さて、今日私は20歳になりました。これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。
さて、24時間テレビが始まりましたね。夏が終わりますね。一年あっという間だ…
なんたる傲慢。優花里は憤っていた。拳をぎゅっと強く握り身体が怒りで震える。みほは最初から人間なんて信じてはいなかった。この西住みほという悪魔は人間の尊厳や基本的人権、自由など何もかも全てを奪い取り、神に取って代わろうとしている。そして人の生死までもみほが基準だ。みほに死ぬべきだとか、利用価値がないと判断されたら死ぬしかない。殺されるのだ。みほにとっては利用価値のない者の命などゴミに過ぎないのだ。もしかして自分も利用するだけ利用されて価値がなくなったらゴミのように処分されてしまうのではないのか。これが理想の世界などというみほ。理想な訳がない。みほにとっては理想なのかもしれない。しかし、優花里や他の人たちにとっては単なる地獄だ。プログラムされたロボットのように何も考えることなくみほの趣味で出される残虐な命令をただ遂行するだけ。そんな世界の人間になるのなんてまっぴらごめんだ。みほのやっていることはただの幸せの押し売りだ。優花里は唇を噛む。そんな優花里の心を見透かしたようにみほは微笑みながら優花里の肩を抱きながら耳元で囁いた。
「優花里さん。私に逆らって血祭りにあげられるか、それとも私に支配されて幸せに暮らすかどっちがいいかな?優花里さんなら、どっちを選択するべきかわかるよね?ふふふ。」
優花里は身体を硬直させる。みほの息が耳にかかるたびにビクリと身体を震わせている。優花里は声にならない声で呟く。
「わかってます…わかってますよ…」
「よかった。えへへ。」
満面の笑みを浮かべるみほ。優花里は相変わらず身体を硬直させて、下を向いていた。するとみほは突然優花里に後ろから抱きついて耳を舐め始めた。
「ひゃうっ!ににに、西住殿なな、何を!?」
「ん?えへへ。」
みほは微笑むだけで優花里の耳を舐めるのをやめない。それどころか首筋まで舐めてくる。くすぐったくて仕方がない。優花里は恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「西住殿…恥ずかしいです…やめてください…」
「えへへ。優花里さん可愛い。やだ。やめてあげない。優花里さんがいけないんだよ。優花里さんが可愛すぎるからついいじめたくなっちゃうの。ほらほら優花里さん。もっと舐めちゃおうかな。うふふふ。」
みほは意地悪そうに笑うと再び優花里の耳を舐めた。優花里の顔はますます真っ赤に染まる。優花里は逃れようと必死に頭を動かすがみほにがっしりと頭を掴まれて逃れられない。
「うぅ…西住殿…ひどいです…悪趣味ですよ…」
「うふふふ。」
優花里の精一杯の抗議もどこ吹く風といった様子でみほはニコニコと微笑む。そしてみほは優花里にとんでもない要求をしてきた。
「優花里さん。私の血を飲んでくれないかな?」
優花里は耳を疑った。ついにみほが壊れたのかと思った。しかし、みほは真剣な顔だ。
「に…西住殿…?」
みほは手を丁寧に洗って短刀で親指を切ると先ほどのコップとは別のコップに血を流し込む。ポタポタと赤いみほの血がコップの中に滴り落ちる。みほの血はとめどなくコップに滴り落ちる。飲めるほど溜まったころ、みほはそのコップを優花里に差し出した。
「ほら、優花里さん。飲んで?」
「え…?」
優花里が戸惑っているとみほはそのコップを優花里の唇につきつける。優花里はそれでも受け取らない。しびれを切らしてみほは懐から拳銃を取り出して優花里の心臓に銃口をつきつける。
「優花里さん…手荒な真似はしたくない。私が笑っているうちに飲んだほうがいいと思うよ。さあ、優花里さん。私の血を飲め。」
もはや抵抗はできないと思ったのか優花里はコップをみほから受け取るとしばらくコップの中の赤い血を見つめていたが目を瞑り一気に飲み干した。口の中に鉄の味が広がる。みほはその様子を悪魔のように笑いながら眺める。そして優花里の目を愛おしそうに見つめ、優花里の頰に手を当てる。
「これで優花里さんと私は一心同体。例え私がいなくなったとしても優花里さんの中で私は生き続けることができる。私と優花里さんは二度と離れることはない。優花里さんの血になって私は優花里さんを支配する。これで優花里さんは私のもの。私だけの操り人形…うふふふ…だって私たちは血で結ばれたんだもの。あはははは!」
