血塗られた戦車道   作:多治見国繁

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第81話 生き残りをかけた選択肢

優花里とアンチョビの密話を見ていた人影、それは梓だった。梓は、たまたまそこを通りかかった。いつもの光景なのにその時はなぜかふと気になって扉の向こう側を窓から覗いてみると深刻そうな顔をして優花里がアンチョビの耳元で何やら囁いている。梓はその会話が気になって仕方なかった。特に、みほから優花里が裏切りを企てるかもしれない、最近反発していると聞いて以来、梓は優花里のことを警戒していた。だから、梓は優花里の行動範囲内の至る所に盗聴器を仕掛けていたのだ。アンチョビのベッドの下にもアンチョビたちが寝静まったあと、こっそり忍び込み盗聴器を設置していた。梓は盗聴器の受信機を取り出して廊下を行ったり来たりしてどうしたものかと葛藤し考え込んでいた。すると梓の頭の中に天使と悪魔が現れた。二人は梓に全く逆のことを囁く。

 

(聴いちゃいなよ。もし、また秋山先輩が反逆を企んでたらそれを未然に防いだことになるし、きっと貴女の評価はうなぎのぼりだよ。隊長にも必要とされる。それに貴女にとって秋山先輩は何も価値がないじゃない。秋山先輩はあなたに何1つもたらすものはない。生き残るために彼女には犠牲になってもらおうよ。生き残るためには仲間でさえも売らなくちゃ生き残れないよ。)

 

(そんなのダメに決まってるじゃない。あんなに助けてもらった秋山先輩だよ?貴女はそれで本当にいいの?心が痛まないの?先輩を隊長に売って、これからどんな顔して生きていくの?)

 

梓の頭の中で天使と悪魔が激しい戦いを繰り広げた。しばらく葛藤し続けて梓は決心したように受信機をぎゅっと握るとイヤホンを装着する。梓の脳内戦争は悪魔が勝利したのだ。

 

(先輩…悪く思わないでくださいね…)

 

梓はそう心で呟くと、受信機のつまみをひねり、スイッチを入れる。すると、すぐに部屋の中の会話が聞こえてきた。梓は身を潜めてイヤホン越しに聞こえる声に聞き耳をたてる。

 

『……の人たちの協力で、ここから脱出するという計画です。』

 

『そんなことができるのか!?』

 

『しっ!』

 

『すまん…つい…でもいいのか?この計画がもし露呈したら…』

 

『まあ、西住殿のことですから、処刑は免れないでしょう…でも、やはりあなたはここにいるべき人間ではないのです。必ず生きてアンツィオに帰還させます。命に代えてでも…』

 

梓はそっとイヤホンを外して受信機のスイッチを切った。これ以上は聞いても意味がない。もはや自明だった。間違いなく優花里はみほを裏切っている。大変なことだ。しかし、梓は怒るわけでも、焦るわけでもなくただニヤリと黒い笑顔を浮かべて呟いた。

 

「いい情報を得た…これは使える…秋山先輩には悪いけど、存分にこの情報、役立たせてもらいます…これも全て、私が生き残るため。秋山先輩がまずは生き残ることを優先にしろって教えてくれたんですから…悪く思わないでくださいね…ふふふ…」

 

梓は優花里に見つからないようにそっと立ち去った。そして、みほの執務室に走った。しばらくするとみほの執務室が見えてくる。梓は扉をノックする。

 

「どうぞ。」

 

中からみほの明るい声が聞こえてきた。何かいいことがあったのだろうか。みほの声は機嫌良さげな声をしていた。

 

「失礼します。」

 

梓が扉を開けるとみほはニコニコと笑顔で命令書の作成などいつもの執務をしていた。

 

「梓ちゃんどうしたの?」

 

みほは執務をやめてまっすぐこちらを見ながら微笑みかける。梓はゴクリと唾を飲み込み、少し沈黙したあと、意を決して口を開く。

 

「実は…とんでもない話を聞いてしまいまして…」

 

みほは相変わらずニコニコと微笑み首をかしげる。

 

「とんでもない話?どんな話なのかな?教えて?」

 

「はい。実は…やはり秋山先輩が裏切っているということがわかりました。実は、隊長から話を聞いたあと、秋山先輩の行動範囲内に盗聴器を仕掛けたんです。そして、私聞いちゃったんです…秋山先輩がアンチョビさんを脱出させるっていう計画を企ててるって…」

