もう一つの【銀狼 銀魂版】   作:支倉貢

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志乃side

 

昼食も済ませた頃、私は再び作業に戻ろうと席を立つ。

こんなことで時間を潰してるような暇は私にはない。ここは敵地だ。長らく世話になるような場所じゃないし、何よりこんな所にいつまでも居座ってたら、帰る足を失うかもしれない。

それだけは死んでもゴメンだった。

でも。

 

「どこ行くの?」

 

この実際年齢だけは年上で精神年齢は私よりも年下であろう戦闘バカは、どうしてか私にしつこく付きまとう。

今ものすごい悪い目つきで睨んだ自信がある。

悪気はないけどイライラしてるのだ。ただでさえ隣でとんでもない量食われて軽い胸焼け起こしてるってのに。これ以上私に何の用だ。

 

神様、私は何か悪いことをしましたか。もしそうならこれからは態度を改めます。

ですから今すぐこのバカの手を引き剥がしてください。

ものすごい力で手首握られてるんです。

このままじゃ私の右手は骨折どころか完璧に引き千切られます。誰か助けて。

 

「いい加減にしてくれない?私にゃテメーに構ってる暇はこれっぽっちもねェっつってんだよ。理解したらブラックホールに呑み込まれて死ね。永久に帰ってくんな」

 

「ひどい……」

 

「あぁあ!もうわかったから!そんな目で見るな、私が悪者みたいに思えるだろ」

 

捨てられた子犬みたいに寂しげ且つ潤んだ目で見つめられるとこうも調子が狂う。

そしてこの数秒後にはいつもの腹立つ笑顔を浮かべてやがる。マジでぶん殴ってやろうか。

 

「仕方ないからもうしばらく付き合ってやるよ。んで?次はどこ行くの?」

 

「決めてない」

 

「お前マジでぶっ殺すぞゴラァ!!」

 

こいつホント何なの。溜息を吐いて、金属バットにかけた手を下ろした。

別にこいつを許してやったわけじゃない。ただ、今春雨の母艦で暴れると、面倒どころか厄介事の類いしか生まれない。

だから仕方なく、仕方なく手を引いてやってるのだ。私偉い。

 

「じゃあ、俺達専用の鍛錬場に行く?」

 

「なに、鍛錬場に夜兎専用とかあるの?」

 

「そりゃあね。基本白兵戦は俺達夜兎の独壇場だから」

 

「何それ。おー怖っ」

 

「志乃も人のこと言えないじゃん。刀持ったら世界最強なクセに」

 

「否定はしない」

 

フフン、と得意げに神威を見上げると、神威は一瞬真顔になってからフイとそっぽを向いた。

 

「……何、どうした?」

 

「…………何でもない」

 

「え、何?何なの?ねぇねぇどーした?ん?」

 

「お前しつこいよ」

 

「弱みを見せたらつけ込むのが私だよ」

 

「性格悪いね」

 

「お前ほどじゃねーよ」

 

********

 

神威に連れていかれたのは、鍛錬場ではなく、宇宙の見える広い窓。

え、何?マジで何がしたいのこの人?

 

「じゃあ私戻るわ」

 

「ダメ」

 

「いだだだだ!わかったわかったから髪引っ張んな!!」

 

ムカつく!なんか取り敢えずムカつくこいつ!

ホント何なの!?私アンタに何かしましたか!?

 

「ねっ、どう?綺麗でしょ」

 

「は?ああ……そうだね」

 

「もうちょっと感慨深く」

 

「そうだね」

 

「やる気あるの?」

 

「お前をぶん殴る気しかない」

 

「ハハ、そんなことしたらどうなるかわかってんの?」

 

「決闘になるね。この綺麗な空間を前に」

 

マジで何なんだこいつ。あのアホ提督の約束破って本気の殴り合いしてやろーか。

ムカつく。ホントムカつく。死ね。

 

「…………ねぇ、志乃」

 

「何?」

 

「あのさ。……その」

 

いきなり向き直ったと思えば、下を向いて何やらボソボソ呟く。

何なんだ。ホントにこいつは何なんだ。

ていうか何でちょっと赤くなってんの。

何で目ェ合わせようとしないの。

何でちょっともじもじしてんの!!乙女か気持ち悪い!!

 

「……もうちょっと、一緒にいたいって言ったら……怒る?」

 

「は?」

 

少し寂しそうな声音に、拍子抜ける。

つーかアホ毛まで垂れ下がってんぞ。何?このアホ毛は意思でも持ってんのか?

 

「まぁ、怒りはしないけど……」

 

「ホント!?」

 

「私に団子を貢ぐんだったらな」

 

「……………………………………」

 

あ。今あからさまに不機嫌になった。

何だ。私がそんな自分勝手な人間じゃないとでも思ってたのか?

言っとくけど、私はてめーら悪党どもに優しくしてやるほど心の広い女じゃねェ。ていうかてめーらに見せる優しさも可愛げもねェ。

悪かったな、私はそんじょそこらにいるようなか弱い女じゃないんだよ。

銀の剣術を受け継ぎ、ヅラ兄ィの賢さを受け継ぎ、辰兄ィの人誑しを受け継ぎ、高杉の洞察力を受け継いだとんでもねえガキなんだよ。

あんな悪ガキどもに育てられた娘だぞ。ロクな大人になれないのは目に見えてる。

でも、あいつらが悪いとは一度も思ったことはない。寧ろ感謝してるんだ。こんな風に育ててくれてありがとう、ってな。おかげで私は、こんな危険地帯でも、こうして悠々と生活できるようになったんだから。

 

「……お前ホントムカつく」

 

「何とでも言いやがれバーカ」

 

「……………………」

 

そっぽを向いた神威が、そのまま歩き去っていく。

ホント、意味わかんない。

何でアイツは、私にあんなにひっついてくるんだろう。




今回で「【another】志乃と神威の話」は終了です。一番内容が薄っぺらかったので一番最初に終わりました。

テーマとしては、「淡すぎる恋愛」みたいな感じで書きました。主に神威の一方的なものですが、志乃も彼には悪いイメージは持ってなくて、寧ろ友達のように思っています。
同い年で同じく片思いの沖田くんと神威は、私の中ではよく比べて進展を見ていくのですが、志乃にとってはどちらもライバルなのです。新八と同じ男友達なのです。あくまで好きなのはトッキーなので。
あ、でも新八は男友達である前に師匠でもあるので、彼らよりかは上……かな。うわ、なんかかわいそう。

沖田くんの場合も書いてみたらそれはそれで面白そうだな、と思いました、まる

それではまた次の機会にお会いしましょう。
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