優花里はため息をつきながら歩く。コンビニの定期船が着岸する場所に再びやってきた。そして、夕方の定期船に乗り込み再びサンダースに向かった。今回は、最短でも2日は滞在することになるだろう。その間、優花里は怪しまれないように過ごさなければならない。どこに潜伏しようかと困っていた。サンダースに着いた頃には、もう夜だった。行動は明日以降。仕方ないので昨日、操縦手を入れた鞄を置いたところで寝ることにした。翌日、皆が学校に行った頃、優花里も学校に行った。そして、早速戦車道の演習を偵察した。今度の狙いは隊長車の操縦手だった。隊長のケイが乗ったM4シャーマンを見つけ、双眼鏡で覗き込む。昨日と同じく、その中から人が降りて来ると、優花里はまた克明に降りてきた人を記録した。今回、優花里は幹部の乗った車両の関係者をあわよくば複数人誘拐しようと考えていた。次から次へと人相を書き留める。そして、練習が終わると出待ちをした。そしてこっそりと後をつける。すると、隊長車の操縦手、装填手、砲手が一緒に出てきた。さらに副隊長車に乗っていた、操縦手も一緒にいる。優花里はまたこの中の誰かが1人になるタイミングを伺っていたが、なかなか1人にならない。そして、隊長車メンバーと副隊長車の操縦手は4人揃って寮に入って行ってしまった。その寮は1人で住むには大きすぎる気がした。もしやと思い、間取りを調べてみることにした。すると、この寮は3LDKであることがわかった。隊長車の3人はシェアハウスに住んでいたのだ。そして、今日は副隊長車の操縦手も招いて何かをやるようだ。これは、少なくとも3人はまとめて誘拐できる。大幅に手間が省ける。優花里はとても喜んだ。そして、優花里は夜中になるのを待った。しかし、副隊長車の操縦手はなかなか部屋から出て来ない。とうとう全ての部屋の明かりが消えた。今日はお泊まり会をするようだ。4人とも誘拐できる。みほのノルマを達成できる。優花里はとても喜んでいた。優花里は部屋の明かりが消えて2時間後部屋にピッキングで鍵を開けて侵入した。皆スヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。自分の運命がどうなるとも知らずに幸せそうな寝顔だった。優花里は全ての部屋に侵入して、1人ずつ抱き抱え、用意した4つの鞄に詰め込んだ。スーツケース2つにそれぞれ1人ずつ、リュックと旅行カバンにそれぞれ1人ずつ詰め込んだ。そして、優花里は部屋の鍵を閉めて部屋を出る。4つの鞄はとても重くて腕と肩が辛かったがそれに耐えて急いで一時保管の場所に向かう。そして、優花里は4人の手と足を縛り、静脈注射で眠り薬を投与して、口にガムテープを貼った。優花里はその日、そこで眠った。次の日、優花里は全国大会の全体ブリーフィングを偵察した。
「ファイアフライ1両。シャーマンA1、76mm砲搭載1両、75mm砲搭載8両。」
「じゃあ、次はフラッグ車を決めるよ!オッケー?」
どうやら、フラッグ車が決まったらしい。皆歓声をあげる。
「何か質問は?」
優花里は偵察中の身でありながら思わず質問してしまった。
「小隊編成は、どうしますか?」
「oh〜いい質問ね。今回は完全な2個小隊は組めないから3両で1小隊の1個中隊にするわ!」
「フラッグ車のディフェンスは?」
「ナッシング!」
「敵には三突がいると思うんですけど…」
「大丈夫!1両でも全滅させられるわ!」
周りが歓声をあげる。その時だった。ナオミが声を出した。
「見慣れない顔ね。」
「ふぇ…」
慌てて座ったが遅かった。
「所属と階級は?」
「はい。あの…第6機甲師団オッドボール三等軍曹であります!」
「偽物だ!」
優花里は慌ててその場を逃げ出した。
「ちょっと待ちなさい!」
「追え!」
必死に逃げて逃げてようやく巻いた。しばらくは近づけないな。そう思っていた。夕方まで時間が長く感じた。見つからないように一時保管場所にずっと隠れていたのだ。幸い誰にも見つからずに済んだが、乗船の時が大変である4つの鞄を持ったコンビニの制服を着た怪しい人物が乗り込むのである。船員に怪しまれないか心配であった。もしかしたら見つかるかもしれない。そんな恐怖を感じながらブルブルと震えていた。2時間がとても長く思え、早く着いてほしいと願った。ようやく、大洗に着いたころにはもうへとへとだった。
優花里は最後の力を振り絞り、みほの元へ急いだ。
拠点に着くとみほは外で待っていた。
「あっ優花里さん!遅いよ。裏切って逃げちゃったのかと思った。まあ、逃げたとしてもどこまでも追いかけて必ず殺すけどね。」
みほの言葉に優花里は血の気が引いた。
「そ…そんな、裏切るわけないじゃないですか。さあ、連れてきましたよ。今回は隊長車の操縦手、装填手、砲手と副隊長車の操縦手。合わせて4人です。あと、今回出場車両の情報も手に入れることができました。」
みほは、優花里が差し出した鞄を開け、ニヤリと悪魔のように笑いながら中を覗き込んだ。そしてスヤスヤと薬の効果で眠っている犠牲者を愛おしそうに眺めながら
「ありがとう!優花里さん。じゃあ、モルモットたちを最初の毒ガス実験やった時と同じ部屋に運んでくれるかな?着いたら手足は縛ったままでいいから裸にしてね。」
「わかりました…」
優花里は再び重い鞄を4つ持ってその部屋に向かう。そこには、先日優花里が誘拐したファイアフライの操縦手が裸にされて縛られていた。
操縦手は、悲痛な顔をして優花里に問うた。
「あなたは…?私はなぜこんな目にあっているんですか…?私が一体何をしたというんですか…そしてここはどこですか…?」
優花里は悲痛な声に罪悪感に耐えながら答えた。
「私には答えることはできません…さあ、仲間が来ましたよ。」
優花里は部屋の中に4人の少女を寝かせた。そして、部屋を出て泣いた。そして、みほに早く実験を執行するように懇願した。優花里としてはどうせ死ぬなら、苦しみや恐怖を早く解放してあげたいと思っていた。しかし、みほは非情だった。
「実験は7日後、そしてその執行を告げるのは優花里さん。優花里さんが連れて来たんだから優花里さん自身で引導を渡してあげてね。」
みほは、苦しみや恐怖をなるべく引き伸ばすという選択をしたのである。それがみほの好みであった。優花里は膝からがっくりと崩れ落ちた。
「う…うう」
涙がこぼれ落ちる。みほは、その様子をただただ、楽しそうに眺めていた。
うなだれた優花里の姿はみほの陰に包まれていた。それは、まるでゆかりを自らの闇で支配していると周りに誇示しているかのようだった。
つづく