタオルを忙しなく振って茂みに向かって叫んだ。

 

「撃つな!私たちに敵意はない!抵抗しない!繰り返す!私たちに敵意はない!話し合いを望む!私たちは君たちに会いにきた!パルチザン諸君!私たちに敵意はない!どうか面会に応じてくれ!」

 

何度かこうした呼びかけを繰り返す。すると、何人もの人影が茂みの中から現れた。そして、銃を向けながら私たちを何重にも囲んだ。その人物たちは誰もが黒い布で顔を隠して格好は船舶科の服を着ている者、普通科の制服を着ている者、水産科や農業科のつなぎを着ている者もいた。武器もまちまちで、銃を持っているのはほんの数人、小銃一人拳銃も一人、その他は竹槍やこの森の木で作ったのか棍棒みたいなものや、斧や鍬、水産科のものだろうか銛、さらには竹槍を持っているものもいた。まさに絵に描いたようなパルチザンのゲリラだった。それが、はじめての接触となった。その中の一人の船舶科の制服を着た者が口を開く。

 

「動くなよ?動いたら俺の小銃が火を噴くぞ?死にたくなかったら、言う通りにしろ。まずは、腹ばいになって手を背中で組め。」

 

勝気そうな少女だった。彼女が一番いい武器を持っている。おそらく、このパルチザンゲリラ隊のリーダーだろう。私たちは、抵抗することなく言われた通り従った。すると、彼女たちは私たちの顔を地面に押さえつけながら腕を後ろ手にロープで縛り上げた。

 

「立て!」

 

小銃の少女の声とともに部下と思われる竹槍や鍬や斧を持った少女たちが私たちを縛り上げたロープを強く引っ張る。

 

「ふふっ。盛大な歓迎に痛み入るよ。」

 

いたずらな笑みを浮かべて片目を瞑り軽口を叩いてみせたら、拳銃の少女が私をマガジンで散々殴りつけてこめかみに拳銃を突きつけながら低い声で凄む。

 

「てめえ……!脳みそぶち抜いてやろうか?!」

 

「うっ……あっ……はは……乱暴はしないでくれ。私たちに敵意はない。」

 

私は彼女たちを宥めるように微笑むとその後は素直に従った。私たちは袋状の目隠しを頭から被せられてどこかに連行された。しばらく歩かされたあと、おそらく同じ森の中だとは思うが、あるところで停止させられた。ここが目的地なのだろうか。少しでも情報を得るために目が見えない代わりに耳を研ぎ澄ませてそばだてていると、カサカサとした音と、何かをめくる音、そして、何か重いものを持ち上げて、何かを開ける音が聞こえてきた。その後に、もう少し前に進んでからしゃがむように命令された。そして手を金属状のもの、おそらくハシゴのようなものに捕まらせた。そして、それを降りていくように命じられた。そのハシゴのようなものを降りていくと、とても狭い空間に辿り着いた。立ち上がることはできるが、そのままでは、前にも後ろにも右にも左にも進めない。先に降りていた、ゲリラたちは私にしゃがんで左側の鉱山のトンネルのような狭い横穴に向かって進むように命令した。私は言われた通り!四つん這いになって進んでいく。意外と長くてグネグネと曲がっていてかなり進みにくい。あちこちに体と頭をぶつけて難儀しながら、しばらく進むと進んでいる先からかすかに声が聞こえてきた。その声はだんだん大きくなってはっきり聞こえるようになってきた。しばらく待つように命じられて、止まっていると会話がすぐそこではっきりと聞こえてきた。

 

「よう。どうした?何かあったのか?」

 

「反乱軍の奴らを捕らえた。奴ら、越境して悠々と歩いていた。」

 

「おお!よくやったな!親分も喜ぶ!訊問はしたのか?」

 

「いや、まだだ。捕まえて連行しただけだからな。まあ、一人が減らず口を叩きやがったから、少し遊んでやったがな。今、もうすぐそこに連れてきている。」

 

「どれどれ。あいつらか……随分個性的な格好をしてる奴らだな。わかった。親分を呼んでくる。反乱軍の奴らは、そこに座らせておくなり何なりしろ。殺すなよ?」

 

「わかってるよ。俺もそこまで馬鹿じゃない。」

 

「なら良い。おまえはすぐ頭に血がのぼるからな。その分、虎のように勇敢なのは結構だが、危なくてしょうがない。どうせ、今日も反乱軍を見たら即ズドンだったんだろ?まあ、いい。結果オーライだ。じゃあ、あたしは親分を呼んでくるから。くれぐれもズドンは無しだからな?」

 

「ああ!もう!わかってるっつってんだろ!早く呼んでこいよ!」

 

私は、相手の会話を聞きながら、相手がどんな人物かを分析していた。第一目標のパルチザン諸君との接触は最悪な形ではあるものの達成できた。しかし、この状態から交渉となると大変困難な状況であると言える。残念ながら、彼女たちは理路整然に話せば話を聞いてくれるというタイプではなさそうだ。言葉は悪いが荒くれ者、所謂不良という類に入る人物だと確信した。敵とみなした者には容赦がないし、もしパルチザンのメンバーの友人や家族が反乱軍に殺害されていたらほぼ間違いなく私たちの命はないし、少しでも対応を間違えると大変なことになる。気をつけないといけない。もしも何かの間違いで怒らせることがあったら、殺される可能性が大いにある。交渉はかなり難航しそうだと確信していた。しかし、不良は実は不器用なだけで根は優しいともいう。もしかしたら、可能性はあるかもしれない。ごくりと苦い唾を飲み込んで難しい交渉の覚悟を決めた。

しばらくすると人が何人かやって来る気配がしてやがて、袋が取り払われた。一気に光が目に入ってくる。真っ暗闇から一気に光が目に飛び込んできた。しばらく眩しくて瞼を何度か開けたり閉じたりしていたがやがて鮮明になってくる。そこは一人暮らし用の寮くらいの広さで、裸電球が一つ天井から釣り下がっており、机と椅子が一つ。その椅子の上にはロングコートを羽織り、ロングブーツと羽根つきの船舶科の帽子を被った褐色肌の少女が座っていた。

どうやら、この人がリーダー、先ほど親分と言われていた者らしい。周りには小銃を持ってフルフェイスヘルメットを被った少女や拳銃を持ってバンダナで顔を隠した少女、その他大勢のマスクやバンダナやヘルメットやタオルで顔を隠して鍬や斧、棍棒、竹槍を私たちに向けた少女たちが私たちを囲んで冷たいまるでゴミを見るかのような目で見つめていた。

ごくりと再び私の喉がなる。

不敵な笑みを浮かべながら褐色肌の少女が口を開く。

 

「あんたたちかい。私たちの仲間をたくさん殺してる悪魔みたいなやつらっていうのは。本物の悪魔には会ったことはないけどね。」

 

高度で私が経験した中で一番難解な交渉サバイバルゲームが始まった瞬間だった。

 

つづく

 

 




それでは皆様良いお年をお迎えください!
また、来年2020でお会いしましょう!
新年の予定についてはまたわかり次第ご連絡します!
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