恋する梓です。
話は少し時を遡る。優花里がアンツィオに輸送機で出かけている間もみほの残虐行為は止まらない。優花里が出かけている間に大洗で起きたできごとも述べなくてはならない。
優花里が知波単の輸送機で飛び立った後、みほは執務室に戻って梓を呼び出した。梓はすぐにやってきた。トントンと執務室の扉を叩く音が聞こえる。みほは扉に向かって微笑みながらそのノックに応答した。
「どうぞ。」
「失礼します。隊長、お呼びですか?」
「突然呼び出してごめんね。ちょっとこっちに来て。」
みほは手招きをしながら梓に近くに寄るように促す。梓は少し不安な顔をして戸惑っている。みほが微笑んでいる時は大抵何か企んでいる時だ。もしかして近寄った瞬間短刀などで刺されるかもしれない。そんなことが脳裏に浮かんでしまうのだ。そんな様子の梓を見てみほはおもしろそうに笑う。
「あははは!何もとって食べようってわけじゃないよ。そんな顔しないでこっちにおいで。」
みほに散々促されて梓はようやく覚悟を決めたように苦い唾をゴクリと飲み込むとみほが座る机の前に歩を進めた。
「やっと来てくれたね。ほら、もっとこっちに来て。」
みほは梓の肩を抱き、ぐいっと抱き寄せた。梓の心臓はなぜかドキドキとしている。みほの体温が梓に伝わる。梓は自分の気持ちに気がついた。梓はみほに恋をしてしまっていた。恐ろしいはずなのに好きになってしまったのだ。それは禁断の恋である。人の心はわからない。梓は口をパクパク力なく開閉している。
「たたた、隊長!?何を!?」
「梓ちゃん。そんなに慌ててどうしたの?顔も真っ赤だよ?うふふふ。誰にも聞かれちゃ困る極秘の話だからね。これから梓ちゃんに極秘の命令を伝えます。」
梓の心臓は相変わらずドキドキとしている。みほの息が梓の耳をくすぐる。梓の顔は上気してしまった。みほが何やら梓の耳元で囁くが頭がぼうっとしてしまって入ってこない。するとみほはニッコリと微笑みながら梓の顔に向かって1cmもないくらいの距離まで顔を近づける。
「梓ちゃん聞いてる?」
「あ…すみません…全く聞いてませんでした…」
「うふふ…素直だね…良い子。でも、ちゃんと聞いてね。私は梓ちゃんを手にかけたくない。」
みほは梓の頰に手をおきながら耳元で囁く。梓はブルっと小さく震えて、呻いた。
「わかってます…」
「よかった…それじゃあ最初から説明するね。今度はしっかり聞いてね?優花里さんの様子がどうもおかしいの。優花里さんが少しずつ私に反抗を始めているんだ。実は、この間私が優花里さんが教育を担当している元生徒会軍の子を使うように命令したら一度断ったの。こんなこと信じたくはないんだけどやっぱり優花里さんが私の支配を離れつつあるのは確か。ここら辺で優花里さんにも私に逆らったらどうなるか思い知らせてあげたいんだけどどんな方法で思い知らせるのが良いかな?」
「え…?それは本当なんですか?とても信じられません…あの秋山先輩が…」
梓は驚いた。まさかあの優花里がみほに抵抗するとは思わなかったのだ。
「私も最初、優花里さんが反抗した時何が起こったのかわからなかった…でもそれが本当なんだよね…梓ちゃん。何か案あるかな…?」
梓は腕を組んで考え込む。そしてパッと顔をあげてみほにある提案を行った。
「それならダージリンさんみたいな方法を取れば良いのではないですか?秋山先輩の家族を秋山先輩の手で処刑させるのです。秋山先輩のご両親は今、生徒会が開設している避難所にいるんですよね?この学校を全て制圧したら秋山先輩にご両親を刺殺させましょう。秋山先輩の心を壊してしまえば今度こそ確実に支配することができると思いますよ。」
みほは椅子に腰掛けたまま、目を瞑り頷きながら梓の提案を聞いていた。
「梓ちゃんもなかなか悪い子だね。わかった。それじゃあそういう風に進めるよ。」
「何度も言いますが、隊長だけには悪い子なんて言われたくないです。隊長はその何十倍いや何百倍何千倍と悪いんですから。」
梓はみほに微笑みかける。するとみほはおもしろそうに大笑いした。ここまではっきりと言ってくれる梓はみほにとっては貴重な人間だったのかもしれない。大抵の人間は悪魔の心のみほを恐れて本音を語ろうとはしない。しかし、梓は違う。
「あはっ!あははは!そうだね!私に言われたくないよね。わかってるよ。それにしても梓ちゃんは本当に正直だね。素直で良い子。私は梓ちゃんのこと大好きだよ。」
梓はみほに大好きと言われて再び顔を真っ赤に染め上げた。梓はアワアワと慌て始めた。
「そそそ、そんな大好きだなんて…」
梓は恥ずかしそうに俯く。みほはいたずらっぽい笑みを浮かべると、梓の頰を愛おしそうに撫でる。
