血塗られた戦車道   作:多治見国繁

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みほ陣営のエピソードです。
遅くなりました…


第44話 悲しみの大攻勢

翌朝、みほは前線の部隊を含めた全ての部隊を集結させた。そして兵士全員で紗希へ最後のお別れが行われた。大洗戦車隊のメンバーを中心に手製の棺に入れられた紗希に一人一人声をかける。皆、安らかに眠って欲しいや仇は必ずとるからどうか安心して眠って欲しいと手を合わせていた。最後のお別れを済まし、紗希の遺体は薪を積み上げた台の上に載せられ、火をつけられた。紗希は荼毘に付された。ブツブツと関節が焼ける音が聞こえる。そして、あたりには独特の匂い、まるで魚を焼くかのような匂いが漂う。紗希は煙となって天に旅立っていった。そして、紗希は小さな骨になった。

 

「紗希ちゃんは今、天国に旅立ちました。さあ、みんなで紗希ちゃんの骨を拾いましょう。」

 

みほに促され、紗希の骨は大洗の戦車隊のメンバー全員に拾われた。

 

「紗希…なんで…」

 

骨だけになった紗希を見て、梓は呟く。うさぎさんチームのメンバーたちは皆泣いている。他のチームのメンバーもだ。まさか自分たちの身の回りの人が亡くなるなど思っても見なかったのだろう。その様子をみほは無表情で見つめていた。

紗希の骨は大きな骨壷いっぱいに入れられた。梓を筆頭にうさぎさんチームはその骨壷を大事そうに愛おしそうに抱きしめて泣き叫ぶ。あまりに可哀想で見ていられなかった。何時間も泣いてある時ピタリと泣き止んだ。そして、梓たちはみほに静かに問うた。

 

「次の目標はどこですか…?敵はどこですか…?」

 

その目は血走り、狂気と憎しみを孕んでいた。みほは静かに頷きながら次なる目標を発表した。

 

「次の戦いは丸山紗希の弔い合戦だ!この戦いは必ず勝つぞ!全軍進軍する!次なる目標はこの学園艦の中枢を陥れる前準備だ!水産科、農業科の施設、そして生徒会にくれてやった搬入口を手に入れる!生徒会の飯を奪え!戦車部隊と知波単部隊2000人・大洗部隊10000人は連合部隊の12000人は前方に広がる森を突破し一気に攻撃をかけろ!先鋒はうさぎさんチームだ!指揮は私がとる!また、搬入口の制圧には残りの大洗部隊2000人と黒森峰部隊の990人であたれ!」

 

「はい!」

 

みほは拡大した地図を差しながら命令を下知した。

 

「1時間後には進軍を開始する!皆、早急に準備しろ!」

 

皆、ざわざわと湧いていた。いよいよ大攻勢に打って出るのだ。胸が踊る。みほは皆の姿に満足そうに微笑む。

 

「あの…」

 

梓が泣きそうな顔をして声をかけてきた。

 

「私たちのチームは装填手がいません…紗希が…務めて…ましたから…」

 

「そっか…そうだったよね…ちょっと待ってて。」

 

そういうとみほは駆けていく。小梅を見つけると、声をかけた。

 

「あ!小梅さん。ちょっと、いいかな?」

 

「はい。何ですか?」

 

「悪いんだけど、うさぎさんチームに装填手を一人貸してくれない?」

 

「ええ。構いませんけど、なぜ装填手を?」

 

「それが…今回、サンダースに殺されたのがうさぎさんチームの装填手の子で…」

 

「あ…すみません…わかりました。すぐに手配します。」

 

「大丈夫だよ。それじゃあよろしくね。」

 

そういうとみほは駆けていった。

 

「梓ちゃん!」

 

「あ…隊長…」

 

「今、小梅さんに一人装填手を手配してもらうように頼んでおいたから。気がつかなくてごめんね…」

 

「いえ、こちらこそありがとうございます。隊長と紗希のために今回の戦い、必ずや勝利します!期待していてください!」

 

「うん!でも、無理はしないでね!」

 

その時である。上空に飛行機の飛行音が聞こえてきた。みほは空を見る。

 

「あれは…スーパーギャラクシー…サンダースの連中ついに来たか…えへへ。どんな戦いを見せてくれるんだろう。楽しみ。」

 

みほは空を見ながらニコニコと楽しそうに笑う。そして、優花里を探し始めた。

 

「おーい!優花里さん!!」

 

「あ!西住殿!何ですか?」

 

「優花里さん。ちょっと危険が伴うけど、偵察に出てくれないかな。新しく援軍に入ったサンダースの戦力が知りたい。」

 

「わかりました!」

 