優花里はみほに脅されて悪魔の血を口にしてしまった。みほは優花里の血となって優花里を支配しようとする。みほの悪魔の血は優花里の身体で毒を撒き散らし乗っ取って好き放題に優花里を操ろうとする。そんな感覚が優花里に走った。優花里は呆然とへたり込んだ。悪魔の血を自分の身に入れてしまったことが怖くて仕方ないのだ。ぶるぶる震えているとみほは優花里に手を差し伸べた。
「さあ、優花里さん。行こ?」
「西住殿…どこへ…?」
みほは何も言わずに微笑むと細菌入りのお茶を片手に持つと、治療もすることなく、血が流れている手で優花里の腕を掴み、歩き始めた。優花里の腕にみほの生温かい鮮血が伝って滴り落ちる。みほはそんなこと気にしないとでもいうかのように優花里を引っ張る。優花里はまるでみほに弄ばれるかのようにただ引っ張られていくだけだった。みほは、拠点のメインとなる建物から出て、主に毒ガス実験などが行われる建物に入る。
「さあ優花里さん。こっちだよ。見てごらん。」
優花里はみほに促されて小窓をのぞくと、アンチョビがベッドに寝かされていた。しかし、この部屋はおかしかった。何がおかしいか。それはアンチョビが寝かされている環境だ。5月だというのに電気ストーブが置かれているのだ。しかもアンチョビのベッドには毛布と冬用の羽毛布団が被せられていた。薬の効果でアンチョビは眠っているが暑さで苦しそうに寝ている。
「西住殿…なぜアンチョビ殿をこんなところで寝かせているのですか?」
「うふふふ…優花里さんいいところに気がついたね。もちろんわざとだよ…えへへ。脱水症状にせるために…そしてこれを…ね?」
みほはクルクルとコップを回しながら微笑み、部屋の中のアンチョビを見ていた。そうだ。みほはわざと脱水症状にさせて飲まざるを得ない状況を作り出そうとしているのだ。本能的に水を欲するような状態にして飲むことを拒否できないようにしようとしたのだ。優花里はみほの思惑に気がつき恐ろしくなった。
「そんな…」
優花里は声にならない声で呟く。そして、優花里も息を呑みながらアンチョビを見ていた。しばらく見ていると薬が切れたようでアンチョビは目を覚ます。アンチョビはダラダラと汗をかきながら部屋の中で叫んだ。
「ん…うーん?ここはどこだ…?確か私は飛行機で連れ去られていたはず…って暑い!なんだ?今は5月だぞ?5月に暖房焚いて羽毛布団に毛布なんてどれだけバカなんだ!?汗だくだ…喉乾いたな…水が欲しい…」
その言葉を待っていたかのようにみほは部屋に入る。アンチョビは突然現れたみほにギョッとしたような表情だ。優花里はとてもじゃないが罪悪感でアンチョビの顔を見ることができなかった。
「アンチョビさん。目が覚めましたか?」
「おまえは西住流の…おまえが優花里たちに私を連れてくるように命令したのか…?」
みほはアンチョビの問いかけにニコニコ楽しそうに笑いながら答えた。
「西住みほです。よろしくお願いします。そうです。私が優花里さんに命令して連れてくるように頼みました。あ、そうだ。暑いですよね。喉乾いたでしょう?お茶をどうぞ。」
相当喉が渇いていたのだろう。アンチョビはみほの手からコップを奪い取るようにして細菌入りのお茶を全て飲み干した。みほはその様子をニヤリと悪魔のような笑みを浮かべている。みほの計画通り細菌で汚染されたお茶をアンチョビに飲ませるとみほはアンチョビが眠っていたベッドに腰掛け、アンチョビの肩に手を回す。そしてアンチョビの耳元で囁く。
「えへへ。アンチョビさん。お金儲けしませんか?」
「え…?どういうことだ…?」
アンチョビはお金儲けと聞いて少しだけ興味を持ったような顔をした。みほはその表情を見逃さずに続ける。
「アンツィオ高校、最近P40買ったんですよね?それでお金がないと。アンチョビさんたちを助けてあげようかなって思いまして…」
「なぜそれを知っている…確かにお金がないから助けてくれるのは嬉しいが…詳しい話を聞かせてくれ。」
アンチョビは俄然興味を持ち始めた。今までのビクビクとした表情とは全く違う。目を輝かせている。これはいける。みほはそう思ったのだろうか。みほは話を一気に決めようとした。
「はい。アンチョビさんは私たちが生徒会との間で戦争をしていることは知っていますよね?」
「ああ、そりゃあな。角谷がうちにも電文を送ってきたから。」
みほはなるほどと頷く。そしてみほはついに話の核心をアンチョビに話し始めた。
「それでアンチョビさんには生徒会側に食事の支援をして欲しいんです。」
