血塗られた戦車道   作:多治見国繁

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皆さん大変お待たせしました。
今日は麻子の視点からお送りします。


第139話 命の天秤

ある夜、トントンと私の研究室の扉が叩かれた。時計を見ると23時。こんな時間に誰だと思って扉を開けると、私の目の前には西住みほという名の悪魔がニコニコと笑って立っていた。私は恐怖に陥った。まさか、バレたのか。誰が裏切ったのか。私たちの秘密の計画を。私は恐る恐る如何なる用かを尋ねると悪魔は私の小さな身体を抱き寄せて耳元で囁く。

 

「ふふふふ。こんばんは。麻子さん。今夜、久しぶりに……いいよね。」

 

そういうことか。私はなぜ西住さんがここに来たのかを察した。つまりは今日、久しぶりに私をおもちゃにして弄ぼうというのだ。決して良くはないが、絶対に発覚してはいけない秘密の計画は未だに西住さんにはバレていないようだった。良かった。安堵した。私の心臓がドクドクと、鼓動を打つのを感じる。西住さんは愛おしそうに私の髪を撫でながら少し力を入れて私を抱きしめる。

 

「うっ……」

 

苦しくて少し声が漏れる。西住さんは何も言わずに私の頭を撫でていた。

 

「久しぶりだね。麻子さん。久しぶりに楽しもう。」

 

西住さんは私を抱きしめながらさわさわと私の体を撫でていく。きた。私は息を飲んでその行為を甘んじて受け入れる。どくどくと心臓が素早く打つ。西住さんの手つきは変態のそれそのものだった。性犯罪者のような手つきだ。私はギュッと目を瞑り、掌を強く握ってそれが終わるのを堪えていた。西住さんはゆっくり手を動かして私の尻を撫であげる。

 

「きゃうっ!な、な、西住さん!何を!」

 

私は西住さんの手を尻から振り払うようにすると、西住さんは耳元で囁いた。

 

「ふふふふ……そんなことして、いいんだっけ。麻子さん。おばあちゃんがどうなってもいいの。いつでもおばあちゃんの首を届けてあげるよ。それとも、おばあちゃんに麻子さんの首を届けたほうがいいかな。それが嫌なら、じっとしててくれないかな。」

 

私は唇を噛んで尻から手をどかして気をつけの姿勢をとる。西住さんは満足そうに笑って再び体を撫で始めた。

 

「も、もういいだろ……西住さん。」

 

「ふふふふ。何言ってるの。今夜は寝かさないよ。さあ、私のベッドに行こうね。」

 

西住さんは私をいわゆるお姫様抱っこで抱き上げると自分の執務室へと連れていった。そして、自分の部屋の大きなベッドに私を寝かせると、その上から覆いかぶさってきた。

 

「えへへ。久しぶりの麻子さんだあ……やっぱり可愛いね。麻子さん。ふふふ。今日は今までしばらく一緒に過ごせなかった分もたっぷり朝まで可愛がってあげるね。」

 

西住さんは私の頬を撫でていた手をすうっと制服のところに持ってきて私の服を脱がせて裸にさせた。

 

「あはっ!麻子さん。全然成長してないね。まだまだ可愛い子どもみたいな体。綺麗だね。あ、そうだ。良いこと考えちゃった。会長を捕まえたら、麻子さんと一緒に遊んであげるのも良いかもしれないね。体が小さい同士、楽しめそう。ふふふふ。」

 

西住さんは何やら不吉なことを口にしながら、自らも服を脱いだ。

裸を見られることはやはり慣れない。私は恥ずかしくて手で裸体を隠す。しかし、それは西住さんから阻まれる。

 

「ふふっ。隠したらダメ。麻子さんの綺麗な裸、もっとよく見せてね。」

 

西住さんは私の裸をまじまじと見つめた。

 

「み、見るなぁ……」

 

西住さんから目線を逸らすと西住さんは私の顎を掴む。

 

「目、逸らさないで、こっち見てて。」

 

私はゆっくりと目線を西住さんに戻す。すると、西住さんは満足そうに微笑み、私の肌を撫ではじめた。

 

「綺麗……綺麗だよ……体、ぽかぼかしてる。温かい……それに、とってもいい匂いだよ……」

 