「本当だよ。梓ちゃんの心はわかってる。梓ちゃん、私に恋してるよね?私のこと好きなんでしょ?私を好きになってくれるなんて、嬉しかったんだ。私も梓ちゃんのこと大好きだよ。」
みほの言葉を聞いて梓は本当に幸せそうな顔をした。そしてハッとしてモジモジとする。そして、ためらいながら梓はみほに心からの気持ちを伝えた。
「あの…隊長!私は貴女のことが大好きです!どうか私と…私と…付き合ってください!」
みほは梓の告白を聞いて嬉しそうに笑った。しかし、それは梓が好きだと告白してくれたからというわけではない。梓の純粋な恋心を利用できると考えたからだ。みほは、梓が優花里のように反抗的な態度にならないうちに梓の心の完全なる支配を考えていた。みほは、人間を好きになるという気持ちなどない。自分以外の人間は全てが自分より劣った下等な生物だと思っていた。だから当然そんな下等生物を好きになるわけがないのである。みほが考えていたことを梓の心をどのように利用しようかということだった。
「それなら、その私を好きになってくれるその気持ちを証明する代わりに貴女を私に捧げてくれないかな?」
「え…?」
みほは満面の笑みを浮かべて後ろから抱き寄せて梓の耳元で悪魔の言葉を囁く。
「梓ちゃんが欲しいな。全て。私は梓ちゃんの全てが欲しい。心も血も。ねえ、梓ちゃん。私の血を飲んで。」
みほは自分の親指を傷つけるとコップに血を入れる。血がポタポタとコップに滴り落ちる。みほは血の入ったコップを梓に差し出した。梓は少しためらっていたがみほからコップを受け取る。
「隊長…」
梓は一言そう呟いてコップに口をつけると一気に飲み干した。梓の口いっぱいにみほの血の味が広がる。健康的な鉄の味だ。
「おいしい?」
「はい…おいしいです。これが…隊長の血…」
みほが笑顔で尋ねると梓は真っ赤な顔をして喘ぎながら幸せそうに笑い返す。
「うふふふ。よかった。梓ちゃんと私はこれで一心同体だよ。例え、私がこの世からいなくなっても私はずっと梓ちゃんの中で私は生き続けることができる。私は梓ちゃんの血となって梓ちゃんの一部になるの。そして、梓ちゃんを支配する。梓ちゃんは私のもの。私だけのもの。もう離さないよ。梓ちゃんは私の操り人形…私のためだけに踊ってね…うふふふふ…私の掌の上で…あはっ!あはははは!」
「はい。忠誠を誓います。私は隊長にどこまでもついていきます。私は隊長を愛していますから。何でもします。」
みほはニヤリと笑う。梓のたてた誓いは絶対にたててはならない誓いだった。
「梓ちゃん…可愛いね…大好きだよ…」
みほは嬉しそうに梓を抱きしめた。みほの甘い残酷な嘘に梓はすっかり騙された。みほの柔らかな身体の感触が梓の身体を包む。みほの身体と柔らかい髪から漂う甘い良い香りが梓の鼻をくすぐる。梓は幸せの絶頂だった。頭がぼうっとしてくる。梓は本当にみほが大好きだったのだ。いつまでもこうしていたかったが、梓は重要なことを思い出した。
「あの…隊長…」
「どうしたの?改まって。」
みほは梓を離すと梓はゴクリと唾を飲みながら緊張の面持ちで話し始めた。
「隊長、落ち着いて聞いてください。実は、出たらしいんです。」
「出たって何が…?」
みほは怪訝な顔をして梓を見た。そして首をかしげる。
「オレンジペコさんの幽霊と裏切りの芽です…」
「どういうこと?」
みほは少しも動じることなく優しく微笑みながら冷静に詳細を尋ねる。
「はい。実は聖グロリアーナの部隊で噂になっているんです…血だらけのオレンジペコさんの幽霊が夜な夜な現れて恨めしそうなうめき声をあげながら迫ってくるって…」
「なるほど。非科学的なことを信じるバカが聖グロリアーナにはたくさんいるんだね。でも、仕方ない。士気に関わるから慎重に対処しなくちゃね。まさか、梓ちゃんまでこんな根も葉もない噂を信じてるわけじゃないよね?私はバカな子はあまり好きじゃないんだ。私に嫌われるとどうなるか梓ちゃんはもうわかってるよね?」
みほはニコニコと微笑みながらちらりと拳銃を見せた。梓は必死に否定した。
「そ、そんな迷信なんて信じるわけないじゃないですか。」
「そうだよね。聖グロリアーナにはよく言い聞かせておくから安心して。それより、私は後者の方が聞き捨てならないんだけど、詳しく聞かせてくれるかな?」
みほの顔が途端に恐ろしく変わった。みほは裏切りという言葉に過剰に反応するのだ。みほは今まで散々裏切られてきた。だからみほは裏切りを決して許すことはなかった。梓はダラダラと冷や汗を流しながら秘密警察部隊が手に入れた情報をみほに提供した。