「はあ?おまえ、頭がおかしくなったのか?なんで敵の支援などしろっていうんだ?」
純粋なアンチョビはますますみほが何を言いたいかわからないといった怪訝な顔をしている。
「ぷふっ!あははは!アンチョビさん!おもしろいこと言いますね!本当に純粋で真っ白だ!あははは!」
みほは吹き出した。そしてパンパン太腿を叩きながら可笑しそうに腹を抱えて笑いだす。笑って笑って笑い転げる。
「何がおかしいか?だってそうだろ?わざわざ食事の支援をするなんて。」
「あははは!確かにそうです。食事を用意して食べさせるだけなら。でも、今回はこれを入れて欲しいんです。」
みほは懐から試験管を取り出した。そしてアンチョビに差し出す。アンチョビは手にとってその試験管を見つめる。
「なんだこれは?水か?」
「これは、細菌の培養液です。主に食中毒の原因菌が入っています。これを入れて提供して欲しいんです。要するに生物兵器の散布をアンツィオ高校の皆さんにはして欲しいんです。」
「生物兵器…?」
アンチョビは訳がわからないといった表情をしていた。みほは畳み掛けるようにアンチョビに語りかける。
「やってくれたらそれなりの報酬はお渡しします。やってくれますよね?ふふ」
アンチョビは目を瞑って心の中で葛藤しているようだった。アンチョビの心の中で天使と悪魔が戦っている。そしてアンチョビは決心したように目を見開く。
「断る。」
それはみほが望む答えではなかった。みほから全ての人に表情が一瞬抜け落ちた。そしてみほはすぐに笑顔になり、アンチョビに問いかける。
「どうしてですか?」
「私たちの料理は兵器じゃない。私たちは兵器にするために料理を作っている訳じゃない。私たちは、みんなが美味しいっていって幸せな気持ちになって欲しくて料理を作ってるんだ。確かに、金は欲しい。でも、魂を売ってまで金を手に入れようとは思わない。それに、私たちの料理で人が苦しむ姿なんて見たくはない。だからやらない。話がそれだけなら帰らせてもらうぞ。」
アンチョビは立ち上がってここから出ようとした。しかし、みほはアンチョビの肩を掴むと優しく微笑みながら呟く。
「帰さないよ。帰れる訳ないでしょ?私の秘密を知ってしまった以上、アンチョビさんには私の監視下で暮らしてもらいます。まあ、それもあと数日くらいの命ですけどね。うふふふ。使えない道具は処分するだけです。」
「離せ!絶対に帰る!私は帰らないといけないんだ!あいつらのためにも!」
アンチョビはみほを必死に振り切ろうとするがみほの握力が強くて逃れられない。みほはアンチョビから鞭を奪い取るとそれで頰を叩いて拳銃をアンチョビにつきつける。
「まだわからないんですか?ここ大洗に来た以上私が絶対的存在なんです。アンチョビさんの命など簡単に握りつぶすことができるんです。さあ、アンチョビさん。私の頼みに背いて無残な死を遂げるか、私の頼みを聞いて幸せな生活を送るか。どちらがいいですか?ふふ…自分がどうするべきかはわかりますよね?」
みほはアンチョビに試験管を差し出しながら微笑みかけた。その笑顔は真っ黒に染まっている。アンチョビは項垂れながら細菌が入った試験管を受け取った。
「わかった…やる…やるから…」
それはアンチョビがみほに屈したことを示す絶対的証明だった。みほは満足そうに満面な笑みを浮かべる。
「あはっ!あははは!それでいいんですよ!私に従ってさえくれれば!貴女は私の支配下にいればいいんです!あははは!アンチョビさんさへ落としてしまえばあとは簡単!これでアンツィオも私のもの!まさかこんなに早く手に入れる目処がつくなんてね!あははは!まさに計画通り!あははは!ああ!楽しい!」
「アンツィオは…好きにさせない…絶対におまえのものにさせてたまるか…」
アンチョビは声にならない小さな声で呟いた。みほはにっこり微笑みちらりと拳銃をアンチョビに見せる。
「いいんですか?ここで私にそんな口を聞いて…ふふ…ここでは私が絶対だって言いましたよね?お望みなら拷問で死んでもらってもいいんですよ?」
アンチョビはみほの言葉に後ずさりをしながら必死に首を横に振る。みほはそれを悪魔のような笑みを浮かべながら眺める。みほは自身が編み出した、人を確実に支配して思い通りに操る方法でいまだに失敗したことがない。だから、みほはこの方法に絶対的な自信を感じているようだった。何でもかんでも自分の思い通りになる。そんな感覚にみほは酔いしれ、みほの支配欲はどんどん膨らんでいた。
つづく