本日はそこまで話は進みません。
いくら知波単とはいえ知波単航空隊では英語が必須のようです。それではどうぞご覧ください。
知波単の輸送機は知波単航空管制に離陸と飛行ルートの承認の許可を取ろうとしている。離陸までもう少しあるようだ。優花里は自らの搭乗する輸送機を見回した。輸送機など滅多に乗る機会はない。貴重な体験だ。優花里の心は軍用機に乗れて嬉しいような今から犯罪行為をしに行かなくてはならなくて気が重いような、複雑な気持ちだった。そんな優花里の表情を察したのだろうか。今日、操縦を担当する知波単航空隊の操縦士が優花里のところにやってきた。座りながらあちこち見回している優花里の側にしゃがんで微笑み、話しかけた。
「本日、この零式輸送機の機長を担当する知波単第十輸送航空隊隊長遠藤幸子です。」
遠藤幸子は握手をするために手を差し出した。優花里はその手を取り、挨拶を返した。
「遠藤殿ですか。大洗女子学園諜報活動局局長の秋山優花里です。よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。まだ、管制との交信がまだですし、出発までにはしばらく時間があります。せっかくですからコックピットを見ていきませんか?」
優花里は目を輝かせた。まさかコックピットに案内されるとは思わなかったのである。
「いいんですか!?お願いします!」
戦闘機などの飛行機は優花里にとっては専門外のことではある。しかし、ミリタリーオタクとして滅多に乗れない軍用機のコックピットを見ることができるなんて夢のような話である。優花里はせめてこの貴重な体験で誘拐という犯罪行為をするという罪悪感を紛らわせようとしていた。幸子はニッコリと微笑みながら優花里たちをコックピットに案内した。コックピットには4人の乗務員がいた。
「ようこそ。ここがコックピットです。私を含めて5名の乗務員が操縦と交信を担当しています。」
「うわあ!飛行機のコックピットなんて初めて見ました。あれ?機器の中で新しそうなものがありますね?計器類が特に…」
「さすが優花里さんですね。はい。実は計器は全て最新のものに変えてあります。実は今から5年前までは当時のものをそのまま使用し、有視界飛行方式というパイロット自身の目視による飛行方法を用いていたのですが、5年前に輸送機と偵察機が異常接近するという重大事故が起きてしまって…幸いにも死者、負傷者ともにいなかったのですが、有視界飛行方式はやはり高度な技術が必要になり危険も高いということで輸送機は計器飛行方式に変更になったのです。それに伴って計器も全て一新されました。輸送機だけっていうと輸送機のパイロットだけレベルが低いみたいでなんだか悔しい気もします。まあ、輸送機は拠点から拠点に荷物や人を運ぶだけですからね。でも、楽なのはいいことです。他の飛行機は作戦によって目的地や飛行ルートが全く違いますからどうしても有視界飛行方式じゃないといけないみたいです。」
「ちょっと寂しい気もしますね。安全には変えられませんから仕方ないことですが…」
優花里は少し寂しそうな表情になる。確かに、大空を飛び回っていた当時のまま保存しておきたいが現在も運用されているのなら仕方ない。安全が第一である。すると今度は幸子が苦笑いをした。
「5年前まで英語はそこまで必要なかったのですが、やはり計器飛行方式だと管制官とのやりとりに英語が必須になるのでそこらへんは5年前までのやり方が羨ましくなります。元々私たち知波単の生徒は英語が大の苦手で…そもそも横文字というのがなんとも読みにくく…」
「確かに英語は難しいですからね。それにしても今どき横文字に違和感を覚えるなんて日本人がいるとは…」
優花里と幸子はお互いの顔を見つめて笑いあった。
「あ、そうだ。せっかくなので管制官との交信見ていきますか?大洗には航空管制がないので今回は管制圏内の知波単の管制官が司ります。」
「ぜひ、見せてください。」
「わかりました。一応用語の説明をしておきますね。知波単レディオというのが知波単の管制を担当する部門のコールサインです。そしてこの飛行機のコードはL2D2です。呼びかける時は所属と飛行機のコードを名乗って交信を開始します。それでは今から交信を開始します。」
