魔法科高校の劣等生 忘れられたグリモワールを持つ者 作:ホタル_100
6/30に誤字報告がありましたので直しました。サンド☆さん、ありがとうございます。
摩利の「あ、ああ構わないとも。紅夜君、君のも手伝ってくれ」から「あ、ああ構わないとも。紅夜君、君も手伝ってくれ」に直しました。本当に気づきませんでした。
7/18に感想欄にて誤字報告がございました。ゆんお姉ちゃんさん、ご指摘ありがとうございます。
紅夜の「合図があった瞬間に呼びました。それと俺の固定魔法のほとんどがCADを使いません」から「合図があった瞬間に呼びました。それと俺の固有魔法のほとんどがCADを使いません」に直しました。
「意外・・・・・・だったな」
「何がですが?」
「君がこんなに好戦的な性格だということさ。しかし、服部は当校でも五本の指に入る使い手だぞ、勝てるのか?」
「まあ、一応は」
「お待たせしました」
用意の終えた、達也が審判である摩利に告げた。
「よし、ではルールの説明をする。直接攻撃・間接攻撃問わず相手を死に至らしめる術式は禁止だ。そして、回復不能な障害を与える術式ももちろん禁止だ。武器の使用は禁止。素手による攻撃は許可する。勝敗は一方が負けを認めるか、審判が続行不能と判断した場合に決する。では双方、合図があるまでCADを起動しないこと。従わない場合は、あたしが力づくで止めさせるから覚悟しておけよ。以上だ」
達也と服部は共に無言でうなずき、摩利の合図を待つ。
「・・・・・・始め!」
摩利の合図で先に動いたのは、服部だった。服部は右手のCADを操作した。だが、魔法が発動するよりも前に達也が服部も眼下に迫っていた。焦る服部は魔法を操作しなおした。だが、魔法が発動する前に服部は倒れた。
「・・・・・・勝者、司波達也」
(うへー、ほとんど秒殺じゃん)
口を開いたままの紅夜は、達也が勝つのに何の疑問も抱かなかった。
「達也君。今の動きは自己加速術式を予め展開していたのか?」
「魔法ではなりません。正真正銘、身体的な技術ですよ」
「渡辺先輩。兄は忍術使いの九重八雲先生のご指導を受けているのです」
「じゃあ、あの攻撃に使った魔法も忍術ですか?私にはサイオンの波動そのものを放ったようにしか見えなかったんですが?」
「それは振動の基礎単一系統魔法で、サイオンの波を作り出しただけですよ」
「しかしそれでは、はんぞーくんが倒れた理由が分かりませんが・・・」
「酔ったんですよ」
「酔った?いったい何に?」
「魔法師はサイオンを、可視光線や可聴音波と同じように知覚します。予期せぬサイオンの波動に曝された魔法師は、実際に自分の身体が揺さぶられたように錯覚するんですよ。この錯覚によって、激しい船酔いのようなものになったというわけです」
「そんな強い波動を、一体どうやって・・・・・・?」
「波の合成、ですね」
「振動数の異なるサイオン波を三連続で作り出し、三つの波がちょうど服部君と重なる位置で合成されるように調整して、ちょうど三角波のような強い波動を作り出したんでしょう」
「それにしても、あの短時間でどうやって振動魔法を三回も発動できたんですか?それだけの処理速度があれば、実技の評価が低いはずがありませんが」
「市原先輩。それは多分達也の持っているCADに秘密があるんじゃないですか?だろ達也」
「秘密って程じゃないがな」
「あのー、司波君のCADはもしかして、シルバー・ホーンじゃありませんか?」
「ええ、よくご存じですね」
「だって、シルバー・ホーンですよ。FLT社専属で、その本名、姿、プロフィールの全てが謎に包まれた奇跡のCADエンジニアのトーラス・シルバーがフルカスタマイズした特化型CADのモデル名なんです!そして、シルバー・ホーンにはループキャストに最適化されているんです」
「でも待って、いくらループキャストに最適化されている高性能なCADを使ったからって、それにループキャストは同一の魔法を発動するんじゃなかった?」
「そうですね。会長の言う通り、それでは波の合成に必要な振動数の異なる複数の波動を作り出すことはできないはずです。振動数を定義する部分を変数にしておけば、波の合成に必要な振動数の異なる波動を連続で作り出すこともできるでしょうけど、座標・強度・持続時間に加えて、振動数まで変数化するとなると、・・・・・・まさか、それを実行しているというのですか?」
「多変数化は処理速度としても演算規模としても干渉強度としても評価されない項目ですからね」
「・・・・・・実技試験における魔法力の評価は、魔法を発動する速度、魔法式の規模、対象物を書き換える強度で決まる。なるほど、テストが本当の能力を示していないとはこういうことか・・・」
達也の言葉に答えたのは上体を起こした、服部だった。
「司波さん」
「はい」
身体を起こした、服部は深雪のほうに歩いて行った。
「さっきは、身贔屓などと失礼なことを言いました。目が曇っていたのは、私のほうでした。許してほしい」
「わたしのほうこそ、生意気を申しました。お許しください」
「それじゃ、ついでにあたしの用事も済ませようか」
服部と深雪の謝罪会を終えたところで、摩利が口を開いた。
「そうね、ちょうどいいので、紅夜君。摩利と模擬戦をして貰ってもよろしいですか?」
「えっ?どうしてですか?」
真由美の言ったセリフに当然の疑問をぶつけた。
「実は元々今日は、紅夜君と摩利の模擬戦をする予定だったの」
「なぜ、俺と先輩が試合をするのですか?」
