血塗られた戦車道   作:多治見国繁

38 / 150
短めです。とうとう戦争が始まりました。みほ陣営(反乱軍)のエピソードです。


第33話 展望台の悲劇

サイレンが鳴り響く。地獄の幕開けを告げるサイレンだ。空襲警報と同じ不協和音が住民に避難を呼びかける。生徒会が住民の身を案じ、放送しているのだ。その合間に柚子の声が聞こえていた。柚子は必死に住民へ避難を呼びかけている。

 

『一般市民の皆さん。非戦闘員の皆さんは早く避難してください!戦争が始まります!早く!逃げて!逃げて!』

 

それを聞きながらみほは笑いながら呟く。

 

「会長たちは本当に見上げた心がけだね。住民の身を案ずるなんて。住民なんかの身を案ずるより、自分たちの身を案じた方がいいんじゃないかな?私は容赦はしないよ。そこに誰がいようとも。たとえそれが住民だとしても、抵抗する者は全て殺す。」

 

みほは開戦直後攻撃前の最後の訓示を行う。

 

「諸君!戦争が始まった!我らは前進する!目指すは展望台!まずそこを奪う!では行くぞ!!」

 

とうとう戦争が始まった。みほを中心とする反乱軍12000人のうち10000人がみほの拠点が置かれている学園艦西地区から進軍を開始した。反乱軍はまず、展望台を押さえる作戦をとった。高台を取れば、生徒会側の動きも反乱軍の動きも全てが丸見えになる。両者にとってこの地は何としても手に入れたい戦略上重要な場所だったのだ。

1kmほど進んだところで突然発砲音が響いた。生徒会側からの発砲だった。その瞬間タガが外れたように一斉に双方の攻撃が始まった。双方激しい撃ち合いだ。しかし、多勢に無勢、勝敗は1時間で決した。と言うよりも相手はただ闇雲に撃つだけという単調でとても戦略的ではない作戦をとったため、すぐに全滅したというのが正しかった。みほは、この闇雲な撃ち方に覚えがあった。前線でワッと歓声が上がっている。どうやら生徒会側の司令官が捕らえられたようだ。殺せ殺せと頻りに声が聞こえる。司令官はすぐにみほの前に引き出された。後ろ手に縛られ、暴行を受けたのだろうかあざができていた。

みほはその姿を見て嘲笑った。

 

「こんにちは。お久しぶりですね。河嶋桃さん。やっぱり貴女でしたか。河嶋さんの見事な乱射ぶりは見ていてとてもおもしろかったですよ。もうちょっと持ちこたえられるかと思っていましたが、随分と早く勝敗が決しましたね。まあ、当たり前と言ったら当たり前でしょうか。あんなに闇雲に撃ったところで私たちにはあたりませんよ。」

 

「くっ…私をどうするつもりだ…」

 

「解放してほしいですか?」

 

「それは…当たり前だ…」

 

みほはにっこりと笑うと顔を近づけて桃の耳元で囁いた。

 

「いいでしょう。なら、生徒会がどんな作戦を取るつもりなのか教えてください。そうしたら命だけは保証しましょう。」

 

桃は迷っているようだった。しかし、みほは追い討ちをかける。

 

「早くしないと、殺しちゃいますよ?」

 

みほは銃を構える。選択肢はない。桃は観念した。そしてポツリポツリと話し始めた。

 

「ゲリラ戦を展開しようという話だ…住宅地を利用してゲリラ戦をしようと…」

 

「なるほど…ゲリラ戦ですか。妥当な策ですね。ありがとうございます。じゃあ、次はあんこう踊りを披露してください。ここにコスチュームはありませんから裸で。」

 

言う通りにすれば助かると思った桃は自分から服を脱ぎ必死に踊り始めた。踊りの振り付けの関係で恥ずかしい部分が露わになった。桃は屈辱で泣きそうな顔をしている。反乱軍のメンバーはその姿を見て嘲笑った。クスクスと周りから聞こえてくる。みほは終始意地悪そうに笑いながら、色々な角度から桃の身体を舐めるように眺めた。

 

「これで…いいか…?」

 

「はい。ありがとうございます。」

 

そう言うとみほはニヤリと笑いながら後ろに控えていた優花里と梓に命じた。

 

「では、河嶋桃を処刑します。処刑の準備してください。」

 

桃は目を剥いた。一瞬みほが何を言ったかわからないといった様子だった。しかし、すぐに正気に戻り必死に約束が違うと抗議する。そう。みほは、助けるつもりなど毛頭なかった。最初から殺すつもりだったのだ。命を助けるといっておいて作戦を話させた後さっさと始末する。これがみほのやり方だった。

 

「おい!西住!約束が違う!命だけは保証してくれるんじゃなかったのか!?」

 

「河嶋さん。本当に助かると思ってたんですか?そんな訳ないじゃないですか。河嶋さん。私は逆らう人はなんのためらいもなく殺します。貴女は、本当にバカですね。次は、頭がいい人に生まれてくださいね。本当に脳みそ入ってるんですか?安心してください。処刑したらすぐにその頭の中見てあげますから。あ、安心してください。死体はしっかりと晒しといてあげますからね。」

 

「お願いだ…命だけは…命だけは取らないでくれ…頼む…」

 

必死の助命嘆願にもみほは聞く耳を持たない。

 

「それはできません。河嶋さんには死んでもらいます。大丈夫です。一瞬痛いですが、すぐに楽になりますよ。」

 

そう言うと用意された処刑台に桃を目隠しをして縛り付けた。

 

「それでは河嶋さん。さようなら。来世では私と出会わないといいですね。そして、頭のいい人になってくださいね。」

 

みほはそうにっこり笑いながら桃に囁いた。

 

「お願い…助けて…」

 

桃は最期の瞬間まで、助けてくれるように頼んでいた。しかし、遂にその願いは届かなかった。

 

「構えろ!撃て!」

 

桃は銃殺刑に処された。桃がぐったりと頭を垂れる。桃が死ぬと、歓声が沸き起こった。みほは処刑台から降ろされた桃の頭を蹴る。

 

「こいつの腹を裂き、晒しておけ。」

 

桃の遺体は腹を裂かれ展望台に設置された磔台に晒された。薄汚れ血だらけの桃。死んで抜け殻となった桃が頭をがっくりと垂らしている。桃の髪が悲しくサラサラと風に揺れていた。

 

つづく

 




戦死者リスト

生徒会
河嶋桃
展望台守備隊100名(全滅)
みほ陣営
0名
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。