 

みほの顔から表情という表情が全て抜け落ちる。そしてみほは大きなため息をつくと一際低い声で呻いた。

 

「そっか…優花里さん…許さない…許さないよ…」

 

みほは机に腕をつき手を組んで梓を見つめる。みほの目が冷たい独裁者の目に変わる。梓はあまりの恐ろしさにぶるりと震えながら恐る恐るみほに尋ねる。

 

「処刑するんですか…?」

 

するとみほは今度は満面の笑みで意外な返答をした。

 

「ううん。処刑はしないよ。」

 

「え…?いいんですか!?」

 

みほの返答に梓は拍子抜けしてしまった。今まで裏切り者は即処刑というスタンスを取っていたみほにしてはずいぶん甘い処分だった。

 

「うん。処刑しない。優花里さんにはまだ利用価値がある。なかなか手に入らない有能な人材をこんなことで簡単に失うわけにはいかないよ。もちろん、何か罰は受けて貰うけどね。どんな罰にしようかなあ。やっぱり辱めと身体的苦痛は味わって貰うことにしよっと。うふふ。あと、優花里さんの代わりに何も罪がない無関係な子たちを処刑してあげよう。きっと優花里さんは苦しむよね。しかも、その子たちの処刑を優花里さん自身にやらせる。えへへへ。自分が私に反逆したせいで何も罪のない子たちを理不尽に自分の手で処刑しないといけない。それを知った時の優花里さんの反応が今から楽しみだなあ!わくわくしてくるよ!うふふふ。あ、そうだ。それこそ人身売買に利用するのもいいかもしれないなあ。一番有効な方法を考えておかなくちゃね。」

 

梓は、恐ろしい残虐な考えを心躍らせながらさらりと語るみほに強烈な違和感を覚えた。あからさまな反逆行動をとった優花里を処刑するならば、まだ理解できる。しかし、なぜ何も罪もない者たちを処刑しようとするのか全くわけがわからなかった。

 

「しかし…何も罪がない者を処刑するのは無理があるのではないですか…?あと、人身売買ってなんの話ですか?」

 

「うふふふ。大丈夫だよ。そんなものはでっちあげてしまえばいいの。もし、無実を証明できる人物が出てきたとしてもその子も一緒に適当な罪をなすりつけて処刑しちゃえばいいから。あれ?人身売買の話まだしてなかった?あ、そうか…麻子さんか…話しておいてって言ってあったのに…実は、戦争継続のための資金が底をついてきたから人身売買ビジネスで大きく稼ごうっていう計画なんだけどね。人間丸ごと闇市場で売ると31億円くらいの金になるらしいの。だから、適当な人物を30人くらい選定して売り払おうっていう計画してるんだ。」

 

みほは目的のためなら手段を選ばない。梓は納得した。確かに、どうせ処刑するくらいなら人身売買で死んでもらったほうがこちらの利益にもなるし理にかなっている。隊長は悪知恵がよく働く人だ。梓はそう思った。みほは梓ににこりと微笑みかけると引き出しから書類を取り出し、手早くその書類に記入して梓に手渡した。

 

「これは…」

 

それは、優花里の拘束を命ずる逮捕状だった。梓は息を飲む。

 

「澤梓秘密警察隊長。貴女に秋山優花里の身柄確保を命じます。必ず秋山優花里を逮捕しここに連れてきてください。」

 

「了解しました。」

 

梓はみほに敬礼した。みほも満足そうに頷いて答礼する。梓は懐に逮捕状をしまう。そして一礼してみほの執務室から退室して、再びアンチョビが隔離している部屋についた。優花里はまだ部屋の中でアンチョビと話している。さすがに病気のアンチョビの前で優花里を拘束するのは気がひける。優花里がアンチョビとの話を済ませて部屋から出てくるのを待った。しかし、優花里はいつまでたっても話を切り上げない。最初はじっと気配を消して待っていたが、長い間待たされているとだんだんイライラしてくる。すると麻子がやってきた。

 

「梓?こんなところで何してるんだ…?」

 

梓は突然の声に身体をビクンと震わせた。

 

「あ、冷泉先輩。ちょうど良かったです。冷泉先輩お願いがあります。秋山先輩にそれとなく退室を促してくれませんか。ちょっと用事があって」

 