幸子はニコリと笑うと無線を手にして、流暢な英語で交信を始めた。
『Chihatan Radio Chihatan Tenth Transport Air Corps L2D2 (知波単レディオ 知波単第十輸送機航空隊 L2D2)』
『Chihatan Tenth Transport Air Corps L2D2 Chihatan Radio go-ahead (知波単第十輸送機航空隊 L2D2 知波単レディオ どうぞ)』
『 Chihatan Radio Chihatan Tenth Transport Air Corps L2D2 Oarai Girls' College No. 1 is a highway. Request clearance.To Centrair. level 100.(知波単レディオ 知波単第十輸送機航空隊 L2D2 大洗女子学園1号幹線道路です。高度10000フィートで中部国際空港への飛行承認願います。)』
『To Centrair. level 100 standby.(中部国際空港へ飛行高度10000フィートにて飛行承認 お待ちください。)』
『Chihatan Tenth Transport Air Corps L2D2 Chihatan Radio.clearance.(知波単第十輸送機航空隊 L2D2 知波単レディオ 飛行承認です。)』
『Chihatan Radio Chihatan Tenth Transport Air Corps L2D2 go-ahead. (知波単レディオ 知波単第十輸送機航空隊 L2D2 どうぞ。)』
『ATC clears Chihatan Tenth Transport Air Corps L2D2 To Centrair airport.Via Reversal 1 Deperture,Kashima Transition then flight planned route. maintain flight level 7000 feet expect flight level 100 squawk 2311.(知波単第十輸送機航空隊 L2D2 中部国際空港への飛行を承認します。出発はリバーサル1ディパーチャ、カシマ・トランジション以降飛行計画通り。トランジションまで7000フィートを維持、飛行高度10000フィート。スコークナンバー2311)』
『Chihatan Tenth Transport Air Corps L2D2 ATC clears Chihatan Tenth Transport Air Corps L2D2 To Centrair airport.Via Reversal 1 Deperture,KashimaTransition then flight planned route. maintain flight level 7000 feet expect flight level 100 squawk 2311.(知波単第十輸送機航空隊 L2D2 中部国際空港への飛行を承認します。出発はリバーサル1ディパーチャ、カシマ・トランジション以降飛行計画通り。トランジションまで7000フィートを維持、飛行高度10000フィートスコークナンバー2311)』
『Chihatan Tenth Transport Air Corps L2D2 read back in the collect QNH 2998.(知波単第十輸送機航空隊 L2D2 復唱に問題ありません。QNH2998)』
『Chihatan Tenth Transport Air Corps L2D2 QNH 2998 (知波単第十輸送機航空隊 L2D2 QNH2998)』
優花里は目を丸くしながら交信の様子を見ていた。幸子はふぅっと息を吐く。
「はい。これで飛行ルートの承認を得ました。あとは離陸の許可を待つばかりです。今回承認されたルートはリバーサル1ディパーチャ、つまり学園艦を離陸後西に旋回し、その後カシマ・トランジションなので鹿島灘から中部国際空港に向かう転移経路です。」