そして、いつものように行為に及び、西住さんは私の体を撫でたり触ったり舐めたりして弄んだ。頭の先から足の先まで体を這い回る手と舌の感触は相変わらず慣れることはなく、気持ち悪くて仕方がなかったが、何とか我慢していた。ここで、もし弱い声でもあげようものなら、どんな辱めを受けるかもわからない。私は必死で口を閉じた。しかし、どうしても生理的な現象は防げない。たまに下腹部を触られたり舐められたりした時などに声を上げてしまった。その時は大変だった。西住さんはニヤリと悪い笑みを浮かべるとそこを執拗に攻撃した。その度に私は声を上げてしまって、西住さんの嗜虐心を煽ることになったのである。さすが、西住さんはたくさんの女の子を自らを楽しませるおもちゃにする為の奴隷として扱っているだけあって、何がとは言わないが上手かった。さて、一通り私の体を楽しんだ後、西住さんは私をうつ伏せにさせて背中から抱きしめて体と体を重ねた。そして何時間か経った後、そろそろ、終わりだろうかと思っていた時だった。西住さんは、一瞬体を離すと私の耳を舐めながらある衝撃的な言葉を私の耳に囁きかけてきた。

 

「あ、そうそう。麻子さんに聞きたいことがあったんだった。ねえ、麻子さん。私に何か隠してることない?」

 

私はその言葉に息を飲んだ。私は再び、身を固くする。もしかして落合さんの脱出計画が露呈してしまったのだろうか。

 

「そ、そんなわけないだろ?」

 

私は首を即座に横に振った。しかし、否定する声が震えて裏返ってそれが嘘だということを証明してしまう。すると、西住さんはクスクスと面白そうに笑いながら私の胸に手を当てる。

 

「本当?胸、こんなにドキドキしてるのに?声も震えているよ。本当のこと言ってごらん?怒らないから。」

 

私はそれでも首を横に振る。これだけは何を言われようとも話すわけにはいかない。言ってしまったら、それこそ、大変なことになる。西住さんに何度も繰り返し本当のことを話すように説得されたが私は、首を横に振り続けた。西住さんは、深いため息をついた。

 

「麻子さん。強情だね。でも、声が裏返ったり、体を硬くしたりしてる様子を見てると、麻子さん、嘘ついてるよね。本当のことを喋らない嘘つきには、お仕置きしないといけないよね。でも、麻子さんにはまだまだ働いてもらわないといけないから、怪我とかさせるわけにはいかないし、どうしようか……あ、そうだ。おばあちゃん。麻子さんのおばあちゃんを殺しちゃおうかな。私に嘘ついたらどうなるか、麻子さんには思い知らせてあげないといけないものね。さあ、最後のチャンスだよ?どうするの?」

 

「な!そんな……おばあは関係ないじゃないか!」

 

すると、西住さんは思惑通りと言う顔をして、私の肩をがっしりと掴むと私の顔すれすれまで顔をくっつけながら迫った。

 

「やっぱり!何か知ってるんだね?知らなかったら、こんな反応しないもの。本当のことを話して!話さないと……言わなくても言いたいこと、わかるよね?」

 

もはや、いくら違うと言っても、信じてもらえそうにない。私は落合さんたちと、おばあを天秤にかけた。おばあにこのことを話したら、友達を取れと言うだろう。しかし、私にそれはできなかった。私にとってはただ1人の身内で家族だ。それを捨てることはどうしてもできなかった。私はおばあをとった。

 

「わかった……話す……」

 

私は、心の中で落合さんたちに土下座しながらぼそりぼそりと落合さんを脱出させる計画があること、関わっているメンバー全てを西住さんに話し始めた。まさか、私が皆を裏切ることになるとは思わなかった。私は、泣きながら西住さんに全てを暴露した。西住さんは、話せば話すほど険しい表情になった。そして、全てを話し終わった時、恐る恐る西住さんを見ると、明らかに怒り狂っていた。

 

「私を……この私を裏切るなんて……!あっはははは!命知らずにも程があるね……絶対に許せない!殺してやる!殺してやる!ぐちゃぐちゃにしてゴミみたいにしてやる!さあ、どうやって殺して、ぐちゃぐちゃにしてあげようかな……?ふふっ……ふふふふ……」

 

私は怒り狂う西住さんに対して恐ろしくて声をかけることもできず、ただ下を向いていた。すると、西住さんは私の顔を覗き込みながら言った。

 

「さて、麻子さん?麻子さんも同罪だよ。1度ばかりでなく2度も裏切るなんてね。まあ、1度目は協力拒否だったから裏切りとは違うか。さて、麻子さん。今回だけは最後のチャンスをあげる。許してあげる。今のところは麻子さんの代わりはいないし、全部正直に話してくれたからね。おばあちゃんも麻子さんも殺さないであげるよ。でも、本当に次はないからね?次、裏切ったら、少なくともおばあちゃんは絶対に殺す。おばあちゃんのバラバラの死体を麻子さんに届けてあげる。そんなおばあちゃん見たくはないでしょう?」

 