麻子はジッと梓の顔を見ると一切表情を変えることなく呟いた。

 

「自分で言ってこればいいじゃないか。」

 

「そうしたいのは山々なんですが…実はこういうことで…」

 

梓はみほから手渡された逮捕状を麻子に見せる。麻子はちらりと横目でそれを見る。

 

「なるほど。秋山さん。逮捕されるのか?何をしたんだ?」

 

「反逆罪です。アンチョビさんの脱出を企てた罪です。処刑はされないようですが、厳しく処罰されると思います。」

 

「そうか。秋山さんには交代して休憩するように伝えるからちょっと待っててくれ。」

 

梓は頷いて同意した。麻子が中に入って何事かを優花里に伝えると、優花里は外に出ようとする。梓はタイミングを見計らって優花里に声をかけた。

 

「こんにちは。秋山先輩。」

 

「ああ。澤殿こんにちは。どうしました?」

 

まさかアンチョビと交わした大切な約束が梓やみほの知るところになっているなんて思いもしない優花里は爽やかに挨拶を返した。梓は少しためらったが意を決して懐から逮捕状を取り出して優花里に見せる。

 

「秋山優花里さん。貴女を逮捕します。理由はわかっていますよね。」

 

「え…?どうして…」

 

優花里はそう呻くと全てが終わったという表情をして呆然としていた。そしてがっくりと跪く。梓は優花里の手首に手錠をかけて優花里をみほの執務室に連行した。執務室の扉を叩くと中からどうぞという返事が聞こえた。梓が扉を開けるとみほは椅子に腰掛けて待っていた。みほの前にある机には拷問のための鞭や異端者のフォークが並べられ、部屋の奥には石抱き用の責め道具が置かれていた。梓はそれを見てニヤリと笑い、手錠で繋がれた優花里を床に投げつけるように座らせると優花里の耳元で囁いた。

 

「秋山先輩…あの時、私が受けた責め覚えていますか?苦しかったんですよ?うふふ…あの時受けた屈辱と苦しみを貴女にも味合わせてあげましょう。」

 

優花里はハッと目を見開いて梓に助けを請う。

 

「あれは…あれは…命令だったんです…命令だから仕方なかった…許してください…今更、虫がいい話っていうのは重々よくわかっています…でも…助けて…お願いします…」

 

梓は心のどこかで優花里を恨んでいた。いつかは仕返ししてやろうと思っていた。今日、ようやく仕返しの時が来たのだ。タガが外れた梓は止まらなかった。

 

「命令…命令ね…私も西住隊長の命令に従います。助けを請うなら西住隊長に頼んだほうがいいと思いますよ。まあ、聞き遂げられるとは到底思いませんが…」

 

優花里はがっくりとうなだれた。するとその様子をおもしろそうに笑いながら見ていたみほが口を開いた。

 

「うふふふ。梓ちゃん。もういいかな?優花里さん。ようこそ。ごめんね。ちょっと優花里さんとお話がしたくて梓ちゃんに拘束してもらっちゃった。なんで拘束されたかはわかってるよね?私はなるべく優花里さんを処刑はしたくないし傷つけたくないって考えているんだ。優花里さんは有能だからね。こんなよくできた人間なかなかいないよ。だから、聞かれたことは全て正直に答えてね。それじゃあ、始めようか。第1問目、優花里さんはアンチョビさんをこの学園から逃がそうと企てた。これはあってる?」

 

なぜ知っているのか、優花里はさっぱりわからなかった。どこから漏れたのだろう。細心の注意を払い、絶対に聞かれることがないように気をつけていたはずだったのに。これを認めてしまったら危害はアンチョビにも及ぶだろう。優花里は必死で首を横に振った。

 

「そっか。わかった。それじゃあ2問目、私に反逆している子たちとつながっている。これはどうかな?」

 

これも正しい。大正解だ。それでも認めるわけにはいかない。自分だけが罰を受けるだけなら別に認めてもいいかもしれない。しかし、他人が不利益を受けるのは許されることではないのだ。優花里はまたも首を横に振る。

 

「優花里さん…それ全部嘘だよね?残念だな…優花里さんが嘘をつくなんて…」

 

みほは悲しそうに笑うとさっと手を挙げた。すると梓が優花里に襲いかかり、優花里の服を脱がそうとしてくる。

 

「な!何をするでありますか!?」

 