しばらくの沈黙の後、優花里は思わず拍手をした。
「すごいです!こんな難しい交信を英語でいつもやってるんですか!?」
「はい。まあ、英語が国際標準ですからね。私たちも緊急の時は一般の空港に降りないといけないのでどうしても英語がいるのです。」
「航空隊も大変ですね。」
「まあ、大変ですけどやりがいはあります。さあ、もうすぐ離陸ですよ。」
「ああ、そうですね。貴重なものを見せていただきありがとうございました。では、失礼します。」
「お安いご用です。それじゃあしばらく快適な空の旅を!」
優花里たちは興奮しながら席に戻る。しかし、席に着くと突然、残酷な現実に引き戻される。特に優花里の落ち込みようは酷い。優花里はインカムをつけて下を向いて座っていた。するとそんな優花里の心情とは裏腹に明るい声でアナウンスが皆のインカムに入った。
『改めまして、皆様こんばんは。当機は間も無く大洗女子学園を離陸いたします。機長は遠藤、副操縦士は茅野、そして私は皆様の任務のサポートを担当いたします、特殊情報部事務局次長蒲池でございます。皆様の快適な空の旅、そして私はアンツィオ高校まで同行させていただき、皆様の任務遂行を終始サポートいたします。』
優花里はこのサポートの意味を察していた。サポートという名の監視である。きっとこれもみほの差し金だろう。きっとこの作戦を受ける前、命令書の受け取りを拒み、みほに反発し、抵抗したため優花里が他の学園艦への亡命などを計画することを警戒しているのだろう。実に周到な備えだった。大洗女子学園の学園艦における大動脈とも言える幹線道路を滑走路代わりに使い、離陸を開始した。みほは少し離れたところから手を振りながらずっとその様子を見送っていた。コックピットからは相変わらず英語の交信が聞こえてくる。プロペラが回り、スピードが上がり幹線道路を滑走し始めた。そして輸送機は離陸した。優花里たちはしばらく空の旅だ。離陸からしばらくは座っていないと危ない。高度が安定したというアナウンスが入るまで座っているようにと言い含められていたので指示に従っていると機長の幸子からアナウンスが入った。
『操縦室よりご案内申し上げます。機長の遠藤です。現在、当機は鹿島灘に差し掛かり高度10000フィート、メートルにいたしますと、上空3048メートル巡航速度時速278kmを持ちまして全て順調に水平飛行しております。現在をもちましてシートベルト外していただけます。最新の情報によりますと、目的地のアンツィオ高校付近の空港、中部国際空港の天気は晴れ、気温15度の報告を受けております。到着時刻は22:30を予定しておりますが、状況に応じて変化いたします。また、皆様におかれましては任務の成功を心からお祈りしております。また、早期の戦争終結と皆様に平穏と平和な生活が訪れますことを心からお祈りしております。また、今回の戦争において肉親やご友人を亡くされた皆様、心からお見舞い申し上げ、哀悼の意を表します。』
「遠藤殿…」
優花里はこのアナウンスを聞いて涙を流した。他の者も同じようにすすり泣く声が聞こえてくる。やはり、皆この戦争に傷ついているのだ。優花里は涙を拭い、やおら立ち上がり、奈那以外にはじめて今回の任務について説明を始めた。
「私たちは今から、アンツィオ高校に向かいます。そこで、アンツィオ高校の戦車隊隊長アンチョビ殿、本名安斎千代美殿の誘拐が今回の任務です。生きて誘拐することが今回の目的なので、絶対に傷つけてはいけません。先発した知波単第一偵察機航空隊の二式艦上偵察機一二型の報告によると、アンツィオ高校の学園艦は現在、愛知県の知多半島から10kmほど沖合を本拠地である静岡県清水港に向かって航行中です。現在大洗女子学園の学園艦が福島県沖にいるのでアンツィオの学園艦まではしばらくかかるので各員、準備をお願いします。到着は深夜です。目立たないように夜陰に紛れてパラシュートでタイミングを合わせて一緒に飛び降り、上陸します。海に落ちて死にたくなければ勇気を振り絞って一緒に飛んでください。」
機内は少しざわついた。優花里は申し訳なさそうに下を向く。しかし、元生徒会の局員たちは優花里を心配させまいと励ました。
「了解です!必ず任務を成功させましょう!」