優花里は出かけていった。見つからないように慎重にしかし、急ぎながら生徒会の拠点の近くの高台に向かう。

 

「えっと、ここで見えるかな…?」

 

優花里は高台に着くと双眼鏡を覗き込む。

 

「あ!あれは!?」

 

優花里は思わず目を剥いた。そこにあったのは巨大な何かだった。優花里はそれが何かを知っていた。

 

「あれは、カール自走臼砲!それに、ファイアフライも!これは…かなり厳しい戦いに…まさか歩兵にカールの洗礼を浴びせかけることはないはず…しかし…そういえば歩兵は…あれは…3000人規模…これは今まで通りにはいきません…」

 

優花里は恐怖でしばらく動けなくなっていたが、やがて立ち上がり、みほのもとへ駆けていった。

 

「に…西住殿!大変です!西住殿!!」

 

「優花里さん!どうしたの?」

 

 

優花里は息を切らしていた。みほは、心配そうに声をかける。

 

「優花里さん。とりあえず落ち着いて。そして、何があったか教えて。」

 

みほは優花里に水を差し出した。優花里は水を一気に飲み、まくしたてるように話し始めた。

 

「じ…実は…サンダースの援軍が…」

 

そこまでいうと優花里はためらってしまった。この窮地をどう言えばいいのかと困ってしまったのだ。

 

「優花里さん。見たことは隠さず言って。」

 

「は…はい。実は、サンダースが持って来た中にカール自走臼砲とファイアフライが…それに3000人の兵士も…」

 

「くっ!!カール!サンダースの連中そんなものまで…それにファイアフライも…戦車を失ってはこの戦争の勝ち目はわからなくなる…それに、聖グロは何やってるのかな?まだこないのは流石に…何かおかしい…」

 

みほが苦虫を噛み潰したような顔をした。まさか、みほもカールまで持ってくるとは予想がつかなかったようだ。みほにとって初めての窮地だった。

 

「しかし、西住殿。まだ、カールは組み終わってないようです。組み立てにはまだ時間がかかるでしょう。今、責めておけば優位に立てるのでは?」

 

「うん。そうだね。優花里さんありがとう。」

 

みほは、再び全員を集合させた。

 

「諸君!卑怯なサンダースの援軍が生徒会側に到着した!その数は歩兵3000、そしてファイアフライ1両とカール自走臼砲1両だ!今回から今まで通りにはことが運ばないだろう。しかし、必ずや勝つ!勝たねばならないのだ!我々はあの卑怯な機銃掃射で仲間を失った!通常の戦闘で仲間を失う、これは仕方がないことかもしれない。しかし、戦車に航空戦力で攻撃など許されない!これをサンダースは実行した!我々は卑怯なサンダースと生徒会を必ず討たなければならない!皆、これからますます厳しい戦いになるが気を引き締めて戦闘に臨んでほしい!それでは今から20分後私たちは地獄へ向かう!以上だ!」

 

みほが訓示を行うと、うさぎさんチームの梓が声をあげた。

 

「私たちは、サンダースを生徒会を絶対に許さない!私たちは絶対に勝利します!紗希のために!」

 

歓声が湧き上がった。皆、興奮していた。みほはその姿をニッコリと笑って見ていた。

最後の訓示から20分後、進軍が開始された。その姿は圧巻である。先頭に弾除けも兼ねて戦車がその後に歩兵15000人が付いてくるという形だ。途中までは一緒に進軍する。その姿は圧巻だった。

途中で搬入口制圧隊と別れ、みほたちは前方に広がる森へ向かう。みほはこの森を戦車でなぎ倒し、簡単に進めるものだと考えていた。しかし、現実は甘くなかった。突然、銃を連射する音が聞こえた。

 

『何が起きたの?』

 

みほは、無線で確認する。すると、無線が叫ぶ。

 

『敵です!突然撃ってきました!どこから撃ってるか見えません!』

 

生徒会はまたもやゲリラ戦を展開する模様だ。みほは舌打ちした。

 

「今回は前回のようにはいかないか…仕方ない…」

 

「西住殿、どうしますか?」

 

一緒にⅣ号に搭乗していた優花里が心配そうにみほを見つめている。

 

「こうなったらやることは一つだよ。えへへ。」

 

みほはニッコリと笑う。そして、目を瞑りふぅっと息を吐くとみほは無線に向かって叫んだ。

 

『ゲリラを逃がすな!草の根わけてでも探し出せ!そして全員皆殺しにしろ!!殺した者は全員、腹を裂き晒してやれ!!』

 

その時のみほの顔は狂気顔だった。その顔を見て優花里は震え上がった。

 

『了解です!』

 

みほは目を瞑り拳をぎゅっと握りしめていた。

 

つづく

 

 

 

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