優花里は必死に抵抗した。すると梓は笑いながら答える。

 

「あの日、貴女が私にしたことはこういうことです。」

 

そういうと梓は優花里から無理やり服を引き剥がした。結局、優花里は抵抗むなしく梓に服を全て取り上げられて、生まれたままの姿にされてしまった。

 

「澤殿…やめてください…お願い…やめて…ください…許して…」

 

梓は許しを請う優花里に耳を貸すことなく天井から垂れた縄で吊し上てしまった。みほは恥ずかしい姿で吊るされている優花里を頬杖をつき椅子に座ったまま眺めて嘲笑う。

 

「あはっ!これはいい!最高の見世物だよ!あっはははは!優花里さんの恥ずかしい部分がよく見えるよ!さあて!裏切り者はどうしてやろうかな!」

 

悪魔はゆらゆら揺れながら立ち上がり、おもむろに手に持った皮製の鞭を振り下ろした。

 

「いぎゃああああああ!うぅ…」

 

部屋中に乾いた革の音と、けたたましい優花里の悲鳴が響いた。みほはその叫び声を聞き、両手を自分の頰に当てて最上の喜びというような顔をする。

 

「うふふふ。いい叫び声だね。さあ、もう一発やってあげる。」

 

みほはもう一発、鞭を優花里の身体に向かって振り下ろす。

 

「うぎゃあああああああ!」

 

梓は優花里の叫び声を聞いているうちに、ある感情が心に芽生えるのを自認した。それは快感だった。梓は罰を受けた日から心のどこかでいつか優花里に自分の手で復讐したいと考えていた。今日ようやくそのチャンスが巡って来た。このチャンスを逃すわけにはいかない。梓の唇が自然に動く。

 

「私にもやらせてください。」

 

みほは頷くとおもしろそうに笑いながら梓に鞭を手渡す。

 

「わかった。ほら、梓ちゃん。やってごらん?」

 

「え…?澤殿…?やめてください…澤殿…」

 

梓は怯える優花里を見下ろし嘲笑すると、大きく腕を振りかぶった。そして一気に振り下ろす。

 

「ぎゃああああああああ!」

 

「あはは!いい気味ですね!私が受けた苦しみを存分に味わってください!」

 

 

そういうと梓は何度も優花里の身体に鞭を打ち付ける。打ち付けるたび叫び声を上げて苦痛で顔を歪ませる優花里を梓はおもしろそうに眺める。すると今度はみほが優花里に近づき、優花里の髪の毛を乱暴に掴む。

 

「ふふふ…優花里さん認める気になったかな?」

 

優花里は唇を噛んで何も答えなかった。みほは優花里の頰を撫でてニッコリと微笑む。

 

「そっか。わかった。まだ認めないんだね。本当はこんなことしたくないんだけど仕方ないよね。認めないんだもん。小梅さん。お願いします。」

 

みほは扉の向こう側に声をかける。ああ、自分は処刑される。これが最後だ。今は、処刑された方が何よりもましかもしれない。これでようやく西住みほという恐怖から解放される。そう思った。しかし、現実は違った。扉がガチャリと開いた時、優花里は目を剥いた。そこには涙を流し、無実を訴える中、手錠と腰縄をされて小梅と直下に連行されている諜報活動局の局員たちの姿があった。優花里が手塩にかけて育てた大切な仲間たちだった。

 

「なんで…この子たちは関係ありません!釈放してあげてください!」

 

「うふふふ。優花里さんが罪を認めないならこの子たちを拷問して辱めたうえに処刑します。さあ、素直に罪を認めるか認めずにこの子たちが身代わりになるかどちらがいいかな?優花里さんならわかるよね?1分経過するごとに1人ずつ服を剥いでいきます。」

 

「優花里さん…」

 

諜報活動局員たちが心配そうにこちらを見つめている。優花里は究極の選択を強いられていた。みほに反発をしてなんとかこの状況を変えようとしている者たちやアンチョビを助けるのか目の前の手塩にかけて育てた大事な仲間たちを助けるのか。選択肢は非情にも1つしか選べない。その時である。みほの手がするすると伸びて諜報活動局員たちの首に触れた。みほは純粋な局員たちの首を愛おしそうに撫でる。

 

(西住殿…そんな汚れた手で私の大切な局員たちに触れないでください…お願いします…もう解放してください!これ以上私から大切なものを奪わないで!)