「皆さん…ありがとうございます…」
優花里と彼女たちの間には固い絆で結ばれていた。優花里は皆に頭を下げ何度も謝り何度もお礼を言った。
「皆さん…本当に申し訳ありません…そして、ご協力いただき本当にありがとうございます…」
すると彼女たちはニコニコ微笑む。
「優花里さんのためならなんでもすると誓ったんですから当たり前ですよ。」
優花里はその言葉を聞き輸送機の中でずっと泣いていた。するとあっという間に時間は過ぎ去り、再びアナウンスが聞こえてきた。
「皆様。操縦室よりご案内申し上げます。機長の遠藤です。現在静岡県に差しかかろうとしております。もう間も無く高度を1000メートルまで下げ、皆様をアンツィオ高校上空で放出いたします。到着時刻は定刻通り22:30を予定しております。皆様、ご準備をお願いいたします。なお、この飛行機は中部国際空港に駐機しております。無事任務を完遂し、無事お戻りになられることを祈っております。」
優花里は局員たちにアンツィオ高校の制服とパラシュートを装備するように指示した。そして、ちょうどパラシュートを全員つけ終わった時扉が開く。
「それじゃあ、皆さん!行きますよ!せえの!」
皆ためらいなく一斉に飛び出した。優花里たちを乗せていた輸送機は全員の放出を確認すると中部国際空港に向かって飛んでいく。そしてとうとう優花里たちはアンツィオ高校に上陸した。優花里たちが降りた場所は広場のようだ。辺りを見回すと、イタリア風の建物が数多くあるのに気がつく。さすがアンツィオ高校である。急いで海に行き人目につかないように慎重にパラシュートを投棄してその日はもう遅いしひどく疲れてしまったのでその最初に降りた広場で眠ることにした。
次の日の朝、優花里は大声と自分を揺する何者かによって目が覚めた。
「おい!おい!大丈夫か!?」
「あ、起きましたね。大丈夫ですか?」
「こんなところで寝てちゃ、風邪引くっすよ!」
「うーん?誰ですか…?」
「良かった…死んでるのかと思った…こら!いつまで寝ぼけてるんだ?もう学校行く時間だぞ?ところで、なんでこんなところで寝てるんだ?」
優花里は目の前の3人は訝しげな表情を浮かべている彼女たちの質問になんて答えようかと苦難していた。すると局員たちがフォローしてくれた。
「私たち、昨日ここの学園艦に引っ越してきたんですけど地図に弱くて…寮の位置がわからなくなってしまって…さまよい歩いていたらいつの間にか周りに誰もいなくなってしまって…」
「それで途方に暮れて野宿ってわけか…なんていう寮なんだ?」
「確か、住民登録をするときにドゥーチェと同じ寮だって言ってた気がします。」
優花里はハッとした。そういえばアンツィオの隊長、アンチョビは皆からドゥーチェと呼ばれていたのだ。確かに、アンツィオでドゥーチェと同じ寮といえば必然的にアンチョビの所在地がわかることになる。元生徒会軍の者の中にもかなりの切れ者がいるようだ。すると目の前のアンツィオの生徒たちは目を見開き驚きを隠せないといった様子だ。
「それって…」
「ドゥーチェって姐さんと同じ寮ってことっすか!?」
「それじゃあ、私と来るといい。案内しよう。」
「ええっと、貴女は…?」
優花里は念のため名前を尋ねる。するとニコリと爽やかに笑いながら挨拶した。
「そういえば自己紹介忘れてたな。アンチョビだ。戦車道の隊長やってる。」
「私はカルパッチョです。副隊長です。」
「私はペパロニっす。」
優花里は驚いた。まさか探していた人物が1日で見つかるとは思ってもみなかったのだ。何も知らないアンチョビは優花里たちを寮まで連れて行った。そして、疲れているだろうと行って部屋に招いてお茶まで淹れてくれた。優花里はお茶を飲みながら頭の中にアンチョビの部屋の間取りを叩き込んだ。そして、色々とアンチョビに質問をした。特に習慣や行動パターンに関する質問だ。まさか優花里たちが自分を誘拐しようと狙っているなんて思いもしない。またもやアンチョビは正直に答える。優花里は今まで誘拐した経験から照らし合わせて今回の任務は簡単そうだと考えた。アンチョビは疑うことを知らないらしい。純粋な心の持ち主だった。騙して誘拐してしまうことなんて簡単なことだろう。しかし、こんな純粋な心の持ち主を踏みにじるような真似をするのは心がひどく痛む。しかし、命令ならばやらなくてはならない。優花里は皆を集めて誘拐の日取りを言い渡した。