「はい。実は、アッサムさんが隊長の体制を疑問視し、人を集めて隊長の体制に関して議論していると匿名で情報がもたらされたのです。まあ、今すぐに危険があるわけではないと思いますが…一応警戒すべきでしょう。アッサムさんは聖グロリアーナの幹部クラスなので裏切りが起きると聖グロリアーナ勢が一斉に裏切ることになる可能性があります。」
「なるほどね…わかった。報告ありがとう。まあ、多分大丈夫だと思うよ。」
みほはさもなんでもないかのような返答をした。しかし、心の中ではアッサムへの敵意をむき出しにした。
(アッサムさん…許さない…私を裏切るなんて…絶対に…アッサムさんは危険だね…今のうちに処分しておかないと…どうしてあげようかな…優花里さんといい、アッサムさんといい引き締めておかないとね…少しでも私に反抗したり疑問を持つとどうなるか教えてあげないと…えへへへ。)
みほは拳銃を弄びながら悪魔のように笑う。みほは少しでも自分の体制に疑問を持つ者は許さなかった。みほは疑問を持つということは危険であると考えたのである。疑問を持った瞬間に自分の支配とコントロールを離れる。みほはそれを良しとしなかった。アッサムと優花里には冷酷な処分が待っている。みほは、心をときめかせて2人の処分を考える。梓はそんなみほに魅了された。そんな冷酷なみほが好きで仕方なかった。
「隊長…素敵です…」
梓は呟いた。梓の愛は歪んでいた。梓はみほが残虐行為をする悪魔の姿が大好きだった。美しくも恐ろしいみほに魅力を感じていたのだ。梓は、改めてみほにひれ伏し絶対服従の誓いを立てる。
「隊長。私は隊長を絶対に裏切りません。隊長が足を舐めろとおっしゃるなら舐めることだってできます。」
「うふふふ。だったらほら宣言通り私の足を舐めて。その絶対服従の精神を行動で示して。」
みほは履いていたブーツと靴下を脱いで、梓の前に足を出す。すると梓は恥ずかしそうにモジモジとしながらみほに要求した。
「あの…隊長…ブーツと靴下の匂い…嗅がせてくれませんか…?まずはブーツの匂いを嗅いでから靴下越しの足の匂い、それから生足の匂いを嗅いで…舐めるのはそれから…」
「あはっ!あははは!わかった!梓ちゃんったら変態さんなんだから!うふふふふ。はい。どうぞ。」
みほは、再び靴下を履くと足を差し出して梓にブーツを投げ渡した。梓はみほのブーツをそっと手に取ると顔に近づけて匂いを嗅ぐ。みほの汗の匂いが鼻腔をくすぐる。みほのブーツの匂いをたっぷり堪能した後は靴下越しの足の匂いを嗅いだ。
「これが…隊長の…蒸れた足…いい匂い…特に指と指の間の匂い…癖になっちゃうかも。」
梓は我慢できなくてみほの足に顔を埋める。梓の頭は快楽で埋め尽くされていた。その時だった。梓は指でみほの足に触れてしまった。するとみほがくすぐったそうに小さく喘ぐ。
「あっ…ん…」
梓はみほのとろけるような声を聞いて興奮してしまった。梓はみほの足に指を這わせる。みほはくすぐったそうな声をあげ続ける。
「あっ…んん…んん…くん…」
「隊長…可愛い…靴下…脱がしますね…」
梓はそっとみほの靴下を掴んで優しく壊れ物を扱う手つきでずり下ろした。みほの白くて綺麗な素足があらわになり、梓はみほの素足の指と指の間に顔を埋めて深呼吸をして蒸れた素足の匂いを存分に嗅いだ。梓はそれを心地よいフローラルのような匂いと脳内に認知された。梓は我慢ができなくなり、いよいよみほの足を掴んで素足を舐めようとした。
「梓ちゃん!待って!」
梓はみほに命令されて身体をビクンと反応させた。目の前にあるのに舐められないもどかしさでウズウズしている。まるでお預けを食らっている犬の気分だった。
「隊長…もう我慢できません…隊長…」
「うふふふ…私の足の裏をくすぐった罰だよ…私から主導権を取ろうなんて100年早い…まだ…まだだよ。よし!いいよ!」
梓は喜んでみほの足を舐めた。みほは足の裏を夢中で舐める梓を蔑みながらゴミを見るような冷たい目で見つめていた。それでも梓はみほを愛していた。
「これが…隊長の…白くて綺麗…だけどジメジメしてて足の裏すっごく蒸れてる…でも…隊長の足なら………では隊長、指と指の間から舐めさせていただきます…………うん…おいしい…んっ…」
みほの目論見通り梓の心はみほに完全に支配されていた。みほは梓の恋心を利用することで梓に絶対服従を誓わせた。梓は今までもみほに支配されていた。しかし、絶対服従を誓ったのは初めてのことである。梓は大洗女子学園において一番最初に強制ではなく自らみほに忠誠を誓ってみほに心を売った人物となった。梓という絶対的な副官を手に入れたみほはますます暴走していくことになる。