 

優花里は心の中で叫ぶ。しかしその声は決して届くことはない。みほは局員たちの服を引き裂き一枚ずつ剥いでいく。

 

「うふふふ。さあ優花里さん?時間がないよ?どうするの?このままだとこの子たちは裸にされて辱めを受けて鞭で打たれて、そして処刑される。早く選んだ方がいいと思うけどなあ。」

 

「西住殿…もうやめてください…人道を守るべきです…これ以上はもう…確かに私は…アンチョビ殿をここから脱出させようとしました…でもそれはアンチョビ殿の思いを聞いたから…だから脱出させようとしたんです…アンチョビ殿はみんなのために生きたいって言いました…みんなのためにアンツィオ高校に帰らなきゃって…私とは違ってアンチョビ殿は…」

 

みほは優花里の話を頷きながら黙って聞いていた。優花里はみほもわかってくれたと思った。しかし、みほは優花里に冷たく言い放つ。

 

「だからどうしたの?そんなことは私には関係ない。人道?人道なんて概念は脆いもの。私はね。人道なんて言葉が大嫌いなんだ。人間なんてものはその時の体制次第で180度変わる。人道を叫ぶ平和主義者だって悪魔に変わるの。ナチスドイツの支配下にあったドイツもしかり。旧ユーゴスラビアもしかり。そしてルワンダもしかり。ドイツでは何人の普通の人間が悪魔に変わってホロコーストに加担したことか。旧ユーゴスラビアやルワンダでは何人の人が隣人を憎み、無残な姿に殺害したことか。ほらね。どう?これでも人道を叫ぶことができるのかな?立場が変わればこんなにころころと態度が変わる愚かで浅ましい人間の姿を見ても人道を守ろうって思うのかな?私はまったく思わないよ。甘い顔を見せているとすぐに調子に乗って私に逆らおうする。だから私は絶対にやめない。私は欲望のまま、憎しみと恨みのまま恐怖を振りまいてやる!平和は剣によってのみ守られるのだから。それならその剣を使って恐怖で全てを支配してやる!逃げる?そもそも、ここに来て、私の秘密を知った時点で私から逃れられるわけがないでしょう?それにしてもこれは重大な問題だよ。そんな叶うわけがない淡い期待に今でもすがっているなんて。帰りたいなんて思ってたらどうなるかアンチョビさんにも思い知らせてあげないと。そして、優花里さん?あの時いったよね?私に逆らったら次はないって。優花里さんにはまだ利用価値があるから命だけは助けてあげるけど、優花里さんには反逆罪の罰として鞭打ち10日間と石抱き10日間そして今日から毎日辱めの苦痛を味わってもらうね。諜報活動局局長の座は剥奪して、局員の子たちは全員私の直轄とします。大丈夫。こき使ってあげるから。今まで守られていたぶんしっかり使わせてもらうからね。それと…ふふふ…これは直前まで言わないことにするけど、精神的な苦痛も味わってもらうから。せいぜい苦しんで。そしてその可愛い叫び声を聞かせてね。あ、そうだ。局員たちにも鞭打ちを受けてもらおうか。優花里さんと同じ部屋に収容するから。優花里さんのせいでこの子たちは苦痛を味わうことになる。かわいそうだよね。優花里さんが変なこと考えなければこんな惨めな思いしなくて済むのに。うふふふ。」

 

冷たい悪魔の目でみほは優花里を見つめる。優花里は怖くてみほの顔を見ることができなかった。みほは優花里が諜報活動局でやって来たことを全て180度方針転換した。今まで優花里が行なって来た、なるべく人道を守るという諜報活動局の基本理念が無残に崩れ去った瞬間だった。みほは人道という概念をまったくもっていない。それどころか、人間の本性はどんなに平和と人道主義を叫ぶ平和主義者であっても悪魔に変わるという曖昧でいい加減な理性を持った愚かな動物であると考えており、人道を守るというのは反逆者が出る最も危険な行為であるとしていた。優花里は項垂れる。優花里はこの時、まだ拘束された局員たちを含める局員たちの運命がこの先どうなるかわかっていなかった。自分が罪を認めれば彼女たちは許されると思っていたのだ。しかし、みほはそんなに甘くはない。みほの中で拘束した局員たちを含めた諜報活動局員たちの運命は既に決まっていた。

 

つづく

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