「皆さん。アンチョビさんの誘拐の日時が決まりました。アンチョビさんたちは今日私たちの歓迎会をアンチョビさんの部屋で開いてくれるようです。その時に心苦しいですがアンツィオの皆さんにこの睡眠薬入りの酒をガンガン飲ませて眠らせて誘拐しましょう。アンチョビさんをここから連れ出すのは2500を予定しています。そのあと、この学園艦の搬入口にアンチョビさんを入れた鞄を隠します。そして翌朝コンビニの定期船に乗り込んで脱出します。」
「了解です。」
「脱出ルートは我々が確保してありますのでご安心を。現在この学園艦はまだ蒲郡のあたりを航行中ですから明日のコンビニ船は三河港の旧豊橋港を拠点にしていると思われます。ですから明日はコンビニ船に三河港まで載せてもらいそこから徒歩で豊橋駅まで出ていただいて名鉄名古屋本線に乗り、神宮前で中部国際空港行きの特急列車に乗り換えていただき、中部国際空港到着後速やかに零式輸送機に搭乗していただき任務完了です。そこまで私がご案内しますからよろしくお願いします。」
飛行機の中で蒲池と名乗ったその女子生徒は任務遂行後の動きについてを付け加えた。
「了解です。ありがとうございます。それでは皆さん。解散です。夜を待ってまた広場に集合してください。」
皆はそれぞれ散っていく。優花里はブラブラと適当にあてもなく歩いていたが、海の見える公園にやってくると今日何度目かわからない涙を流しながら心の中でアンチョビに詫びた。
(アンチョビ殿、申し訳ありません。私も本当はこんなことしたくないのです…でも、生きるためには仕方ないのです…許してください…)
するとどこからか、声が聞こえてきた。
「優花里さん!」
誰かと思って振り向くとそこには蒲池が立っていた。
「蒲池殿ですか…どうしましたか?」
「いえ、たまたま優花里さんがいたので…」
「そうですか…」
しばらく沈黙が続く。こういう時何を話せばいいのかよくわからない。すると、蒲池がおもむろに口を開いた。
「優花里さん。私の正体に気がついていますよね?私がなんのために優花里さんとともにこの作戦に派遣されたのか。」
「ええ。気がついています。私の見張り、ですよね。私が裏切らないか、きちんと任務を遂行するか。そして、さしずめ西住殿にもし遂行しない時は殺して私の首でも持って来いと言われている。そうですよね?」
「え、ええ。そうです。でも、なんで。なんでそんなに警戒されてまで西住さんに従うんですか?逃げてしまえばいいのに…」
優花里は珍しく感情をあらわにした、優花里は怒りで一瞬我を忘れていた。優花里は柵に拳を打ち付ける。
「あなたに何が分かるというんですか!?逃げる!?逃げられるならどれだけ楽なことでしょう!でも、逃げられないんです!逃げても逃げても西住殿はどこまでも追ってくる!西住殿は人間ではなく悪魔なのですから…あなたもそのうち知ることになります…西住殿の恐ろしさを…」
蒲池は優花里が大きな声を出して威圧的になったことに驚いていた。すると優花里は悲しそうな表情をする。優花里は罪もない蒲池に当たりちらし怒鳴ってしまったことに自己嫌悪を覚えた。
「大きな声を出してしまい申し訳ありません…今は一人にしてください…」
「はい…差し出がましいことを言ってしまい申し訳ありませんでした…」
蒲池は去っていく。優花里は遠い目をした。優花里はわかっていた。これからアンチョビがたどる恐怖の運命を。誘拐されたアンチョビはみほの秘密を知った以上無事に帰ることはできないだろう。もしかしたら用済みになったらさらに致死率の高い生物兵器のモルモットにされるかもしれない。それでも優花里にはみほに逆らうことも止めることもできない。どうしようもないのだ。みほに言われるがままアンチョビを誘拐するしかないのだ。優花里は罪悪感に押しつぶされそうになりながら目を泣きはらし夜が来るのを待っていた。
つづく
交信内容と輸送機の高度や速度については間違えているところがあるかもしれません。その時は教えてください。なおします。