全国大会の第1試合当日、大洗の面々はケイから試合前の交流として食事でもと誘われた。優花里たちが訪ねると、やはりいつもと何かが違う。いつも明るいサンダースのメンバーが今日は少しだけ暗いのだ。やはり、行方不明事件が与えた影響は大きかったようだ。心理的揺さぶりの効果は絶大だった。
食事が終わり、各自戻る途中にみほは、大洗のメンバーを全員集めた。
そして、静かに話し始めた。
「今日、皆さんへの指示は全てメールで行います。了解しておいてください。」
「なんでですかぁ?」
うさぎさんチームの優季が不思議そうに訪ねる。
「上空をみてください。あれは、通信傍受機です。今回、サンダースはあれを使って通信を傍受し私たちの先回りをして倒す作戦のようです。」
「あ!ずるい!」
みんな口々にそういう。みほはそれをなだめる。
「皆さん。落ち着いてください。相手の作戦を見破ったことは大きな成果です。今回私は嘘の情報をインカムでバンバン流します。すると向こうはそれに騙されることでしょう。それで、相手を翻弄して楽しく遊んであげましょう。」
みほは、いたずらっ子のように笑った。
生徒会長の角谷杏はなるほどと笑う。
「西住ちゃん。意地悪な子だねえ。」
それを聞くと皆もどっと笑った
「会長ほどじゃありませんよ。それじゃあ皆さん。パンツァー・フォー」
試合前の挨拶を済ませ、戦車に乗り込む。優花里はこの趣味の悪い作戦をみほらしいと感じていた。みほはとことん人が困った表情を見るのが大好きのようだった。
サンダースはみほの作戦に見事にハマり、みほの掌の上で踊らされた。みほが流す嘘の情報に引っかかったのだ。そして、どんどん車両を減らしていった。みほは、撃破の報告を聞くたびに弾けるような笑顔になった。そして、初戦をとったのである。ファイアフライも隊長車も全てが実力を発揮していなかった。みほのとった試合前の心理戦は見事に成功した。試合後、みほとケイはお互いの健闘を称えあった。そして、ケイは盗み聞きのような真似をして悪かったとみほに謝った。するとみほは笑って許していたが、ケイたちが去るとみほは優花里にケイの評価を語った。
「彼女は優しすぎる。優しいことはとてもいいことだけど、でも私とはやり方が違う。私は使えるものはなんでも使うよ。必要ならば人も殺せる。」
それがみほの信念なのだろう。使えるものはなんでも使う。そして、必要ならば抹殺もいとわない。それが西住みほという人間であった。
みほたちは、試合後も拠点に向かう。今日の勝利の祝杯をあげるためだった。しかし、その祝杯は尋常ではなかった。なんとみほは、祝杯の盃に犠牲になったサンダースの5人の髑髏を使ったのだ。
「皆!今日は一回戦勝利できてよかった!乾杯!」
髑髏杯にはなみなみに飲み物が注がれている。みほはその髑髏杯に注がれた飲み物を飲み干すように、優花里に迫った。
「さあ、優花里さん。どうぞ遠慮なく一気に飲んで!」
優花里が涙を流しながら飲み干すとみほは笑いながら、さらになみなみに注いでくる。
「優花里さん。泣くほど嬉しかったの?いい飲みっぷりだね。さあさあ、どんどん飲んで!今日は楽しもう!」
優花里は嗚咽を覚えた。そしてガクガクと震える。なぜこんなことが平気でできるのか優花里にはわからなかった。地獄の宴は延々と続いた。
つづく
次回は視点が30年後に戻ります。