知波単学園という後ろ盾を得たみほは次なる手に出た。みほは、梓を呼び出した。
「梓ちゃん。戦車隊のメンバーをここに集めてくれる?」
「いよいよ蜂起するのですか?」
「ううん。その前に少しやってもらいたいことがあるんだ。その協力を戦車隊のメンバーにお願いしたくてね。」
「そうですか。わかりました。」
みほと梓は互いに笑い合う。
梓は、拠点に戦車隊のメンバーを集結させた。みほの指示だというと皆喜んで来てくれた。拠点に着くとみほは、ドイツ第三帝国司令官の軍服に身を包み待っていた。
「皆さん。よく来てくれました。ありがとうございます。」
「いえ!隊長のためなら何処までもついていきますし、何処へでもいきます!」
誰かが叫んだ。すると皆そうだそうだと同意する。その様子をみほは満足そうに笑って見ていた。
皆の集合が完了すると演台に登る。するとみほはまた人が変わった。
「諸君!時は来た。とうとう、行動を開始しようと思う。」
戦車隊のメンバーは湧き上がった。熱狂していた。とうとうその日が来たのだ。楽しみで仕方がないというような表情だった。
「だが、その前に諸君にやってほしいことがある。それは、あの蛆虫どもの悪だくみを学校中で噂してほしい。この戦いはもう始まっている。まずは噂の力で一人でも多くの同志を集めてほしい。」
「生徒会は悪の巣窟である。」この噂を戦車隊のメンバーは学校中のあちこちで噂した。最初はただの噂だと皆聞き流していたが、戦車隊のメンバーが異口同音に噂を口にするのだから、信憑性がどんどん増した。しかも、誰かが証拠の写真を見せたらしい。証拠の写真を見たという者が激増した。さらに噂が一人歩きして流した覚えのない「生徒会長は文科省の官僚に身体を売っている。」などというとんでもない噂まで囁かれた。そして、一人また一人と兵士になりたいという者が集まり、とうとう全校の三分の二である12000人がみほの兵士となった。みほを中心とした反乱軍は膨れ上がり続けている。学校中に生徒会への怒りが渦巻いていた。
そして、みほは梓に次なる指示を出した。
「梓ちゃん。とりあえず、10名程度誰か選んでクーデターをやるように指示してくれないかな?多分、失敗するだろうけど、今回は失敗することに意味があるから。生徒会への攻撃を仕掛ける口実が欲しいんだ。」
「あれ?全員で突然クーデターを起こして混乱している生徒会を一気に攻め、叩きつぶす作戦ではなかったのですか?」
梓は不思議そうに尋ねた。
「うん。それもいいけど、計画を変更したんだ。生徒会に抵抗する機会を与えて全面戦争をした方が楽しいかなって思って…ね?12000人の兵士と5両の恐ろしさを生徒会に味あわせてあげようかなって思って。」
みほはニヤリと意地悪そうに笑う。みほの頭の中には、すでに新しいシナリオは作られているようだった。みほは動乱と狂気を好んだ。
「それじゃあ、梓ちゃんよろしくね。」
「はい。お任せください。」
梓は、精鋭部隊を10名程度選び、拠点に呼び出した。そして、2日後学校で生徒会排斥を叫びながら大暴れするようにもし、失敗してもおとなしく拘束されるようにみほから命令があったことを説明した。
「本日選ばれた皆さんには、重大な任務を与えます。西住隊長の命令により、皆さんには生徒会排斥を叫びながら大暴れしてもらいます。何をしても構いません。教室をめちゃめちゃにしてもいいですし、教員を攻撃しても構いません。とにかくなんでも許可します。ただし、拘束されそうになったらおとなしく拘束されてください。決して逃げてはいけません。この拘束されることに大きな意味があるのです。任務は2日後の土曜日です。」
「了解しました!」
精鋭部隊に選ばれたメンバーはようやく時が来た、2日後が待ち遠しいと、うずうずした様子であった。もともと血気盛んな者たちばかりがあえて選ばれたので、こういう役柄は合うのかもしれない。何をしでかすかわからない。そんな連中だった。皆やる気満々といった様子である。梓は、10名を安心したような心配なような顔をして見ていたが、重大なことに気がついてあるところに飛び出していった。風紀委員への通達を忘れていたのだ。風紀委員とはこれからも良好な関係を築かなければならない。だから、あらかじめ攻撃の通達をして拘束されないように説明をしておかなくてはいけないのだ。風紀委員室についた梓はドアをノックする。
「はい。」
「失礼します。澤梓です。園さんはいらっしゃいますか?」
「はい。いますよ、ちょっと待っててください。」
風紀委員がみどり子を呼びに行く。
しばらく待つとみどり子が出て来きた。
「あら、澤さん。何か用?」
「はい。実は、2日後私たちは行動を開始します。なのでぜひ風紀委員のみなさんにも協力していただきたいと思いまして。」
「とうとう2日後なのね。わかったわ。それで、私たちは何をすればいいの?」
「とりあえず、2日後切り込み部隊の10名が学校で生徒会排斥を叫びながら大暴れする予定です。その時、風紀委員の皆さんはどうか見逃してほしいのです。生徒会を戦場に引きずり出すためにお願いします。」
みどり子はしばらく考え込んでいたが、やがて意を決したようだ。
「仕方ないわね。正義のためだものね。特別よ。」
「ありがとうございます!助かります!」
梓はスキップでもしたい気持ちだった。そして、色々と風紀委員に今までの苦労を労ってもらった。皆、梓やみほのことをすごい人だと褒めてくれた。梓は上機嫌で拠点に戻ることにした。
「頑張ってね。応援してるわ。」
「ありがとうございます。」
梓は、スキップしながら拠点に戻った。最初の切り込みを行うメンバーも決まり、風紀委員からも協力を得られることなった。万事計画通りかと思えたが、拠点に戻るとみほが少し難しい表情をしながら、机に向かっていた。みほの計画に少し問題が発生していたのである。それは戦車をどう確保するかだった。この反乱計画には戦車は必要不可欠だ。何としても確保しておかなければならない。しかし、実行の1日前まで、戦車道の授業があるため早いうちから何処かに隠しておくというわけにもいかない。これはもはや仕方がないので、みほの指示で夜中にこっそり梓と戦車隊のメンバーのうち操縦手を戦車倉庫に向かわせて、夜陰に紛れて持ち去ることにした。夜中なので、ちょっとした物音でもかなり目立つ。細心の注意が必要だった。そっと鍵を開けてエンジンをかける。戦車隊のメンバーは山の中を必死で走った。誰かに見つかるかもしれない。そんなことを思うと汗がダラダラ出てきた。そして、山中に戦車を隠すことができた。これで、あとは明日を待つばかりになった。
次の日、精鋭部隊10名は学校で生徒会排斥を訴えながら暴れまわった。しかし、10名という極めて少数なのですぐに捕らえられた。もたらされた情報によるとその10名を捕らえたのは、生徒会と先生たちで風紀委員は含まれていないとのことだった。みほはこの知らせを待っていた。10名が拘束されたのを確認するとみほは優花里に書類を渡しすぐに生徒会室に向かうようにと指示をした。
「よし、これで戦争ができる口実ができた。優花里さん。これを生徒会の連中に渡して。」
「了解です!」
それは最後通牒だった。この内容では、とても生徒会には受け入れられないだろう。
攻撃開始の日と条件がみほの兵士12000人に即日通達された。
優花里は生徒会の元へと走る。
戦争へのカウントダウンが始まった。
つづく