私は震えながら首を縦に振るしかなかった。西住さんは怒りに震えていた。私は西住さんに恐る恐る、尋ねる。

 

「カエサルさんたちをどうするつもりだ……?殺すのか……?」

 

「当然だよ?殺すに決まってる。でも、今すぐじゃつまらないよね。ただ、死んでもらうだけじゃお仕置きにならないからね。カバさんチームの子たちには希望を見せてからたっぷり苦しんで死んでもらおうかな。あはっ!それが一番楽しいよね。希望を見せておいてから絶望に叩き落とした時の叫び声と表情。もうあれだけでゾクゾクしてくるよ。とても気持ち良くなってくる。だから、あの子たちにはこのまま脱出作戦は続けてもらうよ。あの子たちには、越境する直前に……地獄を見てもらうよ……ふふっ……ああ……あっはははは!どんな顔をするんだろう。楽しみだなあ……!あはははは!」

 

西住さんは悪魔そのものの笑みを浮かべていた。私は心底、私という弱い人間が嫌になった。私は裏切り者だ。私がしたことが正しいとは思えない。しかし、どうすれば良いのか。どうすれば最善なのか。たった1人の家族を人質にとられているような状態なら、そうするほか、道はないではないかと自分に言い聞かせる。冷たい言い方だが、仲間は所詮他人にすぎないのである。それならば、血が繋がった家族を優先する。それが、おかしなことなのだろうか。私は私自身にそう無理やり納得させようと答えのない問いを繰り返し私に問うていた。

そのような堂々巡りを続けていた私は、完全に私の今の格好と今まで西住さんとどのような行為をしていたのかを忘れていた。私は西住さんのベッドの上で、足を大の字に開いて生気のない顔で遠くを見ながらあれこれ考えていたのだ。そのような姿を西住さんに見せたらどうなるか、わかっているはずだったのに、私は自分の行動がショックで考える余裕を失っていた。それを良いことに西住さんは近づいてきた。

 

「ふふふふ。いいのかな?そんなふうに脚を開いてても。誘ってるの?麻子さん。いいよ。なら、お望みどおりにしてあげる。麻子さんには、いつも頑張ってくれてるご褒美として、大切なものまでは奪わないであげたけど、誘われたのなら仕方ないよね。」

 

西住さんは、私を強姦しようとしていた。西住さんは指を舐ると下腹部に標的を定めた。何度か指でさすり、舐める。

 

「な、何をする気だ……やめ……やめろ……やめてくれ……いや、やめてください……お願いします……」

 

しかし、西住さんは聞かない。西住さんは悪魔のような笑みを浮かべて言った。

 

「ふふふふ。これも、お仕置きだよ。悪いことしたら、お仕置きされなきゃいけないんだよ。殺されるよりはマシでしょ。」

 

西住さんはそう言うと下腹部に痛みが走った。そのときには西住さんの指は私の大切なものを奪っていた。これだけは私の好きな人に捧げようと思っていたものは見るも無残にも奪われたのであった。西住さんはその後も何度も指で下腹部に悪戯をしてぐちゃぐちゃにした。もはや、涙も出なかった。そして、朝日が昇る頃に、私は裸で西住さんの執務室の外に放り出された。着ていた服は窓の外に捨てられて、裸のまま取りに行くことを強制された。私が西住さんを裏切ったのだからこのような扱いを受けるのは仕方がない。命だけは助けられたことに感謝しなくてはならないと私は通常の判断が全くできなくなっていた。私はフラフラと外に捨てられた服を取りに行くと、自分の研究室に戻って泥のように眠ったのである。もう、しばらく昨夜のことは考えないようにしようと考えていた。しかし、現実はそう甘くはない。その日の午後、私は西住さんに叩き起こされた。昨夜、あのようなことがあったのだから、しばらくゆっくり眠らせてほしいと頼んだが、処分を言い渡すから来いと無理やり西住さんに執務室まで連れて行かれた。西住さんは私を机の前に立たせるとその前で処分を言い渡した。

 

「それじゃあ、麻子さん。麻子さんの処分を言い渡すね。麻子さんの役職、これについては全て解任します。麻子さん自身と麻子さんの家族については今回、約束どおり処刑する事はしません。全て正直に話してくれたからね。しかし、その身代わりとして武部沙織さん、五十鈴華さんのどちらかを処刑します。執行人は麻子さん自身、誰を処刑するかは麻子さんが選んでください。そして、カエサルさんたちについては、この前伝えた通りそのまま計画を実行させてください。その後、どうするかはまた追って知らせます。」

 

その処分はあまりに過酷すぎるものだった。私は目を剥いて反論も何もできずにただ立ちすくんでいた。

 

つづく




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