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こうなってます。
「ここが駄菓子屋で、あそこが甘味処アル!」
「団子は!?団子はある!?」
「あるアルヨー!」
「いぇああああああ!!」
「ねぇ志乃ちゃん、最初の緊張どこに行ったの⁉︎めっちゃテンション高いじゃん!」
団子、という単語が出た瞬間、志乃は人が変わったようにテンションが上がった。
「私団子大好きなんだ」
「そうなの?」
「酢昆布好きアルか?」
「うん、それなりに」
他愛ない会話をしながら歩いていると、前方からパトカーが何故かこちらへ猛突進してきていた。
「……えっ」
「えええええええ!?何でェェ!?」
文章でサラッと流していたが、実はかなり危ない状況である。パトカーから、叫び声が聞こえてくる。
「死ねェェクソチャイナぁぁぁ!!」
「何、何なの!?」
「し、志乃ちゃんこっち!離れて!」
何が何だかわからぬまま、新八に手を引かれてその場を離れる。もちろん神楽も一緒に逃げ、窮地を脱した。
パトカーは急ブレーキをかけ、砂埃を巻き上げて止まる。中から淡い栗毛の端正な顔立ちの青年が現れた。恐らく先ほど自分達を轢こうとしたのは彼だろう。神楽がその青年に突っかかった。
「いきなり何するアルか、人でなし!!」
「チッ、殺れなかったか……」
何この人超怖い。志乃の中の彼の第一印象は、彼の服のように暗黒に染まった。
「ふざけろクソサド!」と叫んだ神楽が青年に跳び蹴りを放つが、躱されてさらに喧嘩に発展してしまう。江戸の観光はどこ行った。
呆然と喧嘩を眺めていると、隣に立つ新八が補足説明を入れてくれた。
「あ……あの人は沖田さんっていってね。あれでも真選組っていう特殊警察の隊長なんだ……」
「警察……?警察って、岡っ引きさんのこと?」
「うーん、まぁそれよりも立場は上っぽいけどね」
「へー」
新八と話していると、ふと沖田が志乃の存在に気付き、こちらを振り向く。
「あり?もしかして旦那の子供ですかィ?」
「何言ってるアルか!銀ちゃんのポンコツ遺伝子がこんな可愛い子産み出せるわけないアル」
「まぁ確かにそれもそうか」
何を話しているかはわからないが、とにかく銀時がディスられているのはわかる。まぁ銀時がバカにされようが、今に始まったことではないので、特には気にしない。
「初めまして、吉田志乃です。兄がいつもお世話になってます」
「マジでか、旦那の妹かィ」
ジロジロと値踏みするように見られ、志乃は緊張に体を強張らせる。しかしよく見てみると、この沖田という青年は実に整った顔立ちをしている。美少年、とはまさに彼のことを指すのだろう。
なんて考えていると、不意に視界に沖田の顔がいっぱいになった。
「!?ぁ、あの……?」
「へーぇ……旦那の妹、ねェ……」
顎に手を添え持ち上げられ、覗き込んでくる。沖田の端正な顔が近づいて、ドキドキと鼓動がうるさい。こんなにも男と接近したのは、父以外初めてだ。
緊張する彼女の頬は弱冠赤らみ、その目は困惑の色を映していた。
あの銀時の妹というからどんな女なのかと思ったが、どうやら兄とは正反対の性格らしい。しかも顔を近づけただけでこの反応とは、よほど純粋みたいだ。
無垢ならば、尚更調教しやすい。プライドの高い女を屈伏させるのもいいが、知らない感覚に怯えながらも、快楽に身を委ねてしまう純粋な少女をさらに貶めるのも、悪くない。沖田のドS心はゾクゾクするばかりだ。
さて、何をしてやろうか。彼女に手を伸ばした瞬間、頭に激痛が走る。次には体が吹っ飛ばされた。
「っ……!何しやがんでィ、クソチャイナ!」
「お前こそ志乃ちゃんに触るなアル!志乃ちゃんのパピー、超怖いんだヨ!お前なんか一捻りで殺されるネ!」
「そん時は娘を盾にとるから問題ねェ」
「志乃ちゃん早く!逃げるアル!」
「え……う、うん……」
神楽が助けてくれたおかげで、どうにか逃げ出す。
あの二人はどうやらかなり仲が悪いようだ。何だか建物が破壊されるような音まで聞こえたが、恐ろしくて耳を塞ぐ。ひたすら他人のフリをしていたい。
喧嘩する神楽と沖田、それを止める新八を遠くから眺めていると、不意に背後から肩を掴まれた。
「えっ?ーーーーんんッ!?」
何があったか判断がつかぬまま、口元に布が押し当てられる。鼻腔を妙な臭いが刺激し、不意に頭がクラクラした。
マズイ。それだけを理解した志乃は、ジタバタと必死に暴れる。視線だけを後ろに投げると、普通の人間とは思えない異形が見えた。
天人だ。それが約三人ほど、志乃の体を押さえつけている。
「んんっー!!んー!!」
なんとか遠くで喧嘩を続けている神楽や沖田に伝えようと、くぐもった叫び声を上げる。しかし薬がまわる方が早く、体から力が抜けていった。
ぼんやりした視界に、こちらを見た三人の姿が映った。
********
新八が見たのは、天人に捕まっていた志乃だった。
「志乃ちゃん!!」
必死に名前を呼ぶも、志乃は意識を失っているのか、ぐったりとしている。天人は動かない彼女を担いで、どこかへ攫おうとしていた。
「待てお前らっ、志乃ちゃんを放せ!!」
「志乃ちゃん!?」
新八に続いて神楽、沖田も緊急状態に気づき、逃げていく天人を追いかける。神楽が夜兎の力を生かしたスピードで、天人達に追いつこうとしていた。
「お前らァァァ!!その薄汚い手を離すアルぅぅ!!」
「どけチャイナ」
沖田の声が聞こえて、振り返る。
沖田は肩に
「ちょっと待てェェ!!お前志乃ちゃん殺す気アルかァ!!」
神楽の言葉も聞き止めず、沖田は躊躇なく天人を狙ってバズーカ砲を放つ。
真っ直ぐ天人に向けて放たれた砲撃は、あわや志乃に直撃しかけたが、天人達の足元で爆発した。
拘束された志乃の体は宙に浮き、地面に落ちる寸前で沖田にキャッチされた。志乃の誘拐に失敗した天人達が、次々に逃げていくその背中を神楽が蹴っ飛ばす。
「テメェら志乃ちゃんに手ェ出しといて生きて帰れると思うなヨ!お前らなんか志乃ちゃんのパピーにボコボコにされる運命ネ!」
「結局松陽さん頼り?」
新八の軽いツッコミが入った瞬間、沖田は止めていたパトカーのドアを開けて、後部座席に志乃を寝かせる。ゲシゲシと神楽が天人を蹴りつける中、屯所へ連絡を入れてから、志乃を乗せたままパトカーを発進させた。
沖田が志乃を誘拐した。それに新八と神楽が気づいたのは、約数分後のことである。
結局一番怖いのは、志乃ちゃんのパピー(松陽)。