「朝、達也君に提案されていたの」
紅夜はすぐに達也を睨んだ。だが、達也はその視線を全くの無視をした。
「まあ、理由は色々あるが、あたしがやりたいっての言うのが一番の理由だ」
摩利の達也の提案はただの建前だったと言った。紅夜はもう何か言うのをあきらめた。
「分かりました。ですが、俺は用意をしていないので少し待ってください」
「構わないとも、ルールは先程と同じだ。審判は真由美に任せる」
「分かったわ」
「お待たせしました。もういいですよ」
「用意という割には、何も準備をしたようには見えないが」
摩利の言葉通り、紅夜がした準備とは身だしなみを整えたようにしか見えなかった。
「いえ、俺のした準備とはただの確認ですので」
「そうか、なら始めるか」
「では、双方とも準備ができたようなので・・・・・・始め!」
「先手はもらった」
摩利は刃状の魔法を放った。だが・・・
「なっ!?」
摩利の放った魔法が紅夜に当たる前に、防がれた。
「行けお前たち。今攻撃してきた人以外は攻撃するなよ」
紅夜の言葉に答えるように、獣の鳴き声が部屋に響いた。
「押さえつけるだけでいい、決して殺すなよ」
「言ってくれるじゃないか、そう簡単にやられはしないよ。それに・・・・・・」
「獣相手なら手はあるさ」
そう言って摩利は、ニヤリとした。
「紅夜君。この試合はあたしが勝たせてもらうよ」
摩利は魔法で自分の周囲を煙で覆った。
「確かにそれじゃあ、俺は直接攻撃するのは難しいですけど、こいつらはどうですかね」
「なに、手はあると言ったろ」
その直後、また獣の叫び声がした。だが、前と違いこの叫び声は悲鳴に近いものだった。
「あちゃー、確かにそれは無理ですね・・・・・・会長、降参します」
「それまで!勝者、渡辺真理」
「勝ちを譲ってもらったな」
摩利は悔しそうに、紅夜に言った。
「譲るなんてとんでもない。あんなに香水の香りがするものを使われたら、こいつらは手の出しようがないです」
「だが、君自身が攻撃をして来ればいいじゃないか」
「俺自身の攻撃なら、無いに等しいですよ」
「そうなのか、だがあの見えないやつはすごいな」
「紅夜君、差し支えなければ教えてもらえないか?」
「そうね、私も審判としていつ魔法を使ったのかは気になるので、教えてもらってもいいかな?」
摩利、真由美の順で先程の見えない獣についての質問が出てきた。
「あれは見た通りのものですよ」
「見た通りと言われてもな・・・・・・」
「俺以外には見えないだけの大きな犬ですよ」
「でもいつ魔法を発動したの?CADを操作したようには見えなかったけど」
「合図があった瞬間に呼びました。それと俺の固有魔法のほとんどがCADを使いません」
「紅夜はBS魔法師だったのか」
「ま、まあ、そんなところ(ちょっと違うが、あまり変わらないしいいかな)」
紅夜のことを達也が険しい顔で見ていたが、気づくことはなかった。
「とりあえずは、生徒会室に戻りましょうか」
真由美の一声で全員が移動を開始した。
◆◆◆◆◆
「さて、色々と想定外のイベントが起こったが、当初の予定通り、委員会の本部に行こうか」
「少し散らかっているが、適当に掛けてくれ」
「委員長、ここを片付けてもいいですか?」
「なに・・・・・・?」
「魔工技師志望としては、CADがこんな風に乱暴に放置されている状態は、耐え難いものがあるんですよ」
「魔工技師志望?あれだけの対人戦闘スキルがあるのに」
「俺の才能じゃ、どう足掻いてもC級までのライセンスしかとれませんから」
「それで、委員長ここを片付けても構いませんか?」
「あ、ああ構わないとも。紅夜君、君も手伝ってくれ」
「もちろん、達也だけでは時間が掛かると思いますし」
「達也君をスカウトした理由から話そうか・・・・・・とは言っても、ほとんど説明してしまったな」
「イメージ対策はむしろ逆効果ではないかと」
「どうしてそう思う」
「同じ立場のはずの下級生にいきなり取り締まられることになれば、面白くないと感じるのが普通でしょう」
「だが同じ一年生は歓迎すると思うがね」
「一年生には歓迎に倍する反感があると思いますよ」
「反感はあるだろうさ。だが入学したばかりの今なら、まだそれほど差別意識に毒されていないんじゃないか?」
「そうですかね、昨日はお前を認めないぞ宣言を投げつけられましたし」
「そうなのか、大変だったな」
「まったくです」
「じゃあ、そろそろ紅夜君の話をしようか」
「あ、はい」
周りの片付けは終わっていないのだが、外を見ていた紅夜は反応が少し遅れてしまった。
「ん?どうかしたのか?」
「いえ、少しボーっとしてしまって、それで何でしょう?」
「ああ、実は紅夜君には教職員推薦枠でうちに入ってもらう」
「そうなんです」
「おや、てっきり驚くか、嫌がると思ったのだけど」
「いや別にいいかな~っと」
「なんとも君達は面白いな」
「達也はどうか知りませんが、俺はどちらかというと行き当たりばったりのほうが多いですよ」
「それは昨日の件を見たらなんとなく分かるよ」
「紅夜、それじゃあ後々苦労するぞ」
「そうかもな、でも別に気にしないさ。人生は一度きりだ。選択を迫られたときに後悔のない選択をすればいいだろ」
「後悔のない選択か・・・・・・」
そう言った達也は少し悲しそうな表情をしていた。
入学式編も予定通りいけば、あと5~6話で終わるかな。
誤字等の報告あれば、教えて下されば助かります(あるかな?無いといいな~)